- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140885833
作品紹介・あらすじ
歪みはどこから来たか
なぜ党幹部や政府役人の汚職がやまないのか? なぜ共産主義国で貧富の差が拡大するのか? その答えは歴史の中にあった。エリート/非エリートの金・コネ・権力をめぐる相剋の2000年を、実力派歴史家が大胆かつ明快に読み解き、超大国を蝕み続ける「病理」の淵源に迫る!
感想・レビュー・書評
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唐宋変革というのが単に君主独裁制への変化でなく、士と民、官と吏の二層社会への分化ということがわかりやすく書いてある。
国民国家というモデルに向けて近代中国は努力してきたようだが、この広大かつ多数の人民を掌握できるのか。
むしろ弊害を除きつつ中国モデルを作るのが妥当な気がする。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
中国の腐敗と格差について、制度的の歴史から考える。
わかりやすい言葉で書かれていた。
私は公務員なので、現在の日本の形や組織についてと比較しながら読めて、非常に興味深かった。 -
●世界恐慌を経て1930年代に入ると、日中の全面衝突へ向かって動き出す。日本が満州事変を起こし、1937年、盧溝橋事件と第二次上海事変で全面化する。それまで死闘をくり広げていた国民党と共産党も、提携するに至った。日本がついに共通の標的と化した。
●中華人民共和国建国後まもなく勃発した朝鮮戦争など、東西の冷戦構造が続く中、共産党が支配する大陸は、西側諸国との経済関係が極度に制限され、世界経済とはほとんど断絶していた。
●四半世紀前まで、通貨は中国各地でバラバラだった。
●日中戦争までの中国社会は、官吏の腐敗・犯罪の多発・匪賊の横行が常態だった。1950年代60年代は日本の知識人はそんな中国をこぞって礼讃した。
● 1966年から始まった文化大革命。4人組の呼びかけに応じておびただしい紅衛兵が出現し、兇行の限りを尽くした。
●鄧小平らは、毛沢東的な上下一体化をあきらめ、共産党の支配を維持しながら、同時に経済を再建する方針を立てる。
●かつて実現した清廉潔白さは、毛沢東が目指した中国の一体化によって、皆が貧しくなった結果であった。
◾️岡本隆司。中国経済史。近代中国史。中国反日の源流。清朝の興亡と中華のゆくえ。
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現代まで脈々と続く中国社会の特色、それは「士」と「庶」、「官」と「吏」に見られる上下解離の二元構造であり、そのベースは各王朝が目指したチープ・ガバメントにあった。
高貴な血族しか官吏になれない貴族制が科挙に取って代わられると、科挙に合格したエリート達「士」が特権階級を形成して富と権力を独占し、「庶」との格差を固定させた。また、行政の内部も大きく二元化した。各王朝政権は、税を減らすことを善政とし、その代わり権力機構の自己保存しか目指さなかった(必要な行政サービスは現地任せの放置だった)。このため、実際の行政を担う小官=「吏」達は、別の収入=「陋規」や「火耗」などの不正収入を必要とし、その黙認が腐敗の温床となっていったという。
「官に封建無く、吏に封建有り」、「盛世には小官が多く、衰世は大官が多い」、「王朝の興亡は君臣しか関わりがない」、「亡国亡天下」などなどが、こうした中国社会の状況を如実に表している。
中国という国の、変えようのない性が腑に落ちた良書。 -
東2法経図・6F開架:222A/O42f//K
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内藤・宮崎史学の唐宋変革論がベース。ただ、宋代以降でも単純なトップダウンの皇帝独裁に変化したわけでもなく、地域社会からのボトムアップとの関係を重視するのが本書のポイント。「士」と「吏」、更には「士」と「庶」の格差固定化という二元社会、そして特に中央から顧みられなかった「吏」には収賄が不可欠だったと解説している。
そして近現代でも「庶」の心を掴めなかった国民政府は敗退。中華人民共和国でも二重社会を前提とした構造だった(たとえば文革は下層からの攻撃)としている。