情報社会の情念 クリエイティブの条件を問う (NHKブックス)

著者 :
  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140912119

作品紹介・あらすじ

今日、優れた作品を生み出せるかどうかは、プラットフォームの設計・運営にかかっている。では、個人の創造性にもはや意味はないのか。すべてが必然的に計算された情報社会を乗りこえる鍵となる拡張現実の「負の力」を徹底吟味するなかで日本のコンテンツに潜む「情念」の表現形式を探り出す!「運営の思想」と「制作の思想」が交差する平面から、震災以後の日本社会でものを作ることの条件を問う、若き俊英、渾身のデビュー作登場。

感想・レビュー・書評

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  • 【メモ】
    ・タイトルがぼんやりして分かりにくいが、ふつうの小論(東浩紀の系譜なのか飛躍が多め)。個人的にはUIの観点から得るところがあった。

    ・著書のWikipediaを拝見すると、『思想地図』(vol.1)巻末に掲載された、公募論文「キャラクターが、見ている。──アニメ表現論序説」(2008年)の執筆者だと書いてあった。当時は作者不明だと書いていたが、いつのまにか公開したらしい。

    ・著者はのちにパワハラ問題を起こして退場したらしい。(人格と著作にどんな関係があるとされているか、についての一般論を私は知らないが)本書の内容にはおそらく関係ない。

    ・以下は本書の内容に関係のない愚痴。
     NHK出版のサイト掲載されたPR文には「震災以後の……」とある。(著者は被災地を取材し、それをテーマに活動して、本書にはその点でちょっぴり言及もあるが)はっきり言って書籍の煽り文句としては無意味だと思う。
     一部の言論・批評を行う人たち(つまり、一部のアート界隈と一部の論壇社会学と一部の随筆専門の哲学者とか。あと出版社サイド)は、何故ここまでやたらと「震災以後」とか「3・11によって○○は変わってしまった」とか言いたがるのだろうか。それを若手が真似してるのもよくない。これが「ゼロ年代」のときは同様に「9・11」を繰り返していたのを覚えている。なんなら1980年代の社会学者の軽い評論にも「社会が大きく変わりつつある」とか「激動の〇〇」という文が流れていたりする。
     これはおそらく既出の愚痴だから、あまり意義はないが一応書いた。


    【書誌情報】
    『情報社会の情念――クリエイティブの条件を問う』
    著者:黒瀬陽平 美術批評家。アニメ評論家。
    発売日 2013年12月25日
    定価:1,100円(本体1,000円)
    判型 B6判
    シリーズ NHKブックス;No.1211
    ページ数 240ページ
    商品コード 0091211
    Cコード C1336(社会)
    ISBN 978-4-14-091211-9

    ◆「いまやクリエイターは不要」なのか?
     プラットフォームがコンテンツを自動生成するかのような現代にあって、創造性はどこにやどるのか。ソーシャルゲーム・ゲーミフィケーションからはじまり、岡本太郎・寺山修司までを召還しながら、「情念定型」という可能性に迫る。期待の俊英が、震災以後のすべてのクリエイターに向けて問う、待望のデビュー作!
    https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000912112013.html


    【目次】
    目次 [003-007]
    はじめに――被災地の「平面」 009

    第一章 「運営の思想」のユートピア 023
    ソーシャルゲームの台頭
    ソーシャルゲームへの視線
    「運営」されるソーシャルゲーム
    データマイニングと「運営の思想」
    プラットフォームが支配するコンテンツ
    プラットフォームをコンテンツとして遊ぶ
    「運営の思想」と新しい「疎外論」

    第二章 「情報社会の球体」のなかで 047
    「創造」の歴史
    ビックデータ社会の「良き設計者」
    「情報社会の球体」
    パーソナライゼーションの閉塞空間
    「運営の思想」のディストピア
    「肥沃なネットワーク」の条件
    偶然とはなにか
    コンテンツがもたらす偶然の出会い
    プラットフォームとコミュニケーションのディケイド
    愛すべき「他者」
    情報社会の球体を破壊せよ!

    第三章 「運営の思想」と「制作の思想」 087
    交差する「運営の思想」と「制作の思想」
    プラットフォームが生み出す「創発」
    都市からウェブへ
    岡本太郎と寺山修司の論争
    「時差をもって相互的につくる」
    「市街劇」の発明
    「偶然の出会い」を組織する
    プラットフォーム論の誘惑
    虚構と現実の出会いが創発するもの
    もうひとつの阿佐ヶ谷、もうひとつの現実
    魔館の完成
    天井桟敷の「二つの歴史」
    「二つの歴史」の交差点

    第四章 「負の拡張現実」と両義性 139
    現代の「市街劇」?
    仮想現実と拡張現実
    コンテンツ・ツーリズムへの疑問
    寺山演劇の二つの二元論
    「満たされない霊」たちの情念
    ネガティブなものの拡張現実
    両義性の概念
    「敗者」の拡張現実
    「負の拡張現実」と死
    「負」を立ち上げること

    第五章 キャラクターの、呼び声 171
    岡本太郎の拡張現実
    テーマ展示の全貌
    「本当は見たくないもの」
    戦後最大の「負の拡張現実」
    両義的な「明日」
    「情念定型」を読み解く
    ヴァールブルクと「イメージのダイモン」
    残存する両義性
    二〇一一年三月一一日以後の表現
    キャラクターとキャラ
    隠蔽された「マンガのおばけ」
    「キャラクターのおばけ」
    キャラクターの、呼び声

    おわりに――両義性の女神 225

    謝辞(二〇一三年一一月一二日 黒瀬陽平) [235-236]

  • アーティスト・グループ「カオス*ラウンジ」の代表である著者が、現代社会におけるクリエイティヴィティの可能性について考察している本です。

    著者は、ソーシャル・ゲームの流行を手がかりに、アーキテクチャがゲーム・クリエイターのクリエイティヴィティを凌駕する事態が生じていることを指摘し、「運営の思想」と「制作の思想」という対立軸を設定します。そのうえで、『らき☆すた』や『仮面ライダーディケイド』などに、この問題を乗り越える可能性を見ようとしています。

    つづいて著者は、寺山修司や岡本太郎らの作品を解釈しながら、アーキテクチャによる「エンドレス・ミー」への囲い込みをすり抜けて「偶然性」や「他者性」にわれわれが直面することのできる可能性をさぐろうと試みています。

    問題とされている現代社会のありかたについての分析は、よく見かける議論ではありますが、納得ができるもののように思えます。ただ、それを乗り越える可能性を論じる著者のスタンスが、ロマン主義な芸術観を脱しきれていないようにも感じました。率直にいって、まだ「絶望が足りない」のではないかという疑問を抑えることができません。

  • ゼロ年代の延長のような本である。ニコニコ動画に象徴される模倣とMADについて、その意義について説明している。だが途中アニメの話や特撮の話が長く続き、門外漢にはさっぱりわからないものであった。とりあえず今のアニメや特撮はめんどくさいということだけわかった。引用がいまいち学術論文ではなかったので、学術的なのかただ難しい言葉を並べているだけなのかよく分からないものだった。

  • アマゾンなどで批判されている原子力―HUNTERXHUNTERの箇所は全く妥当。あの書き方ならば、批判されても仕方ない。けれど、作者が「意識」しているかしていないかは実のところ問題ではないのだから(それが「批評」だ)、それがわかるように書けばよかったはず。
    手際よくまとめられた、ソーシャルゲームに関する前半部分は必見。情念定型の応用は、ちょっと弱いし、飛躍が見られる。

  • 壮大な岡本太郎•寺山修司論。ハンターハンターの最後の論はないだろう。
    プラットフォーム、創発、偶然、他者、拡張現実、情念定型、キャラクターとキャラ。市街劇見てみたい。
    2014/05/06読了。

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784140912119

  • プラットフォームによるコンテンツの支配やパソーソナリゼーションがもたらす閉塞空間から脱出した「独立なる二元の邂逅」こそ、クリエイティビティにとって重要と論じ、『らき☆すた』、『仮面ライダーディケイド』から寺山修二、岡本太郎などを例示しクリエイティブの原点を探る。
    ビッグデータやソーシャルメディアなど情報社会を演劇や構築物そして都市などに投影させる芸術家(美術家)の視点が新鮮、いまひとつ理解できないところもありますが。。。

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著者プロフィール

黒瀬陽平|Yohei Kurose
1983年生まれ。美術家、美術批評家。ゲンロン カオス*ラウンジ新芸術校主任講師。東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。博士(美術)。2010年から梅沢和木、藤城嘘らとともにアーティストグループ「カオス*ラウンジ」を結成し、展覧会やイベントなどをキュレーションしている。主なキュレーション作品に『破滅*ラウンジ』(2010年)、『カオス*イグザイル』(F/T11主催作品、2011年)、『キャラクラッシュ!』(2014年)、『カオス*ラウンジ新芸術祭2015「市街劇 怒りの日」』(2015年)など。著書に『情報社会の情念』(2013年、NHK出版)

「2017年 『絵画検討会2016-記録と考察、はじめの発言』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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