はじめての宗教論 右巻 見えない世界の逆襲 (生活人新書)

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  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140883082

感想・レビュー・書評

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  • 寝る前のフォトリーディング&高速を交えて翌日に熟読。
    自由主義神学を基盤として基督教について語っている。

    仕方ないことであるが、著者はリベラル派が主流だと思っている。後に発展した福音派、ペンテコステ派は「ファンダメンタリスト=原理主義」としている。また十全霊感節を信じるキリスト者の信仰を「責めてはならない」と、一見擁護的な言葉で説明している。(恐らく自分たちの正当性を固く信じて知らず知らずのうちの、高いところからの物の見方なのだろうと思う。あるいは核心的に慇懃無礼な表現をしたのか?そこまで福音主義を知ってはいないと感じはしたが・・・。)

    リベラル神学の歴史がよく分かりとてもためにはなった。しかしなぜ福音主義が生まれ、更にペンテコステ派に至ったかなどは一切触れられていなかった。恐らく著者の神学校ではそのような世界があることはあまり教えられず、自分たちがいわゆる「メインライン」なのだという意識で学問を担っている“自負”があるのだろう。他の日本人が呼んだらこれがキリスト教であるのかと思うような記述で、しかもそれは世界的な信仰の潮流から外れる一時代前の解釈。氏のいうところのファンダメンタリストとしては氏の聖書解釈は全くのでたらめ。これがリベラル派かと思いつつ読み終わった。星は二つとした。

    下記に付箋を貼った箇所の要約をのせる:

    11:見えない世界に対する関心が無い人ほど、自己啓発やマルチ商法などの宗教と名乗らない宗教にたやすく引っかかってしまう。

    13:佐藤氏の復活に対する解釈は夢だそうで・・・。冒頭から自由主義神学丸出し。

    24:超越性を無理矢理否定すると、代替え仏画心に入り込む。それが近代以降のナショナリズム。

    33:金日成のチュチェ思想にはカルバン派の影響がある。

    39:北朝鮮の金日成神話化の過程を読み取れば、聖書の神話化の過程が分かる。(高踏批判の考え方。)

    48-49:カールバルトは「東と西の間にある教会」で、ソ連型共産主義が東ヨーロッパに入ることによって初めて教会と国家が分離できた、と述べている。
    ただし、バルトは現状を理想化しすぎている、と佐藤氏は述べ、東ヨーロッパの牧師神父が事実上の公務員であったことを指摘。

    50:氏の考えでは東ドイツの教会が克服した、教会と国家の問題は、日本においてはすでに克服されていると述べる。すなわち日本で教会は国家の助けを受けず、むしろ迫害されていた。

    64-65:19世紀に活躍した「自由主義神学の父」フリードリッヒ・シュライエルマッハーは、新約聖書重視主義という立場を取ったが、氏はその背景にあるウィクリフやフス、またルターやカルビンは、旧約聖書を暗記するほどに熟知していたと指摘。その上でシュライエルマッハーの考えを基本的に正しいと肯定。

    68:救済自体必要を感じない人々の問題を哲学者のキルケゴールは、絶望のカテゴリーにあるのにそれに気付かない人々の絶望という意味で「非本来的絶望」と呼んだ。

    70:ロシア正教会では信徒が新薬を読むことのみ許している。

    74-75:(ここら辺から自由主義的解釈炸裂・・・。)
    ヨハネはグノーシスの影響が入っているとのこと。

    88:逐語霊感や十全霊感説にたつ信者を批難してはならない(などと氏は私の信仰を弁護f^^;)

    98-99:魂の不滅も処女懐妊もアラム語のギリシャ語変換時にアルテミス女神信仰が混入した結果の誤訳だと氏は述べる。(あきれて物が言えない自由主義神学。)

    193:処女懐妊はさておいたとしても、イエス・キリストは完全な神であり完全な人であったとする(そこは分かってんじゃん!)

    199:フス派(ウィクリフ教の本拠地チェコでは、ルターやカルビンの宗教改革(16世紀)は第二次の物とする。第一次は14世紀のフス派で、ウィクリフが世俗語の聖書を初めに出したとする。

    200:世界教会という考え方では、カトリックは教会再統合を訴え、プロテスタントは再統合ではなく合一を主張している。エキュメニズムにもカトリックとプロテスタントでは違いがある。

    204:カトリックの伝道は教皇とその他いくつかの考え方以外は妥協できるとし、インドではキリストはバラモンの家に生まれたとされている。

    205:フスの本拠地チェコでは、討伐軍で会ったイエズス会が大暴れをしたために十字架を忌み嫌う物として見ている。

    208-209:ウクライナ西部にはユニア教会というイエズス会計の教会がある。これはフス派討伐のために進軍したイエズス会が、東方正教会の領域にまで入り込み、教団同士の戦いになりそうだったため、イエズス会が建てた教会。教義的には教皇を認めれば後は全て正教会のしきたりにして良いとした。初めは正教会側は無警戒。しかし後からまるっきりカトリックの勢力圏であることが分かり大慌てした。ウクライナでロシアとの間で問題になるのは、だいたいこのユニア教会の信徒たちによる問題。

    223:西田幾太郎、田邊元、高山岩男などの京都学派の哲学者たちは自発的、内発的に大東亜共栄圏思想にはまっていった。そして魚木忠一は京都学派の神学版。

    226-227:自由主義神学者である魚木忠一は、日本で基督教が広まるためには土着化が必要だと考えていた。

    228:明治以降のキリスト教徒は神学用語を取り入れた。それは平田篤胤以降の神道を研究してのこと。

    230-233:魚木忠一は西欧の基督教を受け入れるのではなく、日本の基督教が東西を融合させると考えた。
    また基督教文化圏にいない日本は逆にキリスト教の本質を理解しやすいと考えた。

    236:魚木は日本の伝統に回帰した。
    同志社神学部は学部からも信仰からもドロップアウトが多いのが特徴。しかし著者は教会から離れても信仰から離れない人もいるという。それは同志社の伝統として魚木を取り上げていたからだともいう。

  • 「サウロはやがて改名してパウロになり(132ページ)」という部分は、違うのではないかと感じた。「サウロ」は「パウロ」のヘブライ名というだけで、そもそも同じ名前ではないのかな…。「ペテロ」と「ケファ」みたいな関係で。そういう点が一つ見えると、全体的に見て内容は奇抜で興味深いのだが、自分の分からない分野(哲学的な部分など)について、内容をそのまま鵜呑みにするのが怖くなってしまう。

  • 宗教のことをもっと勉強しないとよくわからない。
    難しかった。

  • すべての人間はなんらかの宗教に頼っている。

  • 期待はずれ。
    聖書、キリスト教については全くの初心者を対象に書かれているが、何を主張したいのか不明確。
    読者像を絞り込めていないような気がする。
    続編の左巻に期待する。

著者プロフィール

1960年1月18日、東京都生まれ。1985年同志社大学大学院神学研究科修了 (神学修士)。1985年に外務省入省。英国、ロシアなどに勤務。2002年5月に鈴木宗男事件に連座し、2009年6月に執行猶予付き有罪確定。2013年6月に執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失った。『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―』(新潮社)、『自壊する帝国』(新潮社)、『交渉術』(文藝春秋)などの作品がある。

「2023年 『三人の女 二〇世紀の春 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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