思考する言語(中) 「ことばの意味」から人間性に迫る (NHKブックス)

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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140911310

作品紹介・あらすじ

人が世界を認識し、思考する際に欠かせないのが、「物質」「空間」「時間」「因果」という生得的概念である。名詞、前置詞、動詞、時制などの検討から、言語に組み込まれた概念を詳しく分析し、人の心は幾何学的な世界把握とは異なり、目的や意図に沿って、対象物や出来事を柔軟に捉えることを明らかにする。また、現実世界を異なるフレームで解釈するためのメタファーは、政治や科学などの複雑な問題を理解し、推論する上で有効であると示す。さらに、ことばと人間心理・社会の間のダイナミックな関係を、人の名前や流行語を切り口に具体的に考察する。

感想・レビュー・書評

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  • 言語に組み込まれた概念を分析し、人の心は目的や意図に沿って、対象物や出来事を柔軟に捉えることを明らかにする。またメタファーが複雑な問題を理解する上で有効であることや、ことばと人間心理・社会の間の関係などを考察。【「TRC MARC」の商品解説】

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    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40108712

  • 1096円購入2012-01-19

  • メタファーはある程度の適切さや有用性はあるが、客観的真実を正確に記述するものではない。

    自らの担当する技術分野を他人(上司など)に説明する際に、メタファーを用いる場面があります。技術内容が「難しい」ために、メタファーを用いて言葉を噛み砕いて説明するわけです。
     
    内容が分かりやすくなるメリットはあるかもしれません。しかし、その他人が真に内容を理解したと言えるのでしょうか。内容を噛み砕けば噛み砕くほど、真の内容から遠ざかっている印象を受けます。いくつかの数式を示せば証明が足りるにも関わらず、人によって捉え方の違う言葉を用いると、正しく内容を共有できているとはいえないかもしれません。

    内容を「難しいと感じること」が曲者です。多分に主観的な言葉なので、相手にあわせる必要があります。しかし、極端な話、小学生に微分積分を教えることができるでしょうか。説明は、ある程度相手に素養を求めるものだと思います。

    内容を真に理解できている人のみが、どんなレベルの人にも説明できると言います。自分には、まだ、担当する技術分野の内容を人に噛み砕いて説明できるほど理解していません。「本質を捉える」これに尽きるのではないでしょうか。

  • 第4章は、カント『純粋理性批判』のカテゴリー論から、物質・空間・時間・因果について、言語学的考察を行っている。空間は時間に比べて多義性が高いが、underなどは「雨が降り込まない場所」といったデジタル的かつ人間の生活に根ざした認知構造があり、これは心理実験からうらづけることができる。はっきりした動きとそうでない動き、出発点や終了点だけを意識している空間語彙などの構造は、名詞(物質)の可算・不可算に相当する。時制やアスペクトにもこの可算・不可算の面はある。因果は力と関係がある。主体や客体のダイナミズムによって、「引き起こす」「にもかかわらず静止」「にもかかわらず動く」「阻止する」といった面があり、また、マッチを擦って火がつくという現象には、酸素があるといった原因は考慮されていない。これは人間生活に根ざした因果理解である。第五章は、メタファー論である。文学だけではなく、日常や政治、科学理論にもメタファーがあるというレイコフの理論が確認され、その極端な相対主義を批判し、メタファーそのものより根源的で生物的基盤を主張するジャッケンドフの穏健主義を支持している。また、思考にはアナロジーが使われ、アナロジーの裾野の広がりも指摘している。第六章は、名付けである。クリプキの「固定指示詞」の理論を紹介し、科学的認識にも名付け問題があること(冥王星は惑星か否か)に言及、子供のなづけには個人の行動の集積と相互作用が全体的構造をつくりだすとしている。意味については「それについて考えるために入っていかねばならない概念領域では、私たちの実際的な判断力は機能するように進化していない」というマッギンの言葉を引用し、言葉の魔術性も指摘している。新語の定着や蝶を指す音の連鎖が各国独自であるなど、興味深い話題がつきない。

  • 中巻では、上巻で抽出された認知の四要素「物質」「空間」「時間」「因果」の四点についての分析から始まる。いきおい名詞や前置詞などの話が多くて、英語が苦手な私には実感がわかない部分も多かったが、この中では「因果」の話がとても面白かった。二つの前後する出来事の間に、人間がどのように因果関係を推論するのかという議論で、これはヒュームの「人間本性論」からきちんと読んでみたい!

    他では「メタファー」と「名付け」が重要なトピック。それぞれわかりやすくまとまっていて、特に「名付け」の部分は「新語はどのように生まれるのか」「なぜ名前に流行があるのか」などの問いのたて方が面白くて、楽しんで読めた。ただ、このへんの話題をきちんと理解するにはレイコフの「レトリックと人生」やクリプキの「名指しと必然性」を読む必要があるんだろうなあと思う。きちんと読んだ後にまたこの本に戻ってくれば、新たな発見がありそう。

  • [ 内容 ]
    人が世界を認識し、思考する際に欠かせないのが、「物質」「空間」「時間」「因果」という生得的概念である。
    名詞、前置詞、動詞、時制などの検討から、言語に組み込まれた概念を詳しく分析し、人の心は幾何学的な世界把握とは異なり、目的や意図に沿って、対象物や出来事を柔軟に捉えることを明らかにする。
    また、現実世界を異なるフレームで解釈するためのメタファーは、政治や科学などの複雑な問題を理解し、推論する上で有効であると示す。
    さらに、ことばと人間心理・社会の間のダイナミックな関係を、人の名前や流行語を切り口に具体的に考察する。

    [ 目次 ]
    第4章 世界認識の四つの方法―物質・空間・時間・因果(カントの四つのカテゴリー
    物質はどう認識されるか―名詞の考察から 空間はどう認識されるか―前置詞の考察から ほか)
    第5章 メタファーがいっぱい!―ヒトの思考の仕組みを解く(メタファーのメタファー―思考とはメタファーを理解すること 「興ざめ説」と「救世主説」
    すべては概念メタファーから?―レイコフの相対主義 ほか)
    第6章 名前をめぐる謎―命名にかかわる人間本性(ことばの意味はどこにあるのか?
    新語はどのようにつくられるのか? 人はなぜ名前をつけるのか? ほか)

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 上巻で導入された概念意味論の構成要素といえる空間や時間、因果関係について詳しく述べられている。
    いろいろと英語の表現の奥深さや実際自分が英語を使用するときに意識しなければならない根底にある考え方のようなものを知ることができた。
    どちらかといえば意味論について重点が置かれている。

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著者プロフィール

スティーブン・ピンカー(Steven Pinker)
ハーバード大学心理学教授。スタンフォード大学とマサチューセッツ工科大学でも教鞭をとっている。認知科学者、実験心理学者として視覚認知、心理言語学、人間関係について研究している。進化心理学の第一人者。主著に『言語を生みだす本能』、『心の仕組み』、『人間の本性を考える』、『思考する言語』(以上NHKブックス)、『暴力の人類史』(青土社)、『人はどこまで合理的か』(草思社)などがある。その研究と教育の業績、ならびに著書により、数々の受賞歴がある。米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」、フォーリンポリシー誌の「知識人トップ100人」、ヒューマニスト・オブ・ザ・イヤーにも選ばれた。米国科学アカデミー会員。

「2023年 『文庫 21世紀の啓蒙 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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