戦時から目覚めよ 未来なき今、何をなすべきか (NHK出版新書 720 720)

  • NHK出版 (2024年5月10日発売)
3.55
  • (4)
  • (6)
  • (10)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 170
感想 : 11
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784140887202

作品紹介・あらすじ

人類の”大惨事”は避けられるか?

気候変動、生態系の破壊、食糧危機、世界大戦――人類の破滅を防ぐための時間がもう残されていないのだとしたら、我々は今何をなすべきなのか?パンデミックを経てますます注目される現代思想の奇才が、西欧と世界で今起きている事象の本質をえぐり、混迷と分断渦巻く世界の「可能性」を問う。

みんなの感想まとめ

現代の社会における危機的状況を鋭く分析し、私たちが直面する問題の本質を問い直す一冊。著者は、ウクライナやパレスチナの問題を通じて、左派と右派の欺瞞を浮き彫りにし、冷戦の枠組みがもはや通用しないことを示...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ジジェクは難解な物言いをする印象が強いが、この本は比較的わかりやすい。ウクライナ、パレスチナなどの問題を軸に、左派と右派(新右派)それぞれの欺瞞を指摘している。第二次トランプ政権が誕生して世界の秩序の方向性がいよいよ定まらなくなり、冷戦から使われてきた思考の枠組みは通用しなくなった今、一つのものの見方の軸としては有効だと思う。

    彼はいまの知識人、政治家たちの従来の枠組みに囚われている鈍さ(確信犯ならば欺瞞)を鋭く批判する。自由、リバティとフリーダムの定義はちょっとついていけなかったが、自由を軸に改めて世の中を捉え直すことはできる。理想ばかり追い求めて弱者に寄り添えなくなったアメリカの左派、もともとはリベラルの得意領域だった加速主義を取り込んだテック右派、それぞれに与しない形のバランスについて考えるきっかけにもなる。

    この本の出た時でトランプ政権は発足しておらず言及は少ないが、リバタリアンと加速主義が結びついて、貧困層とスーパーエリートが支持しているというそれこそ冷戦の思考枠組みでは理解不能なことが起きているのだととらえた。

    ジジェクは世界のこの先について悲観的だ。プーチンのようなファシズムの台頭を許さないためにも資本主義のゆがみを克服することが重要と説く。悲観的態度ではあるが、EUなどの国際連携に希望を託している。第二次トランプ政権が終わる4年後を見据えて、世界がどう動くか、ジジェクがどう世界を解釈するか見続けていきたい。

  • 世界の危機的現象「四騎士」(疫病・戦争・飢餓・死)により世界は壊滅へと動き出している、と言う。ロシアvsウクライナも双方に「平和維持の為の戦争」と言う理屈から多くの国民の死を伴っても未だ解決しない。それは「非合理的な欲望」が混載された状況で「権威主義」を捨てることができない国家が増えてきている所為でもある、と言う。スパイ行為、情報漏洩事件としてスノーデン、アサンジは国家の監視体制(我々全員が監視されている状況)を世の中に告発した例であり、歪められた「情報の透明性」は極めて難しい事と世に蔓延る怠慢な政治家が言う「真理・真実」とは真に受け入れがたい。その為には国民が「何もしない傍観者」ではなく、目覚め活動する力が必要だという。

  • ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルのヨルダン川西岸に対する姿勢に対する、西側諸国の欺瞞。抗議しているように見せかけて、内心現状肯定、現状を存続させることを願っているというウォークネスの偽善的態度を喝破している。
    アメリカやヨーロッパの新右派がウクライナ支持を躊躇、これがロシアの姿勢を反映しているように見えるのは不思議ではない、両者はグローバル文化戦争の同じ側、二つのバージョンだという説明も分かりやすい。だからこれを機に、軍事行動だけでなく、生態系破壊の危機を防ぐような暮らし方に切り替え、旧植民地諸国に借りがあることを認めるべきだ、と。
    アサンジは、自由を脅かす最も危険な脅威は公の公権力からもたらされるのではなく、我々が自由を束縛されている状態を自由と認識した時に生じることを明らかにした、という分析も、現代の”利便性”にどっぶり浸かって生きている人間としては耳が痛いけれど、でもその通りだと思う。

  •  奇を衒ったレトリック、飛躍と逸脱、アイロニーに貫かれたアクロバティックな論理のひとだと思っていたジジェクが驚くほどまともなことを書いていることに驚かされる。それだけこの世界が常軌を逸しているということなのか。本書後半の「テクノ・ポピュリズム」にかんする言及は、まさに日本における「チームみらい」的な政治勢力が登場する的確な説明となっている。

     表紙にスパナと麦とペンを握る3つの拳が書き込まれた赤いシャツを着て写るジジェクは、「グローバル資本主義」という真の敵を見誤ってはならない、そのためにはウクライナの嘘や間違いを果敢に批判しつつ、断固としてウクライナの側に立たなければならない、と繰り返し主張する。なんとか現在のライフスタイルを維持しながら「秩序」を回復させようという怠惰を乗りこえ、プーチンがヨーロッパに作り出そうとした困窮を逆手にとって、生態系壊滅の危機を防ぐ生のあり方と、旧植民地諸国に対する真摯な謝罪を通じたヨーロッパの道義の新たな水準を目指すべきである、そのための「戦時共産主義」なのだ、というのが本書の立場である。
     ここは議論が分かれるところだろうが、ジジェクはポリティカリー・コレクトな自由主義左派はアイデンティティという副次的な矛盾にかかずらわって、実質的な社会関係を変えずに道徳的な権威を保持し続けようとしている点で、「ニセの目覚め」の中でまどろんでいると厳しく批判する。ジジェクからすれば、「ウォーク」左派は、主要な矛盾から目を背け、「ほんとうには変わらない」ために行動していることになる。
     
     上記の分析の当否に加え、本書のスタンスを推せば、イスラエルのガザ侵攻はさらに厳しく批難せねばばならないと思われるが(原著は2023年刊行)、果たしてジジェクは現在のイスラエルの蛮行にどんな言葉を投げかけているのか。

  • どうしてこんな世の中になってしまったのか,それはどうして変わらないのか,であれば我々は何をすべきなのか?
    出版されたのがちょうど1年前でトランプ再選前である.世の中の動きがあまりにも早いのであるが,本書の内容に時代からずれているところは一切ない.ウクライナへの対処が極めて重要であることをよく理解した.
    自分の知識と読解力では難しいところがあるので,もう一度読み直してみよう.
    原著のタイトルは Too Late to Awaken.ちょっとこの日本語タイトルはよくないかな.

  • 東2法経図・6F開架:304A/Z4s//K

  • リバティを具体的自由とし、フリーダムを抽象的自由と位置付けるのは、一般的なのだろうか?これまで勝ち取った自由がフリーダムで与えられた自由がリバティと考えていた小生にはちょっとした驚き。映画を例に出すのは有り難い。眠り続けるウォーク(左派のジジェクがこの言い方するんだ。まぁ分かりやすいが)って要はSJWだよね?

全8件中 1 - 8件を表示

この本が好きな人におすすめの本

著者プロフィール

1949年、スロヴァニア生まれ。
リュブリアナ大学社会学研究所上級研究員、ロンドン大学バークベック校国際ディレクター。
ラカン派マルクス主義者として現代政治、哲学、精神分析、文化批評など多彩な活動をつづける。
翻訳された著書に、『終焉の時代を生きる』(国文社)、『ポストモダンの共産主義』(ちくま新書)、
『パララックス・ヴュー』(作品社)、『大義を忘れるな』『暴力』(ともに青土社)、
『ロベスピエール/毛沢東』(河出文庫)など多数。

「2013年 『2011 危うく夢見た一年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

スラヴォイ・ジジェクの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×