新・敬語論 なぜ「乱れる」のか (NHK出版新書)

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  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140885086

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  • 言語に見られる普遍的傾向として敬意低減の法則がある。使っているうちに効果が薄れ敬意の度合いが下がっていく現象である。待遇価値の下落とも言われ、敬語の使用範囲が時間の経過とともに下位の方へ拡大していっている。「貴様」は中世では敬意の高い言い方で武家の書面で使われたが、今や対等どころか目下へのののしりの言葉に下落している。二重敬語も敬意低減の法則の一つの類型であり、非難されながらも着実にその裾野を拡げてきている。正用・誤用の基準は時代によって変化している。慣用には寛容が肝要。多様性と変化を認めながらゆったりと生きていけば世の中はもっと楽しくなるはず。

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50031463

  • 課題図書だったから読んだが時代や年齢を通じた敬語の変化がグラフを交えて視覚的に捉えることができた。

  • 新・敬語論
    なぜ「乱れる」のか
    (NHK出版新書508)

    著者 井上史雄+
    2 0 1 7年1月10 日発行
    NHK出版

    謙譲語Ⅱと美化語、分かる?例示できる?
    2007年の文化審議会で敬語が3種類から5種類に増えた結果出てきたもの。なんじゃそれ?初めて聞いた、という人もいるかも。

    この本の著者、日経新聞の「現代ことば考」でおなじみ、東京外大名誉教授・井上史雄氏は、敬語は難しく、自分も自信がないと書いている。最新刊でそのあたりもちゃんと解説。

    言葉の研究者は、「言葉の番人」ではなく「言葉ウオッチャー」である。だから、まともな研究者はみんな、言葉使いのダメだしではなく、変化を分析する。この本も、前半は、これまでの国語審議会やNHKなどの調査結果をもとに、尊敬語、謙譲語、丁寧語がどう変化したかをわかりやすく例示。

    言葉の変化には寛容だが、「問題な日本語」を書いた北原保雄氏みたいに何でもかんでもOKというような無責任な展開はしていないので、私のような職業人にはとても役立つ。

    喋りのタレントを目指す、ある若い女性に、以前、印刷物の原稿にダメだしされたことがあった。彼女はタレント業だけではまだ食べていけないので、ある放送局で事務のバイトをしていて、私の書いた文書を校正していたのだ。ダメだしされたのは「(話を)お伺いしました」という部分。彼女は、タレント養成学校で日本語の講師に「謙譲語には『お』をつけるな」と習っていたのであった。つまり、二重謙譲語だといいたいのだろう。確かに二重謙譲語だが、この言葉は大丈夫だと説明しても、講師の言っていることに間違いがあるはずがないと、私の主張など聞こうともしなかった。この本には、ちゃんと「おうかがいします」はOKだと書かれている。あのとき、この本があれば見せてあげたのだが・・・彼女も言葉は生き物であるという認識を持ってくれたかもしれない。

    著者は、敬語は理論に当てはまらない言い回しもあるから、最終的には暗記していくしかない、というようなことを書いている。まったくその通りだと思う。ビジネススクールに出てくるマニュアル的な知識しかない講師の説明をたまに読んだり聞いたりするが、疑問を感じる部分がしばしばある。

    この本、後半には、敬語は成人後に使い始めるものが多いと研究成果を明かしている。高齢者の話がまわりくどいと感じる一因に、敬語が丁寧に長くなることもあるとしている。そして、今話題の「~ていただきます」という言い回しが、敬語の使い方に与えた影響の大きさも解説。また、敬語の使い方と共通して増えていくものに貯蓄や恵方巻きの消費量などもある、などというユニークな分析も面白かった。

    -○-○-○-○-○-○-○-○-○-○-○-○-○-○-

    1.尊敬語
    ・敬語は「つぎたし敬語」と「言いかえ敬語」の2種
    つぎだし敬語の尊敬語:お~になる、~(ら)れる、など
    言いかえ敬語の尊敬語:いらっしゃる、召し上がる
    ・「(ら)れる」を使った尊敬語は西日本でよく使うが、東日本では使いにくい。「先生は行かれた」は、東日本だと「先生は変になった」。受け身との区別も難点。
    ・「所有者敬語」の広がり:天皇陛下の愛犬が病気になられた、天皇陛下のお車が故障なさいました(38)

    2.謙譲語
    ・謙譲語は「受け手敬語」とも呼ばれる
    ・つぎたし敬語は「お~する」、言いかえ敬語は「うかがう」「いただく」など
    ・謙譲語は使える動詞や文脈が限られる(使用範囲が限定)
    すべての動詞に「お~する」で作れるが相手に恩恵を与えるような文脈でしか使えない、例えば、○「お待ちする」「お持ちする」「ご迷惑をおかけする」、×「お殴りする」「お盗みする」、△「お訴えします」

    3.丁寧語
    ・形容詞+です、は、1952年の国語審議会「これからの敬語」で許されるように。戦前から広がり始めていた。
    ・「っす」は「後輩口調」という

    4.「いただく」の広がり
    ・~させていただく、は、上下関係でなく、対話者間の心理的な関係を表現しているので「左右敬語(水平の敬語、社交敬語)」という

    5.マニュアル敬語
    ・「よろしかったでしょうか」には方言起源説もあり、名古屋で最初に耳にしたという報告がある。また、1987年のNHK調査では、北海道と東海地方で多かった。
    ・「ご注文のトーストになります」の「なります」は、「にあたる」という用法もある。結婚式で「こちらの方がおじになります」というように。しかし、乱用はいけない。

    6.成人後採用
    ・敬語はだんだん身に着ける。最初は使わず、小学校で「ですます体」、中学生で「ですます」使い分け、尊敬語を使うのは高校卒業後
    ・敬語を身につける年齢は、他人に対して「母」と言うようになる年齢が手がかりになる
    ・「お」の付く単語の境界を定めることは難しい。NHK日本語発音アクセント新辞典』を除くと、「お」が付きうる個々の単語をあげた辞書はないに等しい。性差以外に、細かい使い分けにもふれる必要がある。
    ・あるデパートでご婦人が「オデンワ、どこですか」と聞いたので、「は? 地下の食品売場ですが」と答えた。でもご婦人はまわりを見回して、階段のほうに歩いて行って、電話機を使った。電話の機械自体にも「お」を付ける人がいる。
    ・中年層または高年層が採用のピークになる現象はことば以外に、個人の生涯での貯蓄額や資産の増加が典型。節分の巻きずし(恵方巻き)購入者のピークが40代である。

  • 敬語の変化がわかる本。

    大勢としては、尊敬語が拡大し、使うのが難しい謙譲語が後退しているらしい。

    まず、 尊敬語。
    個人的には、尊敬語を添加するタイプのものを「つぎたし敬語」、特別な敬語動詞に置き換えるのを「言い換え敬語」と呼んでいるのがわかりやすくてよかった。
    なお、前者は一般形、後者は特定形という言い方もあるらしいが、断然つぎたし敬語の方がわかりやすい。

    今誤用とされる二重敬語も、ものにより「気になる」人の率が変わるのが面白い。
    「おっしゃられた」は気になるのに、「お召し上がりになる」「お召し上がりください」は気にならない人の方が多い。
    筆者はやがて二重敬語は普及すると見ている。
    より丁寧な表現が求められることが背景にあるそうだ。

    「(ご)記入されてください」のような、「~れてください」という形は、九州から広がってきた方言敬語らしい。
    自分の住む地域はそこまで東日本でもないけれど、あまり聞かない。

    そして、尊敬語は拡大の中で、丁寧語的に、つまり話題の人への敬語ではなく、話し相手への敬語にシフトしているらしい。

    謙譲語。
    「お~する」が尊敬語「お~になる」との紛らわしさは自分でも気づいていたが、「参る」「伺う」「拝見する」も紛らわしいと感じられているそうだ。
    使う範囲が限られていることもあり、こうした謙譲語は後退し、何にでもつけられる「~せていただく」が普及する、と井上先生は予言するが、いかに。

    丁寧語は細分化してきているという。
    「っす」「っしょ」「っした」という「後輩口調」は、中間敬語というらしい。
    本格的な敬語と、タメ語の中間にあり、目上・目下よりも細かく配慮する表現とのことだが、このあたりがちょっと飲み込めない。
    尊敬語、謙譲語と併用することはないそうで、敬語が簡略化する趨勢を代表する動きのようだ。

    二重尊敬、二重謙譲が許容されたりする一方で、無敬語化のように簡略化の傾向もある。
    用法が拡大化する一方で、表現の画一化が起こる。
    矛盾するような動きもあるように思え、自分には変化の中に通底する必然性が読み取り切れないけれど、ことばが生ものであることはつくづくわかる。

  • 「よろしかったでしょうか」、「させていただきます」などに見られる新しい敬語のあり方をデータを基にこの20年ほどで変わってきたということについて論じた一冊。
    授業のレジュメを元にしたというだけあって、読みやすい。

    本論とは外れるが「年を重ねると一文が長くなる」という指摘にハッとした。特にLineでのコミュニケーションが中心となった世代であれば要件のみの単刀直入な文章を好むだろうし、「いつもお世話になっております。」的な挨拶文は冗長なだけに感じるだろう。

    著者は日本人のコミュニケーションが聞き手への配慮を増やす方向に変化していると指摘し、それが「使い方の難しい謙譲語の機能が変わった」ことにも結びつくという。

    それは年長者には「乱れた」ように響くのかもしれないが、冒頭にあげた「させていただきます」的な謙譲表現は「正しい」敬語として変容していくのだと思う。

  • 敬語は成長に応じて
    生涯変化していくもの
    という事を 初めて考えさせられました

    一番使うのは
    私の世代 40~50代で
    使えないと 世間の評価も悪い

    けど その「世間の評価」として
    敬語の使い方にうるさくなるのは
    「自分が敬語を使われる立場」
    になってから
    というのが 笑えた

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著者プロフィール

井上史雄(いのうえ・ふみお)
東京外国語大学名誉教授、明海大学名誉教授

「2022年 『社会言語学の枠組み』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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