人類の選択 「ポスト・コロナ」を世界史で解く (NHK出版新書 632 632)

  • NHK出版 (2020年8月11日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (232ページ) / ISBN・EAN: 9784140886328

作品紹介・あらすじ

連帯か孤立か、独裁か民主主義か──人類はコロナ禍を経て、どのような選択をするべきか。新型コロナウイルスの感染拡大で、世界はいま、さまざまな局面で転換点を迎えている。本書ではまず、感染症がいかに時代を動かしてきたか、現下状況と類比し、詳細に分析。その歴史的知見を手掛かりに、この危機は、人類にとって、リスクなのか、クライシスなのかを正確に見極める。インテリジェンスに長けた著者ならではの視点で、ポスト・コロナにおける、アメリカ、中国、ロシア、英国、EU諸国、イスラエルなど大国の生存戦略を展望。さらに、日本の未来と人間の生き方に確固たる指針を示す!

みんなの感想まとめ

人類が直面する選択を深く考察した本書は、コロナ禍を通じて歴史的な視点から現代の危機を捉え直す試みがなされています。著者は感染症がもたらす社会的影響をアナロジカルな視点で分析し、各国の対応をタイポロジー...

感想・レビュー・書評

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  • 年始用の手持ち本がなくなり、読了済みの本棚から。ブクログに登録していなかったが、読むと、既視感がある。が、定かではない。佐藤優は著作が多く似たような発言をするので、混同しているのかも。いずれにせよ、少し古いが、味わって読む。

    ポストコロナとは、コロナ後の世界の事だが、それに関しての細かな話ではない。寧ろ、コロナ禍における人類の混乱を歴史のアナロジーやタイポロジー的な手法で考える内容であり、パンデミックこそ民主主義の危機を招きかねないという話。帯に書かれたのは、ハラリ型かトッド型か。それ以外にもロックとホッブズ、カールシュミットやハーバーマスの対比などで現象を切り分けていく。また、ペストやスペイン風邪が歴史に与えた影響なども解説する。

    ー 百年戦争というのは、イギリスとフランスとの間で繰り広げられた領土戦争です。この戦争中、両国で農民の大きな反乱が勃発しています。どちらも戦争続行のために課せられた人頭税に対する反対が動機となった反乱です。しかし、村上陽一郎が『ペスト大流行』で指摘しているように、「この農民反乱の本質は、農奴の解放を目的としており、さらには富裕な教会聖職者の弾劾をも目的として兼備した体制変革運動」でした。有名なジャンヌ=ダルクの神がかった活躍で、戦争はフランスの勝利に終わったものの、戦争と疫病が同時に重なったことにより、英仏の諸侯や騎士は没落し、両国ともに中央集権化が進展していく。すなわち、中世を特徴づけていた封建社会や農奴制が崩壊し、国王を中心とした国家機能が強化されていくのです。

    ー なぜ、このインフルエンザに「スペイン風邪」という名前がついたのか。大戦参加国においては、戦時中には情報統制が敷かれます。そのため、感染症の発生という情報も隠されていました。しかし、中立国だったスペインは情報統制をする理由がありません。そしてこの時期、スペインでもインフルエンザが流行し、国王まで感染してしまったため、大々的に報道された。それがきっかけで「スペイン風邪」と呼ばれるようになりました。

    対比に戻るが、政治の暴走についての興味深い記述。ナチスが選挙で選ばれた事はカールシュミットの言辞に符合するし、ハーバーマスの「順応の気構え」は政治だけではなく専門家の言いなりにしかなれない大衆の限界を皮肉る。いずれも、再び陥りかねない危機に対する警鐘だ。こういう要素が合わさる時、最も気にしておくべきは、合理的無知を利用する為政者側の合理的理由の有無とその中身だ。殆どの場合、それがよく分からないただの熱病やパラノイアだったりするから、堪らない。ポストコロナに関わらずだが、政治技術が一人歩きする時代は、既にクライシスとも言える。

    ー これは「俺の言うことを言じろ」という、一種のパターナリズム(父権主義)です。かつてハーバーマスは「後期資本主義における正統化の諸問題』という著作で、「順応の気構え」という状況を指摘しました。なぜ人びとは十分に教育を受け、理性的な判断をする下地ができているにもかかわらず、為政者の暴走を許してしまうのか。ハーバーマスによれば、「たとえ理解できないことがあっても、誰かが調べて分かりやすく説明してくれるだろう」というような「順応の気構え」が生じてしまい、積極的に自ら物事を検証するという発想が希薄になり、その結果、政治の暴走が許容されてしまう。

    ー 初期ナチス・ドイツの理論家であるカール・シュミット(一八八八~一九八五)もまた、民主主義と独裁は矛盾しないことを説きました。すなわち、全国民が一人の指導者に委任する場合も民主主義原理は担保されていることになります。ここで選ばれた一人は国民全体の利害を体現する「質的に異なる唯一者」ということになるわけです。民主主義という観点からは、民意がどう反映されているかが重要であり、それが議会制であっても独裁制であってもいい。民主主義原理はその中に独裁制へつながる潜在的可能性をつねに含んでいるのです。

  • ほとんど同時期に刊行された朝日新聞出版『危機の正体
    コロナ時代を生き抜く技法』を一週間前に読みました。
    佐藤優さんのコロナ禍新刊をずっと楽しみにしていて
    どちらもとても面白かった。
    もちろんほんの少しは重なった内容もありますが
    それでも、本当にすごい、さすが。
    (だけど、焦っていたのかな?
    35頁ギリシアがギシリアになっていました。)

    まずアナロジカルな視点を重視して、
    感染症が歴史に及ぼした影響を概観。
    アナロジー的思考とは、類似性に着目すること
    すなわち、ある状況を、別の時代・別の状況との類比に基づいて理解することです。
    それが「ポスト・コロナを世界史で解く」の意味です。

    それに対してタイポロジー的思考というのがあります。
    タイポロジーとは「類型」のことで
    複数の状況を典型的なタイプに分けて理解することが
    タイポロジー的思考です。

    ここで、「リスク(予見可能な不都合な出来事)以上クライシス(予見が難しく、生き死にに直結するような危機)未満」の危機という補助線を引くことで、各国の対応をタイポロジカルに考察する視点を獲得できるのです。
    一見、多様で比較するのが困難に見える事象群も、適切な補助線を引くことで類型的に考察できるわけです。

    わかりにくい説明になってしまいましたが
    しかし、この本ではこの数か月私たちがテレビや新聞で目にしていたさまざまなニュースを佐藤優さんが明快に解説していきます。

    コロナはもちろん、「白人警官によるアフリカ系アメリカ人殺害事件」「ロシアで第二次世界大戦終結の日がこれまでの9月2日から一日遅れの9月3日になったこと」「GAFA対国家の行方」「中国による香港への国家安全法制導入」など。

    そして私たちのすべきこと。
    本を媒介にして、他者と対話し、他者の固有性を尊重しながら、自分の世界や内面を見つめ直していく。
    一人ひとりの中に友愛をつくっていく。
    友愛があってはじめて、自由と平等をともに人びとが享受できる制度が機能する。
    個のレベルで人間関係を構築することで
    立ちどまって考える機会を増やしていく。

  • 筆者は、このコロナ危機は『本当の幸せとは何か』『人生の意味は何なのか』を問うよい機会だという。そして、その考察は人間の内面に向かうものであり、そのよりどころは哲学、宗教、歴史であろうとも言う。本書は問題提起とともに、哲学、宗教、歴史のエッセンスを盛り込んだものであり、1冊で学べることが非常に多い貴重な1冊である。

  • 元外交官の佐藤優が、文字通りポスト・コロナをどう生き抜くかについて分析した一冊。

    過去の歴史に照らし合わせて分析してるのは、今までの本と違って腑に落ちた。

  • 大変為になる鋭い考察が書かれていた。
    最近のニュースは、”自己の心を覗きこみ過ぎると魂がインフレーションを起こし、ロマン主義的なナルシシズムや暴力が生まれてしまう”という記述の通りだと思う。

  • 2021/11/04
    歴史において感染症がもたらした様々な影響を振り返るとともに、それらの経緯を踏まえつつ現在の問題点と近未来への選択について論じた内容。
    感染症という危機によってその当時の世界の問題が浮き彫りにされ、それに対する為政者の対応で世界の歴史が動いた様子がいくつかの事例で語られるとともに、為政者のあるべき姿が平時と危機の場合とでは異なっていることも示される。
    それを踏まえて現代を見るとやはり世界・社会が抱えていた歪みや問題点がコロナ禍によって顕在化して、それらへの対応が国によって異なることも明らかになった。
    連帯か孤立か、民主主義か全体主義か…後者の方へとうごめいてきた歪みをコロナ禍を機にどうとらえるべきか、識者の意見も含めて語られているが民主主義と全体主義が決して矛盾するものではないことも説明がなされている。
    振り子が加速するのか減速するのかは判らないし、どちらが正解かも判らないが、まとめの部分でそのとおりと感じた内容を記録しておく。
    …思考停止に陥らない事、そのためには「立ち止まって考える」こと…

  • 【琉球大学附属図書館OPACリンク】
    https://opac.lib.u-ryukyu.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BC01981415

  • 読書メモ

    感染症が世界史に及ぼす影響をアナロジー的な思考で、政治や国家のあり方という文脈から解釈や気づきを与えてくれる。

    全体主義と民主主義の対立
    全体主義と情報化社会の親和性

    感染症により浮き彫りになる新帝国主義

    内面性の爆発
    個を深堀りしたところに、地下水脈のように皆がつながっているのか

  • 博覧強記な著者の手になるコロナ論。リスクとクライシスの間ってのは言いえて妙。各章末の関連図書紹介も参考になる。

  • ●ポストコロナの世界情勢は大きく変化する。従来の国際協調体制を維持することはできなくなる。しかし、その具体的イメージについては現時点では何も語れないだろう。いずれにせよ、司法権、立法権に対して行政権が優越し、人工知能技術を用いた国による監視が強まることは間違いない。
    ●コロナの封じ込めや被害の度合い、経済回復への着手と言う点で、現時点では中国に分があります。アメリカ国内に深刻な文化を抱えてしまっている。こうした点を踏まえると、被害が相対的に小さく済んだ中国は、今まで以上に勢力の拡大に拍車をかけていくでしょう。
    ●現在のEUは、ナショナリズムの抑制と言う理念と、ドイツの経済ナショナリズムと言う現実のシステムとの齟齬が露呈している状況が続いています。
    ●一国ニ制度の行方。逃亡犯条例改正案を早期に成立させた理由は、新型コロナのためどの国も内政に関心が集中するようになり、この時期なら、国家安全法制を成立させても、国際批判は少ないと考えたわけです。
    ●スウェーデンの政策。予見可能とされているリスクとは何か。高齢者の死亡率が高いと言う事です。逆に言えば福祉国家を支える生産人口は相対的にリスクが低い。生産人口の維持を優先するスウェーデンの政策は、ソフトな優生思想と言えるものなのです。
    ●新型コロナウィルスの危機は「リスク以上、クライシス未満」と言う性格

  • 今までのことのわかりやすいまとめ

  • 資本家には時間賃金より出来高賃金を採用するインセンティブがある。
    当たり前のようにして、めから鱗の言葉です。

  • ☆☆☆2020年9月☆☆☆


    世界史の大きな流れから、コロナ禍に陥った現代の問題を指摘する。リスク以上、クライシス未満の状態をどう捉えるのか?
    このような状態では「行政力」が肥大化しやすいと筆者は指摘。政府が強くなりすぎるという事か。そして政府は「力」を手にすると、平時に戻ってもなかなか手放しはしない。
    私もそれを危惧している。
    「敵基地攻撃能力」「沖縄に対する差別」など、恥ずかしながら自分の理解がこれまで足りなかったことにこの本を読んで気づいた。
    「薄い人間関係」を大切にという話も頷ける。
    佐藤氏の「資本主義」に関する著作でも、直接の人間関係を大切にすることがと説かれていた。
    少しでも実践したいと思う。

  • 過去に起きたことのアナロジー類比によって、現在のでき語を考えるセンスが重要

    五賢帝最後のマルクス・アウレリウス 後継者の選択に間違う

    6世紀のユスティニアヌス帝のコンスタンティノープルを襲ったペストがその後のビザンチン帝国衰退の大きな要因となった

    ペストい襲われた地中海諸国 人口が1/4になる イスラム勢力に塗り替えられる

    黒死病の流行によって中世を支配していたローマカトリック教会の権威が低下した

    アメリカ大陸の先住民 免疫なし 天然痘、麻疹、インフルエンザ、チフスなどで命を失う

    テレワークの副作用 極端な成果主義が会社側の評価基準として導入されていく

    スペイン風 アメリカのカンザス州ハスケルが発祥地であることが通説

    大戦参加国は情報統制されていたが、スペインは中立国で情報統制がなく、大々的に報道された

    スペイン風邪は3回に渡って繰り返され、第2波が最も致死率が高かった

    ジョンソン大統領は国民の感情を刺激し、「パイロットがどの滑走路に着陸するかを乗客に投票させるような」手法をとったので、政治的に勝利した

    ナチスドイツはユダヤ人をゲットー(ユダヤ人居住区)に閉じ込めた さまざまな感染症で多くのユダヤ人が死んだ イスラエルのスマートホンによる監視はやむを得ないと考えた

    ロックフェラー3代目 デビッドロックフェラー
     祖父の言葉 誰でも億万長者になれるが、その富を3代維持するのは難しい。なぜなら、大衆のやっかみによって反発にあうか、国家権力に潰される、あるいは両方によって潰される
     富の維持のためのポイント2つ チャリティをすること 国家の役に立つこと

    アメリカ、イギリス、イタリア コロナの危機を予見可能なリスクと見積もってしまった

    ドイツ、韓国、中国、台湾、イスラエル コロナの危機をリスク以上、クライシス未満と適切に捉えた

    知識人 ロコナをリスクと捉える エマニュエル・トッド クライシスと捉える ユヴァル・ノア・ハラリ

    コロナ禍のあとに起こる3つの変化
     ヒトモノカネが国境を超えて移動するグローバリゼーションに歯止めがかかる
     格差拡大 
     行政権力の強化

    全体主義化が進む3つの理由
     自由民主主義の代表であるアメリカや英国は、深刻な分断によって、民主主義が危機的状況になっている
     情報技術の進展によって、統治の効率性が高まっている
     専門至上主義への傾倒

    悪を追体験しておく
    悪から距離をとる練習をしておく

    オンラインでもオフラインでもいいので読書会をする

    山本多津也 読書会入門 猫町倶楽部

  • 過去の事例から現状を認識する.歴史を学ぶ意義とはまさに現在を過去とのアナロジーとして見つめることにあり,その王道の書.

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著者プロフィール

1960年生まれ。作家・元外務省主任分析官。主な著書に、『国家の罠』(新潮文庫)、『格差社会を生き抜く読書』(池上和子との共著、ちくま新書)がある。

「2020年 『子どもを守る仕事』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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