レジーム・チェンジ 恐慌を突破する逆転の発想 (NHK出版新書)

著者 :
  • NHK出版
4.07
  • (25)
  • (19)
  • (15)
  • (0)
  • (2)
本棚登録 : 177
レビュー : 18
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140883730

作品紹介・あらすじ

グローバル恐慌、超円高、そして一向に収まらないデフレ不況…異常な状況では、もはや「経済の常識」は通用しない。積極財政から「大きな政府」まで、異端の発想にこそ突破口がある!いたずらに不安を煽る財政破綻説のウソを暴き、構造改革から消費増税までの諸政策を徹底批判。論壇を席巻する革命児が、脱デフレに向けた政策大逆転を提唱、小手先の「改革」を超えた変革のビジョンを力強く説く。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 著者はこの本で何故この20年日本経済が好転しないのかを説明しており、デフレ・レジームからインフレ・レジームへの転換を主張している。
    デフレ局面にも関わらず新自由主義に基づく経済政策や構造改革等のデフレ・レジームの政策を行ってばかりいるからデフレから脱却出来ない、という著者の説明には一定の説得力がある。
    但し多少こじつけっぽい論もある。例えば"若者のクルマ離れはデフレでローンが組めなくなった"の説明は、単に若者の中でクルマのプライオリティが下がり携帯やゲーム等に出費を優先している事、公共交通機関の発達、自転車ブーム等の健康指向、ファミリー向けのミニバンばかりを作って若者がかっこいいと思う様なクルマを自動車会社が作らない為クルマが憧れの対象で無くなった、というのが主要因でデフレとは関係無いと思う。なぜなら若くても家族が出来るとクルマを購入する人はかなり多いのだから。
    また"少子高齢化の大きな原因はデフレ。なぜなら子育ては投資だから。"というのも、女性の高学歴化・社会的地位の向上による自立化・晩婚化、未整備のままの子どもを持つ働く女性への社会的・行政的支援、非正規社員=経済的不安定者の増加、いわゆる草食男性の増加、等が主要因であると思われる。
    若者がローンを組まない・子どもを産まない、と判断出来る程デフレを理解しているのであれば、そもそもこの本の大部分を締めるデフレの説明は意味が無い(笑)。
    著者は経済産業省の官僚(現在は大学へ出向中?とのこと)なのだから何でもデフレのせいにしないで、やれる事がたくさんあると思うのだが。
    デフレの説明は非常に詳細で勉強になるが、論の基になる思想が思い込みやこじつけが多いことと、大部分がデフレの説明ばかりでどうすれば良いのかの提言が少ないので辛い評価とした。

  • ――――――――――――――――――――――――――――――○
    低成長あるいは不況と、デフレ不況とは別物なのです。(…)増税賛成派は、デフレを単なる不景気と誤認しており、デフレが絶対に避けなければならない異常事態であることを理解していません。14
    ――――――――――――――――――――――――――――――○
    輸入原油、輸入食料そして消費税増税というコスト・プッシュのインフレは、物価を上昇させますが、需要を縮小させるデフレ圧力となります。40
    ――――――――――――――――――――――――――――――○
    重工業が発展して起きた「第二次産業革命」以降、事業活動が飛躍的に大規模化したため、巨額の資金ニーズが発生し、金融市場の役割はますます重要になっていきました。よく、資本主義と市場経済が混同されますが、このふたつは必ずしも同じではありません。金融機能がない実物だけの市場経済は、資本主義ではないのです。60
    ――――――――――――――――――――――――――――――○
    投資とは、現在においては「需要」、将来においては「供給」という、異時点の経済行動なのです。91
    ――――――――――――――――――――――――――――――○
    エクルズは、財政の健全化は、国民所得の成長がなければ達成し得ないと認識していました。209
    ――――――――――――――――――――――――――――――○
    エクルズは、課税を財源確保の手段としてではなく、資金の流れを調整するための手段として考えていたのです。210
    ――――――――――――――――――――――――――――――○
    個人や企業であれば、破綻することはあるかもしれないが、合衆国のような人的・物質的資源を持っている国が、自国民から借りることで貧しくなることはあり得ない。われわれが貧しくなるとしたら、実質的な富の生産において、遊休の人員、資源、生産設備そして資源の有効活用に失敗することによってである。211
    ――――――――――――――――――――――――――――――○

  • インフレとデフレの政策の双対性を示し、それらの対応に関しては枝葉の政策だけではなく、体制を変更する事を必要だというのが筆者の主張。
    そして、デフレなのに、デフレレジーム(インフレ対策)の政策をうってきたことが失敗だったとも主張している。これらは私も大賛成。

    ただし疑問が2点。
    1点目は、インフレレジームの転換の際に、政府の規制強化を入れている事。確かに、デフレ下で、既存の規制を緩和していく体制は望ましくないのはわかる。規制緩和とは、供給能力の向上に他ならないから。
    しかし、既存の規制を強化することは、それによって満たされていた需要を制限する事にもつながる。供給能力の削減によって、デフレを克服しようとしたのはアメリカの大恐慌期のアンドリューメロン氏だったが、供給の削減は、需要の削減にもつながってしまい、GDPが4割減るという結果になってしまった。

    2点目は、インフレターゲティングに対する誤解。
    インフレターゲティングの必要性は認めながらも、その効果に疑問を抱き、デフレレジーム(インフレ対策)の政策だと捉えている点だ。
    インフレターゲティングは、政府の定めた目標に対し、中央銀行にその実現のためのあらゆる方法を肯定する代わりに、実現できなかった時の罰則を与えるものだ。この説明がなかった点は問題だったと思う。なぜなら、この説明があれば、デフレレジームの政策ではない事がわかるからだ。
    政府による規制をインフレレジームの政策としてとらえている以上、政府が中央銀行に対する目標実現の義務を課す事は、間違いなくインフレレジームの政策のはずだ。したがって、中野氏のいうようなインフレレジームの転換を主張するなら、日銀法改正やインフレターゲティングは肯定的にとらえなければならないはずだ。

    以上の理由で星3で。

  • デフレは異常な経済常態であり、現在の経済対策は「デフレ・レジーム」を元に考えられたものである。「インフレ・レジーム」にレジームチェンジすることが必要である。主張自体は正しいのかもしれないが、全体的に論拠が弱すぎる印象を受ける。論理が曖昧か、ただ他の著者の紹介に留まっていて、結論ありきな文章だと感じた。デフレレジームは民主主義の危機につながるという主張は面白い。

  • 長きに渡るデフレという忌むべき状況に悩まされている日本。バブル崩壊後、日本は、どのような過ちを犯してきたのか。「グローバル化することは、良いことだ」と疑わずに、信じ続ける大衆。この本が、多くの方に読まれることを切に願う。

  • レジーム・チェンジが必要なんだ。安倍政権は、着実にレジーム・チェンジしているように思います。

  • 根拠はそんなにしっかりしていなかった

  • 資本主義制度で最悪の状態デフレの症状が説明され、その状態から脱却させる処方箋が書かれている。

    インフレ経済から脱却する手法としてのデフレ・スキームをサッチャーなどが採用してきた過去の経験はあった。

    インフレ退治するスキームであるデフレ・スキームをあろうことにデフレに悩む日本で数十年に渡って採用してきたと著者は指摘する。

    ミンスキー、マリナー・S・エクルズ等の主張を参考に恐慌を突破する逆転の発想としてのレジーム・チェンジを先人の知恵を紹介しながら書かれたすぐれた著作である。

    トックビルの言説を紹介し、自らこの本を出版したとしている。

    とにかく、逆転の発想を紹介すべく、所謂、主流派経済学者が採用しない先人の知恵・知識をよく学ばれている中野剛志氏である。

    最後に、氏の提唱するTPP亡国論も、デフレ・スキームの方策であることも理解できました(笑)。

  • 現在の産業や経済が目指しているイノベーションや効率化が成長どころかデフレを生み出していることを指摘した本。

    競争社会というのがそもそもの問題にある気がする。

  • デフレ克服のために積極的な金融緩和策を支持する一方で、その資金を国内で回すべく、政府による積極的な公共投資とそれを行うための大きな政府が必要との主張は、現在支配的な金融緩和によるデフレ克服論一辺倒の論調に一石を投じるものと思う。
    国の借入が増大しても国家は破産しないという部分は少し勉強していれば当たり前の話だが、一方で公共投資を行うために、このままどの程度まで国債発行してもOKかという部分について、当然ケースバイケースなので明確化はできないものの、その部分の記述が薄いので筆者に聞いてみたい。

全18件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

中野 剛志(ナカノ タケシ)
評論家
評論家。1971年、神奈川県生まれ。元・京都大学大学院工学研究科准教授。専門は政治経済思想。1996年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2000年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。2001年
に同大学院より優等修士号、2005年に博士号を取得。2003年、論文“Theorising Economic Nationalism”(Nations and Nationalism) でNations and Nationalism Prizeを受賞。著書に山本七平賞奨励賞を受賞した『日本思想史新論』(ちくま新書)、『TPP亡国論』『世界を戦争に導くグローバリズム』(ともに集英社新書)、『国力論』(以文社)、『真説・企業論』(講談社現代新書)、『日本の没落』(幻冬舎新書)、『富国と強兵─地政経済学序説』(東洋経済新報社)、『目からウロコが落ちる奇跡の経済教室【基礎知識編】』『全国民が読んだら歴史が変わる奇跡の経済教室【戦略編】』(ともにベストセラーズ)などがある。

「2019年 『MMT現代貨幣理論入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

レジーム・チェンジ 恐慌を突破する逆転の発想 (NHK出版新書)のその他の作品

中野剛志の作品

レジーム・チェンジ 恐慌を突破する逆転の発想 (NHK出版新書)を本棚に登録しているひと

ツイートする