大国の掟 「歴史×地理」で解きほぐす (NHK出版新書 502)

  • NHK出版 (2016年11月9日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (248ページ) / ISBN・EAN: 9784140885024

みんなの感想まとめ

国際情勢や地政学の複雑さを理解するための新たな視点を提供する一冊である。主義や思想が国に与える影響を大きな視点から捉え、歴史と地理を有機的に結びつけることで、各国の動向を深く分析することができる。特に...

感想・レビュー・書評

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  • 主義思想が国に与えるチカラを大きな視点で捉えることができた。
    変わらないものに目を向けると、見えてくる傾向がある。
    五大国と同様に日本も大国としての振る舞い方を知りたいと思った

  • 本書の目的は「現下の国際情勢を正確に把握する力を身につける」ことにある。そのためには国際情勢を規定している「歴史」と「地理」を掛け合わせて思考する必要があるという観点から、英米、ドイツ、ロシア、中東、中国といった「大国の掟」を分析している。

    第1章(英米)
    トランプ大統領への支持は、新自由主義がもたらした経済格差の拡大、社会的流動性の低下、庶民生活レベルの低下という土壌から生まれたもので、かつてのアメリカ外交の基調であった「孤立主義」への回帰を主張している。

    アメリカは、太平洋戦争まで「孤立主義」を基調としていた(モンロー主義)。太平洋戦争開始後はラインホールド・ニーバーによる「光の子」と「闇の子」の二分法がアメリカの世界戦略の基本となる。つまり、敵対国(集団)を「闇の子」と捉えることで、海外での軍事行動を正当化するようになったのだ。しかしトランプ大統領は、アメリカに直接的かつ死活的な問題をもたらさない限り干渉しないという、戦前の「孤立主義」への回帰に過ぎない。

    「人種的差別は、米国の民主主義がよって立つ基礎のひとつ」というエマニュエル・トッド氏の説は興味深い。アメリカ民主主義は常に「内部」(白人)に対する「外部」を必要とするという。「外部」は、ピューリタンにとってのネイティブ・アメリカンや奴隷である黒人であり(『United States Declaration of Independence』の「all men are created equal」は、白人のみ対象)、それが時代によって、カトリック、ユダヤ、イタリア系、アジア系、ヒスパニック系、イスラム教徒と変遷して来た。このような「外部」を持たないと、アメリカの民主主義は成立しないのだ。トランプ大統領の「アメリカ(白人)・ファースト」の主張は、アメリカ的伝統の反復現象なのである。

    イギリスのEU離脱も、かつての「栄光ある孤立(1896-1902)」(Splendid Isolation)への回帰と読み取れる。海洋国家であるイギリスとアメリカは、必要があるときだけ大陸と関係を結べばよく、必要がないと判断すると「孤立主義」を取ることができる。これが、フランスやドイツとの大きな違いである。

    シーパワーを制するとは、世界的なネットワークを維持できることにほかならない。だからそこ、イギリスもアメリカも覇権国家になることができた。ひとたび覇権国家になると、その国は一方的な自由貿易を強要する。自由主義の背後には常にシーパワーを持った覇権国家の存在があるのである。

    (第2~5章 略)

    終章(日本)

    海洋国家の「孤立する」選択肢として、日本の鎖国政策があるが、この間でも、長崎の出島以外に、松前口、対馬口、琉球口という四つの外交窓口があった。つまり、当時の世界最強国オランダやその他の国とのネットワークを有していたのだ。従って、「鎖国」(そもそも幕府は鎖国という言葉は使っていない)というよりは、日本の安全保障上問題のある外国との貿易や宣教活動を遮断していたというほうが適切である。問題のある国としてキリスト教の国が考えられるが、「キリシタン」禁止令の名称から分かるように、幕府はカトリック国との交易を禁止したという方が正しい。現にプロテスタンティズムの「カルヴァン派」だったオランダとの交易は継続している。カルヴァニズムは、人間は生まれる前から「救われる人」が決まっていて(予定説)、人間はそれについて知ることはできない。せいぜい、世俗的な仕事で成功することを通して、神様に選ばれていることを確信するだけであると考える。従って、強引に他人に宗教を強制しようとしない。一方で、カトリシズムは、全世界にキリスト教を布教することを使命とし、場合によっては力で普遍的な価値観を押し付けようとする(南米の例)。そんな宗教が日本に入ってきたら、日本の文化は崩れ、植民地になってしまうかもしれないと、秀吉、家康、家光は考えたのである。

    アメリカがメキシコとの戦争に勝って、カリフォルニアを手に入れると(1848年)、清との貿易のため太平洋を航海する船舶や捕鯨船の寄港地として日本に開国を強く求めるようになった(1853年)。ほぼ同時期にロシアの使節プチャーチンも長崎に来て、開国と国境策定を要求する(1853年)。ペリーは、砲艦外交と呼ばれる高圧的な態度で開国を求めたが、プチャーチンはそのような態度を取らなかった。ペリーは、幕府のたらい回し・問題先送りの外交姿勢を事前に学んでいたので、高圧的に交渉するしかないと考えた。一方のプチャーチンは、日本人の気質を考慮して、力づくの説得よりも時間をかけて交渉する方が得策と考えた。もし、日本がロシアに巧妙に取り込まれたとすれば、フィンランドのようにロシア帝国に取り込まれていくというシナリオは否定できないだろう。

    しかもアメリカの植民地化を免れた理由に、開国と明治維新との間に南北戦争(1861-65年)が起きたことは、極めて重要である。つまりアメリカは、帝国主義の仲間入りをする1870年代まで、対外的な政策をとる余裕がなかった。1870年代には、富国強兵のもと徴兵制など日本の防衛体制が整いつつあったのだ。
    南北戦争で余った大量の新型銃が、明治政府軍に流れたことを考えると(亀山社中、薩長同盟)、日本近代史のうえで、南北戦争が開国と明治維新の間に起きたことは、決定的な重要性を持つ。

    歴史に地理と宗教を掛け合わせるだけでも、平面的に感じていた歴史が立体的に見えてくる。「地政学」は、なかなか面白そうな学問だ。

  • 高校時代に学習した世界史と地理の記憶が薄れるなか、両者を有機的に結びつけた地政学の考え方が面白い。
    個々の国が持ち続けていた地理的要因、宗教、思想を学ぶことで、大国のこの先の動きを分析することができる。
    知的好奇心を満たす一冊である。

  • 少し前の一冊も地理と歴史は古くならないのが良いですね。

  • 2016年に書かれた論考が今起こっているロシアのウクライナ侵攻を理解するために大いに参考になりその必然性すら感じさせられる。ということは、佐藤優はインテリジェンス専門家としてはなかなかの人であるということか。
    国際情勢を読み解くために「歴史」のアナロジー的なものの見方と「地理」の動かない要因(国家戦略に活用したものが地政学)を掛け合わせて思考すること。その教養を深めることが必須であるとして、唯一の具体例が「プーチンのユーラシア主義」であることに彼の分析予言能力の凄さを見た。
    英米、独、露、中東、中国とそれぞれ明快に分析されている。反芻して頭にインプットしておくべきものと痛感する。

  • 英米、ドイツ、ロシア、中東、中国、などの各国の政治を地理と歴史を交えて考察した本。この本についてのある方の感想を聞いて興味が湧いて読みました。

    作者の主張のうち、下記が印象的でした。

    •アメリカの孤立主義は啓蒙思想から来ている、
    •英米は海洋国家であり孤立主義を時として選ぶ傾向がある、
    •ドイツはEU統合の利潤を享受してきたが、今後はその維持コストを払う局面に来ている、
    •中東は、国境を認めないイスラム教の世界観を持つ。無理に国境を引く西洋システムではいつまでも解決が望めない、
    •中国が南沙諸島を埋め立て岩を島にした行為に、日本は意見ができない。日本が沖ノ鳥島をコンクリートで固めて岩を島と主張する行為と同じだから。





  • 歴史と地理で、今の世界情勢の背景・掟を読み解く。歴史はアナロジー的なものの見方、地理は長い間変化しない条件を提供する。このような思考を国際情勢の分析・国家戦略に活用するのが地政学である。

    佐藤優が地政学の名著などを参照しつつ、独自の国際情勢分析を展開する。その対象は米英、独・欧州、ロシア、中東、中国、そして日本。参考文献も随所に示されていて、知的刺激の高い本となっている。

  • "海洋国家と大陸国家、シーパワーとランドパワー、歴史と民族、宗教と地理、これらを総合的に理解し、読み解けると国家の動きが読めてくる。
    本書で学んだことは、イスラム教の奥深い宗派の数々やサイクス・ピコ協定から読み解く中東の国々などや、ロシアの考える緩衝地帯的な隣国との付き合い方など、知っている人には当然のことなのだろうが、なかなかここまできっちり学んだ人は少ないのではないか。地政学を学ぶ第一歩としての本としてもよいと思った。"

  • 著者は大変知名度が高い方ですので、皆さんご存知だと思います。複雑な世界情勢を読み解く上で、歴史と地理的条件を掛け合わせ、地政学的観点から考えることの重要さを説いています。

    東ドイツ建国に際しての、ドイツ国民民主党に旧ナチ党員を取り込む寛容な政策をソ連がとったことが、今日の旧東独におけるネオナチ運動の隆盛につながる、といった洞察や、メルケル首相が東独の社会主義統一党の青年組織に属していたことから、現在CDUの党首でありながらも、当時の価値観を保持しているだろう、といった考察、ロシアのユーラシア主義と旧東欧諸国のNATOへの取り込みがウクライナ問題の根底にあること、そしてサイクス・ピコ協定とISの問題、中国の海洋進出とキルギスの問題、アメリカやイギリスの孤立主義などなど。

    著者は神学を修めた方だけに、宗教が国家間の関係に与える影響についても洞察が及んでおり、その観点の包括性に触れることにができるのもこの本の良いところだと思います。

  • オーディオブックで読了。
    2016年時点での地政学をざっと総覧するのに良い。

    特に米国、中国、ロシアといった国々にとっての地政学を歴史と地理から読み解き、そこに中東・イスラム国への分析が入っており、これらの出来事の文脈を読み解くのに非常に役立つ。

    ただし、このボリュームに広い範囲を含んでいるので、歴史的背景への考察などもかなり限定的にならざるを得ない点は致し方ない。更にツッコんだことを知りたい場合は、本書に挙げられている文献にあたるのが良いのだろう。

  • 最近佐藤優さんの本をたてつづけに読んでみて思うのは、
    「彼の本は私レベルの読者にとって当たりハズレがあるのだ」ということです。

    当たりは『使える地政学 日本の大問題を読み解く(朝日新書)』
    『大世界史 現代を生きぬく最強の教科書(文春新書)』
    『世界史の大転換(PHP新書)』
    『新・リーダー論 大格差時代のインテリジェンス(文春新書)』です。

    ハズレは2月に読んだ『ゼロからわかるキリスト教』『性と国家』。
    自分のレビューをあらためて読んでみると、
    「読んで良かったこと」を「なんとか絞り出して記録している」のがよくわかります。

    今回のこの本は大当たり!!!
    隅から隅まで、すごく面白いです!!

    この本では、歴史と地理という方法論を用いて、英米、ドイツ、ロシア、中東、中国という「大国の掟」を立体的に理解する訓練を行います。

    でもそれ以外の国々の事件もたくさん登場しています。
    一例をあげれば、ビンラディンのこと、私は「稀代の悪人だ」と、ずっとずっと思っていたのですが、
    この本を読んだら「彼の気持ち、わかる。私はそっちの人間かも…」と思ってしまいました。

    世界の複雑な情勢を読み解く知力に加えて、私たちには「人間力」も要請されています。
    人間力とは、論理の外にある感情を理解し、他人の気持ちになって考えることができるということです。
    私たちは平和な世界や良い世界を築くために、「世界を読む力」を身につけなければならないのです。

  • チュートリアル

  • 単一の国の歴史からは見えてこない背景が、
    周辺の国の歴史(つまり世界史)と地政学をあわせることで浮かび上がってくる。
    現代の世界情勢に大きな影響を及ぼしている、インターネットによるボーダーレス化、サイバー攻撃による脅威。そういった観点での佐藤氏の分析、考えを知りたいが本書では多少触れる程度で、その点はすこし残念。

  • 記録によれば丁度二か月前の今日に読了したことになっていますが、恒例のGWの部屋の片づけをしていて発掘しました。二か月前の自分を振り返ると、その間に多くの変化があり別世界にいる感がありますが、本の中で付箋を付けた部分を読み返してみると、二カ月前の自分に出会えたようで懐かしく思います。

    さてこの本ですが、昨年(2016)の年初より、地政学という分野に興味を覚えるようになりましたが、それに関する本を読んでいくと、地理・地形がその国に及ぼす影響が大きいことがわかりました。高校時代に地理の地図帳と、歴史の地歴図が好きだった私には、試験勉強のためではなく、自分の趣味のために楽しめる読書は最高です。

    この本の著者は、今までも何冊もお世話になっている、元外務省に勤務されていた佐藤氏です。英米、ドイツ、ロシア、中東、中国を動かす掟を、解説しています。これらを応用して、自分で日本の将来を描けるように、いつかなりたいな、と思いました。

    以下は気になったポイントです。

    ・掟を把握するにはどうしたらよいか、それは国際情勢の背景にある「変わらないもの」に着目する(p9)

    ・1789年から1914年がなぜ、長い19世紀なのか、それはこの時代が「啓蒙思想の時代」だから、啓蒙思想とは、知識が増えれば社会は豊かになり人間は幸福になる、というものの見方・考え方。19世紀には人間の非合理な情念を重視するロマン主義の抵抗を受けたが、基本的には近代の主流の考え方となった(p27)

    ・福祉国家は行き詰っていったので、生まれてきた考え方が、新自由主義。政府による社会保障や再分配を極力排して、企業や個人の自由競争を推進することが最大限の成長と効率のいい富の分配をするという立場(p33)

    ・地政学では、国家をランドパワーとシーパワーに分けて考える、アメリカは隣接するカナダ、メキシコから侵攻される脅威が除去されているので、南北アメリカ大陸という島と捉えられる(p51)

    ・シーパワーの優位性は、海から陸を囲むことができる、点と線を押さえればよい(p54)

    ・ホブズボームは、長い19世紀に対して、1914-1991のソ連崩壊(共産主義・社会主義陣営の敗北が明白)までを、短い20世紀と呼んだ(p63)

    ・東欧を支配するものはハートランド(東欧・ロシア・ユーラシア内陸部)を制し、ハートランド(ユーラシア大陸)を支配するものは世界島を制し、世界島を支配するものは世界を制する(p74)

    ・ギリシアの地は、古代ギリシア滅亡以降、マケドニア、ローマ帝国、ビザンツ帝国、オスマントルコの順番で支配されていて、ギリシアという国は存在していなかった、ギリシアという国家は1821年のギリシア独立戦争が発端となって誕生する(p82)

    ・スターリンとチャーチルは秘密協定を結び、ユーゴスラビア・ブルガリア・アルバニアに対して、欧米はレジスタンスに対する支援から手を引く、ギリシアは欧米の勢力圏としてソ連は手を引くことにした(p85)

    ・欧米はギリシアの産業化を支援しなかった、理由は、工業が発展して工場労働者が生まれると、共産党による組織がなされるから、そのため、農業と観光だけの国にし、NATOの基地を置いて金銭的援助により経済が成り立つようにした(p86)

    ・大航海時代にあれほど富を得た、スペインやポルトガルといったカトリック国から資本主義が生まれなかったのは、天国における来世を重視するカトリシズムと関係がある、教会にすべてを寄付し、資本は社会を循環しないので(p88)

    ・文明はコピーできるが、文化には制約性がある、だから同じ文化的価値観(宗教)を共有する者は包摂し、そうでない者には門戸を閉ざす、これはEUの広がりを見るとわかる(p94)

    ・2015.1.1、ロシア・ベルラーシ・カザフスタンで構成される「ユーラシア経済連合」が発足し、翌日にアルメニア加盟、同月5月には、キルギスが加盟した(p104)

    ・ロシアにとっての緩衝地帯は、自国領ではないけれど、いつでも自国の軍隊が自由に移動できる地帯のこと(p117)

    ・ウクライナをめぐる対立を、ロシアと欧米諸国との「新冷戦構造」と捉えるのは間違っている、冷戦とは「共産主義と資本主義というイデオロギーをめぐる対立」であり、現在の対立は、ウクライナへの影響圏をめぐる地政学的対立として捉えるべき問題(p126)

    ・イギリス、フランス、ロシアの三国が第一次世界大戦後に、中東分割をした国家が機能不全を起こしていることが、原因でその結果が、ISの誕生である(p134)

    ・植民地支配では、少数派を優遇するのは常套手段、多数派の民族・宗教集団を優遇すれば、独立運動につながる(p143)

    ・ワッパーブ派は、コーランとハディース(ムハンマド伝承集)しか認めない、聖人崇拝も墓参りもしない、禁欲主義である。最大の過激派で、かつ、武装集団であるのが、アルカイダ・ISである(p147)

    ・コーランで禁止されているのは、ブドウからできたアルコール飲料で、ウィスキーはOK(p148)

    ・イランはかつてのペルシア帝国、トルコはかつてのオスマン帝国へと回帰しようとしている(p170)

    ・地政学的に見れば、一帯一路構想とは、ランドパワーとシーパワーを同時に展開して、ユーラシア大陸を囲い込むことに他ならない(p175)

    ・中国国家の命運を握っているのが、新疆ウイグル自治区に住む、ウイグル民族への対応である(p193)

    ・オランダはプロテスタンティズムのカルヴァン派であった、宣教する意欲が希薄なので、出島に門戸を平出も大丈夫であった(p211)

    ・アメリカが日本に来る目的として、食糧や水の確保と説明されていたが、最近の研究では、もう一つの理由として「石炭確保」ということがわかっている(p213)

    2017年5月5日作成

  • 国際情勢を地政学的視点から理解するための本。
    中国が南沙諸島を埋め立て、自国の領土として批判が高まっている。しかし米国は付近を航行(無害通航権)したのみの、嫌がらせレベルの抗議をしただけ。これは停泊しなければ領海を否定したことにはならないから。
    日本も中国のやり方を批判しただけ。これは日本も沖ノ鳥島(満潮時海面から16cm。周囲はコンクリートで護岸)を領土と主張しており、中国とやっていることが余り変わらないため。(日本政府が岩礁と認めている伊豆諸島の孀婦岩。これはなんと高さ99m、東西84m、南北56m。これが岩で沖ノ鳥島が島とされる)これでは中国に強い態度を取れない。
    日本も米国も黙認状態では中国の海洋進出は勢いづくと思いきや、そうはならないと著者は言う。なぜなら中国の海軍力の弱さ(中国が空母を運用できるようになる頃には、無人機の時代となり、空母は時代遅れとなるらしい)とチベット方面の陸の地政学リスク(支配体制が揺らぐ位の)があるからと書かれている。
    しかし中国は国産空母を今週進水させたし、どうも説得力がない。
    著者の言うとおりになるのならば、少しはほっと出来るのだが・・・
    日本の明治維新は、米国の南北戦争があの時期に行われたから、上手く成し遂げられた。あと20年遅かったら、フィリピン的に米国の支配下に置かれたかもしれない。
    その他いろいろ国際的な偶然が維新に作用していた。
    明治維新は大変幸運な偶然により成し遂げられたのだなぁ。

  • 地理・経済・民族等々の要因を分けて考える理性・論理思考だけではダメ。物語(宗教)を理解する人間力が必要。人間は本質的に非合理。
    国際情勢は時間軸(歴史)・地理的条件だけでなく、経済・文化・国家・民族・宗教様々な変数を複合して考えなければならず、しかも論理・合理・理性だけでなく、非合理な側面も考慮しなければならない。一応大国について相応の分析はなされているが、あまりにも複雑すぎて今後日本がどうやって意思決定すればよいのかは本書には示されていない。著者の仕事でもないのだろうけど。
    これまでの著作の中でもかなりデキがいいと思うが、あくまでも著者の独自の分析であって、どこまで正しいのかはわからない。類書をいくつか読まないとダメなのだろうが、新書レベルが限界で、専門書までは手が回らないな。
    執筆時にはトランプ確定ではなかったようだが、2016年は「米英が孤立化の道を歩んだ」という大きなターニングポイントになるのかもしれない。あとは中国が戦前日本と全く同じ道を歩んでいるという認識は正しいと思う。

  • 第二次世界大戦の負の影響から,地政学が欠落してしまった日本にとって,各国の動機を知る道具がないという外向的に拙い状況になっている.そんなこと,外交官に任せておけばと考えるには,日本(あるいは日本企業)は世界における立場ができている.道具を手に入れるため,個々に学ばねばならない.その入口情報がまとめられた良書である.

  • 地政学で世界情勢を読み解く、平易な解説書。新疆ウイグル自治区を巡る中国のリスク、二度の大敗戦を経てもなお衰えないドイツの底力の強さ(二〇世紀はドイツに翻弄された世紀)、混乱する中東情勢の先行きなど、示唆に富んだ内容だった。著者得意の情報分析手法が光る一冊。

  • 歴史にタラレバはありませんが、開国時のロシア、アメリカのところはなるほどと思います。

  • 英米・ドイツ・ロシア・中東・中国を動かす掟について、とても分かりやすく俯瞰的にまとめられている。特に中東については宗教的背景についても説明されており、全く理解していなかっただけにとても勉強になった。より深く理解するためのブックガイドも参考になる。
    やっぱりそんなに挙げられると山川シリーズは揃えたくなってしまうな。

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著者プロフィール

1960年1月18日、東京都生まれ。1985年同志社大学大学院神学研究科修了 (神学修士)。1985年に外務省入省。英国、ロシアなどに勤務。2002年5月に鈴木宗男事件に連座し、2009年6月に執行猶予付き有罪確定。2013年6月に執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失った。『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―』(新潮社)、『自壊する帝国』(新潮社)、『交渉術』(文藝春秋)などの作品がある。

「2023年 『三人の女 二〇世紀の春 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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