日本経済論 「国際競争力」という幻想 (NHK出版新書)

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  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140883402

作品紹介・あらすじ

リーマン・ショック後、日本を襲う急激な円高。もはや輸出頼み、海外との価格競争では未曾有の不況を脱却できない。構造改革論からデフレ論まで、経済政策の迷走を徹底批判。公共性の柔軟な解釈に基づく知的新機軸を打ち出す。外交問題、民主党政策、医療問題など、2008〜2010年の社会事象を分析し、日本経済の抱える問題点を浮き彫りにする。

感想・レビュー・書評

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  • 2011年(東日本大震災前)刊。著者は東京大学大学院総合文化研究科教授。◆宇沢弘文の後継とも見紛うばかりの最終章。宇沢の社会的公共資本を現代にリビルドした感ある論考に加え、現代にケインズをどう再構築するか(サプライサイド経済への批判と、需要創出への注視)に意を払う件ある所以。◆一方、民主党政権期刊行の書だからか、自民党(特に小泉・竹中ライン)への批判は明快(個人的には竹中氏批判は真っ当なものと思える)。◇が、民主党への批判も手厳しい。特に、中国の旺盛な海洋進出と軸が見えない同国の問題を前提とした上で、
    普天間基地の県外移設論の誤謬を突く点は明快(126頁)。◇また、オバマ政権誕生の意味と、新味はないが、中国の動向(特に対米関係)とは詳細(米国債を外交カードに等々)。が、中が資源・食糧をなりふり構わず奪いに来ている点は触れず。◆なお、円安誘導の小泉路線が重商主義と称するなら、安倍政権のそれも同様か。◆PS.「ネットは(中国)政府が…コントロールできておらず、…活発な発言の場…」の数行後に「インターネット…言論の動向に…党も注視…」「グーグルが撤退…なるほど党の締め付けが厳しく」ともある。念のため。
    本書の表題には問題あると感じるが、その上で全体の叙述から伺えるのは、いわゆる国際競争力の強化という点で日本を捉えようとしても、かなり無理がある。こう著者は考えているということではないだろうか。日本の急速な人口減には触れないが、リフレ派批判の上、対応策が非常に長期的(教育、子供の貧困解消、人的インフラの強化、地縁を軸とする繋がりの回復)なものばかりな点がそう解釈する所以だが。どうなんだろうか…。

  • 230624

  • ブッシュ政権下ではアメリカは国際政治のみならず国際経済についても単独で枠組みを設定しようとした。ワシントンコンセンサスによる世界に小さな政府、グローバリズム、規制緩和を押し付け、あげくに金融危機を招いた。

    中国は国際政治のルールに未習熟なままでドルが基軸通貨であることを批判し、軍事的な膨張主義を進めている。

  • 大学1年のとき授業受けてた記憶があり、買ってしまった。

    真新しい、オリジナルな要素が少なかった。
    「技術革新が資本主義の原動力であり、それが必然的にリスクを胚胎する以上、公共サービスとしての事前のリスク管理は資本主義のコスト」というのは一瞬心ひかれたけど、言い換えにすぎない気もする。
    国民の紐帯を再び深めよう、というのが柱の割には具体的提言がない。
    しかし、社会の形態が変わるのは常に二次的なもので、上からそこを目指して社会を変える、というのもなかなか難しいし、そもそも筋違いな気がした。

  • 戦後一貫して政治経済社会と広範囲にアメリカの影響を受けてきた日本。

    政権交代があったが、自民党時代よりも混迷を深める様相を見せる民主党政権。

    なぜ「経済」をめぐる迷走が続くのか、「国際競争力」という幻想、構造改革、公共性の問題点をするどくえぐる著作である。

    ソ連崩壊後の米国、ヨーロッパの迷走、中国・ロシアの台頭。

    多極化する世界構造における日本のしっかりとした立ち位置を模索しなければならない。

  • 小泉政権下での構造改革や規制緩和、低金利政策による円安誘導など一連の政策を、輸出企業の国際競争力強化を図る「重商主義」と定義し、輸出企業が稼いできた利益が国民に分配されなかったことや内需が絶対的に弱ってしまったことで実質的には行き詰ったもの、と断じている。
    一方で、民主党政権による政策については、結局農家の戸別保障制度や家族手当などのばらまきに終始してしまったために、持続的な成長戦略を全く欠いてしまっているとしている。
    その上で、著者としては内需の成長こそが日本経済に必要であると論じ、具体策として、国民にとって本当に必要な公共事業を行うこと、たとえば保育園の整備だったり、人と自然が調和をして国民にとって憩いともなれるような土木事業だったり、文化性をはぐぐむ公共施設の整備などをあげている。ハコモノ、既得権益と癒着渦巻く旧来型の公共事業ではなく、本当に国民にとって必要な「公共」事業によって内需の成長を見直すべきとしている。
    また、慢性的なデフレ状態は、世代間の不均衡、いわゆる福祉の世代間格差こそが根本的な原因であることを見抜いている。民主党政権のようなばらまきを行っても、将来不安がある限り国民が消費行動に向かうことは無いとして、不安の解消こそが優先して行うべき政策だと論じている。

    非常に論理が明確で言っていることが腑に落ちる内容です。
    とくに世代間格差の問題や将来不安について、ここまで一般の国民心理を理解されている人がいるのに、なぜ政治の世界には届かないのだろうと改めて不思議に思う感覚でした。
    主張についての賛否はともかく、経済と政治の分野において、現代の日本立ち位置を理解するのに非常に役立つ一冊。お勧めです。

  • 民主党政権には、国民の歓心を買うためにカネをばら撒くのではなく、将来不安の解消や公共心を培うための公共ストックの充実に向けて使ってもらいたい。それが重商主義時代の終わりに臨む政治の構え方。

  • 小泉竹中から民主党に至までの経済政策の概要と意味を知るには良い本

  • この著者については,朝日新聞「論壇時評」のときから注目していた。経済学者でありながら,社会の動きに広く目配りをして,説得力ある論旨を展開していた。本書はその改稿を含め,現在の日本社会・経済・政治の問題点を指摘し,それに対して(著者なりの)一定の処方箋を与えようとしている。自民党の高度成長期が終了するころまでの政策を一定程度評価しつつ,その晩期における問題の指摘はうなずけるところであり,また一方,現在の民主党政権への政権交代に一定の時代的必然があるとしながらも,個別政策とその背景にある考え方に一定の疑問符をつけている。「コンクリートから人へ」は,現実には「コンクリートからカネへ」ではないかという,著者の指摘はなるほどと思わされる。
    著者は,小泉政権時代に取られた「重商主義政策」によって,日本社会の「中間組織」がことごとく破壊され(自民党が依拠していたのはこの層であり,この崩壊が自民党が政権を失う原因の一つとなったという),人々がそれに代わる新たなコミュニケーション回路を模索している時代であるともいう。
    こうした時代における政治の役割というものを考えさせる著作である。

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著者プロフィール

松原隆一郎(まつばら・りゅういちろう)
昭和31(1956)年神戸市出身、放送大学教授、東京大学名誉教授。灘高校・東京大学工学部都市工学科卒、同大学院経済学研究科単位取得退学。専攻は社会経済学・経済思想。著書は『頼介伝』(苦楽堂)、『経済政策』(放送大学教育振興会)、『ケインズとハイエク』(講談社現代新書)、『経済思想入門』(ちくま学芸文庫)、堀部安嗣との共著『書庫を建てる』(新潮社)他、多数。

「2020年 『荘直温伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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