- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140911761
作品紹介・あらすじ
古臭い大衆迎合政治と否定されながら、世界的に大きなトレンドとなっているポピュリズム。そこには民主主義の本質があった。伝統的なポピュリズム政治からサッチャー・中曽根のネオ・リベラル型ポピュリズム、そして小泉・サルコジの現代ポピュリズムまで、そのメカニズムを多面的に明らかにする。社会の停滞を打ち破る政治のダイナミズムは、民主主義の根本的な問い直しから見えてくる。
感想・レビュー・書評
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ポピュリズムの定義をかなり拡張している上に、分析概念を濫用していてかなりわかりにくい。現代ポピュリズムを共同体の構成員の「平等」回復を志向し、反グローバル的であると位置づけるが、現実問題として、少なくとも日本の場合、西欧の極右とは異なり、むしろ「平等」を敵視し、グローバリズムへの適応を志向する傾向のポピュリズムが一貫して隆盛である(たとえば橋下徹はTPP推進論者である)矛盾を説明できていない。社会現象としてのポピュリズムを分析するのに、政治学の方法では限界があることを露呈している。
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一般的にマイナスイメージで言われることの多いポピュリズムを肯定的に捉え直そうという本。しかし、やはり大衆迎合的な政治のマイナスイメージが拭えなかった。
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ポピュリズムをネガティブにポジティブに捉えるのでもなく、冷静的に現代の民主主義政治において不可避的に発生するポピュリズムの条件と特性を考察した本。非常に分かりやすく納得させられた。著者も言うようにいかに参加民主主義へと転化出来るかが日本の政治における肝だと思う。
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内容は若干難解。
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現代ポピュリズムの登場◆ポピュリズムの歴史的起源◆議会制民主主義の危機◆政治的カリスマのリーダーシップ◆ポピュリズム・デモクラシーと「情念」の回復
著者:吉田徹、1975-、政治学者、慶應義塾大学法学部→日本貿易振興機構→東京大学大学院総合文化研究科、北海道大学公共政策大学院准教授 -
2011年の本だが、最近のBrexitやトランプ大統領誕生を見ても頷ける内容だ。ポピュリズムを単なる害悪としてではなく、民主主義に固有のものとし、「飼いならす」「徹底したポピュリズムこそが民主主義を救う」とすら述べている。
本書で述べるロジック、ポピュリズムの政治的正統性はこうだ。第一に、政治的な共同体の源泉は「人々」であること(これ自体は民主主義を標榜する限り否定できない)。第二に、この「人々」の意思や権利が一部エリートにより歪められているとの意識、言い換えれば代議制民主主義の危機。第三に、人々の意思を共同体の意思と復活させるための政治運動こそがポピュリズムであること。
そして本書では、「(人々の)情念」であるポピュリズムを単に否定せず、「理性」である参加型民主主義を接合させることが大事と結論付けている。 -
141115 中央図書館
ポピュリズムが議会制民主主義を窒息させそうになっていると見えるが、民主主義の原則を奉ずる以上は、それを否定するのではなく、直視して、機能するように我々が考えるべきだ・・というポジションで、現代の各国の政治に触れつつ、ポピュリズムの光と影を見ていく本。若手の政治学者の本だが、とても読みやすい。 -
批判だけでは何も産まれない。その人自身を動かす原動力が何かを見極めたい。
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大学の演習で読みました
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サッチャー,小泉純一郎,サルコジ,ベルルスコーニ,都市化の進展とともに細分化された「個人」が増え,規制秩序を変革するカリスマ政治家が支持を伸ばす。結構普遍的な現象なのだね。
「大衆迎合主義」として嫌われるポピュリズムが,なぜ現代先進国の民主政治に現れるのか。それが不可避の現象であることを論証し,それを踏まえて我々はどう行動すればよいのかを探る。
日本では,小泉元首相がポピュリスト政治家として記憶に新しい。もっと最近でも,東国原元宮崎県知事,橋下大阪府知事など。少しさかのぼると,中曽根元首相など。55年体制では伝統的「恩顧主義」で政治と社会の関係性が安定的に構築されていたが,これが崩れてきたのが始まり。
70年代から本格化した都市化によって,個人主義が普及し,従来の票田が先細りになってきたことによって,ポピュリズムが生まれやすくなってきた。伝統的な利益誘導型の政治でなく,分かりやすい目標を提示し,有権者を動員する政治。政治主導で民営化・政治改革が進められる。
現代ポピュリズムは,政治に道徳的基準を持ち込む。有権者の希望に応えていないとして,従来の政治に異議申し立てを行ない,倒すべき「敵」を可視化して「勧善懲悪」ムードを作り上げる。政策の内容よりレトリックが重視されることも多い。
ポピュリズムには従来の政治を動かしてきた左右のイデオロギーを超越している面がある。カリスマ的リーダーが求められる点では権威主義的・右派的であるが,「人々」の間の平等を追求するという面では左派的。変幻自在ではあるが,常に何かを否定することでしか成り立たない政治。
第二章で,ポピュリズムの歴史を種として2つの例に基づいて概観。アメリカのポピュリスト党とアルゼンチンのペロニズム。原因や時代背景は違っても,伝統的社会から工業社会へと移行していく過程でポピュリズムが現れることを見る。移行期の政治的不安定をポピュリズムが埋める。
現代のポピュリズムには,冷戦の終了も大きな原因になっている。共産主義が終焉し,世界が民主主義で埋め尽くされる。冷戦期は社会主義陣営との対立上,自由主義側も理論に磨きをかけなくてはならなかったが,その緊張感が薄れ,政治が迷走。有権者は民主主義が十分機能しないことに苛立つ。
著者はポピュリズムには多くの副作用があることは確かだとしつつ,しかしそれをうまく扱うことで打開の道があると論じる。参加民主主義,熟議の政治などによってポピュリズムとデモクラシーが和解することも可能。