ふしぎな鉄道路線: 「戦争」と「地形」で解きほぐす (NHK出版新書 592)

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  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140885925

作品紹介・あらすじ

「戦争」と「地形」をキーワードに、普段何気なく利用している全国の鉄道路線がなぜ、どのように敷かれたのかを徹底的に深堀りする。

感想・レビュー・書評

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  • 電車に乗っていると不思議なことがある。




    例えば、東武浅草駅から出発するあるいは到着する電車に乗ると、急カーブに出くわす。




    あのような窮屈な形になったのは地形が関係しているとブラタモリだったどこかの番組で言っていたと思う。




    東海道と言えば、日本の大動脈で1872年に日本初の路線として開通した新橋〜横浜間は、東海道本線の一部としてあるものだと思っていた。





    しかし、明治時代前半の頃は事情が違っていた。東海道よりも中山道を東京〜西京(京都)を結ぶ「両京幹線」として構想していたルートだったというからビックリ。





    東海道をルートにすると、鉄道が外敵の侵略する際に利用される可能性のある、築地居留地付近に停車場を設けると、外国人がやってきて日本人との間で、不測の事態が起きる可能性があり、そこから外国軍隊の介入への口実を与える懸念があったからだ。




    さらに東海道だと、険しい箱根や富士川、大井川などの大河があり、工事に手間取るといった理由で中山道ルートが進められた。




    しかし、現実はそう甘くなかった。中山道ルートが思ったよりも険しかった。群馬と長野県境にある横川〜軽井沢間にある碓氷峠(うすいとうげ)は、標高差552メートルにもなる。この他にも馬籠峠(まごめとうげ)など難所が待ち構えていた。





    その後もいろいろあったが、1889年7月1日から新橋から神戸まで1日1往復の直通列車が運転された。この当時の所要時間は20時間あまり。





    路線を整備しようとしたらお金がかかるし、地形や政治も関わってくる。

  • これは面白い。明治時代、路線の位置は内陸部にすべく軍部が口出ししていた。近代日本は明治まで遡らねばわからない。

  • 通説と違った記述(新京成)もあり、参考となった。

  • タイトルは「鉄道路線決定と陸軍」とでもしたほうが良い感じで、鉄道路線を作るにあたってどれだけ陸軍が海岸を嫌って捻じ曲げたかを示す本でした。その視点で通しで見たことがなかったので、参考になります。
    竹内さんは地形といいながらお屋敷の話を延々とするとか、タイトルと違うことに脱線しがちな作風ですが、この本は陸軍の軍行動にページを割きすぎな気もしますが、珍しく脱線が少なかったような。

  • 鉄道路線の不思議な線形。東京-新宿の中央線、新京成など鉄道と軍隊の関係を指摘した楽しい作品。

    人の多く住む海岸、勾配も少なく建設費も抑えられるという立場と敵軍の艦砲射撃を恐れる軍部。国内の多くの鉄道で内陸を通るように軍部が強固に主張した線形が各地に見られるようだ。

    東北本線の八戸から北、それを避けるべく建設された奥羽本線、それも途中で議決が変わり能代の海岸沿いに。せっかく急勾配を避けた山陽鉄道も三原以東では財政難等から方針変更されセノハチ経由になったり、多くの路線で軍の圧力が働いているという。

    日本の鉄道史における軍の影響を指摘した力作。

  • 明治の前半、東京と西京を結ぶ両京幹線は、艦砲射撃による線路の破壊を恐れる陸軍の意向を受けて、海岸沿いの東海道ではなく、内陸部を通る中山道に沿って敷設する計画だったので、東は上野から高崎を経て横川まで、西は京都から大津までと、琵琶湖の水運を挟んで長浜から大垣まで線路を敷いた。だから、今の東海道本線は、旧東海道と違って、岐阜に迂回しているのか。江戸から改名した東京に対して、京都を西京と呼んでいたとは知らなかった。服が和服に、菓子が和菓子になるようなものかな。2019年9月22日付け読売新聞書評欄。

  • 10年間の成果が出ている?それとも10年前は自分は読解力不足か。


    鉄道と日本軍 (ちくま新書)
    竹内正浩
    筑摩書房 / 2010年9月8日発売

    鉄道と軍隊。日本における近代化の象徴を結びつける視点は有意義である。しかし、あまりこの二つを有機的に結び付けては書かれていない。鉄道は鉄道の、軍隊は軍隊の話として書かれている。軍の経路計画への関与、軍事輸送、鉄道大隊等、その関係性は書かれているが。題名に期待しすぎたか。

    再読了日:2012年3月2日

  • ふしぎな鉄道とのタイトルですが、特に不思議ということもなく、戦前の鉄道建設史を記した本でした。また、途中からは軍隊が主軸に記載されており、さながら軍隊における鉄道の役割のような体裁でした。鉄道連隊のことなどあまり知らなかったので、その点では新たな発見がありました。

    類書にないのは、奥羽本線の秋田地域の路線決定経緯、裏小倉線、新京成電鉄のところでしょうか。そのあたりは読み応えがありました。

  • 東2法経図・6F開架:516A/Ta67f//K

  • <目次>
    第1章  西南戦争と両京幹線~なぜ中山道ではなく東海道だったか
    第2章  海岸線問題と奥羽の鉄道~なぜ奥羽本線は福島から分かれているか
    第3章  軍港と短距離路線~なぜ横須賀線はトンネルが多いか
    第4章  陸軍用地と都心延伸~なぜ中央線は御料地を通ることができたか
    第5章  日清戦争と山陽鉄道~なぜ山陽本線に急勾配の難所があるか
    第6章  日露戦争と仮線路~なぜ九州の巨大駅は幻と消えたか
    第7章  鉄道聯隊と演習線~なぜ新京成線は曲がりくねっているか
    第8章  総力戦と鉄道構想~なぜ弾丸列車は新幹線として蘇ったか

    <内容>
    新書だが、学術書のような本。地図があり、地形のことも触れているが、基本的には文献を駆使して、「鉄道から見る近代史」になっている(ちょっと引用が長すぎるけど…。要約しているなら、それでよかったかも?)。

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著者プロフィール

1963年愛知県生まれ。文筆家、歴史探訪家。
地図や鉄道、近現代史をライフワークに取材・執筆を行う。
著書に『妙な線路大研究 東京篇』(実業之日本社)、『鉄道歴史散歩』(宝島社)、『ふしぎな鉄道路線』(NHK出版)、『地図と愉しむ東京歴史散歩』シリーズ(中央公論新社)など多数。

「2021年 『妙な線路大研究 首都圏篇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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