はじめての宗教論 右巻 見えない世界の逆襲 (生活人新書)

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  • NHK出版
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レビュー : 64
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140883082

感想・レビュー・書評

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  • この本を読みながらスタジオジブリの映画『ゲド戦記』のキャッチコピーである『見えぬものこそ』という言葉を連想しました。この本を読んで理解するにはある程度宗教の知識が必須で、万人向けではないです。

    確か、スタジオジブリの映画「ゲド戦記」のキャッチコピーが「見えぬものこそ」というものだったかと思いますが、それはさておき、この本は「知の怪物」といわれる筆者の宗教、特にキリスト教に関する宗教論の「右巻」です。僕にキリスト教、もしくは神学に関する知識がまったくないせいなのかどうなのかは知りませんが、「入門書」と銘打っている割にはエラク難しく、新書でありながらこの本を最後まで読むのは本当に「格闘」という言葉がふさわしいくらいのものでした。

    主にここに書かれているのは、「見えない世界」についてのもので、筆者が引用しているヨーロッパの神学者の名前や文献については皆目見当がつきませんでしたが、神学というものが自分で考えるということを途方もないくらいの長い時間と、当時の英知のすべてを結集して育まれた学問なんだな、ということがよくわかりました。そして、彼によって描き出される、キリストの弟子たちのなんと人間的であることか!彼らを通じて、ユダヤ教の一派閥だったキリストの教えが世界中に広まって、そして、「今」を考える材料となっている。そのことに畏敬の念を感じました。

    文献の引用の中で僕が読んでいて深く考えさせられたのは『倫理という過酷な決断』という箇所に書かれていた話で、筆者がモスクワ大学で教鞭をとっていたときに当時、アフガニスタンから帰還した元兵士との会話が非常に印象的でした。具体的なことはぜひ、本書で確認してほしいんですけれど、僕が実際に筆者の立場だったらどんな答えを彼に言えただろうか?そんなことを考え込んでしまいました。

    巻末に参考文献としてのテキストがずらずらと並べられていますが、読もうかどうか二の足を踏んでおります…。

  • 著者が学んだ同志社の神学的傾向を垣間見ることができた。はじめから「キリストの復活とは、ナザレのイエスが夢に出てきたということ」(13頁)という記述が目に留まり、教科書的な自由主義神学に出会ってしまった、という印象。

    昨今、教勢のみならず神学の面でも主流派になってきている福音派やペンテコステ派については、関心も認識もきわめて薄い。著者が身に付けてきたキリスト教は(良し悪しはともかく)キリスト教界ではマイナーである。

    この著者の神学論がおもしろいのは、やはり政治経済とのからみ。貨幣経済とのアナロジーや、北朝鮮のチュチェ思想とキリスト教との類似性など、情報として興味深かった。

    「無政府主義とかマルクス主義的共産主義は、初期キリスト教のような限られた範囲の、お互いに顔が見えるような中間団体でしか成立しない共産主義的な原理を、国家全体どころか世界全体に拡大できると勘違いした。それで地獄絵ができてしまった」(127頁)という指摘は秀逸。

    チェコにおいて十字架ではなく盃がシンボルとして用いられているのが、イエズス会が十字軍でチェコのプロテスタントを攻めたことに由来している(205頁)というくだりは、なるほどと思った。私が学んだチェコの神学校も、シンボルマークは杯だった。

    キリスト教とは救済である、という言い方がよく出てきたが、著者にとっての「救済」とは何なのか、最後までよくわからなかった。「どんな状態から」「どのように」「どこにむかって」救われるのか、それこそがキリスト教信仰の中心テーマのはずだが。あえて踏み込まなかったのか、それとも、ただの「旗印」に過ぎないのか。

  • この本の目的ではないのだが、唯名論と実念論の箇所が理解しづらい。
    おそらく、そこが理解できれば本書もクリアに読み進められるのではないだろうか。

  • フォトリ52。内容濃く、行きつ戻りつしながら読みました。理解できていない点も多いので、きっと、また、読み返します。貨幣に置き換えることのできないもの、具体的な事物の形を取らないものを論理的に語るのが神学、そして、人は元来、何かを信じることなく生きるものではない都いう説明が、私にはしっくりきました。

  • 初心者が聖書を読む上での指南書となろう。

  • 見えない世界とは、宗教的な世界のことであり、神話の類型、宗教と政治、霊魂やキリスト教についてまとめている。

    比較的読みやすいと思ったが、著者のベースには当然キリスト教があるので、キリスト教がわからないと理解しにくい点もあるのではと感じた。

  • 佐藤優さんの著作にしては、比較的わかりやすい。かな。

    宗教論といっても、佐藤さん自体が同志社大学神学部卒のクリスチャンなわけで、ベースはキリスト教なわけです。

    もちろん、キリスト教学が新書の一冊や二冊に収まるわけはないので、ホントに初歩の初歩の入門の入門であります。

    佐藤さんの「獄中記」はまだ半分ほどしか読んでないので、そっちも読まなければ。

    とりあえず、この人はどこまで信用していいのかという見極めが難しいのです。

    鈴木宗男って、どう考えても好きにはなれないんだが、佐藤さんは全面擁護だし、自身も偽計業務妨害とかで結構長期間牢屋に入ってたんですよね。だから「獄中記」。
    つまらん小悪党でないことだけは確かだし、非常に魅力的でもある。

    博覧強記。東大の一つや二つ枕に寝てそうなイメージです。

    あとがきを最後に読んだのだが、これは前書きとしておいて欲しかった。
    ご自身の基本的視座を書いているのだが、まず、キリスト教徒であること。

    そして、宗教学は主体的でないと本質から外れるという基本姿勢。

    そこはボクと根本的に食い違うとこですね。

    ボクはそれは教学だと思う。

    宗教学・比較宗教学であるならば、やはりニュートラルである必要があると。

    ちらと出てくるロシアの科学的無神論というのが気になる。ちょっと調べてみよう。

    ただ、上記のように自分(佐藤氏)はクリスチャンなのであるから、論も偏向していると明言している。そのわりには極端にキリスト教を突き放して冷静に分析してると感じましたがね。

    書いたように、平易ではあるのだが、聖書の引用を多用している部分はやはりわかりにくいかな。そりゃ、仕方ない。頑張って聖書も読んでみよう。

    印象・記憶に残った豆を。

    イエス・キリスト。

    イエス=ジーザス/イエススというのは無論人の名前である。だが、キリストというのは「油を注がれたもの」という意味で、古代の王が即位する時に油を注ぐ儀式があったことに由来するという。

    なので、イエス・キリストと呼称した場合、それは「主たるイエス」という意味であるから、キリスト教信者であるということ。

    て、ことはあれかな。「ハイル・ヒトラー」とか「ジーク・ジオン」とおんなじ感じなのかな。え、違う?

    これは右巻ということなので、次は左巻を読んでみます。

  • 宗教には、どうしても興味が持てない。
    この本を読み終わってもなお、興味は持てない。

    ただ、人間が宗教的ないきものであることは
    人類の歴史上、認めなくてはならない事実である。

    経済や科学の進歩も西洋のキリスト教信者たちが
    先導してきて、人類が繁栄してきたことも紛れもない
    事実である。

    先行きの分からないこんな時代だからこそ、
    人が人と共存するために、宗教に対する正しい知識
    と理解が必要と改めて考えさせられた。

  • 7

  • 「誰もが聖書を読むために 」(新潮選書)では、聖書が示す考え方がわかったが、この本では歴史的に、キリスト教がどのように扱われてきたか、神学とはなんぞやという広範なテーマで扱われている。北朝鮮や東ヨーロッパのキリスト教事情等も普段では知りえない事も記載されており、面白い。結局のところ「救済」を信じる信じないがキーポイントであり、文化的にキリスト教が変容するものである。そういった意味で日本独自のキリスト教を作ろうとした人がいることに日本らしさが感じられた。

    序章:「見える世界」と「見えない世界」
       ――なぜ、宗教について考えるのか?
    第1章:宗教と政治
       ――神話はいかに作られるのか?
    第2章:聖書の正しい読み方
       ――何のために神学を学ぶのか?
    第3章:プネウマとプシュケー
       ――キリスト教は霊魂をどう捉えたのか?
    第4章:キリスト教と国家
       ――啓示とは何か?
    第5章:人間と原罪
       ――現代人に要請される倫理とは?
    第6章:宗教と類型
       ――日本人にとって神学とは何か?

著者プロフィール

1960年東京都生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了後、専門職員として外務省に入省。英国の陸軍語学学校でロシア語を学び、在ロシア日本大使館に勤務。
帰国後、外務省国際情報局で主任分析官として活躍。
2013年、『国家の罠』で毎日出版文化賞を受賞。

「2019年 『世界宗教の条件とは何か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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