- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140912201
作品紹介・あらすじ
無秩序な世界の狭間で、大国の論理に翻弄される、国家にあらざる国、未承認国家。未承認国家を起点に、不安定化する世界を読み解く。その背後に隠れる基地問題の存在を明らかにする。破綻した主権国家システムの行方を占い、歴史の転換点を解きほぐす野心的試み。
感想・レビュー・書評
-
未承認国家について。
なぜどのように未承認国家が生まれるのか。そしてなぜどのように存続するのか。
未承認国家への処方箋は。
コソボ独立、ジョージア戦争、クリミア併合など、今般のウクライナにおける戦争の前史の一部ともいえる出来事も解説している。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「戦争は、ここから、生まれる」
2022/02/21、「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立をロシアが承認した。 -
【由来】
・図書館のアラート
【期待したもの】
・
※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。
【要約】
・
【ノート】
・無秩序な世界の狭間で大国の論理に翻弄される、国家にあらざる国、未承認国家。未承認国家を起点に、不安定化する世界を読み解く。ウクライナ危機についても言及する。現代未承認国家一覧付き。
【目次】
-
そもそも難しいだろうなぁ、と思って手に取った本だが、やはり難しかった。
でも、地理好き・歴史好き・国際政治好きにはオモシロいと思うよ。
実際よかったわ。 -
「国」の相対性。「はじめに」の「現代の未承認国家一覧」にほぼ全てが詰まっている。本文以降は詳細な総覧で、勉強する強い意志が無ければ目が滑る。
-
一定の領域を実効支配し、独自の統治機構を備えながら、一般的な国際的承認を受けていない「未承認国家」の現状と課題を明らかにしている。台湾やパレスチナが冷戦期からの「未承認国家」として有名だが、本書では主に、ソ連やユーゴスラヴィアの解体に伴って出現した「未承認国家」(旧ユーゴのコソヴォ、旧ソ連のナゴルノ・カラバフ、アブハジア、南オセチア、沿ドニエストル)を分析対象としている(ウクライナ・ロシア間の係争問題であるクリミア情勢についても詳述している)。従来の主権国家体制における「領土保全」と「民族自決」の矛盾、大国の植民地主義の必然的結果として「未承認国家」をとらえている。
-
実質的には国家であるにもかかわらず,国際的な承認を得られていない未承認国家。その誕生の背景や個別の実情,将来の地位について見通しよく描き出した快著。ロシアによるクリミア編入や,ISILの問題で騒がしい昨今,複雑な国際関係の理解を深めるためにも読んでおくべき一冊。
既存国家の領土保全・主権尊重と,民族自決の原則。互いに矛盾するこの二つの国際原則が,今に至るまで多くの戦争・紛争を引き起こし,未承認国家を生み出してきた。二度の世界大戦の後,冷戦の後には一時的に世界の趨勢は民族自決寄りに傾き,多くの独立国や事実上の独立国を増やす。そしてその後の揺り戻しで事実上の独立国は長い間未承認国家にとどまり,法的親国は自国の領土内に実効支配の及ばない地域を抱え続けることになる。「帝国」の恣意的な線引きやダブルスタンダード,民族のアイデンティティを作り出すための歴史の捏造,民族浄化(ジェノサイド・エスノサイド)…。人類が経てきた苦難の歴史はまだ終わらないのかという気持ちになる。
日本と地理的に近く関心も高いであろう台湾についてはあまり触れていないが,それはおそらく台湾の抱える問題が比較的小さいから。対して台湾とともに正式な国家に最も近いといえるコソヴォについては詳しく取り上げている。これはコソヴォ問題の例外的性格が,今後の未承認国家を考える上での極めて重要な先例になるからで,現にクリミア問題にも大きな影響を与えている。
大戦・冷戦後の混乱期を除けば,法的親国の領土・主権を尊重することが国際秩序にとって重要であったはずだが,コソヴォに関してはメディア動員も含めた欧米の戦略により,非常に多くの国が国家承認をしてしまった。コソヴォがもし順調に独立するようなことになれば,これをモデルに他の未承認国家や自治共和国で独立の気運が盛り上がり,大きな混乱がもたらされるおそれもある。
忘れてはいけないのは,未承認国家といっても,そこに住む人々が決して特殊であるわけでなく,彼らは彼らなりに日常の生活を送っているのだということ。本書もそこにしっかり気を配っていて,著者が実際に見てきた例もいくつか挙げている。国際関係が現状で確定していないからといって,明快に白黒つけることが必ずしも幸福につながるわけでもない。所詮は国家というものも,生身の人間たちに優先する存在ではないのだから,その辺を見誤ってはならないのだと感じた。 -
未承認国家という言葉を恥ずかしながら初めて知りました。それぞれに状況は違いますが、ウクライナ問題が継続している今日、未承認国家が国際社会にとって、ますます大きなファクターになっていきそうだと感じました。
コーカサスのあたりの状況をあまり理解していなかった私にとって、コーカサスを舞台とした欧米とロシアの生々しい駆け引きがとても印象的でした。国際関係のパワーゲームという面をいやがおうにも感じさせる一冊です。
筆者の民族国家という理念を捨てる必要がある、というのは本当にそのとおりだと思います。民族国家の追及は争いしかうまないと思うので。 -
ロシアによるクリミア併合や、ウクライナ東部の親ロ派の分裂独立騒動などが世界を騒がせている今、時宜を得た書であると思った。
未承認国家として、古くは満州、台湾、パレスチナを挙げ、また最近のコソボやグルジア近辺の南オセチア等の動向について、経緯や状況を整理し分かりやすくまとめている。特にコソボの承認は、近年のロシアの対ウクライナ戦略の基になっているとの指摘は納得できる。
しかし、この未承認国家とネーミングした組織の最先端は、タリバンやIS(イスラム国)だと思うが、それらには触れられていない。ケースごとに状況が違いすぎて包括的には説明できないとはいえ、これは残念である。
また、なかなか解決策が浮かばないとはいえ、もっと話し合えという結論ではなく、筆者ならではの将来の予測なり、大胆な提言があっても良かったと思う。