平成論 「生きづらさ」の30年を考える (NHK出版新書 561)
- NHK出版 (2018年9月10日発売)
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感想 : 17件
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Amazon.co.jp ・本 (208ページ) / ISBN・EAN: 9784140885611
みんなの感想まとめ
宗教の視点から平成という時代を振り返る本書は、30年間の社会の変化と人々の「生きづらさ」を深く掘り下げています。著者たちは、平成の時代がもたらした心の葛藤や生きる意味を見出せない状況を、宗教の観点から...
感想・レビュー・書評
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東工大のリベラルアーツの先生が宗教を軸に平成を語る内容。興味深いのは中島岳志の「スピリチュアリティーとナショナリズムの融合」に関する箇所で昭惠夫人について語っている部分。ナチュラリストとしてのナショナリストである昭惠夫人が、右派権力者である安倍晋三氏とダイレクトに結びつく事を懸念。この根っこにあるのは60年代のヒッピー運動の流れの一つが右傾化し、陰謀論やスピリチュアル・ナショナリズムへと展開しているとのこと。
本書刊行後、令和に入り安倍晋三氏が銃撃され、ひとつの時代が終わったことを意味するようにも思えるが、この事件から別の形で政治と宗教の問題がクローズアップされている。この問題は本書で論じられている部分とどのような関係にあるのか、それとも全く無関係な別問題なのか。平成から令和へと続く政治と宗教の問題の連続性について、本書を手掛かりにあらためて問い直す必要があるのではないかという気にさせられる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
◆5/24 シンポジウム「自由に生きるための知性とはなにか?」と並行開催した「【立命館大学×丸善ジュンク堂書店】わたしをアップグレードする“教養知”発見フェア」に登壇者の推薦書としてご紹介いただきました。
http://www.ritsumei.ac.jp/liberalarts/news/article.html/?id=22
本の詳細
https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000885612018.html -
我らが東工大の誇る教授である池上彰、上田紀行などリベラルアーツ研究教育院の 4 人の先生によって書かれた本である。平和を目指す思いを込めて名付けられたが、多くの人が「生きづらさ」を感じ、「生きる意味」を見出せず、「生きている実感」がなかった平成の時代、実際はどのような時代だったのか?宗教の視点から平成を振り返っていく。
(生命理工学系 B2)
皆さんは自分が生まれ、育ってきた「平成」という時代がどんな時代か知っていますか?人間は社会によって作られるとすれば、自分がどこまで時代の影響を受けているのかを知ることは必須でしょう。この本では「生きづらさ」をキーワードに平成という時代を読み解いています。「昭和」の影響下で育った皆さんのご両親や先生達との違いを知るヒントにもなることでしょう。東工大リベラルアーツ研究教育院の4人の教員の共著ということで、1冊で4人の視点を知ることができるお得な本でもあります。
(選定年度:2019~) -
読了。
平成論、とあるが、実際は平成時代の宗教のあり方に対する対談集。オウム事件や仏教の衰退について、平成時代の閉塞感を誘因とするような記述は、ちょっと違和感あった。平成って、そんなに閉塞感に満ちたつらい時代だったっけかな…? -
「平成の社会と宗教」というテーマで4人の論者がそれぞれの立場から平成の30年を振り返り語った本。
平成の30年間は、ぼく自身が生まれてから今までの期間とほぼ一致したので、この30年間の振り返りはすごく身近に感じた
今まで宗教について、深く考えたことがなく、なぜ人は宗教にはまるのか?について考えさせられたり、仏教やキリスト教など2000年以上もの変わらず続いている宗教を学ぶ意義があるのかを考えるきっかけになった。
WHOによる健康の定義も1998年にスピリチュアルという言葉が加わるほど宗教は密接に関わっている。
こと日本では宗教に対する嫌悪感は多少あるようだが、これはおそらく1995年の地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教の影響が大きい。
しかし、実際は宗教団体に対する信仰は低下しているものの、パワースポットやオーラなどのスピリチュアル(宗教性)に関しては、存在意義が強くなってきている。
これは、ひとえに現在の人たちの「生きづらさ」を反映している。
昭和時代の敗戦から豊かな日本を取り戻そうと一丸となってひたむきに頑張っている時代には感じることのなかった「なぜ生きているんだろう」という悩みが、バブル崩壊後の平成に一気に溢れてきた。
ものは溢れて豊かなのに、なぜか生きている実感がない。そういう人にとって、拠り所にできるもの、それが宗教なのだろう。
個が強くなってきている昨今、教団としての宗教は弱くなっているかもしれないが、教団とは関係ない個人に対する宗教性は強い。
人が何を拠り所にして生きていくのか?最近は高齢者の在宅医療に関わっているので、いろいろ考えるきっかけになった。
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【問いかけて30年】「怒涛の時代」とも称される平成の世を、「生きづらさ」をテーマとして、主に宗教面から読み取ることを試みた作品です。著者は、東京工業大学でリベラル・アーツを教える上田紀行ら4名。
「そんなこともあったなぁ」と読み進めるうちに、平成の一側面をわかりやすく解説してくれる一冊でした。難解なところはまったくなく、コンパクトでありながら同一テーマに関する複数名の指摘を合わせて読み進められるため、頭の中で比較をしながら考えることができる点も高評価です。
〜私たちを取り巻く社会はさまざまな問題を抱えています。それらの問題の根底には,日本でも世界でも,若者を中心にして広がる「生きづらい」という感覚が大きく関係しているのは見過ごせない事実でしょう。〜
やっぱり1995年は分水嶺の年だと再実感☆5つ -
「平成」という時代を、「宗教」という視点から分析した本です。社会の変化とそれをうけた宗教界の変遷が、相互に影響しあって平成の「空気」を作り上げた様子がわかりやすくまとめられています。
「激動の昭和」につづく平成の30年は、「失われた20年」などともいわれるように、閉塞感のある時代だったような印象があります。
もっとも、平成生まれの私にとってはこれが「フツウ」でしたから、そこまでネガティブなイメージではないのですが…。
ただ、阪神淡路大震災やオウム真理教のサリン事件、9.11同時多発テロや3.11東日本大震災など、多くの「事件」が印象に残っている時代ではあると思います。
それぞれの事件によって、社会全体が「暗く」なったり、その流れを変えたり(特に昨今ではポピュリズムやナショナリズムがその勢いを増していると思います)したことも、平成の時代の特徴なのかもしれません。
なかでも本書では「生きづらさ」という言葉がキーワードとして取り上げられていました。昭和のように地縁血縁が薄くなり、コミュニティが弱体化する中で、個人個人が「生きている」という実感を持ちにくくなったり、「生きている」ことの目的を見出せなくなったりしている。そのことが「生きづらさ」の原因になるし、またそれまでの宗教観のままでは様々な人々の「つらさ」を救うことができない。
これらの分析は説得力がありましたし、平成という時代の「核心」をついているように感じます。
宗教学についてや宗教論についての記述の部分では少し読みにくい部分もあるかもしれませんが、全体としては中学・高校生にとっても読みやすい本だと思います。
平成の時代を振り返る際に、とてもいい本だと感じます。 -
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おなじみ池上さんが「世界の動きの中の日本」
弓山達也さんが「宗教教団の活動と個人のスピリチュアルティへの関心」、
上田紀行さんが「伝統仏教のなかの新たな動き」
中島岳志さんが「ナショナリズムと宗教」をテーマに
話したものを再構成加筆修正したもの。
みなさん東工大で教鞭をとっていますが、
とてもわかりやすい面白い内容になっています。
池上さんの本をたくさん読んできて今回初めて知ったのですが、池上さんは海外で「宗教は何を信じているのか」聞かれるたびに「仏教だ」と答えるそうです!
でも科学的な視点から輪廻転生を信じることはできない。
〈でも「永遠の命とは何だろうか」と考えてみるとー私が死んだら私自身は原子のレベルにまで還元され、それがまた集まって別の生命体になるのではないか。そういうかたちで、私を構成していたものは、この宇宙が存在するかぎり存在し続けるのではないかーというように思うことで、何とか自分を納得させたりもしています。本当に納得できるかどうかは別にして、「永遠の命のなかで自分の存在を考えていく」ということが一つありえるのかなと思っています。〉
とても良いお話をきくことができました。 -
池上氏をはじめとした東工大の教授たちの
平成論と宗教論。
とても読みやすく面白く読めました。
こういう視点でまとめると、平成というのは
確かに宗教的というか、精神世界というか、
そういうものについては、分岐点的なところで
あったような気がします。 -
「崩御」?
天皇が亡くなるとそう言うんだ、へえ~、というくらいで、とくに厳かな気持ちにもならず自分にとっての平成は幕を開けた。
「下血」という文字が新聞報道にも頻繁に載り、いよいよ容体が危ないとなると、学校も自粛ムードで、文化祭が取りやめになった。別に中止でもいいけど、天皇の具合が悪いのと、文化祭がなんの関係があるんじゃ?とブツクサ。
不謹慎、不遜、なんて畏れ多い態度、と今なら思うが、馬鹿な10代男子の頭の中なんてそんなもの。
平成の幕開けはバブルの余韻にまだまだどっぷり浸かったまま、何事もなく過ぎたが、異変は海外からやってきた。なんとソ連がなくなった!冷戦で二分されていた世界が、アメリカ一人勝ちの世界になっちゃった(かのようにみえた)しかしソ連という突っ返棒がなくなった途端に、世界では至るところで民族紛争が勃発。アメリカも石油利権のためにイラクを爆撃。戦争をおっぱじめる。
日本ではバブルは弾ける。突如として就職戦線が南国リゾートから南極ブリザードになる。フリーターや派遣社員が増えた。しかし、それはそれで儲かる人から儲ければいいんじゃない?的なアメリカ模倣の新自由主義政策をとった政権運営のもとで貧富の格差は広がり、もう大変。平成はどんどん暗い時代に突入。阪神淡路大震災やオウムの無差別テロという未曾有の天災人災で人心の荒廃が進んだ。そしてこれらの災害をはるかに凌ぐ3.11の大津波と原発事故の悲劇。昭和が戦争と高度成長の時代なら、平成は災害の時代だ。
平和に成るとの願い空しく、平成は実に生きづらい時代になってしまった。
そんな生きづらい世の中で若者たちが、自己をどう捉え、何に自己を委ねようとしているのか。
宗教(宗教的なものを含む)との関わりから読み解こうとした本。
なぜエリートがオウムに走ったのか。イスラム教になんの興味もない日本の若者が、なぜイスラム国へ入ろうとしたのか。その根底には、先進国中でも断トツに低い自己肯定感がある。本当の自分はこんな姿じゃないはずだ。どこかに、本当の自分がいる。というなんかふわふわした自己投影像を持っている。
そして確かな羅針盤を持たないまま、彼らはここじゃないどこかへ行ってしまうのだ。
生きづらい=生き甲斐がない、という意味。病気や貧困などの問題を抱えてなくても、人間関係がうまくいかないと、自分なんかいてもいなくても同じと感じてしまう。
だから自分が必要とされ、自分が輝ける場所を探す。それが平成を生きた若者たちの特徴。それが、カルト宗教だったり、スピリチュアルなパワースポット巡りだったり、ボランティア活動だったり、と向かう先は様々。ただ今いる場所を否定的に捉えているところは同じ。
ぶっちゃけ昔からこういうタイプの人は一定数いたと思う。青い鳥症候群って言われていた。でもこのタイプが増えているなら、生きづらい場所が相対的に増えているのか、義務教育のプログラムがそういう方向に誘導し易いかたちに変化したのかだと思う。
この本の中で既存の宗教団体や僧侶の個人的な活動の広がりを、好意的に書いてる章があるのだが、正直言ってあまり可能性は感じなかった。宗教=祈り、というか、癒しの効用をアピールしてるだけのようで、セラピスト的な役割に限定している。
宗教のダイナミズムを捉えてないという気がして残念。
納得する点もあれば、しない点もあるので、引き続き議論を重ねて欲しいと思う。
著者プロフィール
池上彰の作品
