おとなの教養 私たちはどこから来て、どこへ行くのか? (NHK出版新書)

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  • / ISBN・EAN: 9784140884317

感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    読み物としては非常に面白かった。
    リベラルアーツとカッコ良く言っているだけで、正直かじっただけでは雑学と大きく変わらないなーとも思ったな。
    覚えたからといって、果たして本当に自由になれるのか?笑

    まぁ、勉強にはなった。
    池上彰の知識の幅広さには、毎回舌を巻きますねー


    【内容まとめ】
    1.リベラルは「自由」、アーツは「技術・学問・芸術」/リベラルアーツは「人を自由にする学問」
    2.ユダヤ教は「ユダヤ人のみが救われる」
     キリスト教は「信じる者は皆救われる」
     イスラム教は「コーランを声を出して読む」
     仏教は「良い状態に生まれ変わる事(輪廻)」が目標ではなく、「二度とこの世に生を受ける事がない事(解脱)」が理想
    3.宇宙は136億年前、地球が生まれたのは46億年前!
    4.スペイン風邪の猛威によって、あの第一次世界大戦が終戦した説。また、スペイン風邪=鳥インフルエンザという説もある。
    5.第一次世界大戦から第二次世界対戦が終わるまで、日本製品は「安かろう悪かろう」の代名詞だった。


    【引用】
    改めて勉強し直したいと思うようになった心の根底には、
    「自分がどこから来てどこへ行くのか?自分は今どこにいるのか?」
    という問いかけがあるのではないでしょうか?


    p13
    現代の教養=リベラルアーツ
    ・そもそもリベラルアーツとは?
    1.文法
    2.修辞学
    3.論理学
    4.算術
    5.幾何学
    6.天文学
    7.音楽

    リベラルは「自由」、アーツは「技術・学問・芸術」
    リベラルアーツは「人を自由にする学問」


    p30
    日本ではよく大学に対してすぐ役に立つ学問を教えて欲しいと言われます。
    ところがアメリカは、すぐに役に立つものを教えるのは専門学校(ビジネススクール)で、いわゆるエリート大学は「すぐに役に立たなくてもいいこと」を教えます。

    すぐ役に立つことは、世の中に出てすぐ役に立たなくなる。
    すぐには役に立たないことが、実は長い目で見ると役に立つ。


    現代のリベラルアーツは?
    1.宗教
    →「死んでしまったら人はどうなる?」
    →「この世界はどうやって生まれてきた?」
    →宗教によって古代の人々は過去や未来を考え、世界の成り立ちを理解しようとしてきた。

    2.宇宙



    p45
    ・ユダヤ教とはどのような宗教か?
    3000年以上前、ユダヤ人は今のイスラエルがあるパレスチナに移り住み、その一部はエジプトにも一部移住した。
    しかし、エジプトで大変な迫害と弾圧を受け、モーゼと共にエジプトを脱出した。
    これが「旧約聖書」でも書かれている「脱エジプト」である。

    ユダヤ教では、罪に対する罰や生活上の規範など、非常に細かい規定が決められている。
    まさに「律法」で、ユダヤ人はこの律法を厳格に守る事を重視した。

    しかし、このユダヤ教徒の中から、律法にとらわれることなく、独自の教えを広める人物が現れます。
    それがイエスです。


    ・ユダヤ教とキリスト教の違い
    ユダヤ教では、ユダヤ人こそが神に選ばれた特別な民族であると考えます。
    しかしイエスは、神を信じる者は誰でも救われると説きました。

    キリストが説く神も、ユダヤ教の神も、同じヤハウェである。
    それを英語で言えば「ゴッド」になるだけ。

    ユダヤ教はあくまでユダヤ人のみが救われるという民族宗教、キリスト教は「信じる者は皆救われる」という世界宗教。
    だから場所や民族を問わず世界中に広まった


    ・ムハンマドが洞窟で聞いた神の声
    今から1400年前からイスラム教は始まった。
    ムハンマドは洞窟で天使・ガブリエルから色々な教えを賜ったが、読み書きができないために全て暗記して人々に伝承した。
    人々も読み書きができない人ばかりで、次第に戦死をしてイスラム教を受け継ぐ事ができなくなっていった。

    そこで生まれたのが「コーラン」。
    コーランとは、「声に出して読むべきもの」という意味。


    ・仏教
    釈迦家の王子に息子が産まれる。
    神のお告げで、この子が世界を変えると言われたため、そうさせないように親は贅沢三昧をさせた。
    しかしある日、世の荒み具合を目の当たりにした釈迦は現実を知り、「いい世の中にするために自分は何をすべきか」を考えるようになる。
    そして28歳の時に妻子や地位を捨てて修行に繰り出し、6年ほど厳しい修行をするが決着がつかず、菩薩樹に座って瞑想したところ、ようやく真実にたどり着き悟りを開いた。

    古代インドには「バラモン教」という宗教があり、そこから派生して仏教とヒンズー教が生まれた。

    仏教の「輪廻」は決して明るい考え方ではない。
    人生はそもそも苦しいものであり、何度生まれ変わってもその苦しさから逃れる事はできない。

    そこから逃れる術は「悟りを開く」事であり、それを「解脱」という。
    また、一切の苦しみから解放される境地に入ることを、「涅槃に入る」という。
    →解脱して、涅槃に入る事が仏教の理想!

    仏教は、「良い状態に生まれ変わる事」が目標ではなく、「二度とこの世に生を受ける事がない事」が理想!

    宗教ではなく、ブッタが説いた哲学。


    p71
    ・カトリックとプロテスタント
    カトリックは「普遍的な」という意味。
    お金が必要だったため、免罪符を売り出して資金集めをした。
    このカトリックに対して宗教の堕落だと抗議する人達が現れ、プロテスタント「抗議する人」が生まれた。


    p80~ 第2章 宇宙
    ・天動説から地上説へ
    16世紀後半、コペルニクスは様々な天体の動きを見ているうちに、地球の周りを太陽が回っているのではなく、地球が太陽の周りを回っていることに気がつく。
    →コペルニクス的転回

    17世紀になると、アイザック・ニュートンが登場。
    リンゴは落ちるのに、月や太陽はなぜ地球に落ちてこないのか、また逆に地球がなぜ太陽に落ちないのかが気になる。
    疑問を探求した結果、すべての物体にはそれぞれ引っ張り合う力がある事に気付き、「万有引力の法則」を導き出した。


    p94
    138億年前に、インフレーションとビックバンによって宇宙が生まれた直後は、重さのない粒子が飛び交っていた。
    そこにヒッグス粒子が誕生すると、他の粒子が飛び交うのを妨害して、水飴のようにまとわりつく。
    そうなることで色んな粒子が遠くへ飛ばなくなり重さができて、その質量同士が結びつき、原子核・原子が誕生した。

    地球が生まれたのは46億年前!


    p126
    ・乳がん発生率は看護師が高い?
    夜間仕事をしている人間はがん発生率が高いことがわかっている。
    原因は、抗がん作用があるといわれているメラトニン分泌度の薄さにも起因している。
    日中、太陽を浴びている時は分泌度が低く、夜寝る時に分泌度が上がる。


    p132
    ・インフルエンザの語源
    人類とインフルエンザの間には、非常に長い闘いの歴史がある。
    元々は16世紀のイタリアで発症しだした。
    当時は占星術が力を持っていて、原因を星の動きと結びつけていた。
    影響をイタリア語で「インフルエンツァ」という。


    ・スペイン風邪の猛威によって第一次世界大戦が終戦した?
    また、スペイン風邪=鳥インフルエンザという説もある!


    p151~
    第5章 経済学について


    p153
    アダム・スミス「国富論」
    富とはそもそも何なのか?
    →「富とは国民の労働で生産される必需品と便益品である。」
    働く事によって生活に必要なものや便利なものをつくりだしている、これこそが富!

    みんな利己心から仕事をして、それが結果的に分業という形になって経済を回している。


    p156
    「見えざる手」とは?
    皆が利己心で勝手に分業しているのに、なぜか経済はうまく回っている。
    =市場での売り買いがうまくいっている。

    「見えざる手」というのは、市場経済が持つ自動調整機能のことを指している。


    p157
    ・マルクスの資本論
    「資本主義社会において、労働者より資本家の方が絶大な力を持っている」
    という原則に対し、
    「資本家と労働者は対等な立場である」
    と、パラドックスを唱える。

    資本家は生産にあたって、労働者から労働力を購入しないといけない。
    もちろん労働者はその販売の拒否権も持っている。
    そういう意味で対等で、これが封建社会と資本主義社会の大きな違い。

    利益増のために労働環境を悪くする
    労働者がそれに対して団結し、社会革命につながる。
    資本主義→社会主義に。これがマルクスの資本論!

    しかし、資本主義の欠点を唱えただけで、社会主義の利点までは「資本論」では詳しく書かれていない。
    レーニンやスターリン擁するソ連や、毛沢東を擁する中国、そしてそれらの国に派生した北朝鮮などの国々は、社会主義にして大失敗をしてしまった。


    p162
    ・ケインズ革命
    資本主義はいずれ終局を迎える事を前提として、ただ経済政策を適切に行えば資本主義を補強することができる、と説いた論。

    またケインズは、財政が赤字を迎えたとしても、不況時は国債を発行して国が公共事業を作る、という解決策も講じた。


    p169
    ・フリードマン「新自由主義」
    政府による一切の規制を排除させる考え。
    最低賃金などを撤廃し、企業の動きを活性化することで利益を高める。

    経済活動の自由化で好況になったが、格差が広がってしまった。



    人間は、必ずしも経済学のように冷静に論理のみで動かない!
    感情や心理に基づいて行動するので、論理だけで考えるとエライ目にあう!


    p218
    ・品質「メイドイン・ジャパン」
    第一次世界大戦から第二次世界対戦が終わるまで、日本製品は「安かろう悪かろう」の代名詞だった。
    第一次世界大戦では戦場がヨーロッパだったため、当時は世界から日本に様々な注文があった。
    日本は大量の製品を一刻も早く納品するため、商品の質は二の次だった。
    ワイシャツボタンの糊付けや、海産物に釘や石などの重いものを入れて目方を増やすような事をした人もいる。
    この悪いイメージを払拭しようと、第二次世界対戦後に日本人が努力した結果、今の「メイドイン・ジャパン」になってきた。

    昔から日本製品の品質が良かったわけではない!

  • 今更ながら初めて知った事が多すぎて、無知だが「私は賢いです。しっかりニュースも見ています。」風なイメージで売り出していた自分が恥ずかしくなりました…
    今後読んでいくジャンルはリベラルアーツも意識していきたい。

  • 現代の教養とは?
    社会にて、生きる力を身につけること。

    すぐに役に立つことは、世の中に出て、すぐに役に立たなくなる。
    すぐには役に立たないことが、実は長い目で見ると、役に立つ。

    つまりは、
    「自分がどういう存在なのか」を見つめていくこと、「自分自身を知ること」ことこそが現代の教養だろうと、池上さんは著書で唄っています。


    「自分自身を知ること」が、社会にて生きる力を身につけることにつながるかどうかは、パッと言葉を聞いただけではよく分からない。
    池上さんが、現代の教養を7つとするならば、この7つであると、自信満々で、列挙し解説している理由もよく分からない。

    けれども、著書を読んで、確かに気付きはあり、それが直接結論に結ばなくても、得た知識のどれかはいつか役に立つ、そういうものが教養であるのだろうと思った。
    また、教養とはなんぞやについて、実感できるのも、もっといろんな知識や経験を得てからなのであろう。
    教養を身につける上での入門書となる1冊だ。


    1.宗教
    ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の神は同じであるという事実は知らなかった。そして、同じ宗教でも、それぞれの気候風土や文化によって中身が大きく変わってくるという視点も、自分にとっては改めてハッとさせられた。同じ神を信じているならば、互いに争わないように出来ないものかなと思うけれども、土地や資源をめぐって争いが起きているのである。神様はこの状況を嘆いてはいないだろうか。

    2.宇宙
    私たちは、ビッグバンによって誕生した。

    3.人類の旅路
    私たちは、文化の程度が高いから、存在する。

    4.人間と病気
    第一次世界大戦終結のきっかけ、スペイン風邪の流行である。ヨーロッパ人のアメリカ及びアフリカへの進出は、病原菌を広め、先住民を死に至らしめた。
    私たちを知ることは、病気を知ること。病気を知ることは、私たちを知ることである。

    5.経済学
    現代は、合理的経済人→感情や心理が経済活動に大きな影響を与えている、すなわち行動経済学が注目を集めている。
    経済学についても、私たちはどこにいて、どこに行こうとしているのか、という探究心に基づいている。

    6.歴史
    「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」とは聞いたことがあるものの、文字を持つ勝者が歴史を作ってきたという視点にハッとさせられた。ヨーロッパ中心の世界史、近畿→関東中心の日本史。主流でない地域の歴史や、語り手が違う史実を読むことも理解を深める上で、必要なことだと思ったし、もともとある程度歴史に理解があれば、単純に面白いと思う。

    7.日本と日本人
    他者が、つまりは他国があってこそ、私たちは日本ということを自覚できるし、日本人としての誇りもまた生まれてくるのであろう。
    「自分は日本人である」というのは、絶対的なものだと感じていたが、実は極めて概念的なのだなぁということに気付かされた。
    だからこそ、韓国や中国において、事実とは違ったとしても、日本人に対する嫌悪感を恣意的に国民へ身に付けさせることが出来たのだろう。
    私たちは、融和のために、どこへ向かって行ったら良いのだろうか。



    最後に、池上さんは言っています。

    過去を見直すことによって、学問は発展し成長している。知識を単に受け取るだけではなく、それを現代に生かし、より良い社会をつくり、より良い人生を築いていく。それがリベラルアーツというものの価値なのだ。


    是非、子供に読ませて、
    将来の指針の一つとして貰いたい。

  • 東工大特任教授としての顔を持つ著者の、リベラルアーツ(教養)に対する情熱が感じられる。宗教、宇宙、進化論、病気、経済学、歴史、日本と日本人について語られた講演会の記録。テーマが多岐に亘る分、広く浅い印象も拭えないが、議論の深まりや展開を許されるスペースが足らなかっただけで、いずれもバランスの良い大事な視点をコンパクトに提供してくれる。特に歴史については勝者が歴史を作る点について近代の近隣諸国の事例による説明はそういうことだったのかとコロンブスの卵的な印象を持った。良識あるジャーナリズム代表としてとにかくバランスよく情報・知識・問題意識を提示してくれる。

  • 池上流の分かりやすい解説で、教養の大切さを実感できる。

  • やっぱり池上さんの本はわかりやすくて好き。これからももっともっと読みたくなるほどの知識とそれを伝えるための能力を持った方だと思いました。

  • 非常にわかりやすくて、面白く、興味深く読めた。
    こういう先生なら、授業も退屈しないだろうな。
    歴史、経済、宗教、自然科学、宇宙、全てはつながってるんだなぁ。

  • 宗教、自然科学、歴史、病気、そして日本人、全てが、地続ききになっている事に気がつかされる。我々はどこからきて、どこへ行くのか?その人類の抱える問題に、立ち向かうヒントがここにある。

  • 教養入門に最適。何を学ぶかわからなくなったらまた読みたい一冊。

  • 自分を成長させたい気持ちはあるのだけど、どんなふうに?どこに向かって?頑張ればいいのか、という長年抱いていた疑問に対して、道筋を示してくれる本。
    とにかく、私はこの大人の教養の要素を鵜呑みにして、大人として知識を深めていこうと思った。

著者プロフィール

池上彰(いけがみ・あきら):1950年長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、73年にNHK入局。記者やキャスターを歴任する。2005年にNHKを退職して以降、フリージャーナリストとしてテレビ、新聞、雑誌、書籍、YouTubeなど幅広いメディアで活躍中。名城大学教授、東京工業大学特命教授を務め、現在9つの大学で教鞭を執る。著書に『池上彰の憲法入門』『「見えざる手」が経済を動かす』『お金で世界が見えてくる』『池上彰と現代の名著を読む』(以上、筑摩書房)、『世界を変えた10冊の本』『池上彰の「世界そこからですか!?」』(以上、文藝春秋)ほか、多数。

「2023年 『世界を動かした名演説』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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