保元・平治の乱を読みなおす (NHKブックス 1017)

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  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140910177

作品紹介・あらすじ

貴族から武士へという、時代の主役の移り変わりを象徴する古代末期の兵乱、保元・平治の乱。武士を主人公として語られてきた通説を打破し、王家・摂関(せっかん)家の嫡流争いと、新興貴族である院近臣と軍事貴族の利害対立が複雑に絡み合う院政期の混乱した政治状況を描き出す。平清盛(たいらのきよもり)の関与の低さ、後白河上皇の立場の脆さ、藤原信頼の逞しさなど、これまで語られたことのない乱の実体を、いま明らかにする。

感想・レビュー・書評

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  • 大国受領系の縁者や寵臣達と、実務官僚系の弁官達は、同じ院近臣であっても原則別枠だった筈が、保元の乱後、信西が幅を効かせるにつれ、双方の経歴を息子達が持つようになってく所にゾクゾクした。新時代の新勢力って、こうやって台頭してくるのかー。
    どうしても平安末期から鎌倉初期って、源平一門(二門かw)の「武士勢力の台頭」ってな潮流が派手で注目されちゃうけど、その陰で諸大夫達も地道に頑張ってたんだね。

  • 保元・平治の乱を読みなおす
    元木泰雄
    NHKブックス
    ISBN4-14-091017-8
    平成16年12月20日第1刷発行
    https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000910172004.html

  • 河内祥輔氏の『保元の乱・平治の乱』を批判しつつ自論を展開しているのかと思いきや、全体的に「~氏の言うとおり」と言う他者の主張に同調するとかしないとか、そういう箇所が多かった気がします。で、著者はどうなの?と言う感じ。イチイチ女性の名前に音読みのルビがふってあるのも違和感が…。信頼の人物像についてはなんとなく「無能な人ではなかった」と言う印象が変わり、そこはナルホドと言った感じですが。

  • 史料をもとに保元・平治の乱がどのような事実であったのか、どのような背景であったのかを論じておられます。
    分かりやすい反面、どうしても根拠が論じられていない部分もありましたが「平家物語」史観を打ち破る確実な内容であると思いました。

  •  平清盛は保元・平治の乱の主役ではなかった、河内源氏は摂関家の家産機構との癒着を通して発展した、院政期は公武未分化で藤原頼長や藤原信頼は主体的な武力発動者だった等々、全般的に武家の従属性・弱体性を強調し、保元・平治の乱を武家が公家を克服する過程ではなく、公家の内紛による権門(王家・摂家)崩壊過程として描く。なお、河内祥輔氏の研究をまるで目の敵のように(?)批判しているが、河内氏の著書を読んでいないので、その読解や批判が正当なのかわからない。ただその批判の文言が感情的、恣意的にすぎる印象を受け、不快だった。

  • 読んだ感想は、私が高校時代に勉強したことと、最新の学説とはかなり隔たりがあるということです。また、先入観に基づかず、資料を元に学説を展開している点は素晴らしいと感じました。

    保元・平治の乱に関して、以前は、摂関家内部の対立、藤原忠実の頼長に対する偏愛、平氏・源氏の武士の二極対立、平安貴族である藤原氏は武力に対しては源氏や平氏に頼るほか無かった、というような事を教えられました。

    しかしながら、この本は、色々な資料から従来の学説を批判し、以下のような記述をしています。

    ・当時の平氏(伊勢平氏)と源氏(河内源氏)は必ずしも対等な地位ではなかった
    ・藤原忠通から藤原頼長への藤原氏長者の継承はあらかじめ定まっていたことであり、実子が生まれたため忠通がその約束を反故とした
    ・藤原信頼は、白面の公家ではなく、武家として合戦に臨んだ
    ・平治の乱の根本原因は、平氏と源氏の対立ではなく、院の近臣同士の対立であった
    ・後白河天皇は、いわば繋ぎの天皇であり、天皇としての資質が疑問視されていた
    ・よって、平清盛は、一貫して後白河天皇(上皇)と距離をとって、二条天皇と親しかった
    などなど、色々なことが分かってきます。
    平安末期の2つの乱の最新学説を知りたい人にお勧めです。

    また、この本の著者の元木泰雄氏は、「院政の展開と内乱」という本も執筆しています。こちらもお勧めです。

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著者プロフィール

1954年、兵庫県に生まれる。1978年、京都大学文学部史学科国史学専攻卒業。1983年、京都大学大学院文学研究科博士課程指導認定退学。現在、京都大学名誉教授、京都大学博士 ※2022年1月現在
【主要編著書】『平清盛と後白河院』(角川書店、2012年)。『治承・寿永の内乱と平氏』(吉川弘文館、2013年)。『源頼義』(吉川弘文館、2017年)。『源頼朝』(中央公論新社、2019年)

「2022年 『平氏政権と源平争乱』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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