平成論―「生きづらさ」の30年を考える (NHK出版新書 561)

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レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140885611

感想・レビュー・書評

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  • 「平成」という時代を、「宗教」という視点から分析した本です。社会の変化とそれをうけた宗教界の変遷が、相互に影響しあって平成の「空気」を作り上げた様子がわかりやすくまとめられています。

    「激動の昭和」につづく平成の30年は、「失われた20年」などともいわれるように、閉塞感のある時代だったような印象があります。
    もっとも、平成生まれの私にとってはこれが「フツウ」でしたから、そこまでネガティブなイメージではないのですが…。
    ただ、阪神淡路大震災やオウム真理教のサリン事件、9.11同時多発テロや3.11東日本大震災など、多くの「事件」が印象に残っている時代ではあると思います。
    それぞれの事件によって、社会全体が「暗く」なったり、その流れを変えたり(特に昨今ではポピュリズムやナショナリズムがその勢いを増していると思います)したことも、平成の時代の特徴なのかもしれません。

    なかでも本書では「生きづらさ」という言葉がキーワードとして取り上げられていました。昭和のように地縁血縁が薄くなり、コミュニティが弱体化する中で、個人個人が「生きている」という実感を持ちにくくなったり、「生きている」ことの目的を見出せなくなったりしている。そのことが「生きづらさ」の原因になるし、またそれまでの宗教観のままでは様々な人々の「つらさ」を救うことができない。
    これらの分析は説得力がありましたし、平成という時代の「核心」をついているように感じます。

    宗教学についてや宗教論についての記述の部分では少し読みにくい部分もあるかもしれませんが、全体としては中学・高校生にとっても読みやすい本だと思います。
    平成の時代を振り返る際に、とてもいい本だと感じます。

  • 思ってたのと違ったけどまあまあ
    平成論というタイトルに惹かれて読んだけれど,中身は平成における宗教論.池上さんのわかりやすい総論のあとに各著者がそれぞれ1章ずつ考えを書いている.
    ざっくりまとめると,バブル崩壊からの心の拠り所として宗教は力を持ったが,オウムの事件で敬遠.ただスピリチュアリティはパワースポット巡りの流行だったり災害を機に改めて重要視されてきている,といったかんじ.
    日本での仏教が衰退しているのは僧たちが広める努力をしてこなかったからだ,という記述にはなるほどなと思った.日常で仏教にかかわる場面がないなかで葬式のときだけ高い金を要求されるのだからよいイメージはもてない.
    宗教観の希薄な日本で心の拠り所を確保するには,各個人のリベラルアーツ(自由にする技)にかかってしまっている.

  • おなじみ池上さんが「世界の動きの中の日本」
    弓山達也さんが「宗教教団の活動と個人のスピリチュアルティへの関心」、
    上田紀行さんが「伝統仏教のなかの新たな動き」
    中島岳志さんが「ナショナリズムと宗教」をテーマに
    話したものを再構成加筆修正したもの。

    みなさん東工大で教鞭をとっていますが、
    とてもわかりやすい面白い内容になっています。

    池上さんの本をたくさん読んできて今回初めて知ったのですが、池上さんは海外で「宗教は何を信じているのか」聞かれるたびに「仏教だ」と答えるそうです!

    でも科学的な視点から輪廻転生を信じることはできない。

    〈でも「永遠の命とは何だろうか」と考えてみるとー私が死んだら私自身は原子のレベルにまで還元され、それがまた集まって別の生命体になるのではないか。そういうかたちで、私を構成していたものは、この宇宙が存在するかぎり存在し続けるのではないかーというように思うことで、何とか自分を納得させたりもしています。本当に納得できるかどうかは別にして、「永遠の命のなかで自分の存在を考えていく」ということが一つありえるのかなと思っています。〉

    とても良いお話をきくことができました。

  • 池上氏をはじめとした東工大の教授たちの
    平成論と宗教論。
    とても読みやすく面白く読めました。
    こういう視点でまとめると、平成というのは
    確かに宗教的というか、精神世界というか、
    そういうものについては、分岐点的なところで
    あったような気がします。

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著者プロフィール

池上 彰(いけがみ あきら)
1950年、長野県生まれのジャーナリスト。東京工業大学特命教授、京都造形芸術大学客員教授、名城大学教授、信州大学・愛知学院大学特任教授、特定非営利活動法人日本ニュース時事能力検定協会理事を兼任する。
慶應義塾大学経済学部卒業後、1973年から2005年までNHKで記者として勤める。以降、フリーランスのジャーナリストとして活動。ニュース番組で人気になった。2012年から2016年までは東京工業大学リベラルアーツセンター専任教授を勤め、定年退職後も学生教育に関わっている。

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