残酷な進化論: なぜ私たちは「不完全」なのか (NHK出版新書)

著者 :
  • NHK出版
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レビュー : 23
  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140886045

作品紹介・あらすじ

ヒトは心臓病・腰痛・難産になるように進化した!

複雑な道具を使いこなし、文明を築いて大繁栄した私たちヒトは、じつは不完全で「ありふれた」生物だった──。
人体は「進化の失敗作」? ヒトも大腸菌も生きる目的は一緒? 私たちをいまも苦しめる、肥大化した脳がもたらした副作用とは?
ベストセラー『NHK出版新書 絶滅の人類史』の著者が、「人体」をテーマに誤解されがちな進化論の本質を明快に描き出した、知的エンターテインメント!

感想・レビュー・書評

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  • 更科さんの本が面白いのは、文章が上手いからだと思う。
    進化について、更科さん並みに理解している人は他にもいるだろう。しかし、これほどわかりやすく面白く書ける人はいないんじゃないか。
    研究者や専門の学生に向けた文章ではなく、あくまで(生物学や進化に興味があるとはいえ)一般向けの本なのだから、あまり知識のない人にもわかるように書かないといけない。しかし、よく知っている人も読む可能性があるから、そういう人も納得させられないといけない。さらに最後まで読めるリーダビリティが文章と構成にないといけない。そのバランスのすばらしさ。
     書き出しの台風のたとえも良いが、「私たちは小さい物なら、親指の先と人差し指の先で掴むのがふつうである。でも、チンパンジーは、親指と比べて人差し指が長すぎるので、親指の先と人差し指の横腹で物を挟むことが多い。」(P139)と、ここまでは、ほかの人でも書ける。しかし次の一文「私たちも、ドアの錠前に鍵を刺して回すときに、こういう指の使い方をする。」これを読んだら、誰しもやってみて「ああ、なるほど」と腑に落ちる。この一文が書けるか書けないかで、一般向け科学の本を書く才能が決まると思う。
    また、更科さんの人柄が素晴らしい。変に煽ったり、予測を暴走させたりはせず、自説を語るときも、読者が納得できるよう、きちんとエビデンスを提示し、違う可能性も示してくれる。また、人間が思い込みがちな「人間はほかの動物より優れているのだ」という考えをあらゆる方向から「それは間違っている」と語るのもいい。

    いい科学の本を読む悦びがあった。

  • 地球上の生物は長い年月をかけて進化を続け、今も続いている。一般的な考えでは「進化」とはバージョンアップであり、その頂点に人類がいる、ということだろう。が、本書で語られる「進化」とは単なる変化であり、その生物にとって良いこともあれば、悪いこともある。生物にとって何より重要なのは次世代を残すことであり、そのためには犠牲にされた能力や残された欠陥もある。進化は進歩ではないのだ。

    今の人類だって、多くの欠陥を抱えている。直立二足歩行は脊椎や骨盤に過度な負担がかかるし、心臓の血管は非常に細くて心筋梗塞の可能性が高い。生まれたばかりの子供が自立するのに長い期間が必要。チンパンジーやゴリラよりも劣り、原始的な部分はいくつもあるのだ。

    生物は生と死を繰り返して、環境に適応できない遺伝子を排除し、適応できる遺伝子を受け継ぎながら、進化する。もし、死なない生物がいれば、環境に適応する必要はなく、その生物は進化することがない。進化とは、死んでこそ起こることであり、その意味では残酷な出来事なのだ。

    人類は進化によって寿命を伸ばしているのかもしれないが、死を遠ざけることは進化を遅らせることだ。

  • 人類は進化の終着点にいる、という自負なる認識に、様々な論拠を通して挑んでいる。へぇーと感心させられたり、そうなんだと新たな知見が得られたりで、読み進めることができる。ヒトは赤ん坊から大人になるに従い、能力の向上というプラス方向の成長しかないと思っていたが、そうではない事例が紹介されている。脳に関しては、他の書籍でも、赤ん坊から大人になるにつれ、不要な(
    使われない)能細胞は消えていくという話を目にしたが、それが酵素レベルでも起きていることを教えられた。大人の中で、ミルクを飲むと、腹の調子が悪くなる人は、その答えを見つけられる。最近、新型のコロナウィルスが発生し、その解明に全力が注がれているが、人類と細菌の生存闘争には終わりがないのだろう。

  • すごーく面白かった
    難しい話もちょくちょく入るけど、
    私みたいな生物音痴でも面白いと思った


  • ○生き物は生きるために生きている。
    ただ生きているだけで立派、何もできなくたって恥じることではない。
    ○見方によってはいい面と悪い面があり、
    それは環境や状況によって変わる。
    ○自然淘汰は大きな変化をもたらす。
    ○行動によって進化の方法が決まる。
    ○見方を変えれば違った結果となる。

    他の星に行ったら松やミミズの方が重宝されるかもよ。
    わたしを誰だと思っているの!と思わない方がいいかもよ。ということ。

  • この本で繰り返し言われていることは、ヒトは進化樹の一番上にいるわけでは無いと言うこと。人類が他の生物に較べて特に優れているわけではないということである。進化がすべて良いと言うわけでなく、腰痛だとか他の動物と較べて難産になったとかヒトが進化する中で抱えてしまった問題も多々ある。
    面白いトピックスも満載である。
    生きものの定義によっては台風も生きものといえる
    窒素の捨て方の種による違い。人であれば尿にして捨てるが魚はどうしてるの
    ヒトと腸内細菌の微妙な関係
    大人になってもミルクを飲むのは人間だけ
    ヒトとチンパンジーはどちらが原始的か・・・最終共通祖先からどちらの方が進化したか
    一夫一妻制は絶対ではない・・・ヒトが他の類人猿と別れた要因が一夫一妻制が契機かもしれないが、だからといって今の人類の本質が一夫一妻制と限らない
    単細胞生物は永遠に生きるが、死ぬことがないと進化をする事もないので一瞬で死滅する可能性がある。死ぬことで多様性がうまれ変化に耐えられる個体が出てくる可能性がある。
    等々読んで損はない一冊である。

  • 教科書には載っていない内容であり、眼から鱗の連続であった。我々人類は、人類が生物の中で最も優れていると考えてしまいがちであり、私自身も無意識のうちにそう思ってしまっていた節があるが、実際は単なる生物の一種であるということを再認識させられた。本書を読了した時点で、人類に対する認識が変わった気がする。

  • 学校で習ったことの記憶を辿ると、多くの生き物がいる中で哺乳類はそのピラミッドの頂点にあり、さらに「ヒト」はその上を極めています。確かに我々「ヒト」は他の生物を利用したり食べることで生きています。

    頂点に至る過程で私達は様々な進化を遂げてきたのですが、この本によると、その進化は「不完全」であるということが解説されています。不完全なので、私達の身体にある臓器は今も進化しているらしいです。環境に応じて進化というか対応していくのでしょう。私達は完全ではない、だからまだ変われる、というのは希望が持てた感じがしました。

    以下は気になったポイントです。

    ・宇宙空間を移動する宇宙船は、細長い形がよい。宇宙空間は完全な真空ではないので、ガスや塵・小石があり、そういうものにぶつかりにくくするには細長い形をしているほうがよい(p22)

    ・がん細胞といえども酸素や栄養なしに増えられない、がん細胞には血管をつくる能力がなければならない。がん細胞が増えるのは、増えながら新しく血管をつくっているから(p27)

    ・心臓はたくさんの筋肉でできている、筋肉は縮むことはできても伸びることができないので、例えば腕を曲げるときには、腕の内側の筋肉が収縮する。心臓の場合は、心房と心室をつくって、心室が収縮したおきには心室が拡張、心室が収縮したときに心房が拡張するようにしている(p33)

    ・進化は、前からあった構造を修正することしかできない、切ってつなげるとか、分解してから組み立てるとか、そういうことは無理である。常に変化しつづけていて、役割も変化し続けて、過去から未来につながっていくのが進化である、進化をやめるのはその種が絶滅したとき(p45、54)

    ・硬骨魚類の肺からでた血液は心臓に戻る前に、全身の細胞から戻ってきた血液(酸素が少ない)と合流する。なので酸欠状態となる(p47)

    ・鳥類は優れた呼吸器を持っているので他の動物が生きられないような空気の薄いところでも生きていける。鳥類は恐竜の子孫なので、恐竜もこの優れた呼吸器を持っていた可能性がある(p55)

    ・タンパク質に含まれる窒素の処理が大変、魚類は周囲から水を取り込んでアンモニア(毒性強い)を大量の水に溶かして、鰓から排出すれば良い。しかし陸上動物は、窒素をアンモニアではなく尿素にして捨てている、両生類より哺乳類は陸上生活に適しているが、哺乳類よりも爬虫類・鳥類はさらに陸上生活に適応している(p60、68)

    ・ニワトリの卵の中では、窒素を捨てるのにアンモニアも尿素も使えないので、尿酸に変えて排出している。尿酸は尿素よりも毒性が低く、尿素よりもさらに水に溶けにくい(p64)

    ・生物はそのときどきの環境に適応するように進化するけれど、何等かの絶対的な高みに向かって進歩していくわけではない。進化は進歩ではない(p70)

    ・腸内細菌の数はおよそ1000兆個、私達のヒトの体は約40兆の細胞でできているが、はるかに多い。腸内細菌はほとんどが大腸にいるが、小腸の中にもいる。もしも管腔内消化でグルコースやアミノ酸まで分解してしまったら、それらを腸壁あら吸収する前に腸内細菌に食べられてしまう、なので吸収する直前にグルコースやアミノ酸をつくる(p75、80)

    ・塩辛さは、塩の量ではなく、塩の粒子数による、塩がたくさんあっても、大きな塊になっていればそれほど塩辛くない(p81)

    ・ダーウィンが言ったことで重要な部分が間違っていた、進化というものは、必ず長い時間をかけてゆっくりと進むということ(p83)

    ・大人がミルクを飲むと、ラクトースは分解も吸収もされない、それを分解する酵素(ラクターゼ)がないから、すると腸内細菌によってラクトースが違う方法で分解されて、メタンと水素ができる。その結果、腹部の張りや下痢に悩まされる、しかしラクターゼ活性持続症の人は飲める(p85)

    ・か状眼(明暗→方向→形がわかる眼)で見える像はピントを合わせると暗くなり、明るくするとぼける、ピントを合わせながら明るくする方法として、レンズを入れると良い。これが私達のもつ「カメラ眼」である(p104)

    ・昆虫が繁栄している理由の一つとして、飛翔能力があるが、脊椎動物にもその能力を持つものがいる。飛翔はなかなか難しく、長い動物の歴史の中で4回しか進化していない。そのうち1回が昆虫、残り3回は脊椎動物(翼竜、鳥、コウモリ)である(p120)

    ・カルシウムはどても重要な働きをしている、神経細胞が情報を伝えたり、筋肉が収縮したらい、怪我をしたときに血液を固めたりする。私達の骨が貯蔵庫となっている(p123)

    ・ヒトはチンパンジーよりも腰椎が自由に動かせるので問題も起きてしまった、オモチャの人形で腕が動かせるものはそこが壊れやすい、動くところが弱い。腰椎には体の重みがかかってくるので腰痛が起きやすくなる(p131)

    ・直立二足歩行をしているために、私達の内臓は下向きに重力を受ける、なにもなければ骨盤の穴をくぐり抜けて落ちてしまうので落ちないように筋肉が発達している。しかしこの筋肉が出産のときには邪魔になる(p170)

    ・直立二足歩行の利点の1つは、「両手があくので食料を運べる」しかし欠点として、走るのが遅いという重大な欠点があるから。この欠点が他の利点を上回っていたから直立二足歩行は進化しなかった。これが犬歯が小さくなったこととも関係している可能性がある(p188)

    ・シンギュラリティは「技術的特異点」と訳されることが多いが、「いままでと同じルールが使えなくなる時点」のこと。具体的には、「人工知能が自分の能力を超える人工知能を、自分でつくれるようになる時点」のことである(p210)

    2020年3月31月日作成

  • 「絶滅の人類史」が面白かったので、こちらも読んでみた。前著同様、読みやすく「ついこう思いがちだけど、ちょっと待て」という論調が多く面白い。
    でも、タイトルは内容に比して少々大げさかも。

  • 請求記号 467.5/Sa 69

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著者プロフィール

1961年、東京都生まれ。東京大学教養学部基礎科学科卒業。民間企業を経て大学に戻り、東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。博士(理学)。専門は分子古生物学。2019年1月現在、東京大学総合研究博物館研究事業協力者、明治大学・立教大学兼任講師。『化石の分子生物学――生命進化の謎を解く』(講談社現代新書)で、第29回講談社科学出版賞を受賞。著書に、『宇宙からいかにヒトは生まれたか』(新潮選書)、『爆発的進化論』(新潮新書)、『絶滅の人類史――なぜ「私たち」が生き延びたのか』(NHK出版新書)など。

「2020年 『理系の文章術 今日から役立つ科学ライティング入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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