資本主義という謎 「成長なき時代」をどう生きるか (NHK出版新書)

  • NHK出版
3.92
  • (18)
  • (32)
  • (18)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 320
レビュー : 36
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140884003

作品紹介・あらすじ

なぜ西洋で誕生したのか?なぜ支配的なシステムになりえたのか?-経済事象のみならず、私たちの生き方をも規定している資本主義。その本質について、一六世紀からの歴史をふまえ、宗教・国家・個人との関係にいたるまで徹底討論。はたして「成長」がなくとも幸福で活力のある社会を構築することはできるのか。世界経済の潮流を見据え、未来を展望するスリリングな討論。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • とても(めちゃくちゃ)いい本でした。ラストのほうでは、桐島、部活やめるってよの高校生たちと社会が対応させられていたりして、対談の結論にもぐっときて、泣いてしまいそうでした。「アメリカ、覇権やめるってよ」には噴き出してしまいました(笑)。
    石原千秋さんの『打倒!センター試験国語』で資本主義についてはこちらの本を、とあったので手に取りました。
    人類学、人類史的な視点で資本主義(西洋史における近代)が語られていて、かつ、対談はつねに人間への真摯な思いで満ちていて、非常に救われました。私は資本主義のもたらしたものの大半は嫌いで、どうもこのやり方には救いはないのではないかと、昔から懐疑的で、近年の社会状況ではその思いはどんどん強くなっていました。しかし、その資本主義に深く関わる人たち(大澤さんは社会学者ですが)も、資本主義は終わるとはっきり言われていて、そして逃げずにその先をどうするのかということを専門的に考えてくださっていて、すごく勇気が持てました。経済学者の方、エコノミストの方、ぜひこうしたことを考えて、行動に移すのは難しくとも、ともかく考えていってくださればと思いました。もちろん私達市民の一人ひとりも考え、逃げずにぶつかっていかなければならない問題です。猶予はおそらくあと十年ほどということですので、自分も、この十年で、みんながこの後の世界を生きられるような社会作りの下準備を、少なくとも自分のできる範囲ではきちんと終わらせなければならないと感じました。
    非正規雇用者をこれだけかかえている日本ですが、非正規雇用の労働者がはたしてどれだけの貧困に実際にさらされているのかということは、それぞれの方にそれぞれの事情と状況があると思うので、全体像としてどうなるかということは私はイメージできません。しかし、正規雇用の若い労働者が、体や命を犠牲にして働いているのを非常に多く目にし、非正規雇用でも正規雇用でも、つらい人はつらい目にあっているのだろうという、全体として若い人の労働に対しては暗い気持ちがあります。
    これからの時代(資本主義が終わってから)のシステムは、「自分の命や心を大切にしながら、可能な範囲で一生懸命働く」という生き方を、どうやったら多くの人が実現できるかということに深く関わってくると思います。今の時代は、人々、とくに若い人々が、あまりにも健康を犠牲にして働かされすぎています。
    私自身(27才)は現在、非正規雇用で働いていて、疾病者で、嗜好品などはほとんど購入できない状態ですが、しかし、全く絶望感や不安感とは無縁で、幸せに生きさせて頂いています。一番の理由は、本書でも言及されていた「寂しさ」を感じずにすんでいるからだと思います。そして、周りの非正規雇用者たちを見回しても、絶望を感じて貧困のなかで生きている人がいるか、といえば、少なくとも私の周りではそうではありません。大人たちの、非正規雇用=不幸のような図式は、私達の世代には肌感覚としてはそこまで馴染んでいないかな、という印象も持っています。正社員として一生を過ごしたことがないために、非正規雇用で一生を過ごすとそれに比べてどうなるのか、ということが、まだあまりよくわかっていないからかもしれません(出産や育児など、多額の費用が必要となる人生のイベントを経験するのは、今の収入ではものすごく難しいのかもしれません)。しかしともかく、雇用は保証されていなくとも、職場での信頼関係があり、家族や友人との絆を感じられている限り、人はそこまで「不幸」になることは、できないのではないかと感じます。
    しかし、私自身が今のように幸せな状態で社会に参加することができるようになるまでには、資本主義社会の生んだ様々な構造によって奪われた沢山のものと、それを取り返すためのあまりにも長い戦いの時間がありました。親世代と比べて、自分たちの世代のほうが多くのものを奪われている、という実感はあります。それはほとんどが、人間性や人との繋がりに関わる問題です。資本主義が終わって次のシステムが来たとき、私達若い世代が思うことはおそらく一つだと思います。人と人とがばらばらにならずに、きちんと他人を信頼し、信頼される関係を誰もがもてる社会、その実現が目指されると思います。

  • 「(株)貧困大国アメリカ」を読むと、資本主義は強欲な金融資本主義へと進み、グローバル化し、政府への影響も強めているという。そこで手に取ったのが、タイトルもピッタリな「資本主義という謎」です。金利が2%を割る状態とは、投資すべき“理想”がない状態だそうな。現在、利子率革命が起こっていて、資本主義は大きな転換点にあると指摘します。また、資本主義が内包する「蒐集」という動機は、辺境がなくなった時に果てるといいます。推奨される成長なき安寧秩序の世界では、限りある食料・エネルギーは上手く配分できるのでしょうか?まだまだ、先は見えませんね。

  • 地球規模で拡大する資本主義は一見普遍的な様相を持ちつつも、実は特殊な地域の宗教的・地理的バックボーンの上に成立した概念である。そうした資本主義が持つ不可思議さを歴史的に解きほぐす本。勉強になりました。

  • 社会学者と経済学者が、「資本主義」ってそもそも何だ?というような議論を、世界史の上で位置付けながら議論する対談です。

    両者は恐ろしく博識で、対談でなされた議論とは信じがたい、とても知的刺激に溢れた本です。大澤氏は『虚構の時代の果て』(ちくま学芸文庫:2009増補版)において資本主義の宗教的な側面を深く検討していましたが、それが本書のテーマのひとつとなっており、改めて納得させられました。

    "「アフリカのグローバリゼーション」と言った瞬間、その先はもう見えてきたのではないか(P.234)"という指摘は、誰もが薄々感じていることではないでしょうか。もちろんこのような「資本主義批判」は珍しいものではありませんが。

    いわゆる経済・ビジネス本とは趣が異なり、未来については一貫して悲観的なトーンです。成長戦略や金融緩和などには否定的であり、「処方箋」はありません。もちろん資本主義の限界を騒ぎ立て、理想を熱く語るような古臭さも全くありません。

    ただ、水野氏の指摘通り、10年国債利回りは1%以下ですが、"資本家が資本投資をして・・得られる利益が年率換算で2%以下になる(P.39)"という事態にはまだ至っていないかと思います。

    総論的にはその通り、ただ企業ができる限りの成長を目指すことが、そこまで虚しいこととも思えない、という複雑な気持ちがしました。

    (2015/10/03)

  • ざざざざーっとみただけだが、やはり対談本でお勉強するのは難しいという印象。ファン向けではないだろうか。

  • 資本主義の定義、歴史、現代での位置付け
    ・長い16世紀
    利子、法人の概念の発展と宗教の役割(キリスト教の抵抗)
    法人の概念により複数世代に渡る永続的な投資が可能に→イギリスの海洋権益拡大
    スペインが陸を支配しようとしたのに対してイギリスは海(貿易)を支配→資本主義的支配
    中国の明も航海を行ったが資本主義がなかったためアフリカ等の支配には至らなかった
    オランダは固定資本で海洋拡大したがイギリスは事業ごとの資本調達→永続性

    ・現代
    現代における資本主義の限界と永続可能性
    ゼロ成長社会が示唆すること、その捉え方
    「桐島部活やめるってよ」が現代社会において意味すること

  • p.21 水野:古代・中世・近代を通じての普遍的原理は蒐集(コレクション)であり、そのうち最も効率的なのが資本主義だと理解している。
    p.38 水野:16世紀イタリアでのジェノヴァで金利2%を下回る時代が11年続いた。利子率革命と言っている。超低金利のもとで投資機会がもはやない。山の上までワイン畑とか、建築物とか。
    p.65 水野:不足する食糧を獲得するための土地を「新大陸」に求めたというのが一番納得のいく説明。
    p.84 大澤:煉獄とは、地獄行きが猶予される待合室。金貸しが死ぬと、煉獄に送られ、その間に遺族が教会に寄付などの善行を積むと、罪が浄化される。安心して利子を取ることができるようになった。

    途中まではおもしろいが、やはり、どう生きるかは中途半端な対談に終わっている。

  • 世界史観から資本主義を読み解く刺激的な一冊。

    『桐島、部活やめるってよ』(映画版)を現在社会の暗喩と解釈し、桐島=アメリカと説いたのには膝を打った曰く『アメリカ、覇権やめるってよ』。桐島が学校に来なくなってうろたえるバレー部が、苛立つ梨紗がいまの日本の姿だ。
    『桐島、』では高校のクラスの中で"勝ち組"も"負け組み"も空しさをもった存在として描かれる。資本主義が行き詰まり「成長なき時代」に入ったいま「強欲」に投資を続けて利益を出し回収するシステムは破綻した。別のシステムに乗り換えるためには現行システムから撤退するのが先決だ。


    本書ではいまを資本主義が成立した「長い16世紀」に準え「長い21世紀」としている。
    1492年に新大陸が発見され新しい空間を得る事によって取引は拡大し、経済も大きくなった。これはニクソン・ショックによって固定相場から変動相場に変り、ネットという「新大陸」を発見し金融・電子取引という広大な市場が現れたことと韻を踏んでいる。

    ★古代・中世・近代に通じる普遍的原理「蒐集(コレクション)」という概念がある。ジョン・エルスナーは『蒐集』に於いて「キリスト教は魂を、資本主義はモノをコレクションする」と説いている。更に「西欧人は社会秩序そのものが本質的に蒐集的(コレクティヴ)だ」という考えを持っているとしている。そして蒐集と言う行動をもっとも効率的に行えるのが資本主義だというわけだ。
    蒐集してあつめたコレクションを永続的に受け継がせるために「会社=法人」というものが生まれた。契約を基本とするユダヤ教、キリスト教社会でこの考えは伝播したが、神以外の建造物は刹那的であるという考えのイスラム教社会には馴染まなかった。

    ★21世紀に入ってからの中国の急速な台頭は資本主義の最後の足掻きである。15世紀まで圧倒的先進国であった中国がこの200年間後塵を拝してしまっているのは何故か。いま巻き返しているように見えるが、それは西洋式の方式を(仕方が無く)取り入れただけであって、嘗ての中国が持っていたような新しいモノは出ていない。

  • 【由来】
    ・「プーチン最後の聖戦」からの「グリーンスパン」からのイギリス関連本からの「グローバリズム掲載」からの水野和夫検索@amazon。

    【期待したもの】


    【要約】


    【ノート】

  • チャーチル『資本主義は最悪のシステムだが、これ以上のものはない』
    限界収益低減の法則、 数を重ねると満足度が下がる。→満足度のシェアをすれば、解決するのでは?パイをどんどん大きくすればよいのでは?

    サモア  最後通帳ゲームは3割を切ると拒否されやすい。 利子率革命 ウェストファリア条約 三十年戦争を終結させた世界最初の大規模講和条約
    →17世紀のドイツを中心として起こった宗教戦争です。
    荒廃するドイツにおいて、争いの渦中にいなかったプロイセンが台頭してきた。
    →家康?

    1618年から1648年まで、三十年間にわたって繰り広げられたため、こう呼ばれています。
     中世ヨーロッパ 利子悪いのは神の時間に利子をつけるから。高利貸し ウスラ 金利はラテン語で「ウスラ(USURA)」と言う。もともとはあらゆる金利を含む概念だったが、中世の教父たちや教会法が「与える以上に受け取ること」と定義したことで、「正当でない」金利という意味を持った

全36件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1953年愛知県生まれ。埼玉大学大学院経済科学研究科博士課程修了(博士、経済学)。三菱UFJ証券チーフエコノミストを経て、10年より内閣府大臣官房審議官、11年より内閣官房内閣審議官。13年より日本大学教授、16年より法政大学教授。著書に、『人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか』(日本経済新聞出版社)、『資本主義の終焉と歴史の危機』『閉じていく帝国と逆説の21世紀経済』(以上、集英社新書)ほか多数。

「2017年 『コレクションと資本主義 「美術と蒐集」を知れば経済の核心がわかる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

資本主義という謎 「成長なき時代」をどう生きるか (NHK出版新書)のその他の作品

水野和夫の作品

資本主義という謎 「成長なき時代」をどう生きるか (NHK出版新書)を本棚に登録しているひと

ツイートする