団地の空間政治学 (NHKブックス)

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レビュー : 17
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140911952

作品紹介・あらすじ

高度成長期に燦然と輝いていた団地文化とは何だったのか?香里団地、ひばりケ丘団地、常盤平団地など、東西の大団地をフィールドワークし、埋もれた資史料を調査した著者が、躍動する団地自治の実態と住民の革新的な政治意識を明らかにする。さらに沿線の鉄道からの影響や、建築・設計上の特徴をも考察し、団地をアメリカ的ライフスタイルの典型と捉える従来の史観に再考を迫る。今日の団地の高齢化や孤独死問題が生じた淵源を、コミュニティ志向の衰退と個人主義台頭の歴史に探り、知られざる政治思想史の一断面を描出する画期的論考。

感想・レビュー・書評

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  •  URの議論をすると、公団自治会の政治力の話がよくでる。なんとなくわかっていたが、この本は、具体的な団地ごとの政治勢力がどう生まれてきたかという観点でよむと、とてもおもしろい。

    (1)中央線沿い、西武線沿いで微妙に違いがあるが、革新勢力の孵卵器として、公団の賃貸住宅団地が働いていたこと。

    (2)当初は、通勤問題、保育所問題など、生活問題で始まった自治会運動が、政治的な色彩を帯びていったこと。

    (3)ニュータウンの高齢化、建物の老朽化から、建て替えが課題となっているが、団地再生の一環として、減築や山本理顕氏の反公共的な空間としての住宅団地への改修など実験的な取り組みが行われていること。

     やっぱり、老朽化してきても、団地やニュータウンは新しい都市計画の実験場所だと感じた。

  • 2012年刊行。著者は明治学院大学国際学部教授。◆「団地」、それは戦後、農村から都市への人口流入政策に伴う住宅難に見舞われた都市部における生活圏確保のための起死回生の一策。その団地に注目し、戦後、特に60年代の東西の社会史を解き明かす。もっとも、政治学との題に比し、事実上政権を担当しなかった社会党・共産党・公明党への影響が議論される本書はやはり都市社会史の書というべきではなかろうか。◇個人的には、本書紹介(といっても殆ど泡沫)の団地で幼少年期を過ごした身なので、その史的な意味を付与されるのは感慨深い。
    加えて、鉄道(京阪電鉄、新京成電鉄、西武池袋線、国鉄中央線等)に絡めつつ解説するのは著者らしい。PS.団地には、同学年は勿論、ほぼ同年代の子供がたくさんいた、というのは経験的に腑に落ちる。

  • 全体的に議論に説得力を欠いている感が強い。世論調査やアンケートの結果の読み方にも、他者の著作物の解釈にも、首肯しかねるところが多い。また本書のなかでしばしば登場する、均質性の強いハコに生活する人びとは均質性の高い生活を求めるというような議論──「団地」に関して何をか説明しているはずが結局単なるトートロジーに留まってしまっている議論には、残念な感じを受ける。

  • 「団地」という独特の文化圏の歴史について、住民の政治マインドを中心として論じた本です。一昨年、東京・北区の巨大団地群の近くに引っ越してきたとき、それらの古い団地群の異様な存在感に衝撃を受けたのでした。そんな折、本書が書店に並んでいたので購入してみました。

    第1章から第4章までは、場所は大阪・東京・千葉とさまざまながら、基本的には高度成長期の話題に限られており、この時期を知らない方、あるいはあまり興味のない方には、いまひとつピンと来ないかと思われます。わたし自身、まったくピンと来ませんでした。自治会とか婦人会とか、なんだか滑稽に映ります。元祖プロ市民が集結しているというだけのことではないでしょうか。

    古びた団地群が織りなす圧倒的な景色、それに魅了されたという方には、むしろあんまり楽しめない本ではないかと思われます。高度経済成長期のプロ市民的社会情勢みたいなものの雰囲気は、とてもクリアに細かく描かれているので、その方面に関心があれば興味深く読める本だと思います。題材はともかく、本書そのものはイデオロギー中立的というか、客観的な内容です。

    なおタイトルには「政治学」とありますが、本書の考察は、普通は社会学と呼ばれるであろう内容です。アカデミックな意味での政治学的な考察はあまり見当たりません。

    (2014/3/24)

  •  戦後の住宅政策の一環として建設された団地は、地域コミュニティや公共政策の視点でさまざまに論じられてきたが、団地にまつわる政治闘争や政治思想史の視点で書かれた本著は極めて貴重。特に、団地が交通の便の悪い所に立地されてきたことと高度経済成長期と相まったことから、交通アクセスや住環境の向上を求めて人々が集まって自治体に請願や選挙運動を展開していく様子が、団地通信や聞き取りなど細かく調べられていて、その議論の展開が極めて精緻。
     特に顕著なのが、団地の生活環境が団地沿線の鉄道運行本数により大きく規定されていることだ。鉄道輸送力の許容量と沿線居住者数とのギャップが大きくなれば、そこに不満やエネルギーが蓄積されて爆発する。そう、団地の季節にはマルクスの弁証法的唯物論の論理が通用するような土壌があったのだ。
     ただし、団地の季節で輝いていた世代は高齢化し、地域コミュニティ問題の縮図として団地が語られることが当然のようになった。しかしながら、住環境の問題をクリアするために、団地の季節での取り組みは忘れられてはならないのである。

  • 原武史『団地の空間政治学』読了。戦後の住宅問題の受け皿となった“団地”。保育所不足や交通などの“不便さ”が生んだ要請による自治の発生と、プライバシー確立による自治の衰退。そして高齢社会が要請する新たな空間の在り方に対応する今の団地の姿。団地は政治の一歩先を歩んでるのではないか。

  • 高度成長期に燦然と輝いていた団地文化とは何だったのか?香里団地、ひばりケ丘団地、常盤平団地など、東西の大団地をフィールドワークし、埋もれた資史料を調査した著者が、躍動する団地自治の実態と住民の革新的な政治意識を明らかにする。さらに沿線の鉄道からの影響や、建築・設計上の特徴をも考察し、団地をアメリカ的ライフスタイルの典型と捉える従来の史観に再考を迫る。今日の団地の高齢化や孤独死問題が生じた淵源を、コミュニティ志向の衰退と個人主義台頭の歴史に探り、知られざる政治思想史の一断面を描出する画期的論考。

  • かつて「日本は最も成功した社会主義国である」というフレーズを聞いたことがあります。それは高度経済成長期の産業政策、経済政策によるものだと思いますが、一億総中流という生活意識こそがその表象だったような気がします。その意識は家族四人の核家族による標準世帯モデルによって育まれ、そのモデルを生みだしたのが団地という場所と空間であったことがシンボリックに描かれます。理想としてのアメリカを目指しながら標準設計としてのソヴィエトの方法論を取っていく、そのこと自身が55年体制の葛藤を抱え込んでいたのだと思いました。したがって共産党を中心とする革新勢力の苗代になりながら、プライバシーを重視する個人主義の流れにのみこまれていくことも必然だったのかもしれません。アメリカのスーパーマーケットを目指す西部ストアがことぶき食品の小分けパック商品に敗れ、より大衆化した西友に生まれ変わり、逆に競争に負けたことぶき食品がクルマ社会の到来に合わせてスカイラークという外食産業に変貌していく、なんてストーリーにも日本人の生活の歴史が埋め込まれています。(スカイラーク=ひばり、ってひばりヶ丘団地のひばりだったなんいて!)今考えると必然に思えることも、でも、その時の微妙な変数で方向が変わっていくことも興味深いです。西武なのか、国鉄なのか、大学が誘致出来たのか、出来なかったのか、駅から遠いのか、近いのか…団地といってもそのキャラクターは様々でした。(のび太の創生日記とかシムシティみたい。)本書の「なるほど!」という読後感はスッキリとした歴史のデコンストラクションにあるのではなくて、細かな資料を積み上げて再現している当時の空気感の再現にあるような気がします。今、建て替え問題とか高齢化の問題とか、あるいはレトロフューチャーとしての団地ブームとか、なにかと団地が話題になっています。(もちろん著者の活躍もその一因であると思います。)それは、戦後のある時期、日本の社会を一気に変える装置として機能した団地はこれからの社会デザインを一気に変えるパイロットファームになる可能性も秘めているからなのだと思いました。

  • ●:引用、他:感想
    2012年12月16日に行なわれた衆議院選挙は、与党・民主党が惨敗、野党・自民党が単独で過半数の議席を獲得する圧勝に終わった。しかし、それよりも個人的に見逃せなかったのは、革新政党の凋落だ。共産党は9→8議席。社民党にいたっては5→2議席。もうそういう(革新政党に改革を求める)時代ではないことを如実にあらわす数字だ。しかし、なぜかくも革新政党が有権者から見放されてしまったのか。かたや、国会前では連日、原発再稼働反対のデモが行なわれているというのに。たまたま、そういったタイミングで読んだ本書にその疑問を解くヒントが見られた。三浦展「東京は郊外から消えていく!」を合わせて読むと、その答えらしきものが見えてきた。
    60年代、すなわち革新政党が政治の一翼を担っていた時代、(郊外の)団地では、自治会を中心とした組織が、団地のインフラ(保育・教育施設、交通機関等)の拡充、改善を求めた活動が盛んに行なわれていた。そして、それに便乗した革新政党の活動が、革新政党の勢いとなっていた。しかし、三浦展がいうような、郊外が寂れていく状況が、革新政党の活動をも衰退に向かわせたのではないだろうか。特に郊外が廃れた理由のひとつとして挙げられた、女性の社会進出=(専業)主婦(=団地の自治会活動等の中心)の減少は大きな原因ではなかろうか。

    ●89年のベルリンの壁崩壊に伴う東西冷戦の終結と社会主義の凋落が、90年代における革新政党の退潮や労働組合の組織率の低下を招いたばかりか、団地自治会の活動にも影響を与えたことは否定できないだろう。
    ●「政治」が「空間」を作り出したのが旧ソ連や東欧の集合住宅だったとすれば、逆に「空間」が「政治」を作り出したのが日本の団地だったのだ。(略)本書で縷々明らかにしてきたような各団地での自治会や居住地組織の多様な活動は、「私生活主義」におさまらない「地域自治」の意識を目覚めさせるとともに、プライベートな空間の集合体である団地と社会主義の親和性をあぶり出した。それが「私生活主義」へと大きく傾くのは、一方で高島平団地のようなエレベーター付の高層棟が主流となり、他方で多摩ニュータウンに代表されるニュータウンの時代が本格的に訪れる70年代になってからだ。

  • 1.原武史『団地の空間政治学』NHK出版、読了。高齢化の進む大都市圏の住宅団地も高度成長期にかけ、元気な時代があった。東西の団地を取り上げ、その歴史的成り立ちと住民意識、団地自治の生成とその“革新”性の政治意識を明らかにする。戦後庶民史を新しく照らすフィールドワーク。

    2.原武史『団地の空間政治学』NHK出版。旧体制との断絶を強調する社会主義や全体主義は「政治」が「空間」を形成する。それに対して日本では、「空間」が「政治」を形成する。古くは宮城前広場、近くは団地。成長期の革新「意識」は団地で熟成される経緯と挫折は興味深い。

    3.原武史『団地の空間政治学』NHK出版。サルトルとボーヴォワールの香里団地訪問(劣悪な環境と指摘)、竹中労が高根台団地自治会長だったエピソードには驚愕。そこでの人間観察と交流は、竹中の柔軟なアナキズムを生成する土台になったようだ。次は『レッドアローとスターハウス』新潮社を読もう。了。

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