新世紀のコミュニズムへ 資本主義の内からの脱出 (NHK出版新書 652 652)

  • NHK出版 (2021年4月12日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784140886526

作品紹介・あらすじ

気候変動や経済的不平等をもたらす資本主義を超えて、「コミュニズム」へと至る。それは、いかにして可能なのか? コモンズ(私的所有を超えた共有物)を中核に据えた、生き生きとした社会を築く方途とは何か? 未来を生きる将来世代に持続可能な形で地球を残すことを、いかなる思想的構えで現在の不自由に優先させるか? マルクスからヘーゲル、経済学から宗教学までの多様な知見を縦横に駆使し、パンデミック後の思想的課題に鋭く迫る。「未来の他者との連帯」というアクロバティックな課題の考察にまで及ぶスリリングな展開。資本主義をめぐる積年の考察がここに結実! 大澤社会学、至高の到達点。

第1章 人新世のコロナ禍
第2章 普遍的連帯の(不)可能性
 1 簡単に理解できることなのに……
 2 倫理的な洗練の極と野蛮の極
 3 イエスの墓の前で
 4 動物としての人間の生
 5 禁欲の資本主義
 6 もうひとつの時間
第3章 惨事便乗型アンチ資本主義
 1 ソフィーの選択のように
 2 ベーシック・インカムは可能か
 3 現代貨幣理論の盲点
 4 惨事便乗型アンチ資本主義
 5 脱・私的所有
第4章 脱成長のための絶対知
 1 人新世の危機に抗するために
 2 悪い報せとよい報せ
 3 交換価値か、使用価値か
 4 科学知の運動
 5 絶対知の逆説
第5章 新世紀のコミュニズムへ
 1 知と無知
 2 新世紀のコミュニズムのために
 3 資本主義に内在するコミュニズム

みんなの感想まとめ

未来を見据えた新しい社会のあり方を探求する本書は、気候変動や経済的不平等といった現代の課題に対し、コミュニズムの視点からの解決策を提示します。著者は、パンデミック後の世界における新たな連帯の可能性や、...

感想・レビュー・書評

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  •  死者が生者を元気づけるように、「未来人」が生者を励ますことが出来れば、我々の将来は明るいものになるだろうなと小説のような感想を持ってしまいました。


     本書は著者も言うように「幽霊本」です。それは、後世の人々に影響を与えられればという呪いの書のような側面があるからです。
     キューブラー=ロスの精神的成長の五段階図式からすると、現段階の世界は、脱成長コミュニズムが実現するのはほど遠いと思われます。ただし、現状が一気に変化するパンデミックなどが一気に何度も引き起こされた場合は、実現が早くなると思われます。
     
     現実的に適用可能な新しい税制理論(COST)の紹介や精神分析学的に資本主義社会に切り込んでみせたり(躁鬱的アプローチ)、脱成長コミュニズムの理論も詳しく解説し、ヘーゲルの「絶対知」を基に資本主義の内側からの「脱」成長が可能であることを説いています。
     コロナウイルスによるパンデミックで我々の経済はずたずたになりましたが、資本主義はもうそろそろ一歩退いてもらえれば生きやすい世の中になるんじゃないかなと私自身は思っていたり、加速主義に対して疑問を持っているので、共感できる箇所の多い本でした。
     大澤さんの知識の範囲が広く、本書も十全に語られているので、良く飲み込めない箇所もありましたが勉強になりました。

  • 大澤真幸(1958年~)氏は、東大文学部卒、東大大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学、千葉大学文学部助教授、京大大学院人間・環境学研究科助教授、教授等の経歴を持つ社会学者。橋爪大三郎との共著で新書大賞(2011年)を受賞した『ふしぎなキリスト教』等、一般向け著書多数。
    本書は、2020年8月~11月に、NHK出版のウェブマガジン「本がひらく」で6回にわたって連載した「真に新しい<始まり>のために」を再編・加筆修正し、書下ろしの最終章(第5章)を加えたものである。
    著者は、本書で「新型コロナウイルスを超えて・・・どのような社会を構想すべきか、そのような社会の実現のために何を克服しなくてはならないのか」についての考えを論じていると述べているが、目指すべき社会が「(脱成長)コミュニズム」であるという結論は、斎藤幸平氏のベストセラー『人新世の「資本論」』と同様である。ただ、『人新世~』の出版は2020年9月17日なので、著者は、ウェブマガジン連載当初は独自でイメージを有しつつ、途中で『人新世~』を読んで、それを取り込み、最終的に本書のような内容・構成に仕上げたと思われる。どちらか1冊を読むなら、迷わず『人新世~』を取るが、本書には、より幅広い古今の宗教・思想を引用し、かつ、(限定的ではあるが)コミュニズムを実現するための具体的な理論・手法を紹介しているという特徴がある。
    内容的にも必ずしも読み易いとは言えず、私自身消化不良の部分があるが、私なりの理解を大まかにまとめると以下である。
    第1章:コロナ禍は、地球レベルのトータルな破局の予兆と解するべき現象である。我々は、その「破局」に際して、キューブラー=ロスが明らかにした、個人が「死」に際して経る5段階の精神ステージの第5段階と同様に、破局を直視しつつ、かつ前向きにこれに対抗する必要がある。
    第2章:我々は、コロナ禍に対処するために、地球レベルでの普遍的連帯が必要であることを自覚しているが、実際に起こっていることは、正反対の、それぞれの国民国家が利己的に行動することによる地球規模での格差の拡大である。資本主義とは、「将来の利潤」のために「現在の犠牲」を受け入れることによって成り立つシステムであるが、今の我々がコロナ禍に対処するための普遍的連帯ができないのは、「将来の利潤」の保証されない「現在の犠牲」を受容できない、すなわち、資本主義を手放せないからである。
    第3章:コロナ禍で我々が最も苦しんでいるのは、感染症対策と経済活動のトレードオフの関係である。しかし、主要ないくつかの財をコモンズにすることができれば、感染症対策をしながら、貧困化を回避することができる。即ち、上記の困難を克服するためには、資本主義からの脱出、即ち、(斎藤の唱える)「脱成長コミュニズム」の実現が必要である。
    第4章:資本主義を「内から」脱出するためには、資本主義を他のどのようなシステムよりも魅力的に見せている「自由」を、<未来の他者>(やがて確実に到来する破局に苦しむ他者)のために制限されることを受け入れる必要がある。ヘーゲルの論じた「絶対知」とは、完全に閉じているという意味で、死や破局が必然であるということを見ているのと同じであると同時に、終末の後に新しいものの始まりの可能性を直観している。
    第5章:我々が目指すべきコミュニズムとは、「全ての人がその能力に応じて貢献し、必要に応じて取る」という趣旨の平等性と自由が実現している世界であり、そこにおいて(最低限)コモンズとされるべき領域は、自然環境、ヒトゲノム、知的所有権によって守られているような文化、の3つである。しかし、コミュニズムへの移行は容易には実現できず、今回のコロナ禍のような破局的危機が繰り返し起こり、その反復を通じて、少しずつ近づいていくことになるのだろう。

    『人新世の「資本論」』、及びそのコンセプトである「脱成長コミュニズム」について、多角的なアングルから考えてみたいという向きには参考になる一冊といえるだろう。
    (2021年8月了)

  • ●コロナ禍の後も結局は、マルクスが「フランス革命の後」について述べたようなことが起きるだろう。革命の熱狂が過ぎてしまえば、人々が、約束されていた普遍的な自由の代わりに、手に入れたものは、商売の自由や私的所有権(いわば労働者を搾取する自由)でしかなかったとして、そこにブルジョア革命の限界を見た。
    ●人新生とは、人間の活動が、生態系の状態を決定する最も重要な要因となった時代という意味である。
    ●キューブラー=ロスの「死ぬ瞬間」 否認→怒り→取引→抑鬱→受け入れ。

  • こういう経済哲学みたいなの、なんとなく苦手分野ではありますが・・・。やっぱり、生きていくためには、世の中の流れは把握しておかなければならないと感じます。

    4章で、資本主義の説明あたりから、私の脳に入ってくるようになりました。結局は、1.価値を「使用価値」で考えること、2.労働の削減と分業の排除というキーワードで語られているように見えます。

    そう思うと、1-3章で述べられている、ベーシックインカムの問いは、パンデミックと切り離しても言えないのかしら?と疑問に思いながら読みます。

    未来はどうなるのか、まだ予想も出来ないけれど、資本主義は崩壊するという考え方があるということを理解した上で、自分は何を準備すべきなのでしょうか。その崩壊が、何歳で来るのかでも、もう再起不能なのか、なんとかなるのか、ちょっと違うような気もしますが。

    不確定な要素の中で、自分で応えを探しながら生きる・・・若いうちはかのでも、年齢を重ねて、老いて、選択肢も減ってきたらどこに着地すべきなのか。それも自己責任だとすると、阿鼻叫喚している老人がひしめく地獄絵のようにも思えますね。

  • 資本主義は終わりに近づいている。しかし、次に来るべきコミュニズムへの備えが出来ていない。今、どのように備えれば良いのか。という事を論じているように思うのだが、その主義主張は何となく理解できても、詳しくは理解できなかった。そもそも、本当に資本主義は終わりを迎えようとしているのか、そして本当に次に来るのはコミュニズムなのかという根本的な前提にいま一つ納得できなかった。心が動かなかった。

  • 2021.9.2 88
    資本主義の終焉。コミュニズムの難しさ。
    資本主義を学問的、本質的に捉える。どうなるか。

  • 東2法経図・6F開架:304A/O74s//K

  • 山口周さんイチオシの本。インテリofインテリの為に書かれた本。ヘーゲルの絶対知に絡めた話などは軽く睡魔が襲うほど難解であった。(私の基礎教養不足の問題でしかないが)
    現在の資本主義への多角的な視点を学んだ。

  • コロナ渦において私たちが進むべき方向性は何か。コロナ渦を人類が生き延びるために国家の枠組みを超えた連帯が必要であるはずなのに現実に起こっているのはむしろ国民国家単位での利己的な闘いである。しかし、この惨事はむしろ我々が来たるべき真のコミュニズムへと進むきっかけになるのではないか?
    最近よく見かけるコモンズの回復、脱成長コミュニズムがテーマになっています。グローバル資本主義にどっぷりつかった今の私たちにはなかなか実感しにくい未来像ですが、破滅に繋がらない隘路をなんとか通り抜けた先にある世界なのかもしれません。残念ながら相当な犠牲を払わないと実現しそうにありませんが・・

  • このコロナ禍でも株価は落ち込んでいないようだ。むしろ、コロナ特需なんてことばがあるのかどうか知らないが(ネット上にはいっぱい出てくる、びっくり)、この機会に相当もうけている企業があるのも確かだろう。GIGAスクール構想とかといっしょになって、iPadなんかどんどん売れているだろう。そこで得られた利益をうまく医療費とか営業できずに困っているところへ回せないものだろうか。そういう意味でも、やはりインターネットはコモンズとするべきだなあ。賃貸で営業しているところとか、従業員を休ませて店を閉じていても、経費がかかるからなあ。とりあえず土地はコモンズにもどすべきだろうなあ。戦後はいったんそういう状態だったんだろうか。このパンデミックに便乗して、資本主義からコミュニズムへ移って行けばいいんだな。ベーシックインカムがあれば働かないかなあ。お金のためにだけ働いているわけでもないしなあ。でも、旅行するとか、おいしいものを食べるとか、おしゃれをするとか、そのためにはやはり最低限の収入だけでは足りないだろう。音楽とか美術とか舞台芸術とか、そういう文化的なものはどうだろう。医療や介護・教育や保育などはすべて無料にすればいいよな。財源はどうするか。まあ、印刷すればいいんだな。冗談半分で言っていたけれど、あながち間違っているわけでもなさそうなんだなあ。MMTというのを少し勉強してみないといけない。それから「ソフィーの選択」。タイトルしか知らなかったけれど、これは観ないといけない。トロッコどころじゃなく、究極の選択だなあ。まあ、半分くらいかなあ、理解できたのは。

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著者プロフィール

【著者】大澤 真幸(おおさわ・まさち)
1958年長野県生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程修了。社会学博士。千葉大学文学部助教授、京都大学大学院人間・環境学研究科教授を歴任。思想誌『THINKING「O」』(左右社)主宰。2007年『ナショナリズムの由来』(講談社)で毎日出版文化賞、2015年『自由という牢獄』(岩波現代文庫)で河合隼雄学芸賞を受賞。近著に『〈世界史〉の哲学』シリーズ(講談社)、『資本主義の〈その先〉へ』(筑摩書房)、『我々の死者と未来の他者』(集英社インターナショナル新書)、『私の先生』(青土社)など。

「2024年 『メディア論集成』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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