宗教を物語でほどく アンデルセンから遠藤周作へ (NHK出版新書)

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  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140884935

感想・レビュー・書評

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  • タイトル通りなんだけど、「宗教を物語でほどく」。
    宗教は現代生活から離れてしまったように思えるけど、そのエッセンスはしっかりと残っている。
    本書によれば、宗教とは、人々に自己に立ち返り「限りある人間のいのち」を超える尊いものに目を向けるように促す。
    「限りある人間のいのち」は、「死」「弱さ」「悪」「苦難」に相対した時に現れる。
    本書ではこの4つの観点から、物語と宗教の結びつきについて見ていく。

    普段は目の前のことで精一杯で、「『限りある人間のいのち』を超える尊いもの」に向き合うことなんてない訳だけど、ウクライナのニュースを見たり、地震があったりと、その時々で考えてみる。
    自分に何ができるのかなんてやっぱりわからないけれど、何かできる人間でありたいなと願う。

  • 筆者の島薗さんは小説への造詣が深い。
    古い小説から新しい小説まで、日本、海外、子供向け、大人向け、様々に、バラエティー豊かに紹介されていることがうれしく、飽きない。
    紹介文に、各小説への愛を感じる。

    この本を読むと、
    (言われてみれば、当然だけど)宗教と物語は非常に近い関係にある。
    ということがよく分かる。

    宗教とは、人が生きる上での苦難に対して、なんとか生きていけるように、寄り添ってくれるものだと思う。(人は一人では弱くて生きられないので、寄り添って、支えてくれるものがあれば、生きていける。)

    物語は、読者が自分と違う登場人物と同化し、物語世界を疑似体験することで、今の囚われている自分から解放され、物語のもっている何か(物語の本質)に触れることができる。

    宗教を説明する際、論理的に効果などを説明するのよりも、ほかの人のストーリーとして話した方が、聞いている人に、より分かりやすく、「本質的な何か」を伝えられるのだと思う。なので、聖書は物語の宝庫なのだと思う。

  • 序 章 宗教は物語のなかにある――人は「四つの限界」の前にたたずむ
    第一章 「死」を超える
     一)永遠のいのちを求めて…アンデルセン『人魚姫』
     二)死の影を脱する…マクドナルド『軽いお姫さま』
     三)無限のいのちの恵みを知る…宮沢賢治『なめとこ山の熊』
    第二章「弱さ」と向き合う
     一)弱さを認め︑還る場所 …『新約聖書』「放蕩息子の帰還」と『法華経』「長者窮子のたとえ」
     二)自由と責任を学ぶ途  …キングスレイ『水の子陸の子のためのおとぎばなし』
     三)心の空白にもがく…トルストイ『イワン・イリッチの死』
     四)猫とともに歩む…西加奈子『きりこについて』
    第三章「悪」に向き合う
     一)罪と悔い改めの道…『観無量寿経』『大菩薩涅槃経』、阿闍世王の物語
     二)救いを信じられるか?…倉田百三『出家とその弟子』
     三)悪の自覚とともに生きる…武田泰淳『ひかりごけ』
     四)殺意の奔流に抗して…星野智幸『呪文』
    第四章「苦難」を受け止める
     一)去りゆく者の慈しみ…深沢七郎『楢山節考』
     二)魂の輝きに言葉を…石牟礼道子『苦海浄土―わが水俣病』
     三)すべての祈りを包む河…遠藤周作『深い河(ディープ・リバー)』
    終 章 重なり合う宗教と物語の力――現代文学のなかの宗教
    感動の源泉にあるもの
    死を超えるのは希望か絶望か
    想像力とは何か
    信じることと手を切れるか

  • 100万回生きた猫から人を愛する心、マッチ売りの少女から生と死、などいくつかの物語からキリスト教、仏教、他様々な宗教観が語られている。
    前半は知っている物語が多く、なるほど、そんな見方もあるのか、と興味深かったが、後半はマイナーな本が多く、本の要約を読んでいる気分だった(それもそれで面白かったが)。

  • さまざまな本の宗教的な部分をわかりやすく解説してくれた。読んだことのない本に興味がわき、読んだいる本は納得できることが多かった。

  • 組織宗教は衰退しても、物語としての宗教は滅びない。その通りだと思う。また、着実に物語の宗教性は深化している。人間の良心は繰り返し蘇るのだ。

    島薗さんが取り上げた作品に直に触れたくなった。
    特に苦難を受け止める、の章。

  • 読んでいろいろ思ったけど、最近の小説はつまんなさそう…と思ったのが一番大きい。

  • (02.14.2017)

    あまり期待せず読み始めたが、興味深い内容だった。なかなかに深い考察だと思った。読んだことない本が何冊か登場したので、今度読んでみようと思う。

  • 序章 宗教は物語のなかにある 第一章「死」を超える 第二章「弱さ」と向き合う 第三章「悪」に向き合う 第四章「苦難」を受け止める 終章 重なり合う宗教と物語の力

    「物語好きの方、また、宗教に関心があるが、宗教教団や教義は敷居が高い、親しみづらいと感じている方に楽しんでいただきたい」との著者の想定読者層にピタリとはまり、どの章のどの参考文献からの引用も興味深く考えさせられるものばかり。
    『きりこについて』『想像ラジオ』『わたしを離さないで』など既読のものも改めて読み直したくなったし、遠藤周作『深い河』は読まなければ、という気持ちにさせられる。読書案内としても素晴らしい。

  • 参照作品…佐野洋子『100万回生きたねこ』/アンデルセン「人魚姫」/マクドナルド『軽いお姫さま』/宮沢賢治『なめとこ山の熊』/『新約聖書』「放蕩息子の帰還」と『法華経』「長者窮子のたとえ」/キングスレイ『水の子 陸の子のためのおとぎばなし』/トルストイ『イワン・イリッチの死』/西加奈子『きりこについて』/『観無量寿経』『大般涅槃経』、阿闍世王の物語/倉田百三『出家とその弟子』/武田泰淳『ひかりごけ』/星野智幸『呪文』/深沢七郎『楢山節考』/石牟礼道子『苦海浄土-わが水俣病』/遠藤周作『深い河』/カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』/いとうせいこう『想像ラジオ』 他

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著者プロフィール

島薗進(しまぞの・すすむ) NPO東京自由大学学長、大正大学客員教授、上智大学グリーフケア研究所客員所員。著書に『現代救済宗教論』『現代宗教の可能性』『スピリチュアリティの興隆』『日本仏教の社会倫理』『明治大帝の誕生』『新宗教を問う』ほか多数。

「2023年 『みんなの宗教2世問題』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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