残酷な進化論: なぜ私たちは「不完全」なのか (NHK出版新書)

著者 :
  • NHK出版
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本棚登録 : 146
レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140886045

作品紹介・あらすじ

ヒトは心臓病・腰痛・難産になるように進化した!

複雑な道具を使いこなし、文明を築いて大繁栄した私たちヒトは、じつは不完全で「ありふれた」生物だった──。
人体は「進化の失敗作」? ヒトも大腸菌も生きる目的は一緒? 私たちをいまも苦しめる、肥大化した脳がもたらした副作用とは?
ベストセラー『NHK出版新書 絶滅の人類史』の著者が、「人体」をテーマに誤解されがちな進化論の本質を明快に描き出した、知的エンターテインメント!

感想・レビュー・書評

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  •  なぜ読もうと思って図書館に予約を入れていたのか忘れたが、いずれにせよ進化論の話は面白い。
     本書はそれに「残酷な」と形容詞を冠して、生物の進化について論じる。総じて「ヒト」の進化が、なにも特異ではなく、また最先端を行く進化の優等生ではないということを、いくつかの身体機能を例に語っているもの。

     酸素を取り込む呼吸の機能については、ひとつの気管(左右枝分かれはするが)で吸うも呼くもこなすヒト(や脊椎動物他も)に対し、鳥類は後気嚢、前気嚢を使い気体の流れは一方通行である。ゆえに、酸素の薄い高度を飛行できる。
     食べ物に含まれる窒素の排出方法にしても、水に囲まれて暮らす魚は窒素の単純な化合物であるアンモニアを大量の水に溶かして排出、爬虫類や鳥類はあまり水分を必要としない尿酸にしてドロリとした尿を出す。我々ヒトは、毒性を下げるためにアンモニアを尿素に変えるが、水に溶けにくいので大量の水分摂取が必要にという。非効率極まりない。
     
     我々は理にかなった他の生き物たちと較べて、いかに見劣りのする身体機能しか持ちあわせていないのかと思い知らされる。
     また、この形態は、今だからこそ通用しているものであり、環境が変わればデメリットにも、あるいはよりメリットにも働く儚い姿でしかない。
     こうして、ヒト(ホモ・サピエンス)という在り姿が、けっして進化の最終形態でもなんでもないといことが語られる。

     進化は一方向ではないし、スピードも一定ではない(選択制選択か安定性選択か、時期による)。また、進化が我々の敵になることすらあるという(我々の心臓の冠状動脈は進化上の設計ミスだと言われることもあるそうな)。 医学知識や健康な生活習慣を武器に、進化と闘うことも時には必要か(自然淘汰に抗うのならね)。

     いずれにせよ、人間は万物の霊長、などと奢り高ぶりを棄て去るにはよい内容。

    【霊長】霊妙な力をそなえていて、他のかしらであること。

  • 「人類が生まれるための12の偶然」を読んだので一層興味深く読むことが出来ました。進化というのがどういうことなのか、人間が一番優れて進化して他の生き物は進化しなかったみたいなイメージしかなかった私には、人間が進化していない部分もいっぱいあることが新鮮でした。地球という枠組みの中で生きていくためには、死ななければ子孫を残せない運命になるのも事実なんだろう。学術的にどうなのかはわからないですが、こうした想像をめぐらして進化を考えるのも楽しいものです。

  • ヒトはなぜヒトになったのか。進化とは、

    「そうなった方が生存に有利」「進化した側の繁殖力がそうでない側の繁殖力を上回ることでその種が広がる」。

    なのでヒトが今の姿になったのは「たまたま」。ヒトはまだまだ進化(退化)を続ける。従ってヒトが地球上最高の生物という事ではない。

    ヒトの目は精巧にできている、きっと誰かがデザインしたのだ、という俗説があるがそれも進化で説明がつく、と。

    ヌタウナギなどは無顎類といって顎がなく、口が丸い。口に関しては一番原始的な形態をとっている。しかし、目にはちゃんとガラス体があり人間の目に近い構造になっている。

    進化は案外早く起こる。ある鳥のくちばしの形が35年で変わった、という例がある。数百年、数千年あれば生物は変われる。

    尿素の排出について一番合理的な器官をもっているのは鳥。尿素から尿酸をつくり、ほとんど水を加えない状態のものを輩出する。そのため膀胱を持たない鳥も多い。それに対しヒトは尿酸を合成するところまではできるが水に溶けない尿酸を無理やり尿に混ぜ込んで排出するというやり方を取っている。

    これらの例からもヒトが最高の存在ではない、ということがわかる。

  • 学校でどこまで習ったのかを、既に覚えていないので、ヒトの体って、こんな構造になっているのだと、知る喜びがありました。最も興味深かったのは、ヒトと腸内細菌の駆け引きしつつの助け合いです。こんな事が自分の体で毎日起きているのかと思うと、新鮮な気分になります。そして、本題の「不完全」さについてですが、その時々の環境において、その時点での子孫を残すために最も適した方法として進化するのですが、それが部分的で万能ではないので、代わりに劣る点が出てしまう。要は、子孫さえ残せれば、あとはどうでもいいわけです。それが不完全で残酷といってしまえばそうかもしれませんが、それと向き合って少しでも上手くやっていくことの必要性も大事だと感じました。また、ヒトが他の生物よりも優れているわけではないということ。視点を変えるだけで、立場はたちまち変わってしまう。完璧なものは、この世にはないということに改めて気付かされました。それゆえに、気楽に物事を考えるのもありかなとは思いました。

  • 残酷な進化論:なぜ私たちは「不完全」なのか(NHK出版新書)
    著作者:更科功
    タイムライン
    https://booklog.jp/timeline/users/collabo39698

  • これまたおもしろかった。特に前半。後半はわりと知ってる内容が多かった。前半に新しい話題をよせたのか。それとも、私が知らないだけか。だいたい高校生物の知識などはほとんどないので。いくつかおもしろい話題を。これまたツイートをあつめて。何もできなくったって、恥じることはない。そんな生物は、たくさんいる。左心室より右心室の方が弱い筋肉でできているのは肺の毛細血管から血液が漏れだしてはいけないから。心臓自体に血液を送るのは冠状動脈。確かに右心房、右心室に流れるのは静脈血だ。それだけでは酸素が不足する。魚では心臓から送り出した血液はまずえらで酸素を受け取り、全身に酸素を渡した後の血液が心臓にもどってくる。だから心臓は酸素不足となる。それを補うために消化管を利用した肺ができたらしい。それで、ときどき水面で口を開けて空気を取り入れるのだとか。なるほど。鳥類の肺につながる道は入り口と出口と2本ある。哺乳類より効率がいいわけだ。窒素を尿素で捨てる哺乳類より、尿酸として捨てる爬虫類、鳥類の方が陸上生活にはより適している。そうか、私はラクターゼ活性持続症だったのか。だから牛乳飲んでも大丈夫なんだ。意外と進化は速いということ。考えを改めないと。
    ウマとヒトのマラソン大会。短距離は負けるけど、長距離になるとヒトが勝てる。普通哺乳類は毛でおおわれていて汗もかかないから、長距離走ろうとしても、体温が上がって走れない。ところがウマは汗をかくので長距離走れる。人類は直立二足歩行を始めると同時に犬歯が小さくなった。一夫一妻になり、オスどうしが争う必要がなくなったから。そして、オスは子育てに参加し、空いた手で食料を運べるようになり、生存競争に勝ち、直立二足歩行をする個体の遺伝子が広まった。死ななくては自然淘汰が働かない。自然淘汰が働かなければ生物は生まれない。つまり、死ななければ生物はうまれなかった。生物は「死」と縁を切ることはできない。進化は残酷なのだ。

  • 地球が有限だから、生き残れるものの数は限られる。
    そのため、自然淘汰か働く。

    自然淘汰、つまり、進化は、
    計画的ではなく、今この瞬間に役立っているか、
    のみ問題となる。

    役立つ機能を生み出すモノは、
    1つの機能だけを生み出すわけではなく、
    いろんなことに役立っている。
    従い、あちらたてれば、こちら立たずになる。

    進化においては、新しいものを
    ゼロから作ることはなく、いまあるモノを
    使わざるを得ない。
    そのため、このようなあちらたてればこちら立たずになる。

    こらが、残酷さを生み出す、と。

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著者プロフィール

1961年、東京都生まれ。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。博士(理学)。東京大学総合研究博物館研究事業協力者。明治大学・立教大学兼任講師。専門は分子古生物学で、主なテーマは「動物の骨格の進化」。主な著書に『絶滅の人類史──なぜ「私たち」が生き延びたのか』(NHK出版新書)、『化石の分子生物学──生命進化の謎を解く』(講談社現代新書、講談社科学出版賞受賞)、『進化論はいかに進化したか』(新潮選書)など。

「2019年 『残酷な進化論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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