日本の魚は大丈夫か 漁業は三陸から生まれ変わる (NHK出版新書 360)

  • NHK出版 (2011年9月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784140883600

みんなの感想まとめ

日本の漁業の現状と未来について深く考えさせられる内容で、特に高齢化や後継者不足、漁獲量の規制の欠如といった問題が浮き彫りになっています。著者は、震災を契機に漁業の再構築を提案し、持続可能な資源管理と高...

感想・レビュー・書評

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  • 農業問題と似て高齢化とか後継者の問題があるのに加えて、少ない群れを大勢が取ろうとしていることや漁獲量の規制がないことなどの問題がわかった。今の状況が分からないのでプラスで調べなきゃ。

  • 絶望的な日本漁業について、世界三大漁場である三陸での創造的復興を通して、再び地域の基幹産業としての地位を取り戻すべく説いた本。また魚介類への放射性物質汚染についても解説がある。

    これまで農林業はいろいろ勉強していたが、漁業はまったく手つかずのままで、漠然と衰退産業という認識でいた。実際、EEZ=排他的経済水域の設定による漁場の制限や、70-80年代でのマイワシの豊漁期といった複合的要因によって、日本の沿岸漁業の設備投資と海洋資源のバランスがおかしくなったことに構造的原因があると理解できた。

    岩手・宮城で100以上もある漁港を整備して、大きな漁船を買った漁業者にとって、これらの設備投資を回収するためには、EEZによって限られた日本近海における漁獲高を維持するほかなく、結果的に早い者勝ちで稚魚の小魚を底引き網でさらっていくという“焼畑漁業”が主流となっていった。

    今回の震災において、漁港や漁船の設備が壊滅的打撃を受けたことは、これらの構造的原因をゼロベースで再構築しなおす契機になるとも言える。漁業資源の持続的管理を徹底し、高付加価値化を図っていくことで日本の漁業は儲かる産業に生まれ変わるであろう。

    年収100万円の年金漁師ではなく、将来を担う若手漁業者がイニシアティブを取って、旧態然とした浜のしきたりを変革していくという流れは、漁業だけではなくすべての第一次産業に共通するものだ。

    暖流と寒流がぶつかる奇跡の海から、日本の漁労文化がつくられてきた歴史がある。実際に三陸の海の幸を食べる機会が増えて、漁業を一気に身近に感じるようになってきた。

  • [評価]
    ★★★☆☆ 星3つ

    [感想]
    第四章までは著者が色んなところで繰り返し、訴えている内容で特に新たに気がついたことはなかった。
    第五章の三陸で新しい水産モデルを始めることに対する提言はピンチをチャンスに変えるという意味では素晴らしい提案だったと思うが、2023年現在にネットで調べた限りでは三陸の水産業は被災前に戻るだけで新しい水産モデルが導入されることはなかったようで残念だ。
    一応、佐渡のエビかご漁でIQ方式を導入し、成功した事例があるので日本全国にも広まって欲しいところだ。
    第六章の水産物の放射能汚染については2023年の処理水の海洋放出が開始されている現在では多くの人が知りたいと思う情報が含まれ、先見の明があったと思う。
    特に水産物の濃縮係数と低濃度被爆時の発がんリスクの情報は非常に参考になった。
    残念ながらトリチウムの濃縮係数は記載されていなかったがインターネットで調べた限りは濃縮係数は1なので生体濃縮はほとんど発生しないのではないかと感じた。

  • 10年以上前の本ですが、そこから日本の漁獲規制がほとんど改善されていない現状を見ると悲しくなりますね。
    https://seisenudoku.seesaa.net/article/491247707.html

  • 日本の水産業の現状がよくわかる。
    衰退必至の状況が発展を続ける欧米との対比によって浮き彫りにされ、危機感を募らせた。
    乱獲は悪だが、乱獲せざる得ない政策、キャッシュフローに大きな問題があるようだ。そこにメスを入れるのは並大抵のことではないということも伝わってきたが、読めば「何とかしなければ」との思いを強くするはずだ。

  • 日本のマスコミの取材力に対しデータで検証しつつ事実の不都合を提示していく。不都合の提示は公開データによって裏付ける。データから言えることに限り提示する。公害の初期と似ている。

  • 日本では漁業者への漁獲量制限がないため、早く魚の集まっているところに行って獲った者勝ち。
    自分達で獲って日本に輸出した方が得だと気づいた外国では、漁獲量制限を設けて、漁業資源を確保して、付加価値の高い(成長した魚)を輸出している。
    早いもの勝ち獲ったもの勝ちの日本近海の漁業資源はどんどん枯渇し、より価格の低い小さい魚を最新のソナー開発して取り合う悪循環に。
    漁師の生活はどんどん苦しくなっていく。
    3.11後、日本の漁業をどう再生していけばいいかの提言や水産物の放射能汚染についても書かれている。

    目からウロコが落ちた一冊です。
    マグロの漁獲量制限とかのニュース見て、外国でも魚食べる習慣が広まってるせいで、日本人の食べる魚無くなってるというマスコミから受けたイメージが覆ります。
    これじゃあ、外国からバッシング受けても仕方ないよ。

  • 著者は三重大学生物資源学部准教授の勝川俊雄氏。

    著書の前半は今回の東日本大震災における漁業分野の被害状況の報告に関してであり、後半は資源枯渇と魚価安の二重苦に苛まれている今の日本の漁業をどのように改革すべきか、筆者の意見が述べてあります。

    筆者によればノルウェーやニュージーランド、米国など漁業が産業として持続的に成長している国々には、
    (1)漁獲を一時的なものではなく持続させるために「十分な親魚を獲り残す」こと
    (2)利益を上げるために「獲った魚をできるだけ高く売る」こと
    という、二つの共通点があるという。

    独立行政法人水産総合研究センター理事を務められる、小松正之氏と同様、筆者も従来までのオリンピック方式ではなく、ITQ方式の導入を推しています。

    最終章には水産物の放射能の汚染に関してやや踏み込んだ説明も載っています。著者自身、放射線に関して全くの門外漢であるにも関わらず大変分かりやすくまとめており、そちらも非常に参考になりました。

  • 僕はノルウェーのサバを月に10は食べてる。そして、大学ではスケトウダラの太平洋系群の資源量がテーマだったから、日本の資源の枯渇具合は、音響を通して少しは実感してる。そこに、水産学の側面からノルウェーや外国の成功例から今の被災した、日本の漁業を皮切りに衰退した漁業に希望をもっていけるように復興→改革への指針のように読めました。是非、地元の同期の漁師や、同世代の漁業や水産に関わる周りの人に読んで貰い、感想を聞きたい一冊だ。自分も院生期の、食卓に魚が上がり続けて欲しいという想いを思い出させてくれた!

  • 乱獲による資源不足と魚価安で衰退の一途を辿る日本の漁業。既得権にがんじがらめのため改革の目途も立たない。
    なるほど、このままでは国産の魚が食べられなくなる日も近いと納得。
    著者は津波で壊滅的被害を受けた三陸の復興と漁業改革を同時に実現するために、10年後の漁業の担い手となる45歳以下の若手漁業者を中心に支援を行うことを提唱しているが、本書の出版から1年経ち、復興どころか復興予算の不正利用が明るみに出る始末。

    全く、明るい未来がないね、この国には。

  • 豊富なデータや海外の成功事例を引きながら、日本の漁業はどうあるべきかを論じている。放射性物質関連も少しだけ触れているが、本筋はそこではなく、いかにして漁業が自立して持続的に利益を生み出せるかに焦点が当てられており、ただ元に戻す(=復旧)のではなく、より付加価値を高めて立て直す(=復興)ということを考えるならば良い契機になるかも。

  • 人柄と活動は評価するが、やはり漁業側の人間であることを割り引いて読まないとね。正しい情報を出し続けて、判断は消費者に任せてもらいたい。
    漁業は若い人がきちんと考えて改革する必要がある。そうだね。

  •  正直あまり文章は面白くなかったが、言っていることはとても的を得ているな、と感じた本。この本のメッセージはとてもシンプルで「需要と供給のバランスを使って魚の価値を高めましょう」というもの。それによって魚の乱獲も防ぐことができ、漁師の方々の生活も守れるという。また海外の漁業事情や日本の漁業史については、知らないことが多かったのでとても興味深かった。
     ノルウェーのサーモンが有名なのは、なんとなく知っていたが、ノルウェーが過去日本と同じように魚の乱獲を行ったために漁業が瀕死の状況まで追いやられていたことは知らなかった。そのときノルウェーの漁業を救うきっかけになったのが「個別漁業枠」という仕組みである。個別漁業枠の内容は「この地域でこの船が獲れる魚の数は○○だけで、値段も○○以上でなければならない」というものだ。これによって各漁師は獲る魚の数を制限し、魚を売ることによって得る利益も増えるという。また漁師がその仕事をやめたいと思った時、個別漁業枠を売ることで多額のお金を得ることができる(漁師の数が制限されているため漁業枠は高く売れる)ため、漁師を辞め、他の仕事を探す期間を得ることもできるという。漁協組合と行政が「地域漁業の復興」を目的としてきちんと議論して結論を出すことができれば、漁業枠というのは経済学的にも素晴らしい対策ではないか、と感じた。
     また他に強く印象に残った内容が3つある。1つはトレーサビリティについてである。スーパーなどで売られている「○○産」という表示は、その魚が獲れた海がどの県に所属しているかではなく、水揚げを行った港が表示されているという。そのことに強い衝撃を受けた。たとえ福島の海で取れても、茨城まで運べば「茨城産」になるという。これは正確に見える仕組み作りが大事だと感じた。
     次が復興特区についてである。復興特区は県外の民間企業が地域に入っていくのに有利な改革である、というイメージがあった。しかし実は違うようだ、ということが分かった。復興特区の目的は外の民間企業が入りやすいようにするのではなく、地元の人が復興活動をしやすくするための仕組み作りであった。まず以下に本にも載っていた現行の「漁業権の優先順位」を載せる。

    (1)漁協
    (2)地元漁民中心の法人
    (3)地元漁民7人以上の法人
    (4)漁業者・漁業従事者
    (5)新規参入者

     次に復興特区で採用したいと福島知事が述べる「漁業権の優先順位」を載せる。

    (1)漁協・地元漁民中心の法人・地元漁民7人以上の法人
    (2)漁業者・漁業従事者
    (3)新規参入者

     つまり元々の優先順位の1,2,3を同列にするということだ。それによって何が起きるかというと「漁協に入っていない地元漁民の方」が漁業関係で事業を起こしやすくなる。結果的に外の企業が入りやすくなる側面はあるかもしれないが、それが目的ではない。このことを知った時、復興特区をなんとなく、それも間違った風に認識してしまっていたな、と感じた。
     最後に印象に残った内容が、「漁業」の話ではないが、政府の放射能に関する国民への説明の矛盾に関する話である。著者が述べるには、放射能の基準には大きく分けて3の考え方があるらしい。LNT(Linear Non Threshold)モデル、ECRR(European Comittee on Radiation Risk)モデル、そして閾値モデルである。1つ1つのモデルの内容をここで書くことはできないが、放射性物質に対して厳しい姿勢を取っている順に並べると、ECRR, LNT, 閾値 という順番になる。日本が国として採用しているモデルはLNTなのだが、実際に原発事故が起きた際に枝野さんが「○○mSv以下なので大丈夫です」という風に説明したのは完全に閾値モデルになるのだという。このように国のその時その時、説明する対象や現象によってモデルを使い分けて説明をしていたことが、国民と他国からの信用を失った原因だと述べている著者の主張は間違っていないと感じた。
     これらの他にも勉強になったことをはあるが、大きくはこの4つがとても勉強になった。本の最初の方は少しつまらなかったが、だんだんと面白さが増していったような気がする。おすすめです^^

  • 日本漁業の問題点と、取るべき改善策がよく示されていてわかりやすい。
    放射能について著者はプロでないのに(プロでないがゆえに?)非常にわかりやすく説得力がある。

  • 読み助2012年2月16日(木)参照のこと。 http://yomisuke.tea-nifty.com/yomisuke/2012/02/nhk-e890.html

  •  震災・津波以前から,日本の漁業はずっと崩潰への道を走っている。補助金漬けだった漁業を漁獲管理で再生させたノルウェー等の成功例に学ぶことが不可欠。説得力がある。
     三陸の漁港が潰滅的な被害を受けた。これを復興するというのは並大抵でない。奪われたシェアを取り戻すには付加価値が必要。かわいそうだから元に戻すという安易な考えでなく,これを機に日本の漁業をゼロから作り直すくらいでなくては。戦後日本の漁業の歴史,漁業先進国の取組み等を踏まえて,提言。水産物の放射能汚染についての最後の一章を割いている。
     国が主体となった適切な漁獲管理。これを日本は取り入れられていない。乱獲によって資源量が枯渇して,水揚げは未成魚ばかり。鯖なんかが典型で,日本のスーパーに並ぶのはほとんどノルウェー産。
     日本では小さいうちに獲ってしまうため,魚粉用に買いたたかれてしまう。漁獲量を制限すれば,小さいのをとることは経済的に不合理になるからおのずとこの悪循環は回避できる。それがなぜ日本ではできないのか。補助金でやっている現状,変化を嫌う声が大きいこと,事なかれ主義の横溢だ。
     漁業先進国はしたたか。自国での消費はそれほどでないことも多く,日本への輸出に力を入れていたり。寿司ネタの鮪が減っていくニッチを,サーモンで取りに行こうとノルウェーは国策として回転寿司チェーンとタイアップ。「子供は鮪よりサーモンが好き」と一大キャンペーンを張ったとか。
     p.103「水産庁は、『日本の漁業者は意識が高く、乱獲をしないから、国が資源管理をする必要がない』とか『IQ方式はノルウェーのような、魚が少ない海域では機能するが、日本には適していない』といった、意味不明の理由を並べ」てるらしい。三陸漁業復興を錦旗に,改革が成らないものだろうか?
     ちなみに,この本,図書館で探してもらったんだけど,最初みつからずに手間取った。「にほんのさかなはだいじょうぶか」で検索してもノーヒット,奇怪に思ってると,「にほんのうおはだいじょうぶか」で見つかった。「魚」の訓読みは長らく「うお」しか認められてなかったとはいえ,これは…。

  • いままでの水産物流通について、
    これから必要な漁業復興について、
    水産消費大国、日本の消費者だからこそ読んで欲しい本。

    そして、
    漁組・漁協の人たちにも
    「自分の代で終わってもいい漁業」という意識を改革して欲しい。
    漁業者さん達に「儲からないし、衰退する産業」
    という印象を持ちながらも、背水の陣的に、働いて欲しくない。

    どんな立場からも、どんな視点からも学びの多い
    「震災後、漁業を考える」きっかけづくりの教科書だと思います。

    非常に、勉強になりました。

  • 東日本大震災を目の当たりにして、「元に戻す」だけの復興支援で良いのか。
    かつての国民生活を支える基幹産業から、現在の衰退を余儀なくされている日本漁業の歴史と構造を詳細に解説。EEZに締め出された遠洋漁業、漁船の大型化・漁具の高度化から漁獲量を落とすことが出来ずに未成魚を獲る沖合漁業、天然魚を獲り尽くした沿岸漁業、高い期待とうらはらにコスト高によりビジネスモデルとして破綻している養殖業(非摂餌養殖以外)、輸入も他の国に買い負けで前途多難。
    しかし、著者は先進国の改革モデルに学び、儲かる漁業になる方程式があると述べる。 
    「持続的な漁獲のため、十分な親魚を獲り残す」「獲った魚を出来るだけ高く売る」
    乱獲により危機的状況から漁業先進国となったノルウェーの例から、国の政策主導のもと個別漁業枠による資源管理、魚価と透明性を上げるシステム作り、最低価格制度で品質保証、企業化・大型化への養殖業について記述。
     作り直すなら未来につながる漁業をと「被災地支援型の資源管理(キャッチシェア制度)」「経営統合による協業化・企業家」「加工流通業者を巻き込んだマーケティング」を提言。
    最終章では水産物の放射能汚染について解説。

    水産資源管理と資源解析を専門とする研究者が世界の水産現場を見て、日本の漁業を見つめ、三陸復興に向けて熱く述べられている姿勢に感動。
     

  • 漁業の問題と問題解決の示唆に富んだ良著。他の国でできているようなまともなお金の使い方ができない我が国はいったい何なのだろうと思わず言いたくなってしまった。

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