サラブレッドはどこへ行くのか 「引退馬」から見る日本競馬 (NHK出版新書 733 733)

  • NHK出版 (2024年12月10日発売)
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本 ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784140887332

作品紹介・あらすじ

「馬の一生」を知ることは、競馬の未来を考えることだ。

福永祐一氏(JRA調教師)推薦!
「もう目を背けてはいけない現実がある。
我々ホースマンが読むべき一冊。
競馬の未来のために、出来ることのヒントがここにある」

ターフを去った競走馬は、その後どこへ行くのか――。
世界で最も馬券が売れる国・日本が抱える「引退馬」という産業課題。
我々にとって馬とはどのような存在であるべきか?
引退馬を追った映画「今日もどこかで馬は生まれる」を企画・監督した
競馬を愛する著者が、誕生から現役生活、セカンド・サードキャリア、肥育の現場まで、
サラブレッドの”命がけ”の一生を、7年におよぶ現場関係者への綿密な取材を通して明かす。
繊細で複雑な課題の核心を丹念に、かつ情熱をもって世に問うノンフィクション。

第1章 隆盛を極める日本競馬
第2章 馬はいかに「競走馬」になるか――誕生からデビューまでの裏側
第3章 生き残りを懸けて――サラブレッドの現役生活
第4章 引退後に進む道――セカンドキャリアの選択肢
第5章 生かすことだけが幸せか――家畜商という存在
第6章 命と経済――生かすことはなぜ難しいのか
第7章 それでも生かすために――引退馬支援・養老牧場・新たな産業の可能性
第8章 ハンドルとエンジン――転換期のJRA
第9章 リーダーを育て、共に歩む――私たちにできること、私にできること

感想・レビュー・書評

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  • 何これ?!

    とんでもなく素晴らしいんだが!

    はい、自分のことを競馬ファンだと設定している人は絶対読まねばならない必読の書です
    元競馬狂からの至上命令です
    いいから読みなさい
    四の五の言わずに読みなさい

    いわゆる「引退馬問題」についてですな

    2023年のサラブレッド系の生産頭数は7,796頭だそうです
    そしてそのほとんどが最後まで生を全うすることなく、どこかに行ってしまうわけですな

    その競馬界のタブーとも言える問題に真正面から切り込み、問題提起をし、筆者の考える問題との向き合い方、そもそも解決とはどいう状態を指すのか決められない中で一歩でも前に進むためにそれぞれの立場で出来ることについてまとめられてます

    この将来に向かっての最終章が素晴らしすぎるのよ!

    「きれいごと」で蓋をして距離を置くんじゃなくて、馬と人との良き未来の実現に向けた責任の一端を競馬ファンは担っていかにゃならんわけよね

    • ひまわりめろんさん
      ぐり坊

      ねー、色んな世界がありますわ
      ぐり坊

      ねー、色んな世界がありますわ
      2025/05/13
    • みんみんさん
      オルフェーブルも好き♡
      ただのミーハー笑
      オルフェーブルも好き♡
      ただのミーハー笑
      2025/05/14
    • ひまわりめろんさん
      みんみん

      いや、ミーハーというか単に癖馬が好きなだけやんか!
      圧勝か惨敗かに心奪われてるだけやんか!
      わいと全く一緒やないかーい!w
      みんみん

      いや、ミーハーというか単に癖馬が好きなだけやんか!
      圧勝か惨敗かに心奪われてるだけやんか!
      わいと全く一緒やないかーい!w
      2025/05/14
  • 誕生し、競走馬としての現役生活を歩み、引退へ。
    だが、華々しいばかりではない。生を受ける前から、
    産まれてから競走馬に成るまでの選別と、厳しい生活。
    それらの中でも引退はある。彼らの行く末は如何に?
    その現実と未来を丹念に取材し、課題を問うノンフィクション。
    ・はじめに
    ・映画「今日もどこかで馬は生まれる」の成功から見えた景色
    ・競馬大国・日本の課題
    第1章 隆盛を極める日本競馬
    第2章 馬はいかに「競走馬」になるか
    第3章 生き残りを懸けて――サラブレッドの現役生活
    第4章 引退後に進む道――セカンドキャリアの選択肢
    第5章 生かすことだけが幸せか――家畜商という存在
    第6章 命と経済――生かし続けることはなぜ難しいのか
    第7章 それでも生かすために
    第8章 ハンドルとエンジン――転換期のJRA
    第9章 リーダーを育て、共に歩む
        ――私たちにできること、私にできること
    ・おわりに

    日本の近代競馬とその歩み。
    一般大衆の人気を集めた人気馬たち。サブカルでの競馬ブーム。
    彼ら競走馬は、競馬産業の中で生み出された経済動物で、
    その使命は競馬での活躍である。
    そのための一生は種付けから始まり、命懸けの出産。
    疾患等の有無での選別。生産と育成での成長。ここでも選別。
    デビューまでの能力試験。デビューしてからのキャリアを
    重ねる中での引退はケガや病気など。また地方競馬への移籍も。
    引退後は繁殖牝馬や種牡馬、様々なセカンドキャリアとして
    リトレーニングを経ての乗馬用と馬術競技用、ホースボール、
    ホースセラピー、誘導馬、騎馬隊、神馬、相馬野馬追など。
    養老牧場で余生を送る道もある。だが、引退してからの
    行方不明は・・・。余生があっても馬を生かし続けることの難しさ。
    競馬での使命の後の経済問題の困難さ。
    著者は馬関係の人々に「引退馬」の問題について、
    広く丁寧に取材しています。競馬関係者だけでなく、
    食品センターや家畜商、安楽死に関わる獣医師にまで。
    それは実に多くの様々な人々が競走馬に関わっていること。
    引退馬のその後は、関わる人々の声には出せない苦渋が
    潜んでいたこと。走って稼いだ金額と引退後に掛かる金額の落差。
    それでも、引退馬支援団体や養老牧場の新しい試みがあります。
    それにJRA自体も引退馬支援に乗り出しています。
    過去から考えると、未来へ向かう動きが見られるのは幸い。
    華やかな競馬の世界の裏にある「引退馬」という存在を
    知らしめ、競馬の未来を考えさせてくれた著者に感謝したいです。

  • サラブレッド―速く走ることを目指して人間によって改良が重ねられた経済動物であり、主な用途は競馬が大多数である。GIレースを何勝もするような名馬の裏には、何千頭もの馬たちが生まれ、知らないうちに消えていく。そんな競馬界のタブーとも言われる実態に切り込んだ内容となっている。

    現在、日本国内で誕生するサラブレッドは約8,000頭/年であり、競走馬としてデビューするのが約5,000頭、そこから熾烈な勝ち残りを経てだいたい5歳になるまでにその運命が決まる。そこで約4,000頭/年の馬が“行方不明”となっており、恐らくは食肉として処理されている。

    一方で犬や猫といった愛玩動物とは違い、あくまで経済動物として人間の都合によって生み出された競走馬は、500kgもの巨体と30年程度生きる長寿、月10万円程度の預託料がかかるため、何も経済価値を生まない状態で生かし続けるのは難しい。感情論だけでは解決しない構造が横たわっているのだ。

    もちろん世の中の価値観が変化するにしたがって、この競走馬を引退したサラブレッドを受け容れようという社会も広がってきている。従来は乗馬クラブ程度しか行き先がなかったが、ホースセラピーや養老牧場といった形での居場所が僅かながら増えてきている動きもある。

    競走馬の生涯では生まれて数年の現役時代には億単位のお金が動く一方で、より長い余生に対する数十万円の費用が払われない価値の非対称性が大きいことが課題であり、引退馬も稼ぐためのビジネスモデルが気鋭の起業家たちによって考案され始めているのは希望である。またホーストラストのように半野生状態での昼夜放牧など、生活コスト自体を下げて月3万円程度で生かすような方法も取り組まれ始めており、競馬ファンをはじめとした人間たちがそこに資金を還流する仕組みは作れるのではないかと感じた。

  • 中盤まではタイトル通り、引退馬のタブーに迫る内容でどんよりする気持ちもありつつ興味深く読んだ。反面、後半の示唆の部分は各自がやれることをやろうという何とも言えない感。

  • 厳しい現実を突きつけられた一冊。
    私は競馬はやらないが、それでもニュースでサラブレッドの名前は耳にするし、
    何よりあの美しいフォルム、やさしい瞳は印象的。
    しかし、、そうやって大活躍したサラブレッドの引退後の運命は知らなかった。
    というか、皆種馬として余生を送るか、乗馬うまになるのかと思い込んでいた。
    安楽死、も知ってはいたが、それは競争上の怪我でやむを得ない処置、
    滅多にないこと、と思い込んでいた。
    そんな甘いものではなかった。
    確かにあの肢体を養う経費は半端ではない。
    賞金で元が取れるサラブレッドはごく一握り。
    勝てない馬は種馬の勝もない。
    そうなるとどうなるか、、、肉になるのだ、、、
    残酷な。
    いやいや牛や豚も一緒だろう、と思いがちだが、最初からその目的の動物と、
    走るために産まれてきた彼らを一緒にしてはいけない。
    そもそも養えないならそんなに殖やすな、ということになる。
    製造だけしておいてあとは知らない、というのは競馬界も通らないのではないか。
    そういう問題提起をした本。
    直接は関係ないが、考えなくてはいけない問題だ

    第1章 隆盛を極める日本競馬
    第2章 馬はいかに「競走馬」になるか――誕生からデビューまでの裏側
    第3章 生き残りを懸けて――サラブレッドの現役生活
    第4章 引退後に進む道――セカンドキャリアの選択肢
    第5章 生かすことだけが幸せか――家畜商という存在
    第6章 命と経済――生かすことはなぜ難しいのか
    第7章 それでも生かすために――引退馬支援・養老牧場・新たな産業の可能性
    第8章 ハンドルとエンジン――転換期のJRA
    第9章 リーダーを育て、共に歩む――私たちにできること、私にできること

  • <目次>
    第1章  隆盛を極める日本競馬
    第2章  馬はいかに「競走馬」になるか
    第3章  生き残りを懸けて~サラブレッドの現役生活
    第4章  引退後に進む道~セカンドキャリアの選択肢
    第5章  生かすことだけが幸せか~家畜商という存在
    第6章  命と経済~生かし続けることはなぜ難しいのか
    第7章  それでも生かすために
    第8章  ハンドルとエンジン~転換期のJRA
    第9章  リーダーを育て、共に歩む~私たちにできること、私にできること

    <内容>
    競馬場の芝の美しさ、馬の肌の美しさなど、最近競馬にもちょっと興味が出てきた。そこで考えたこと。馬は何を考えて走っているのか?そして多く生産される馬たちの引退後は?この本はほとんど知識のない私に、ちょうど良い本だった。だいたいは想像通りだった。引退後に生き続けられるものもいる。しかし生産馬(競走馬以外も含む)の8割は屠畜される。そこから馬肉が生まれる(淡泊で私は好き)。それもありと私は思う。牛や鶏の食肉はありで、馬は無い、はないだろう。そこを含めて、馬は「経済動物」だ。著者が言うように、100%の解決策など無い。そこを踏まえて、いろいろなことを考えさせられる本だった。

  • 競馬を走れなくなった馬の行先と、その福祉をめぐる話。著者はこの問題に関する映画を自主製作しており、その流れで本書の執筆もされている。
    毎年7000頭のサラブレッドが競走馬になるために生まれてくる一方で、4000頭ほどの引退競走馬が食肉として屠畜されていると推定されるという。(このあたりの統計がちゃんとないのも一つの問題なのだろう。)屠畜を免れたとしても、馬の引退後の”余生”は長く、天寿を全うさせるのには経済的な面を含めて課題が多くある。本書では、これらの現状と、それに対する取り組みを多面的に紹介している。

    牛や豚が日常的に屠畜され食されている現状にあって、なぜ馬を特別視するのかという意見は多いらしい。それに対しては、「はじめに」で書かれていた引退馬問題の定義に関する一文が著者のスタンスをよく表していると思う。
    「引退馬問題とは、家畜として生まれたのに、それを超えた存在となり、その後また家畜として処理されることに対する、競馬ファンを中心とした人々の違和感によって生まれている問題だ」。
    家畜や経済動物としての側面と、ペットやアイドルとしての側面が馬にあるから、この問題が生じている。(ウマ娘が流行ったので、アイドルという表現は大げさではない。)ただ、後者の側面を見出す程度は人それぞれだ。
    荒川弘の漫画『銀の匙』で、牛や豚を肉にするのは受け入れられるが(乗馬用の)馬を肉にするのは悲しい、なぜなら馬にこれまで注いできたのは乗馬としての愛情であって肉にするための愛情とは異なるからだ。というようなセリフがある。それと共通するものを感じた。人間側がどのような意図で育ててきたかが大事ということだろうか。
    このあたりは、自分にはまだしっくり来ていない感覚だ。実際に動物に触れあったり、愛着を持って接してみたりしないと分からないのかもしれない。ただ、自分事としてしっくりこないからこそ、「はじめに」での著者のスタンしっくりこないと感じられた。

    本書を読む前に片野ゆか著『セカンドキャリア 引退競走馬をめぐる旅』を読んでいたので、補完したり比較したりしながら読んでいた。『セカンドキャリア』がセラピーホースに焦点を当てており、著者の体験ベースなのに対して、本書は引退馬に関わる様々な面をなるべく多角的に、かつ客観的に捉えようとしているという印象。数字や客観的データが示されているのも良かった。特に、少なくない引退馬が屠畜され食肉になっているという事実を正面から書いているところが良かった。

    関係者への取材や統計データなどをもとに構成されている本書だが、著者の思いは最終章に現れている。業界には、引退馬を全頭救うことは不可能(だから少しでも多くの馬を)という認識が広がっているということだが、著者はそのスタンスに疑問を呈しているように見える。また、最近JRAを始めとする競馬業界が引退馬支援に動き出したことを歓迎しつつも、個別のエピソードが美談とされ数の議論がおざなりになってしまうことへの危惧があるように窺える。

    以下、メモ的に。
    ・競走馬のうち、成績が良いなどの一握りの馬ではあるが、種牡馬・繫殖牝馬としての余生があり得る。超一流の馬では、この”余生”の方が現役時代に稼ぐ賞金よりも何倍も経済的インパクトが大きいため、場合によっては早々に現役を引退させてセカンドキャリアにシフトさせるということがある。
    ・というか、競走馬って人工授精じゃないの?(牛は人工授精らしいので、てっきり同じようにするのだと思っていたけれど・・・?)
    ・ウマ娘の流行もあって、引退馬への一般からの寄付が増えている。これらは養老牧場、つまり、特に何ら経済的に稼ぐことなく余生を過ごす馬たちのために使われている。
    ・一方で、乗馬以外の方法で引退馬が稼ぐ仕組みも模索されている。有名馬を見に行ける観光的な道もある。ヨギボーのCMに馬が出ていたことがあったが、あれは牧場がヨギボーとスポンサー提携を結んでいたからだという(出演していた馬も有名な馬らしい)というのを知って驚いた。
    ・デファクトスタンダード「事実上の標準」という言葉

  • 競馬のために生まれたサラブレッドの一生を明らかにし、引退馬の問題提起する1冊。
    本のページ数の割かれる割合からしても、サラブレッドが表舞台で活躍するのは一生のうちの本当に短い期間なのだなと驚かされ、天寿を全うできる馬はものすごく少ない事実を改めて突きつけられました。
    また、競走馬を引退した先のキャリアがあった場合でも、そのキャリアの引退も必ず訪れることを、当たり前のことなのにこの本に教えられました。

    JRAが競馬振興の一環とはいえ、引退馬問題に対して動いているとのことで、今の規模のままとするのかはともかく、競馬を嗜好として楽しみつつも、そこには引退馬という問題がついて回ることを忘れてはいけないと思います。

    「7千なんちゃら頭の頂点を決める〜」みたいなダービーのCMの決まり文句を聞くたびに、どことなくゾワッとする感覚の理由をはっきりとさせた1冊でした。

  • サラブレッドは毎年5000頭登録され、競走馬は4000頭が畜される現状。引退馬を収益化したり、養老場を作ったり奮闘する人がいる。競馬に関わる全ての人は知らないといけない。考えていくべき。

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