新世紀のコミュニズムへ: 資本主義の内からの脱出 (NHK出版新書 652)

著者 :
  • NHK出版
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本棚登録 : 154
感想 : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140886526

作品紹介・あらすじ

気候変動や経済的不平等をもたらす「資本主義」。資本主義からの脱出は、果たして可能なのか? コモン(私的所有を超えた共有物)を中核に据えた、生き生きとした社会を築く方途とは何か? 未来を生きる将来世代に持続可能な形で地球を残すことを、いかなる思想的構えで現在の不自由に優先させるか? マルクスからヘーゲル、経済学から宗教学までの多様な知見を縦横に駆使し、この時代の実践的・思想的課題の最深部に鋭く迫る。「未来の他者との連帯」というアクロバティックな課題の考察にまで及ぶスリリングな展開。資本主義をめぐる積年の考察がここに結実! 大澤社会学、至高の到達点

第1章 人新世のコロナ禍
第2章 普遍的連帯の(不)可能性
 1 簡単に理解できることなのに……
 2 倫理的な洗練の極と野蛮の極
 3 イエスの墓の前で
 4 動物としての人間の生
 5 禁欲の資本主義
 6 もうひとつの時間
第3章 惨事便乗型アンチ資本主義
 1 ソフィーの選択のように
 2 ベーシック・インカムは可能か
 3 現代貨幣理論の盲点
 4 惨事便乗型アンチ資本主義
 5 脱・私的所有
第4章 脱成長のための絶対知
 1 「脱成長コミュニズム」という回答
 2 悪い報せとよい報せ
 3 交換価値か、使用価値か
 4 科学知の運動
 5 絶対知の逆説
第5章 新世紀のコミュニズムへ
 1 知と無知
 2 新世紀のコミュニズムのために
 3 資本主義に内在するコミュニズム

感想・レビュー・書評

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  • 大澤真幸(1958年~)氏は、東大文学部卒、東大大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学、千葉大学文学部助教授、京大大学院人間・環境学研究科助教授、教授等の経歴を持つ社会学者。橋爪大三郎との共著で新書大賞(2011年)を受賞した『ふしぎなキリスト教』等、一般向け著書多数。
    本書は、2020年8月~11月に、NHK出版のウェブマガジン「本がひらく」で6回にわたって連載した「真に新しい<始まり>のために」を再編・加筆修正し、書下ろしの最終章(第5章)を加えたものである。
    著者は、本書で「新型コロナウイルスを超えて・・・どのような社会を構想すべきか、そのような社会の実現のために何を克服しなくてはならないのか」についての考えを論じていると述べているが、目指すべき社会が「(脱成長)コミュニズム」であるという結論は、斎藤幸平氏のベストセラー『人新世の「資本論」』と同様である。ただ、『人新世~』の出版は2020年9月17日なので、著者は、ウェブマガジン連載当初は独自でイメージを有しつつ、途中で『人新世~』を読んで、それを取り込み、最終的に本書のような内容・構成に仕上げたと思われる。どちらか1冊を読むなら、迷わず『人新世~』を取るが、本書には、より幅広い古今の宗教・思想を引用し、かつ、(限定的ではあるが)コミュニズムを実現するための具体的な理論・手法を紹介しているという特徴がある。
    内容的にも必ずしも読み易いとは言えず、私自身消化不良の部分があるが、私なりの理解を大まかにまとめると以下である。
    第1章:コロナ禍は、地球レベルのトータルな破局の予兆と解するべき現象である。我々は、その「破局」に際して、キューブラー=ロスが明らかにした、個人が「死」に際して経る5段階の精神ステージの第5段階と同様に、破局を直視しつつ、かつ前向きにこれに対抗する必要がある。
    第2章:我々は、コロナ禍に対処するために、地球レベルでの普遍的連帯が必要であることを自覚しているが、実際に起こっていることは、正反対の、それぞれの国民国家が利己的に行動することによる地球規模での格差の拡大である。資本主義とは、「将来の利潤」のために「現在の犠牲」を受け入れることによって成り立つシステムであるが、今の我々がコロナ禍に対処するための普遍的連帯ができないのは、「将来の利潤」の保証されない「現在の犠牲」を受容できない、すなわち、資本主義を手放せないからである。
    第3章:コロナ禍で我々が最も苦しんでいるのは、感染症対策と経済活動のトレードオフの関係である。しかし、主要ないくつかの財をコモンズにすることができれば、感染症対策をしながら、貧困化を回避することができる。即ち、上記の困難を克服するためには、資本主義からの脱出、即ち、(斎藤の唱える)「脱成長コミュニズム」の実現が必要である。
    第4章:資本主義を「内から」脱出するためには、資本主義を他のどのようなシステムよりも魅力的に見せている「自由」を、<未来の他者>(やがて確実に到来する破局に苦しむ他者)のために制限されることを受け入れる必要がある。ヘーゲルの論じた「絶対知」とは、完全に閉じているという意味で、死や破局が必然であるということを見ているのと同じであると同時に、終末の後に新しいものの始まりの可能性を直観している。
    第5章:我々が目指すべきコミュニズムとは、「全ての人がその能力に応じて貢献し、必要に応じて取る」という趣旨の平等性と自由が実現している世界であり、そこにおいて(最低限)コモンズとされるべき領域は、自然環境、ヒトゲノム、知的所有権によって守られているような文化、の3つである。しかし、コミュニズムへの移行は容易には実現できず、今回のコロナ禍のような破局的危機が繰り返し起こり、その反復を通じて、少しずつ近づいていくことになるのだろう。

    『人新世の「資本論」』、及びそのコンセプトである「脱成長コミュニズム」について、多角的なアングルから考えてみたいという向きには参考になる一冊といえるだろう。
    (2021年8月了)

  • 資本主義は終わりに近づいている。しかし、次に来るべきコミュニズムへの備えが出来ていない。今、どのように備えれば良いのか。という事を論じているように思うのだが、その主義主張は何となく理解できても、詳しくは理解できなかった。そもそも、本当に資本主義は終わりを迎えようとしているのか、そして本当に次に来るのはコミュニズムなのかという根本的な前提にいま一つ納得できなかった。心が動かなかった。

  • 東2法経図・6F開架:304A/O74s//K

  • 山口周さんイチオシの本。インテリofインテリの為に書かれた本。ヘーゲルの絶対知に絡めた話などは軽く睡魔が襲うほど難解であった。(私の基礎教養不足の問題でしかないが)
    現在の資本主義への多角的な視点を学んだ。

  • このコロナ禍でも株価は落ち込んでいないようだ。むしろ、コロナ特需なんてことばがあるのかどうか知らないが(ネット上にはいっぱい出てくる、びっくり)、この機会に相当もうけている企業があるのも確かだろう。GIGAスクール構想とかといっしょになって、iPadなんかどんどん売れているだろう。そこで得られた利益をうまく医療費とか営業できずに困っているところへ回せないものだろうか。そういう意味でも、やはりインターネットはコモンズとするべきだなあ。賃貸で営業しているところとか、従業員を休ませて店を閉じていても、経費がかかるからなあ。とりあえず土地はコモンズにもどすべきだろうなあ。戦後はいったんそういう状態だったんだろうか。このパンデミックに便乗して、資本主義からコミュニズムへ移って行けばいいんだな。ベーシックインカムがあれば働かないかなあ。お金のためにだけ働いているわけでもないしなあ。でも、旅行するとか、おいしいものを食べるとか、おしゃれをするとか、そのためにはやはり最低限の収入だけでは足りないだろう。音楽とか美術とか舞台芸術とか、そういう文化的なものはどうだろう。医療や介護・教育や保育などはすべて無料にすればいいよな。財源はどうするか。まあ、印刷すればいいんだな。冗談半分で言っていたけれど、あながち間違っているわけでもなさそうなんだなあ。MMTというのを少し勉強してみないといけない。それから「ソフィーの選択」。タイトルしか知らなかったけれど、これは観ないといけない。トロッコどころじゃなく、究極の選択だなあ。まあ、半分くらいかなあ、理解できたのは。

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著者プロフィール

958年長野県松本市生まれ。 東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。社会学博士。千葉大学文学部助教授、京都大学大学院人間・環境学研究科教授を歴任。2007年『ナショナリズムの由来』(講談社)にて第61回毎日出版文化賞(人文・社会部門)を受賞。2011年『ふしぎなキリスト教』(講談社現代新書、共著橋爪大三郎)にて新書大賞受賞。2015年『自由という牢獄』(岩波書店)で第3回河合隼雄学芸賞受賞。著書多数。

「2023年 『私たちの想像力は資本主義を超えるか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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