揺らぐ日本のクラシック 歴史から問う音楽ビジネスの未来 (NHK出版新書 739 739)
- NHK出版 (2025年3月10日発売)
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感想 : 7件
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Amazon.co.jp ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784140887394
作品紹介・あらすじ
カネと芸術は、いかに両立しうるか?
実は利益の少ないコンサート、助成金頼みのオーケストラ運営、音大卒でも少ない業界の受け皿。今、曲がり角に立つ日本のクラシック音楽。それでも、なぜクラシックは日本で必要なのか?いかに存続しうるのか?考えるヒントは歴史にある!明治の黎明期の明治期から「世界のオザワ」の戦後まで、日本で「興行」としていかにクラシックが発展してきたかを鮮やかに活写。本場の欧州やアメリカ、アジアの文化的土壌や音楽ビジネスとの比較を踏まえ、これからの日本のクラシックが進むべきビジョンを考える。
感想・レビュー・書評
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曲がり角に立つ、日本のクラシック。芸術なのか興行なのか。芸術とビジネスは両立しないものなのか・・。例えば、東京都交響楽団の2022年度の報告書では、運営経費が17.4億円。事業収入が5.3億円、東京都からの補助金が10億円強、国からが1.3億円、民間からが620万円、寄付金が4400万円、併せて総額12億円越え。収益と雑益を合わせると18.1億円。何とか運営出来ている状態。
100人もの演奏者を抱え、ゲスト指揮者を呼び、POPコンサートみたいに東京ドームみたいに何万人も収容できるのではなく、精々2000人どまり。5000円の入場料掛ける1500人で750万円。二日リハーサル本番一日とすると年間100公演、それだと7.5億円。
楽員の年収700万円なら100人で7億円。それに指揮者、会場費、遠征費、楽器運搬費、印刷物、保険、その他もろもろ、これじゃ自主運営は到底無理なのか・・・。
でも芸術とビジネスは両立しないではなく、何か知恵はないものか・・・。一般市民からすれば入場料は安い方が良いし。やはり、気楽に足が運べるように定期公演への定期会員になるか、シニア特別料金の会員を設定してくれるとか。もっと身近にオーケストラが近寄って欲しいもんですな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
カネと芸術は、いかに両立しうるか?
実は利益の少ないコンサート、助成金頼みのオーケストラ運営、音大卒でも少ない業界の受け皿。今、曲がり角に立つ日本のクラシック音楽。それでも、なぜクラシックは日本で必要なのか?いかに存続しうるのか?考えるヒントは歴史にある!明治の黎明期の明治期から「世界のオザワ」の戦後まで、日本で「興行」としていかにクラシックが発展してきたかを鮮やかに活写。本場の欧州やアメリカ、アジアの文化的土壌や音楽ビジネスとの比較を踏まえ、これからの日本のクラシックが進むべきビジョンを考える。
来日する海外オケのチケットの価格をながめると、庶民には縁がないなと思う。ならば、地元のオケを応援しましょう。 -
人気があるようで台所事情は厳しくまったく優雅でもなんでもない日本のクラシック音楽業界はこれからどうしたらいいのか、日本の、そして世界各国のオーケストラ/文化政策事情やそれぞれの歴史を紐解きながら考える本。音楽取調掛や幸田延にはじまる日本はもちろん、アメリカ、イギリス、オーストリア、ドイツ、フランスそれぞれのクラシック音楽業界それぞれの需要や発展の歴史と事情を知るのはおもしろかった。
音楽ビジネスの未来に資する取り組みは、次代に灯を継いでいくための興行の工夫やアウトリーチ活動をたゆまず続けていくというあまり新味のないものではあったが、学校での音楽鑑賞会のようなアウトリーチ活動の運営をまとめる団体/プラットフォームの創設がもとめられる、というのは一歩進んだ提案だった。
たしかに、横浜に住んでいると、小学生でかならず一度みなとみらいホールによばれてかなフィルの演奏会をきけるし、こどものためのイベントも多い(増えている/かなフィルも大小のホールもがんばっている)。また、いまは反田恭平、角野隼斗、石田組といった老若男女が注目する実力派アーティストがいて、彼らは献身的にさまざまな新しいイベントをうみだしたり全国ツアーをしたりしてそこから全国的にファンも増えているので、未来はけっこう明るい気もするが、一方で一部のそうしたアーティストが身を削りすぎてはいないか気がかりでもある。
それを思うと、全体的にバランスよく(言うは易く行うは難し、だけど)どこに住んでいてもライブでいい音楽に気軽にふれられるような大きな仕組みづくりは実際に必要だし、それを作り出せるのは個々のアーティストや演奏団体ではない。突出したパイオニア小澤征爾なきいま、どうなっていくのかな⋯ -
20251019読了
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なんとなくは思っていたけれど、やっぱりニホンのクラシック業界は大変そう。結末の方で述べられているように、プロの演奏家とアマチュアの演奏家の相乗効果によって、いろんな層の人にクラシック音楽が広まれば、面白いことになりそうだ。アマチュア演奏家に勇気を与える言葉だと思う。
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歴史的背景
明治期以降、伊沢修二らの先駆者が西洋音楽を導入
瓜生繁子が日本人女性として初めて大学で西洋音楽を専門的に学ぶ
戦後、NHK交響楽団やTBS交響楽団など放送メディアと結びついたオーケストラが設立
現代の「危機」と現状
長年「クラシック音楽の危機」「音楽文化の喪失」が語られる
コロナ禍でのコンサート中止が危機を表面化
「特権階級の文化」「高級で閉鎖的」という根強いイメージ
年間4000回近いコンサートを行うが経済基盤は脆弱
オーケストラの運営と課題
プロオーケストラの定義:2管編成以上、年間10回以上の自主公演等
主な収入源:企業・放送局・自治体からの助成金、自主運営、パトロン
ポピュラー音楽と比較して収益構造が不利
人件費、楽器維持費、会場費、舞台設営費などコストが高額
楽団員の待遇は決して高くなく、多くが副業に従事
海外との比較
アメリカ:富裕層の支援(カーネギー・ホール等)
イギリス:政府による音楽教育への積極投資
オーストリア:ウィーン・フィルの特殊な運営形態
ドイツ:放送局や州政府による文化支援
中国・韓国:政府主導の文化振興政策と音楽教育
音楽教育の現状
音大卒業後のキャリアパスの厳しさ
音大の学費の高さ
韓国の芸術英才教育院など国家的音楽教育システムとの差
未来に向けた提言
都市部と地方の情報格差解消
地域独自の文化活動活性化
デジタル配信時代の新たな収益モデル構築
「アーツマーケティング」の視点導入
アウトリーチ活動、地域・学校連携の強化
音楽家が「食べていける」環境整備の重要性
著者プロフィール
渋谷ゆう子の作品
