ニッポン異国紀行 在日外国人のカネ・性愛・死 (NHK出版新書)

著者 :
  • NHK出版
3.77
  • (13)
  • (41)
  • (26)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 263
レビュー : 39
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140883686

作品紹介・あらすじ

海外のスラムや路上を数多く取材してきたノンフィクションの俊英が、遺体の冷凍空輸、韓国系教会によるホームレス支援、夜逃げ補償つきの結婚紹介所など、在日外国人たちの知られざる生態を追う。そこに浮かび上がってきたのは、日本人も知らないこの国のもう一つの姿だった!「異文化交流」のスローガンが取りこぼしてきたリアルな人間模様をすくい上げ、新しい視点から日本文化を描く意欲作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 本書は在日外国人の生活の実態を遺体の冷凍空輸、韓国系教会によるホームレス支援、夜逃げ補償つきの結婚紹介所などから追ったものです。異国の地で生きるということの難しさと彼らの逞しさに心打たれます。

    あまりそのときのことは詳しく書くことができませんが、僕は20代の半ばくらいまでに、ここに描かれているような環境に生きる人たちのコミュニティーを覗くこともできれば、彼らの生態を間近に感じる環境に身をおいていたことがあったり、他の方の書いたノンフィクションなどを参考にしながらここにも取り上げられている新大久保界隈によく出没していたので、この本を読みながら彼らの息吹や彼らの生活の『におい』香辛料や、油のにおいが主だったかと記憶しておりますが、そんなものが行間から漂ってくるような感じがして、読み終えたあとに不思議な気持ちになったことを覚えております。

    実を言うとこの本を読み終わる前にyoutubeにアップロードされた筆者のトークショウのイベントで、この本について語られてある動画を拝見させていただいてから残り半分を読み終えるような感じだったので、後半部に入ったときにはより生々しく、ここに描かれてある事象の数々が頭に浮かびました。内容をざっと垣間見て言うと、日本でなくなった外国人の遺体の冷凍空輸、韓国系教会によるホームレス支援、や果ては夜逃げ補償つきの結婚紹介所など、『日本に住む外国人』のカネ・性愛・そして、死などの事象を追って日ごろわれわれが知ることがないであろう在日外国人の実態を描き出したルポルタージュです。

    のっけから頭をガツーンと殴られるような衝撃を受けたのは日本で死んだ外国人がエンバーミング、いわゆる防腐処置を施されて母国へ移送されたり、宗教上での埋葬方法の違いに関する話は以前読んだ『死都ゴモラ』の中にコンテナに満載された中国などのアジア系の人間の冷凍された遺体を船から荷降ろししている場面があって、ここには書いておりませんが、こういうことが『カモーラ』などのような国際犯罪組織などにとっての「シノギ」になるのかなということを連想しながら遺体に関する話を読んでいたことを思い出しました。

    さらにはエンバーミングという技術の成り立ちとその発展が描かれていたり、韓国女性が退去して日本の歓楽街でネットなどを活用して『店』を開き、閑古鳥が鳴くようになると潮が引くように地方へと去り、そのせいで地方で昔から営業していた彼らの影響を受けて軒並み潰れていったりするさまや、『売春島』と呼ばれるところでは、現在はいくつもの事情を抱えてかえるに帰れなくなったタイ人がいたりする、という話。新大久保の界隈でホームレスに対して炊き出しを行いながら布教を行う神父と女性ホームレスのエピソードには『支援する側とされる側』という関係というものが描かれていて、自身の経験から『なるほどなぁ。得てしてそういうことはあるもんだな』ということを感じて、しんみりとしてしまったことを思い出します。

    そして、章の合間合間にはさまれている「ガイジンに聞け」というショートコラムがなんとも面白く、日本にあるインド料理屋のほとんどはパキスタンやネパール、バングラデシュの人たちが作っていたりすることが多い、という話や中古車を海外に輸出する際の現地人とのネットワークについてのお話は非常に印象深いものがございました。

    これを読みながら、現在ではおそらく二度と会うことはないであろうと思われる『彼ら』のことを思い出してしまいました。『異国の地で生きる』ということのしんどさと彼らのたくましさ。その一端を見たこととこの本を読めたということで、自分の生きてきた道が決して無駄ではなかったということを、たった今気づいた次第でございました。

  • ★何かが散漫★著者得意の外国の特殊エリアではなく、日本にある異国を巡る。遺体処理に風俗、宗教と具体的な事例が豊富で読みごたえがあるが、なぜか上っ面に見えてしまう。決してそんなことはないだろうに、どこか一点突破した方が迫力があったのか。宗教を深堀してほしかったかな。

  • 日本で生活する外国人(金持ちじゃないほうね)の知られざる生活。面白い。

  • やっぱりちょっと観点が違うノンフィクション、
    さすが石井光太って感じ。
    死体の搬送とか知らなかった。
    イスラエル人との結婚や病院、占い。
    とても面白かった!

  •  海外の最貧国ルポをずっと書いてきた石井光太が、日本の中の異国――在日外国人たちの暮らしに迫った連作ノンフィクション。

     在日外国人を扱ったノンフィクションはこれまでにも山ほどあるわけだが、さすがは石井光太というべきか、これまであまり正面から描かれてこなかった領域にまで踏み込んで、読み応えある内容になっている。

     たとえば第一章は、「外国人はこう葬られる」。在日外国人が日本で亡くなったとき、どのように葬られ、遺体や遺骨がどのように祖国に送られるのかをつぶさに追って、目からウロコの内容になっている。

     日本における「韓流セックスビジネス」の“隆盛”などを扱った第二章「性愛にみるグローバル化」も、過去の最貧国ルポで性についても真正面から描いてきた石井らしい章で、面白い。

     前半二章に比べ、後半の二章――在日外国人の宗教と、彼らが日本で受ける医療について扱っている――はいささか弱い感じ。それでも、印象的なエピソードが随所にあって、一冊の本としては上出来だ。

  • 2012-3-4

  • 2012年刊。日本の異郷、在日外国人コミュニティ。彼らには違法入国のため健康保険の適用がない等、日本人ならば受けうる対応が受けられない場合が、あるいは宗教的理由、貧困のためにそれを望まないケースも。その在日外国人の日本での死、宗教、労働(性風俗も含む)等の実情を活写。バイタリティに溢れる一方、格差、貧困、労働環境不全等の問題を抱え、宗教や同国コミュニティに絆を求めていく。ただ、元来、K的職場や農村花嫁候補などを担ってきた外国人の地位につき、日本の経済力の相対的・絶対的低下に伴う地殻変動が現出している点も。
    例えば、農家の花嫁のなり手が減少、性風俗の行き先がタイや韓国(なお、著者は将来の逆転現象を示唆)へ、など。なお、「性の王国」の後日談、すなわち、買春ツアー参加者と思しき事業家が現地妻?らしき飲食店経営者を通じ、農村花嫁斡旋に手を染め、相応の対価を得ていた様には…。

  • さすがの切り口です。この著者は好きでたまに読みますがやっぱり面白い。
    近くて遠い、在日外国人についてのルポ。
    それも、死や性など同じ日本人でもタブー視されるようなことに首を突っ込むところがいいですよね。ほんと面白いというより勉強になります。そしてたまに見かける在日外国人への視点も変わります。
    印象に残ったのは「業界よもや話」の中に登場する在日三世のスクラップ業社長の話。自分も野望と共に海をわたってきた在日なのに日本に慣れすぎて新興の在日外国人のたくましさに圧倒されているという話。
    外国人だからなのでは無いのでしょう。日本人はとかく外国人を一括りにして見る傾向があるがそこにも大きな違いがあるのだとつくづく思いました。

    在日の人々と関わりのある方、一読してみてはいかがでしょう?
    とくに都内の鶯谷あたりで韓国系で失敗している方!心当たりがあれば一読を。裏がわかります(笑)

  • 日本に来た外国人が、どのように葬られ、病気に対応し、商売をし、結婚生活を送っているのか。様々な人びとの暮らしぶりに触れて浮き彫りにしていくノンフィクション。ムスリムは土葬絶対だけど、クリスチャンは一部、火葬も許容しているとは知らなかった。土葬は、来世を信じ、最後の審判での復活を信じているからこそ、と。だからイスラム世界には幽霊というのはないのだとか。「商売がネットに変わるというのは、巨大資本が独り勝ちするということなんだ」とつぶやく、個人経営の結婚相談所。バスタと呼ばれるイスラエル人と交流を持つ若い女の子たち。お互いのエイズ感染が発覚して、離婚の危機に陥ったが、夫の故国の医療状況を考え、ふみとどまり、今では戦友という夫婦。タイからやってきて、故郷に仕送りを続けたのに、親戚の子の讒言で戻る故郷を失い、さまようスナックのタイ女性。「私は願う。このような異文化が、より多くの日本人の知るところになればいい、と。日本に根付く異文化を見ることは日本の一側面を直視することだし、在日外国人を支えるものは、きっと日本人自身をも支えるものとなるはずだ。」というあとがきの一節に惹かれる。

  • 安心の石井光太クオリティ。今回も面白く読ませていただいた。
    日本に住む外国人たちが、どうやって生活をして、何に悩み、苦しんでいるかが感じ取れた。意外なのは東京だけではなく、群馬や静岡といった郊外にも広がっていってるという事。地域の住民との軋轢もあると思うので、移民や外国人労働者の、受け入れが進むともっと大きな問題になるだろうので、今時点での課題に取り組んでいかないとひどい事になりそうだわ。逆に今取り組み土壌を作ってしまえば後から来る人たちも日本にあわせやすくなるんではなかろうかね?
    外国人が死んだ時の移送方法には驚かされたし、そこにも宗教が大きく影響するのだな。
    韓国人売春婦は噂ではなくホントだったのね。

全39件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

作家。
1977年東京都生まれ。大学卒業後にアジアの貧しい国々をめぐり、ドキュメンタリー『物乞う仏陀』(文春文庫)でデビュー。その後、海外の貧困から国内の災害や事件まで幅広い執筆活動を続けている。NHK「クローズアップ現代+」などにも出演。
著書に、児童書に『ぼくたちはなぜ、学校に行くのか。』『きみが世界を変えるなら』(共にポプラ社)、『みんなのチャンス』『幸せとまずしさの教室』(共に少年写真新聞社)、『おかえり、またあえたね』(東京書籍)がある。一般書として、「新潮文庫の100冊 2015」に選ばれた『絶対貧困』『遺体』(共に新潮文庫)、『原爆』(集英社)、『43回の殺意』(双葉社)など多数。

「2020年 『地球村の子どもたち 途上国から見たSDGs ③平和』 で使われていた紹介文から引用しています。」

石井光太の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
シーナ・アイエン...
三浦 しをん
ジャレド・ダイア...
有効な右矢印 無効な右矢印

ニッポン異国紀行 在日外国人のカネ・性愛・死 (NHK出版新書)を本棚に登録しているひと

ツイートする
×