- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140885475
感想・レビュー・書評
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「わかる」という状態になってこそ本当に文章が読めたということになる。文章を読み、自分の頭の中で展開することで、初めてそれが「体験」になり、自分の地肉となる。
本選びは、人選びである。あの人と話すと面白そうという感覚と似ている。選ぶ際のパターンは大きく2つで、未知の経験ができそうかと、自分の考えを確認できるのかである。
そんな本選びで大切なことは一つ。自分で本を選ぶこと。お金を出して自分で本を買うことで、真剣に考えるし、読まされるという感覚がなくなる。
なんとなく新しいことを求めているとき、自分が知っている関連ではなく、遠く離れた他分野へいきなり飛び込むことが比較的楽にできるのが、本のいいところだ。
ベストセラーを避けた方が良い理由は、既にその知識を持った人が世の中に大勢いて、それを知っている価値が弱くなるからだ。
読書の良いところは、誰にも縛られず、自分が自由に本を探し未知の世界を発見できることである。
知識を得ることも大事だが、発想、連想することが大事で、自分の興味の範囲外の無関係なものを眺めることが有意義なものとなる。
そこで注意が必要なのが、ゆっくり読むこと。文字や文章を追うだけでなく、そこからイメージされるものを頭の中でじっくり「展開」することが大切である。
自分で展開したものに対してどう感じるのか、どう考えるのかという部分が読書の肝となる。こうして、いろんな本と出会って、自分のわからない世界に多く触れていくことが、楽しさであるし、読書の醍醐味なのだ。 -
森博嗣のエッセイは面白い。
視点や考え方が本当に独特で、しかも好感が持てるし勉強になるからだ。
曰く、本はゆっくりと読むべし。
これはただただ文字を追いかける「速読」をしても、自分の中に何も残らないなら本を読んでもあんまり意味がないよ、ということではないかと思う。
私は実践できていないが、なるほどその通りだと思う。
私は今まで読書は情報処理能力を高めるためにするものだと決めていた部分があるが、曰くそうではなく、読書によってある種の記憶やイメージを残すこと、そうして自分の世界を広げることに読書の意味があると。 -
「国語が大の苦手で、小説を沢山読む読書家でもなく、仕事は理系、文芸とはかけ離れた処にいた。それが、一作の練習もなく、最初に書いてみたら、一週間で完成した。これを出版社に送ったら、作家としてデビュ-が決まった」・・・作家<森博嗣>さんが “読書の世界観” を一切の美辞麗句を排除し、単刀直入に語った体験的読書論。「本の選び方として、僕が指摘したいのは一点だけ。とにかく、本は自分で選べ。 本書のテーマは、この一点だと思っていただいてもかまわない」・・・。
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読書本といえば、オススメ本の推薦があったり、あの本は実は…という解釈があったりするものですが、この本では「 読む本は自分で吟味し、自分で決めましょう」と強調します。
また文章を書くことについての項も長く、良い文章を書くコツも記載されています。
本を読む価値は、本を読んでおくことで引き出される着想や連想が大事であると。そこから得られる情報の記憶ではないと。
ネット上に本の感想を上げるなら…というくだりが面白い。本の引用だけするのは違法だし、読んで自分はどう感じたか何を考えたかを記載しておけばいくらか記憶に残るのではないの?そもそもそんな感想文や評論を書くより、小説を自作すればよい、、という指摘があった。森さんはしばしばこうして極論で凡人を引き離すところがひろゆきみたい。
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自分もやってみようという読書術というより、こういう方法もあるんだなと思う内容。何か役に立つと思って欲を出して読むとと空振りしたような後味になってしまうかも。
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幾らでも文章が書ける人は、根が饒舌なのだろうか。森博嗣は著作が比較的多い割に、養老孟司と対談した別著で、識字ができないディスレクシアのように自分の事を言っていたので、一体どういう事なのだろうか気になっていた。答えは本著にあった。何のことはない、森博嗣は遠視だったのだ。
読書論というだけで私は軽くテンションが上がるのだが、森博嗣に関しては、その価値観が異なる点でも面白い。私は比較的、多読派だが、森博嗣は量より質のタイプ。どんな本でも熟読すれば、得るものがあるという。アウトプットは相手へのインプットを意識して、しかし、自らのインプットは読書以外からの方が重要と言い切る。
スマホ一つで知らない単語を検索できる世の中だから、知識を詰め込む意味は相対的に低くなるが、読書の価値は知識を得る事ではなく、体験を得る事。そして、脳内の体験を結びつけてアイデアに繋げていくという考えが重要。難しい本ほど、その意味を解釈する事に味わいがある。読書の最中に思考が逸れて、別の事を考えることにも読書の意味がある。これらの発言は、共感できる所があった。 -
森博嗣先生の個人的な読書体験と読書に対する考え方が書かれたもの。
現代の多くの読書家がやっていること、考えていることとは、全く真逆のことが書かれていて、読み物として面白い。
読書に共感体験を求めている人には、不向きな本です。
森先生にとっては、ブクログやTwitterに本の感想を書く行為自体が、信じがたい行為に思えることでしょう。