ダメ情報の見分けかた メディアと幸福につきあうために (生活人新書)

  • NHK出版
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本棚登録 : 330
レビュー : 26
  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140883341

感想・レビュー・書評

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  • 三人の識者による、メディアリテラシーに関する一冊。「数多くの情報が氾濫している昨今、何が正しい情報なのか見極めるのが難しくなっている。そのような状況に対して一人一人がメディアリテラシーを高めるべきである」といった通説を聞くと疑うべくもない。ただし本書は、その類の通説をも疑うところからスタートしており、非常に奥が深かった。

    ◆本書における新しい視点
    ・これまでのメディアリテラシー論は、被害者にならないということを第一の目的にしていた。しかし、今や情報の受信者は同時に発信者でもあり、本書においては、加害者にならないためにということに重点を置いていてる。
    ・これまでのメディアリテラシー論は、リテラシーがない人を対象に語られてきた。しかし、昨今の情報環境の変化は誰しも経験したことのないものであり、本書においては、全ての人を対象に、必要なリテラシーが変化してきているという視点にたって為されている。
    ・これまでのメディアリテラシー論は、中立であるということを目標とされてきた。しかし、人やメディアが偏ってしまうことは不可避なことでもあり、本書では偏りや多様性を前提としたうえで議論が為されている。

    ◆本書で紹介されている処方箋
    1.リンクの不在を怪しむ、情報元を確認する、文章を最後まで読む
    今年一年、Twitter上で何件のデマで出回ったのだろうか?MIXI破産、みのもんたの駒野選手のお母さんインタビュー、鳩山由紀夫偽アカウント、小沢一郎偽アカウント、福山雅治結婚・・・全てがネット上に要因があったわけではないが、情報発信の簡易さが火に油を注いだのは事実である。これらの共通の特徴は「それらしいこと」にある。与えられた情報に対する、内在的なチェックを行いながら、安易な行動をおこさないことが肝要である。

    2.無内容な話を見抜く、定義が明確でない話を見抜く、データで簡単に否定される話を捨てる。
    上記のような捨てる技術を都度行うのではなく、ソーシャルグラフを定期的にメンテナンスをしながら、フィルタリングの精度をあげていくことが重要なことだと思う。一度でも2010年はソーシャルグラフの拡大が顕著であったと思うが、2011年は断捨離が一つのテーマになるのではないだろうか。

    3.マイノリティの視点に立つ、その存在を承認する。
    そもそも、”メディアリテラシーを高める”という考え方自体が、思想的に偏ったものであるらしい。言われてみれば、利用者に全ての責任を負わせているわけで、システム提供者の社会的責任などは、なかなか議論にあがってこない。このように、議論をしている前提条件がどのようなモノの上で成り立っているのかを考え、さまざまな視点でモノを考えるということは大切なことである。

    このようなメディアリテラシー論の本を読むと、この本自体もあるメディアなわけだから、鵜呑みにするのはどうかなどという、天邪鬼な気持ちも芽生えてくる。しかし、このような状態を、心理学的に「ダブル・バインド」と呼び、受け手に強いストレスを与えるため推奨しないという話が、本書で紹介されていた。完全に先回りされてしまっている・・・

  •  流言,内容のない言説,事実と価値判断の不可分性について。情報の海でどのように良く生きていくか,メディア・リテラシー入門。
     誰しもありのままの事実を知るなんてできなくて,みんな不完全な情報,加工された情報をもとにして,思考し行動しなくてはいけない。完璧ではなくても,より確からしい情報を手に入れて正しい判断をするために,どのような心構えが要るのか,確認しておくのは大事。
     流言の根底には,情報に対する需要と供給のミスマッチがある。真偽を問わなければ,情報を生み出すコストってべらぼうに低いので,供給不足のところにガセ情報が投入されてあっというまに広まってしまう。それも,単純でステレオタイプに沿ったストーリーだと効果的。
     世の中は複雑だから,単純な話やいかにもな話は,まず疑ってかかるのがいいんだろう。それと,世の中のしくみ(社会・科学)にはある程度基礎知識があった方がいい。それをもとに,胡散臭い情報って結構遮断できると思う。
     そういうことができない人たちが陰謀論にはまってしまうんだろな。学校で基礎知識を与えるのも確かに重要だけど,そういう危険な情報が世の中にはうようよしてるんだよってことをもっとあからさまに教えられるといいんだけど。もうやってるかな?メディアリテラシー教育。

  • 荻上チキ:メディアそのものがすでに「透明な道具ではな」く、又webの登場によって「誰かの得/誰かの損」の関係が必ずしも権力のある者とない者で対応しなくなってきたという前提。「流言」「デマ」「噂」の違い。「それらしさ」「分かりやすさ」「伝わりやすさ」によって流言は拡散。「内在的チェック」と「外在的チェック」によって「確からしい情報」を探し、常に情報に対して応答しながらより「確からしい情報」を広めていくことが必要。
    飯田泰之:リテラシーを身につけるコストに対し、利益が少なかった。すなわちリテラシーを身につける私的インセンティブがなかった。というのもリテラシーにネットワーク型の外部経済の特徴があり、言説のナッシュ均衡が生じているから。この打破のために、リテラシーを身につけるコストを下げる方法として、最初に避けるべき3つの議論「無内容な言説」「定義が明確でない言説」「データで簡単に否定される言説」を挙げる。
    鈴木謙介:情報は偏っているという前提。「中立さ」と「公正さ」の違い。「批判的態度」のジレンマ。メディアの利用者スキルの強調によって社会の問題が素通りに。多様性の承認から、偏った情報の背景を理解することで、「ダメ情報を使いこなす」。情念を前提として、マイノリティにも存在を許す。(鈴木の話が一番難しくてよく理解できない。)

著者プロフィール

特定非営利活動法人「ストップいじめ!ナビ」代表理事

「2018年 『ソーシャル・マジョリティ研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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