絶滅の人類史―なぜ「私たち」が生き延びたのか (NHK出版新書)

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  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140885413

作品紹介・あらすじ

700万年に及ぶ人類史は、ホモ・サピエンス以外のすべての人類にとって絶滅の歴史に他ならない。彼らは決して「優れていなかった」わけではない。むしろ「弱者」たる私たちが、彼らのいいとこ取りをしながら生き延びたのだ。常識を覆す人類史研究の最前線を、エキサイティングに描き出した一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 年明けからこっち、すっかり人類史に嵌まっています。
    本書は、地球上にはかつて多様な人類がいたのに、なぜ私たちホモ・サピエンスだけになってしまったのか―という謎に迫ります。
    未読の方の興趣を殺いではいけませんので、その謎の答えについては本書をお読みいただくとして、ここでは触れません。
    ところで、私たち人類はどうやって誕生したのでしょうか?
    私たちの祖先は、アフリカの森に住む類人猿でした。
    アフリカは当時、乾燥化が進み、森林が減っていました。
    私たちの祖先は木登りが下手で、つまり個体として弱くて、森では生きられなくなりました。
    それで仕方なく、疎林や草原に出て行きました。
    そして、食料を手で運搬して妻や子に食べさせるために二足歩行を進化させ、人類が誕生したと言われています(最も有力な仮説です)。
    私たちの出自が「弱い」ことに由来していたというのは、何とも示唆に富む話です。
    人類が進化する過程で犬歯が縮小した事実や現生のヒトと類人猿のデータなどを合わせて総合的に考えると、人類は元々、平和な種なのだというのも誇らしいですね。
    冒頭で、「謎の答え」については触れない、と書きましたが、少しだけ。
    実は、既に絶滅したネアンデルタール人は、私たちホモ・サピエンスより脳の容量が大きかったことが知られています。
    ネアンデルタール人の脳の容量は1550ccで、1万年くらい前のホモ・サピエンスは1450cc、ちなみに現在のホモ・サピエンスは1350ccです。
    脳が大きいからといって直ちに頭がいいとはなりませんが、ネアンデルタール人が相当な知性を備えていたのは事実のようです。
    「ネアンデルタール人は何を考えていたのだろう。その瞳に輝いていた知性は、きっと私たちとは違うタイプの知性だったのだろう」(222ページ)
    そんなことを想像するのは、楽しいことですね。
    私たちの祖先と人類の歴史について気軽に知ることができるだけでなく、ロマンもかき立ててくれる良書です。

  • 最古の人類は700万年前のサヘラントロプス・チャデンシス。ホモ・サピエンスは25種以上の人類で唯一生き残った種。ヒトとチンパンジーが大きく違うのは、その間の種がすべて絶滅したから。

    700万年前に共通の先祖からチンパンジーと人類が分化した。脳が大きくなりはじめたのは250万年前。
    直立二足歩行と犬歯の縮小が、人類の特徴。

    大後頭孔が頭蓋骨の真下にくる=直立二足歩行に適している。
    イーストサイドストーリーは間違い。サヘラントロプス・チャデンシスが住んでいたのは、草原ではなく疎林。疎林に追い出された。
    直立二足歩行は足が遅く、見つかりやすく、難産。

    個体数が少なければ進化は早く進む。自然選択は不利な個体を除くだけで進化させるとは限らない。個体数が少なければ遺伝的浮動という偶然の効果が自然選択より強くなり、進化の可能性が高まる。

    ホモ、アルディピテクス、アウストラロピテクス、などは属名。サピエンス、エレクトスは種小名。合わせると種名。
    学名はラテン語。形容詞が名詞の後に来る。サピエンスは賢い、という意味の形容詞。
    言葉は時代とともに変化する。学名は変化しないほうが望ましいので死んだ語であるラテン語を使った。

    犬歯の縮小は、争いの少なさを表す。人類は平和な生物。メスを巡るオス通しの争いがない=一夫一婦制の社会ができた結果犬歯が縮小した。
    チンパンジーは5~10頭のオスに対してメスが1頭。
    人間は発情期がないので、オスとメスの割合が1:1日家位。

    食料運搬仮説=直立二足歩行の理由ではないか。
    直立二足歩行で食料を運搬すると、その子供が生き延びるので直立二足歩行の個体が生き延びた。

    人類の祖先は、チンパンジーと共通で道具を使いナックル歩行ではなく、樹上に住む類人猿。

    アウストラロピテクス・アファレンシスの女性の化石「ルーシー」。二足歩行が上手になった。

    ヒトはたくさん子供を埋めるので捕食されても生存できた。年子を産める、授乳期間でも妊娠できる。マリー・アントワネットの母親のマリア・テレジアは16人の子供がいた。
    おばあさん仮説=ヒトは閉経してもおばあちゃんとしての子育ての役割があるから子供の生存率が高く、閉経後も長生きできるように進化した。

    進化では優れたものが勝ち残るのではなく子供が多いほうが残る。優れていたので子供が多く残せた、という理由。

    石器は、武器というよりも死骸から肉を剥ぐか骨髄を食べるために使われた。オルドワン石器=石を割っただけのもの。

    190万年前にホモ・エレクトゥスが現れた。初期のホモ属より脳が大きくなった。
    直立二足歩行を始めたので手が自由になった、その結果石器を作ったので脳が大きくなった、は順番が間違い。
    直立二足歩行が最初。脳が大きくなったのは食糧事情がよくなったため。
    なぜライオンの脳は大きくならないか。脳は大食漢なので動物にとって大きい脳はありがたくないもの。使いみちがなければ小さい方がいい。ライオンは肉を食べるために牙を大きくし、人類は肉を食べるために脳を大きくした。

    直立二足歩行のために移動距離を長くできた。短距離は苦手だが長距離は得意。直立二足歩行は4足歩行の1/4しかエネルギーを使わない。
    ホモ・エレクトゥスは走ったはじめての人類。走れれば死骸を手に入れることが多くなる。
    ホモ・エレクトゥスの出現のころに体毛を失った。

    地球上には過去には、同時期に複数の人類が生きていた。今はホモ・サピエンスしかいない。
    約4万年前にホモ・ネアンデルターレンシスが絶滅してホモ・サピエンスだけになった。
    食物を巡る争いに破れた。

    ホモ属は仕方なくアフリカを出た。二足歩行で長距離を移動できたから出たわけではない。
    貧しい環境に耐えられた種が生き延びる。アフリカを出た人類を最古の化石はドマニシ原人。
    人間の出アフリカは乾燥化で他の動物がユーラシア大陸に越えたのと同じ。
    180万年前にアフリカからユーラシア大陸に出た。
    ジャワ原人はホモ・エレクトゥス。

    ホモ・エレクトゥスはアシュール石器を作った。面倒だが機能が優れていた。
    火の使用が始まった。

    約70万年前にホモ・ハイデルベルゲンシスが生まれた。ホモ・ハイデルベルゲンシスから、ネアンデルタール人とヒトが進化した。
    火を使う。38万年前の古い小屋がフランスにある。

    脳化指数はホモ・エレクトゥスまではイルカが一番だった。150万年前まではイルカが一番頭がいい。
    脳が大きくなったのは群れで生活するため認知能力必要だったから。

    鳥は肉食恐竜の子孫。

    ネアンデルタール人は30万年前に登場した。4万8千年前まで。その後4万7千年前にホモ・サピエンスがヨーロッパに入ってくると減少し、4万年前に絶滅。
    ネアンデルタール人は脳が大きい。肌の色が白い=ヨーロッパに住んでいたため。

    アフリカにとどまったホモ・ハイデルベルゲンシスから30万年前にホモ・サピエンスが生まれた。

    ミトコンドリアのDNAは母性のみで受け継ぐ。

    ネアンデルタール人の脳は大きくなった。ホモ・サピエンスの脳は少し小さいが新型。
    どちらも象徴化行動の証拠がある。

    食人と埋葬=反対の行動。ネアンデルタール人も埋葬した。ネアンデルタール人は抽象的概念は理解できないのではないか。

    ホモ・サピエンスとネアンデルタール人は7000年ほど共存した。ホモ・サピエンスは狩りが上手で子供がお多い。ネアンデルタール人は燃費が悪い。寒さとホモ・サピエンスのために絶滅した。

    ホモ・サピエンスも昔のほうが脳が大きかった。

    ウォレス線=深い海峡のため氷河期でも種が混じり合わない線。孤立した島では大型動物は小さくなり、小型動物は大きくなる。

    ネアンデルタール人はアフリカ以外のホモ・サピエンスと交配している。
    現在のメラネシア人の5%のDNAはデニソワ人由来のもの。

    農耕はわずか1万年前。戦争もそれ以降。

    同じ生態的地位を占める2種は同じ場所に共存できない=ガウゼの法則。条件を変えると、どちらか生き残るか変わる。=条件が違えば、ホモ・サピエンスではなくネアンデルタール人の世界になっていたかもしれない。

  • 例え話が多いので分かりやすく、それでいて仮説も検証を交えながら説明しているので説得力もあります。
    手に取ったらやめられなくなりあっという間に読み終えてしまいました。
    冒頭の森の中に棲んでいた王様と家来の例え話は、王様が人間かと思いきや反対で、類人猿が王様で人間は家来でした。弱い人間たちは環境の変化で、棲みやすい森を出て草原へと向かわなければならない存在でしたというお話。
    ゴリラやチンパンジー、オラウータンなどの人間に近い存在とされる大型類人猿と人間=ホモ・サピエンスの共通祖先から枝分かれした種は、何とかつて25種類がいたといいますが700万年の間に絶滅し、ホモ・サピエンス1種のみになりました。それは何故なのか?という疑問を解き明かしていきます。
    ヒトの脳が何故大きくなったのか?ただ大きいだけなら絶滅したネアンデルタール人の方が大きかったとは驚くべき事実もありながら、スマホのアプリ使用の例え話で使いこなせなければ不要と説明しています。
    森を出なければならなかった人類は、直立二足歩行になった。それは手を使えるので食糧運搬をもたらし、一夫一婦的な関係性は発情期を失くし、オス同士の闘いを減らした。そして子どもをたくさん産むことが出来るようになり、ヒトの子育ては家族の協力関係が必要である。また、道具を工夫して使うことにより狩りの効率もあがり、二足歩行の利点である長く歩くこともできるようになる。肉をたくさん食べることによるエネルギーの増大は脳の容量を増やし、食事や消化に時間をかけなくてよい分、余暇の時間をもたらした。集団行動はコミュニケーションを必要とするから言語が生まれる・・・
    著者は、様々な環境の変化それは、最初の例え話に出たように必ずしも有利な条件でなくとも、それに対応できるように生き延びてきたのが今の私たちの祖先であるということを述べています。
    地球という限られたパイの中にあって、最近までといっても、4万年前まで共存していたネアンデルタール人は、どんどん増えてしまったホモ・サピエンスとは共存できなかったのではと推測しています。ヒトの繁殖力が勝った結果ということになりますが、これからこのまま何万年も繁栄するとは思えない今の地球の状況です。
    著者が最後につぶやくネアンデルタール人が今でも生きていたら・・どんな会話をしてくれるかなあ・・という夢想に何だか胸が痛みます。

  • NHKの特番の単行本化と思ったらちょっと違った。
    映像の方が面白かったかな。

  • 絶滅したホモ・サピエンス以外の人類も、我々の祖先と同時代に生きていた時期があり、互いをどのように認識していたのか想像するのは面白い。今日も無くならない人種差別も、人類種差別に比べれば見当違いですらある。一方異なる人類間で交配もしているので、そこには我々には計り知れない感情が生まれていたかもしれない。どちらかが滅んだのは必然とされるが、どちらかが生き残ったのは偶然だったとも説明される。それを優れていたと言い換えるのが可能だとしても、自分の存在は偶々だと考える方がやはり合理的な気がした。本書では誕生以来の人類史を追うが、化石や遺跡を頼りに過去を論理的に推測しつつ、それもあくまで可能性の範囲に留まっている、そこを踏まえた解説の仕方が良かった。

  • NHK特集の内容かと思ったら少し違うものだった。でも人類が生きてきた証を易しく説明していて読みやすかった。

  • 最近の科学によって明らかになった事実をもとに、人類の歴史が整理されている。人類が発生したのは700万年前。そこから種々の人類が生まれ、30万年前に我々ホモ・サピエンスが誕生し、現在、人類は我々しか存在しない。我々が太古からどのように進化し、また消滅していったか。自分という存在がどういう生物的な歴史を経ているのか知るのは、ためになると思う。

  • ガウゼの法則。種の繁栄と絶滅。なぜホモ・サピエンスだけが生き残ったのか。大変興味深い内容だった。
    よくありがちな、知能が他種より上回っていたために絶滅せずに生き残ったといった単純な理由ではなく、自然界の真理としてどういう種が繁栄するかをベースに人類史の変遷が記されており、さすが生物学者である著者の本だ。
    我々の祖先ではないネアンデルタール人の遺伝子が我々の遺伝子にも含まれていること、ネアンデルタール人が数十万年かけて環境に適応し、進化した遺伝子をホモ・サピエンスが取り込んだという奇跡のような話。ホモ・サピエンスの進化を辿るのはロマンだ。

  • とある展覧会に行った際,人類の進化について,自分が学んだことよりも,かなり知見が発達していることに驚き,興味を持ちました。
    近いテーマの「我々はなぜ,我々だけなのか」とは,違った切り口で記載されており,こちらの本の方が,なぜホモ・サピエンスだけが生き残っているのかという謎に迫っています。

    ネアンデルタール人は,ホモ・サピエンスより脳の容量が大きかったのに,なぜ絶滅したのか。脳が大きい方が知能が発達するから,生き残るとは必ずしもいえないとは目からうろこでした。
    ホモ・サピエンスが,ついネアンデルタール人他の人類を虐殺して絶滅させたと思ってしまいがちでしたが,ホモ・サピエンスの台頭が,他の人類の絶滅に関係していることは間違いないにしても,偶々そのときの環境に適し,子孫をたくさん残せたという偶然の要因による可能性も大きいというのは,少し救われた気がしました。

    ロマンが尽きないテーマであり,今後の研究の発展が待たれるところです。

  • NHKの人類誕生を見て非常に面白く思えたので
    その関連と思われるので買ってよみました。
    テレビよりも当然詳しく詳細に説明されていて
    さらにわかりやすく、興味がわいたと思います。
    なぜ、ホモサピエンスが生き残ったのか
    やはり複雑系というか、簡単な明白な答えがある
    世界ではないのがよくわかります。

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著者プロフィール

1961年8月12日、東京生まれ。東京大学教養学部基礎科学科卒業。民間企業勤務を経て、大学に戻り、東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。博士(理学)。専門は分子古生物学で、主なテーマは「動物の骨格の進化」。
『化石の分子生物学』(講談社現代新書)で、第29回講談社科学出版賞受賞。

「2017年 『カラー図解 進化の教科書 第3巻 系統樹や生態から見た進化』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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