証言 治安維持法 「検挙者10万人の記録」が明かす真実 (NHK出版新書 607)

  • NHK出版 (2019年11月11日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784140886076

作品紹介・あらすじ

自由はこうして奪われた――。
体験者の生々しい肉声から、20年におよぶ運用実態に迫る。
地域・年代別に検挙者数の推移をまとめた「ETV特集」が書籍化!

大正末期の1925年に制定された治安維持法。当初は「国体の変革」や「私有財産制度の否認」を目的とする結社―主に共産党を取締り対象としていたが、終戦の年に廃止されるまで運用対象は一般の市民にまで拡大された。
ふつうに暮らすふつうの人々が次々に検挙されたのはなぜか。当事者や遺族の生々しい証言と、公文書に記載された検挙者数のデータから、治安維持法が運用された20年間を検証する。
NHK ETV特集「自由はこうして奪われた~治安維持法 10万人の記録~」の書籍化。


 まず序章で、現在も声を上げ続けている検挙者の証言を入り口に、治安維持法がどのような目的で作られたのか、成立の経緯を概観する。途中、歴史的な記述が続く部分は、同法の成り立ちを理解するために必要と考え、やや詳しく書いたが、証言を中心に読んでいきたい読者は第一章から読み進め、必要に応じて序章に戻っていただいてもいいだろう。
 第一章から第五章では、法律が運用された二十年間の検挙者数のデータを分析して特徴的な変化を示す時期や地域を各章ごとに絞り込み、当時の出来事を、該当する証言者のエピソードを通して描いていく。同時に、証言者たちがなぜ検挙されたのか、時代的な背景や法律の運用状況を専門家の見解を交えながら検証する。
 第六章では、治安維持法をはじめとする戦前・戦中の治安体制と戦後の治安体制の連続性について検証し、終章では本書に登場した証言者たちの戦後の歩みを見ていく。
 書籍化にあたり、番組内で紹介することができなかった当事者の証言やエピソードをできるだけ織り込むよう心がけた。
 戦後七十四年が経過したいま、当時を知る方々から話を聞くことはますます難しくなっている。しかし時代が遠ざかれば遠ざかるほど、実際に出来事を体験した人の生身の感覚こそが重要性を増していくのではないだろうか。さらに強調しておきたいのは、今回取材に応じてくれた証言者の誰もが、治安維持法は遠い昔の無関係な法律ではなく、その時代を知らない私たちにも重要な示唆を与えるものと考えていたことだ。
 本書がかつて存在した治安維持法と、この法律によって人生を変えられた多くの人の声の一端を伝え、これからの社会を考えるための一助となることを願っている。(「はじめに」より)

みんなの感想まとめ

自由が奪われた歴史を深く掘り下げる本書は、治安維持法がもたらした影響を、当事者やその遺族の生々しい証言を通じて伝えています。法律の成立から運用に至るまでの経緯を明らかにし、検挙者数のデータを基に時期や...

感想・レビュー・書評

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  • 知らんこといっぱいあった。
    今の日本もヤバい。

  • 治安維持法による検挙者数のデータを土台として、治安維持法がそれぞれの時期でどのような特徴を持っていたのか示す本。
    「ETV特集」の番組を書籍化したという成立経緯もあって、当事者・遺族の証言を意識的に入れている。治安維持法によって人生が曲げられた人々の生々しい話があるため、入門用によいと思う。

    当初の共産党対策の代表例として「三・一五事件」、検挙対象の拡大・地方への波及の代表例として「二・四事件」、植民地での適用実態、拡大解釈の代表例として「生活図画教育事件」について述べられている。
    著者は「横浜事件」を取り上げていないことについて「力不足」と書いているが、本書の文脈からすると取り上げないのは一理あると思う。

    植民地での治安維持法の運用などは、まったく知らなかったので読んだ意義があった。
    あと、自白調書に証拠能力を認めるのは、本書によれば1941年の治安維持法改正で盛り込まれ、戦後になって一般の刑事事件にも拡大されたという。

    戦後の「公安」の源流は、治安維持法の下の思想検事、特高警察にあるので、現在に無関係な話ではないのですよね。
    なにしろ思想検事の代表格ともいえる人物が戦後には最高裁判事になっているのだし(池田克)。

  • ETVで放送されたものが書籍化されている。2019年に放送されたらしく、残念ながらリアルタイムでは観ていない。なんとなくしか理解していなかった治安維持法がこの本のおかげで今回かなり鮮明になりとても勉強になった。本当に恐ろしい法律だ。それが今、共謀罪に引き継がれている。治安維持法も施行されて3年目から適用されていった。最初は共産党員だけに絞られていたのが、次第に対象者が広範囲になっていき、仕舞いには「戦争反対」と思うだけで検挙されるようになっていった。多くの方に読んでもらいたい本だ。

  • 東2法経図・6F開架:326.8A/O25s//K

  • 2020/12/17証言治安維持法
    25年普通選挙法 国家の打倒ロシア
    国体変革の予防ため
    28年改正 死刑を導入
    315事件 小林多喜二
    33年大検挙時代 15千人逮捕

  • 基本的人権を剥奪する刑事罰を規定する以上、厳格な法解釈(恣意的な運用を防ぐ)や国民の負託に応えるだけの内容でないといけない。

    治安維持法は議会での冷静な反論・批判もあるにも係わらず、見事戦時下のどさくさにまぎれて法案は成立してしまい、共産主義者でもなく、反体制派でもない一般市民を容赦なく取り締まった。

    そう考えると日本国憲法が一種の防波堤になってきたんだなぁと思ったり。

  •  大正末期の1925年に制定された治安維持法。当初は「国体の変革」や「私有財産制度の否定」を目的とする結社、主に共産主義者を取締の対象としていたが、終戦の年に廃止されるまで運用対象は一般の市民にまで拡大され、普通に暮らす普通の人々が次々に検挙されたました公文書に記載された検挙者のデータと当事者や遺族の生々しい証言や手記を通して、治安維持法が運用された20年間を検証します。
     多くの一般市民を監視し、検挙、厳しい取り調べと拷問、獄中や出獄後の苦しい生活が生々しく証言されます。法律改正と拡大解釈により、多くの市民の自由を奪っていった治安維持法。今、政府は、治安維持法の再来ともいえる共謀罪を成立させ、この書で紹介されている弾圧をできるようにしています。治安維持法の恐ろしさを知り、共謀罪を使わせず、えん罪も生まない運動を強めていくことが重要です。

  • 行為どころか思想さえ取り締まる点、治安維持法は宗教裁判や魔女狩りを実現し得る法律だった。見せしめ目的でランダムに検挙する手法(わざわざ罰する必要すら無い)は、国民を締め上げるのに効果甚大で、もう一つの「魔法の杖」だったように思う。印象的なのは、朝鮮において検挙された現地人が、地元の人たちの支援を受けたのに対して、国内でアカのレッテルを貼られた人は、村八分にされ、社会的に抹殺されたという差異。悪法の猛威とは別に、地域の人々がどのような価値観を有するかが、個人の意志や立場の束縛に直結する、という好例と感じた。現代の感覚では信じられない事例の数々が紹介されるが、この法の恣意的な適用を危惧する声は当時からあった。過去の出来事と捉えるのはた易い。

  •  テレビ番組が元なので読みやすい。中公新書『治安維持法』が当時の政治状況なども踏まえた、政治部的な取り締まる側からの歴史だとすれば、本書は社会部的な個別の事例と証言が中心の、取り締まられる側からの歴史、と言えようか。法成立当初は結社の規制だったが1930年代を通じ運用が拡大され、1941年に運用に合わせるべく改正された、という大まかな流れは両書で共通する。
     朝鮮での状況が興味深い。1925〜27年や41〜43年は日本より検挙者数が多い。転向政策は日本ほど効果は出ず、また、送検率・起訴率は日本よりもはるかに高かったとのことだ。
     他方、腑に落ちない点もある。日本での検挙者数は1934年以降激減。本書では、活動の場となる外郭団体の減少と転向政策の2点を要因として挙げ、専ら後者を解説している。確かに転向を強いられた証言は取りやすいだろう。が、それだけで一年で突如3分の1以下に減少するのか。また、運用が拡大されても検挙者数が増えなかった理由もはっきりしない。

  • 今の時代だからこそ読む本といえる。
    治安維持法は制定当時の趣旨や答弁からは驚くほどどんどん掛け離れていき、最後には自己増殖的に誰にも手がつけられなくなっていった。取り締まる対象はどんどん拡大し、逮捕理由もこじつけや拡大解釈が当たり前になっていく。さらには、終戦後に戦中の治安維持法当局側の人物が「あの時はしょうがなかった」などと言ってしまう。
    これが戦争であり、これが法が権力の手先に成り下がった成れの果て。共謀罪の時代に、現代人はよく読んでおくべき一冊。

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著者プロフィール

1953年、埼玉県生まれ。小樽商科大学商学部教授を経て、2018年に定年退官、同大学名誉教授。専門は日本近現代史。主な著書に『戦前文部省の治安機能』(新装版、明誠書林)、『特高警察』(岩波新書)、『「戦意」の推移』(校倉書房)、『よみがえる戦時体制』(集英社新書)、『検証 治安維持法』(平凡社新書)、『治安維持法一〇〇年』(編、大月書店)、『治安維持法と「国体」 』(著、同上)など。

「2026年 『「国体」とは何か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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