マルチチュード 下 ~<帝国>時代の戦争と民主主義 (NHKブックス)

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  • Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140910429

作品紹介・あらすじ

貧困や不平等の拡大、代表制の機能不全、環境破壊、容赦なく進められる民営化…"帝国"がもたらす様々な困難を、どう克服するか。グローバル・システムへの抗議運動や改革提言を、来るべき「マルチチュードのプロジェクト」の萌芽ととらえ、常に多数多様でありながらも共に活動できるその闘争形態に、「全員による全員の統治」という絶対的民主主義の可能性を見る。戦争の時代を突き抜けて、グローバル民主主義の構築へと向かうマルチチュードのダイナミズムを力強く描く、待望の書。

感想・レビュー・書評

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  • アントニオネグリ マイケルハート 「 マルチチュード 」

    著者の問題意識は 「グローバル秩序を維持するには 帝国しかない。しかし 帝国では 戦争が回避できない。よって、マルチチュードという概念を組み込んだ 新しい民主主義により、戦争を終わらせる」というもの


    政治思想として読むと実現性がイメージできないが、共生社会の思想本やマルクス資本論の補足本として読むと 興味深い論点は多い。マルチチュードを共生社会として理解して「共」「特異性」「マルチチュードの肉」のキーワードを拾いながら読んだ。解説や注釈は読解の手助けにならなかったが、序 は何度も読む価値がある


    マルチチュードの政治的な外形イメージは「指揮者のいないオーケストラ」のようなもの。これが民主主義に至るのか不安はあるが、帝国による秩序維持を残しつつ、民主主義を取り込むのだから、コアや階層のないフラットな組織しかないのかもしれない


    読みきれなかった点
    *マルチチュードが 大衆民主主義、共和制、国際社会と具体的に何が違うのか
    *戦争を回避するためのマルチチュードなのに、民主的暴力を肯定するのはなぜか



    キーワード「特異性」
    *特異性=無数の特異な差異→マルチチュードの構成要素
    *特異性とは、異なる文化・人種・民族性、ジェンダーなど性的指向、異なる労働形態、異なる生活様式、異なる世界観、異なる欲望

    マルチチュードの特異性
    *マルチチュードの構築を可能にする共的基盤、相互作用、コミュニケーションが、さまざまな生産の特異な形象のなかに存在する
    *マルチチュードは、特異性同士が共有するものに基づいて行動する能動的な社会的主体

    キーワード「共」
    *共=共同、共通、共有
    *マルチチュードは共を基礎にしながら、マルチチュード自体も共を生み出す

    共の生産
    *労働が経済の変容を通して、コミュニケーションと協働のネットワークを創り出し、またそこに組み入れられる
    *他者から伝えられた共の知識に依拠しつつ、新たな共的知識を創り出す
    *共 を基礎にして特異性同士が社会的コミュニケーションを行い、社会的コミュニケーションがさらに共を生み出す
    *マルチチュードは特異性と共の中から現れる主体性

    共の利益
    *マルチチュードが生産するもの
    *国家の管理下で抽象化されることなく、社会的、生政治的生産の場で 協働する特異性によって再領有される利益
    *官僚の支配でなく、マルチチュードによって民主的に管理運営される公共の利益

    共のグローバルな広がり
    *ネットワークに参加する個々の存在の特異性を否定しない
    *新しいグローバルな闘争サイクルはマルチチュードを組織し動員する

    キーワード「マルチチュード」
    *マルチチュード=コミュニケーションと協働のネットワーク
    *多数多様性を持ち、無数の内的差異(特異性)から成る
    *革命組織は民主的なネットワーク状の組織(マルチチュード)に移行

    マルチチュードの特性
    *それ以上縮減できない多数多様性
    *社会的差異により構成
    *統一性、同一性、無差異性に平板化できない
    *断片的でばらばらに散らばった多数多様性ではない
    *共的基盤、相互作用、コミュニケーションにより構築
    *身体の有機的統一性を拒絶する特異な肉を持つ
    *人民でも国家でも共同体でもない
    *近代の社会秩序が崩壊したあとの不安定と渾沌のひとつの例
    *特異性と共の織りなすダイナミクスから現れる主体性
    *マルチチュードは、特異性同士が共有するものに基づいて行動する能動的な社会的主体
    *個々の人間の特異性の表明が、共闘する他者たちとのコミュニケーションや協働によって減じたり損なわれたりしない

    「マルチチュードは、多数多様なものであり〜共に行動し、それによって自らを統治することのできる〜生きた肉なのだ」

    グローバル資本という身体〜搾取と階層秩序の地勢図
    *マルチチュードの共的(共通、共有)な生産的な肉が、資本のグローバルな政治的身体に形を変え
    *それが労働と富の階層秩序によって地理的に分断され
    *それが経済的、法的、政治的権力の多層構造によって支配されている

    キーワード「マルチチュードの肉」
    *マルチチュードの肉とは 共と特異性であり、マルチチュードが形成される可能性の条件となる
    *いまだ形をなさない生命力、社会的存在の原質、新しい社会を形成するための力
    *マルチチュードの肉が共にもとづいて生産する様子はモンスターのようであり、それは伝統的な社会体の尺度を超えている


    資本による搾取とは別の形で 自己を組織する可能性を探り、資本のグローバルな政治的身体に取って代わる代替案を見出す

    主体性の生産と共の生産が合わさって 螺旋状の共生関係が形成される
    *主体性は協働とコミュニケーションによって生み出され
    *そうして生まれた主体性そのものが新たな協働とコミュニケーションの形態を生み出し
    *その循環が繰り返される




  • マルチチュード 下 ~<帝国>時代の戦争と民主主義
    (和書)2010年12月12日 21:46
    2005 NHK出版 アントニオ・ネグリ, マイケル・ハート, 幾島 幸子


    柄谷行人さんの書評から読んでみた。

    <帝国>を読んでみよう。

    三部作の予定らしい。

  • 願わくはもう少し読みやすい訳であってほしいかなと・・・

    [more]<blockquote>P167 こうした議論における説明責任とガバナンスという用語の使い方でもっとも重要かつ興味深いのは、これらの用語が共に政治的領域と経済的領域の両方に極めて都合よく二股をかけるものだという点である。【中略】例えば”リスポンシビリティ”との対比でいえば”アカウンタビリティ”という語からは代表という民主主義的特徴が失われて技術的な働きだけが残り、”会計(アカウンティング)”や経理の領域で提示されるものとなる。

    P191 十八世紀に回帰せよ、と。十八世紀に回帰すべきひとつの大きな理由は、当時は民主主義の概念が現在ほど腐敗していなかったことにある。

    P229 社会的生産者の回路は「帝国」にとっての生き血であり、もし彼らが権力構造を拒否しその関係から身を引いたりすれば、「帝国」はたちまち命を絶たれて倒れてしまう。

    P274(解説) 愛を政治的高度として再建しようとするネグリ&ハートの言葉は、カップルや家族と言った私的領域に愛を閉じ込めたり、あるいは愛を欺瞞的に振りかざすことによって社会的敵対性をかき消そうとしたりする(それ自体が政治的な)身振りになれた今日の多くの人々に冷笑をもって迎えられるだけかもしれない。だが思い出してほしい、例えばスピノザにとって愛は、他者との出会いを通じて力量と喜びを増大させていくような限界のないネットワークを指示する、政治的概念であったことを。</blockquote>

  • 2007/05/07 購入
    2007/05/22 読了 ★★
    2014/05/22 読了

  • これ読んだのは学部二年のときだっけか。一番つっぱってた

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  • 6/23拾い読み

  • 図書館

  • 2007/05/07 購入
    2007/05/22 読了
    2014/05/22 移動

  • 結論、なし。

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著者プロフィール

1933年イタリアのパドヴァに生まれる。マルクスやスピノザの研究で世界的に知られる政治哲学者。元パドヴァ大学政治社会科学研究所教授。 早くから労働運動の理論と実践にかかわる。79年、運動に対する弾圧が高まるなか、テロリストという嫌疑をかけられ逮捕・投獄される。83年にフランスに亡命。以後14年間にわたりパリ第8大学などで研究・教育活動に携わったのち、97年7月、イタリアに帰国し、ローマ郊外のレビッビア監獄に収監される。現在、仮釈放中。 邦訳に『構成的権力』『未来への帰還』『転覆の政治学』等がある。

「2003年 『〈帝国〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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