英語学習7つの誤解 (生活人新書 229)

著者 :
  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140882290

作品紹介・あらすじ

「こうすれば、努力しなくても英語がペラペラに!」「英語は幼児教育から!」など、巷間には英語学習に関するさまざまな説が飛び交っている。英語が苦手な日本人が、ついふらふらと誘われてしまうのも無理はない。しかし、これらの説は本当なのか?裏づけはあるのか?科学と経験とでバランスをとりながら、俗説の誤謬を正し、英語学習のあるべき姿を分かりやすく紹介する。

感想・レビュー・書評

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  • (20180616)

  • 巷にあふれる英語学習にまつわる俗説の誤解をとく。母語習得と外国語習得のメカニズム、ESLとEFLの学習法の違いがわかっている人には特に目から鱗の情報はないが、著者オススメの本や、達人の勉強法なども紹介されていて面白い。

  • 言語学・認知科学研究者による、
    (とりわけ日本人の)英語学習の
    よくある誤解を取り上げて、
    わかりやすくそれの間違いを正していく
    科学的かつ実用的な読み物。

    その誤解とは

    誤解1「英語学習に英文法は不要である」
    誤解2「英語学習は早く始めるほどよい」
    誤解3「留学すれば英語は確実に身につく」
    誤解4「英語学習は母語を身につけるのと同じ手順で進めるのが効果的である」
    誤解5「英語はネイティブから習うのが効果的である」
    誤解6「英語は外国語の中でもとくに習得しやすい言語である」
    誤解7「英語学習には理想的な、万人に通用する科学的方法がある」

    というもので、
    なるほど、確かに全部を全部信じ込んでいる
    人は多くないかもしれないが、
    かといって、これらすべてを誤解だと理解できている
    人もまた、ほとんどいないような言説である。

    特に個人的には、
    誤解1、2、5あたりがなるほどと思った。

    1については、「ひたすら聴き流し」型の
    英語教材が昨今取り上げられたりしているが、
    それに対する適切な批判になるかもしれない。
    もちろん、英文法理解がほぼ達成されている人なら、
    聴き流しでも良いかもしれないが、
    中高で習うレベルの英文法が充分身についていない状態で
    果たして文章をたくさん聞いたところで
    理解できるかは大いに疑問だ。

    2については、早期英語教育神話といえようか。
    確かにすべてのヒトの赤ちゃんは言語マスターの天才
    であり
    「母語は外国語学習で影響されるほどヤワじゃない」(p.84)
    というあたりで、
    著者自身でも、母語への悪影響ということは主張していない。
    しかし、1にも関係するが、文法構造を理解するという点で、
    既に母語を使って分析的思考や学習が可能になった年齢
    (つまり中学生)くらいのほうが効率が良いということを
    述べている。
    なるほど、これは説得力がある。

    また5については、
    私達は日本人だが、「日本語について」の知識が充分な人は
    どれだけいるか? というよりほとんどいないことを
    例として挙げている。
    日本語が使えることと「日本語について学術的知がある」ことは
    ほとんど関係ないと言ってもよい。
    したがって、英語についてもそれは同じで、いくら英語ネイティブでも
    英語の文法構造や成り立ちなどの知識があり、それを教授に活用
    できない人は、それはとても「良い先生」とは言えず、
    その人から「外国語」として英語を習っても効率が良いとはとても言えない。


    日本人のかなりの割合の人は(私も含めて)
    英語コンプレックスというかなんというか、
    そういう英語に対する抵抗感や恐れや恥ずかしさやら
    マイナスな心象があるような気がする。

    それがゆえに「楽して英語ができるように」とか
    「あなたのお子さんはバイリンガルに!」とか、
    あやしげな英語教育手法にぱっと飛びつきやすいのではなかろうか。

    大事なことは、言語習得に関する科学的な真実を知り、
    そして自分や、家族など、人生を送っていくうえで、
    なぜ英語ができるようになりたいか?
    それはどういう英語の使い方なのか?
    ということを常に問いながら、
    考え続けていくことではないだろうか。

    本書で柔道の山下氏の事例が出てくるが、
    氏は国際柔道連盟で活躍するためには英語ができるようになるしかないと
    肚をくくって、英語学習を始めたという話であり、
    著者は「これほどまでにはっきりした動機づけと目標があれば英語学習は
    半ば成功したも同然」(p.198)
    と述べている。

    なるほど、である。
    強い動機づけがあれば、それこそが最強なのだ。
    明治維新期の志士たちがなぜあそこまで語学習得に
    熱意を燃やし、成功させたのかというのも、
    それはたぶん「日本を良くしたい」というすさまじい目標があったからだ。

  • 本書では冒頭で、学校での授業や教則本を利用した学習環境を『外国語環境』、その外国語を使わざる得ない生活環境を『第二言語環境』と定義している。例えば同じ韓国に居ても、語学堂や学院で韓国語を学び外国人下宿に住んでいる場合は前者であり、韓国人との国際結婚家庭や駐在員子弟が現地校に通う場合なんかは後者に当たる訳だ。私の食遊住環境が前者なのは充分認識しているし、それが最大の問題点だと言うことも分っちゃいるが今更国際結婚する訳にも行かないので、日本語のできない韓国人家庭に同居することにした。はてさてどうなることやら?

  • オーディオブックで聞きました。英語学習に王道はないし終わりはない。英文法は大事。

  • 認知言語学者の大御所,大津先生の新書だったので,読んでみました.

    言語習得研究の世界では当たり前だと思われてても,一般の人にはなかなかわかってもらえない7つの誤解について,わかりやすく解説してある.

    なので,自分にとっては新しい知見というのはあまりなかったが,誤解は「母語習得」と「第二言語習得」と「外国語習得」を混在して考えていることに起因しているということが主な内容だったと思う.あとは,外国語習得に近道は無いということ.

    英語教育に携わる人,英語を勉強したいと思っている人に読んでもらいたい一冊.

  • 誤解1から4、7は、わざわざ「誤解」と言わなくても良いと思う。

    誤解5は、「ネイティブから習うのが効果的」とあるが、これには疑問を抱く。

    例えば、同じ国の人同士で下手な英語でコミュニケーションを取っていると、ブロークンでも良いなら上達するかも知れないが、お互いに間違いに気遣いがないから、逆に正確な知識が身に付かない場合があるだろう。

    正しい発音や高度な文法は、ネイティブと関わり合うなかで気付いたり、教えられたりするものだと思う。

    誤解6は、本書で唯一「なるほど」と思った部分。
    故に今回の読書は有益だったと信じたい。

  • [ 内容 ]
    「こうすれば、努力しなくても英語がペラペラに!」「英語は幼児教育から!」など、巷間には英語学習に関するさまざまな説が飛び交っている。
    英語が苦手な日本人が、ついふらふらと誘われてしまうのも無理はない。
    しかし、これらの説は本当なのか?
    裏づけはあるのか?
    科学と経験とでバランスをとりながら、俗説の誤謬を正し、英語学習のあるべき姿を分かりやすく紹介する。

    [ 目次 ]
    第1話 母語・外国語・第二言語とは何か
    第2話 誤解1「英語学習に英文法は不要である」
    第3話 役立つ英文法を身につけるコツ
    第4話 誤解2「英語学習は早く始めるほどよい」
    第5話 早期英語教育は効果的か?
    第6話 誤解3「留学すれば英語は確実に身につく」
    第7話 誤解4「英語学習は母語を身につけるのと同じ手順で進めるのが効果的である」
    第8話 誤解5「英語はネイティブから習うのが効果的である」
    第9話 「英語で考える」を考える
    第10話 誤解6「英語は外国語の中でもとくに習得しやすい言語である」
    第11話 誤解7「英語学習には理想的な、万人に通用する科学的方法がある」
    第12話 ことばを意識的に捉えることの重要性
    第13話 達人たちの英語学習法に学ぶ
    最終話 あとは動機づけと目標設定

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  • 図書館所蔵【830.7OT】

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著者プロフィール

慶應義塾大学名誉教授。関西大学・中京大学客員教授。日本学術会議連携会員。Ph.D.(MIT、1981、言語学)。東京言語研究所運営委員長、日本認知科学会会長、言語科学会会長などを歴任。専門は言語の認知科学および言語教育。言語教育関係の著作として、『日本語からはじめる小学校英語――ことばの力を育むためのマニュアル』(開拓社、2019年、浦谷淳子・齋藤菊枝と共編著)、『学習英文法を見直したい』(研究社、2012年、編著)、『ことばの力を育む』(慶應義塾大学出版会、2008年、窪園晴夫との共編著)など。

「2021年 『どうする、小学校英語?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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