「ニッポン社会」入門 英国人記者の抱腹レポート (生活人新書)

  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140882030

作品紹介・あらすじ

日本社会について手っ取り早く学びたければ、近くのプールに行ってみることだ。規則と清潔さを愛し、我慢強く、大きな集団の悪事に寛容な国民性が理解できるはずだから。過剰なまでに礼儀正しく親切な人々、思ったより簡単で奥深い日本語、ガイドブックには載っていない名所の数々…。14年間日本に暮らす英紙記者が無類のユーモアを交えて綴る、意外な発見に満ちた日本案内。

感想・レビュー・書評

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  • イギリス人記者による日本論。
    読みやすくて、笑えます。

    世界の中で日本人はどう生きるべきなのか‥などと昨今の情勢が気になり、働かない頭を捻りつつ、こういった物からでも読んでみようかと。
    日本の良い所を外国の人に言ってもらえるのを読むのは楽しいもの。
    面白おかしく、外国人の戸惑いや、日本人の勘違いなども書かれていますが、おおむね好意的。

    親切な日本人に出会って感動したり。
    手先の器用さに驚いたり。
    お花見、銭湯など、日本人の独創的な発明の数々。
    コラム的に次々、具体例が書かれています。
    日本語の習得には苦労したが、実は基本的には難解ではないという。
    (それは知ってます‥)
    ただ漢字カタカナひらがなの表記は難しく、特に漢字は覚えるのにかかる年月を考えると日本人にとっても大変すぎるのではと。
    (いやいや、これが一目でわかって便利なんですよ~味わい深いしね)

    コリン・ジョイスは、92年来日し、神戸で日本語を学ぶ。
    高校の英語教師、「ニューズウィーク日本版」勤務を経て、英高級紙「デイリー・テレグラフ」の記者に。東京特派員として記事を送る。
    イギリス人は日本に対してさほど関心がないため、真面目な記事を送っても残念ながらほとんどそのまま載ることはないそう。
    日本の記事の位置がそもそもトピックスというか、色物扱いなのね‥

    日本人は「イギリスと日本は似ている」と言いたがる人が多いが、イギリス人はそんなこと考えたこともないという。
    そのへんは片思いなのね。
    (そりゃ~日本は鎖国していたのが、いきなり世界と付き合う羽目になり、追いかけようと必死になったとき、もとは小さな島国だけど頑張っている国を見つけて意識したんですよ。
    そういう歴史がイギリスには全然ないわけだから)

    ただ、日本はイギリス人やヨーロッパ人にとって世界でも一番エキゾチックな国なんだそう。
    長い間、隔絶した遠いところで発展してきましたから‥
    理解できない風習と伝統に、奇妙な魅力があるわけですね。
    今のクール・ジャパン人気はこの頃、始まってはいたのかな。

    2006年発行の本書。
    日本のいわゆる「失われた十年」と、著者の日本滞在がほぼ一緒。
    この十年の間に、日本の経済は停滞したが、サッカーはぐっとレベルが上がり、ビールも美味しくなったそう。
    サッカーとビールをこよなく愛する著者にとって、偶然とは思えないそうです。
    また逆に、イギリス人は日本人ほどグルメに興味がなかったのが、最近はだいぶ追いついてきたとか。

    著者は1970年ロンドン東部のロムフォード生まれ。
    訛りが強く、オックスフォード大学で最初は教授に頭が悪そうに思われたとか。
    ヨーロッパではイギリス人といえば(日本人が考える「ジェントルマン」ではなく)フーリガンと思われるというのは、彼がそう誤解されるような外見と喋り方なのかも?と思ったり。
    フットワークが軽い印象ですね。
    面白く読めました☆

  • ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を
    経験したイギリス人が、日本を客観的に分析したエッセイ。
    著者の愛であふれた素晴らしい本なんだけど、
    特に、日本語について書かれた章が印象に残った。

    日本人にとって、日本語は成長するにつれて自然に
    身についた言葉で、決して「学んだ」わけではない。

    ・母音や子音の数が限られているために
     発音の面で引っかかるということが少ない。
    ・イントネーションも抑揚をつけずに
     できるだけ平板に話せば上手くいく。
    ・名詞には単数と複数の区別がなく、
     フランス語のような「性変化」や
     ドイツ語のような「格変化」もない。
    ・不定冠詞も定冠詞もない。
    ・動詞の時制も難しくない。
    ・形容詞も「形容詞と形容動詞の2種類に分かれる」
     ということを知っておけば良い。
    ・敬語や男言葉/女言葉の区別があるが、
     敬語は日本人だってみんな完璧に使えないし、
     現代は女言葉で話すのはオネエぐらいだ。
    ・ものによって違う数え方を覚えなければならない
     というのは確かにハードだが、基本的には
     「ひとつ、ふたつ、みっつ…」でなんとかなる。

    日本語を他の言語と相対的にみるとこんな風に見えるのか。

  • 東京在住の英国人記者(デイリー・テレグラフ紙)が、日本体験とジャーナリストとしての考えを綴ったエッセイ。外国人が日本のことを書いた本は気になるし、好意的に書いてくれていればうれしいもの(私、典型的な日本人です)。その意味で、この本はうれしい本です。読みながら、各種地ビールを飲みたくなり(イギリス人ならではのビールへのこだわりが炸裂)、東京を散歩したくなりました。

    肩の凝らない異文化体験エッセイですが、英国人が日本にどの程度の知識と関心をもっているか、英国のメディアが日本をどう報じているかについては、実体験をふまえて包み隠さず批判的に書いています(「イギリス人が読みたがる日本のニュース」)。高級紙であっても、誠実な記者が真面目に書いた記事であっても、こんなにねじまげられてしまうのかと、考えさせられました。

    一例を挙げれば、小泉元首相が首相になったとき、憲法第九条の見直しに賛成だと述べたことを書いた記事の見出しは「日本の新首相、交戦権を要求」になっていた。デイリー・テレグラフにして、その程度の正確さで日本のことを報じているというのは驚きでした。

    日本のことが正しく報じられていないことについては如何ともし難いわけですが、日本で報じられている諸外国の記事についても、そんな程度だと心して読む必要があることは学びました(日本の新聞の国際ニュースが手薄いことについては著者は批判的)。

  • すばらしい洞察力。逆に日本人として海外に行ったときにこのような視点で、その土地土地の文化や面白い光景を感じ取ることができればすばらしいなと思いました。
    やはり、日本人も捨てたもんじゃない。日本人が当たり前のこととおもっていることでも、まだまだ外国からしてみればすばらしい、と思われることはたくさんあるんです。
    ときに発想を変えてみる!というのが、いまの沈んだムードの日本には必要なのでしょうね。
    まさにいまのタイミングに日本人が読むにはいいのかもしれません。トーキョー「裏」観光ガイドは日本人、いや東京の人ですら知らないこともままあると思います。私も原書が読みたくなりました。

  • 著者は現在、イギリスの新聞「デーリー・テレグラフ」の東京特派員。
    本書は、その著者の14年に及ぶ日本での生活経験を基に書かれたものです。

    内容の方は題名から簡単に想像がつくイギリス人から見た日本人及び日本社会の他、著者がかつて住んでいた当時の神戸・三ノ宮の様子、そして現在住んでいる東京でのお気に入りスポットなどが書かれていました。


    本書の中で気になる箇所を数カ所ピックアップすると、

    ・イライラ、しくしくなどの擬態語を理解するのは難しい。

    ・日本語はしゃべる事はそんなに難しくはないが、文章の読み書きは難しい。

    ・著者のお気に入り日本語ベスト3

     3位:勝負パンツ
     2位:上目遣い
     1位:おニュー

    ・ベーコンはイギリスの方が美味しく、パン屋で買えるパンの種類もイギリスの方が豊富。また、イギリスのチーズの種類は数百種類、サンドイッチはイギリス人が発明した、2005年に雑誌「レストラン」の誌上で料理評論家600人に世界最高のレストランを選ばせた所、第1位を含めて上位50位の内、14軒をイギリスのレストランが占めた等を指摘してイギリスの食事は不味いと言う日本人の考えに反論。

    ・著者の東京でのおすすめ飲み屋

     浅草の神谷バー
     両国のポパイ
     九段会館のビアガーデン
     銀座のライオン・ビヤホール

    ・イギリスに持ち帰るべき日本のお土産

     スルメ(イギリスの家族が飼っている猫が夢中になった)
     味噌(味噌汁ではなく、キュウリにつけて食べる)
     麦茶(緑茶は紅茶があるので)
     お茶漬海苔、ふりかけ(在英日本人か、日本に滞在したことがあるイギリス人向け)

    ・「デイリー・テレグラフ」などに載る日本のニュースがおかしなものになる理由

      政治、経済共に派手なニュースもなく、その為、日本関連のニュースで  求められるのは3面記事となって
      いる。
      その結果、真面目な記事を書いても、コミカルな内容へと変更させられる。




    本書を読んでよかった点は、只、日本を持ち上げるだけの内容では無かったと言う事でしょうか。

    また、日本人的には「どうなの?」と疑問に感じる、日本に来たばかりのイギリス人へのイタズラの提案など、少しシニカルさが入った内容も面白かったです。


    気楽にサクサクと読み進められるので普段読書をしない方にもお勧めです。

  • イギリス人ジャーナリストが、15年にわたる日本特派員生活を経て、彼独特の視点で日本を語る。

    タイトルがいかにも「日本人バカにしてさしあげます」的だったので(「ニッポン」←わざわざ片仮名 とか、「入門」とか「抱腹」とか、表現の一つ一つがなんだかね)、警戒心と反駁精神を最大限準備して読み始めたところ、私がこれまで読んだ外国人による日本語りで最も好意を持てる一冊でした。叶うことなら日本に来ずじまいだったベネディクト女史にも読んでもらいたいくらいだ。

    日本のことを必要以上に貶めず、かといって無意味に持ち上げず、褒めるべきところは褒め、納得がいかないところは正直に伝えてある。
    特に「何故、海外の新聞では日本の文化や風習の変な一面ばかり伝えてしまうのか」ということを述べた章と、「日本に"ガイジン"として暮らす葛藤」については、ホント日本人みんな(特に海外に住んでガイジン経験をしたことがない日本人)に読んでもらいたい。

    あくまで彼独特の視点なので、外国人みんながそう思っている訳じゃないことは当たり前だし、ここに描かれている内容が果たして本当に正しいかどうかも別問題である。ただ、私たちは、日本や日本人に対してこういうことを書き、述べてくれる人たちを決して疎かにしてはいけないと思う。

  • 日本愛が深く面白い。自分が海外行った時の最初の感覚を思い出す。全てが違って見える。特にハッとさせられたのは、居酒屋の騒々しいグループや暴走族のように、日本人は集団の悪事に対して寛容すぎるのは日本の弱点の一節。個人でいると礼儀正しい人であり、集団でいると非礼な行為を行う。他にはガイコクジンの扱い等一話完結のエッセイで読みやすいです。

  • プールにおける日本人らしさ
    泳ぐ場所、水遊びの場所を明確に区分けしている
    5分間休憩←なんであるの?
    発明する日本人
    新入生・新入社員と親交を結ぶための花見
    ショッピングとディナーの間に行ける銭湯
    人々に馴染みある浮世絵←どんな種類があるの?
    ハロウィンなど外国文化に少し手を加えて模倣する能力←最近イースターも主流になりつつある。まずディズニーで期間限定イベントとして行事を取り込んでから、世間に広まっている・・・?
    東京の魅力
    特色ある街並み(秋葉原:アニメ街 巣鴨:おばあさんの原宿)
    親切で礼儀正しい接し方をする人々
    東京「裏」観光ガイド
    隅田川をジョギング
    両国の旧安田庭園
    ついで寄り(浜松町の小便小僧、月島もんじゃ通りの交番)
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    失われた10年=サッカー(競技水準・応援スタイル)、ビールの成長期

    イギリスに おける日本特集の記事
    読者が興味を惹きそうな内容にするため、記者が書いた記事にデスクが編集・修正をしている。

  • イギリス人の記者が面白おかしくつづったエッセイ。読みやすく面白い。えてしてこういう場合は日本人よりも日本独自の文化に詳しくなる場合が多いがこのケースでもそのようだ。

  • 社会

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著者プロフィール

1970年イギリス生まれ。オックスフォード大学のセント・アンズ・カレッジで古代・近代史を専攻。卒業後は神戸で日本語を学び、イギリスの新聞の東京特派員を務めた。著書に『「ニッポン社会」入門』、『新「ニッポン社会」入門』、『驚きの英国史』、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの<すきま>』などがある。

「2018年 『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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