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Amazon.co.jp ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784140912225
みんなの感想まとめ
テーマは「棲み分け」を通じて、欧米の歴史的発展を探求することにあります。著者は、資本主義とサイエンスの関係を生態学的および能動的な視点から分析し、どのようにして欧米がその影響力を拡大していったのかを明...
感想・レビュー・書評
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・サイエンスは時に人類に制御不能なのものをつくってしまう。それでもサイエンスは自己増殖することをやめることができない。資本主義と連動しているからである
・もともとユダヤ教は現世信仰。イエス・キリストの時代に、律法(生活規範)のみを権威とする正統派のサドカイ派に対して、天使、悪霊、霊魂の不滅、肉体の復活を信じる異端のパリサイ派が現れる。彼らは死後の世界、すなわち来世の存在を想定した
・ある程度「裕福」であれば、その国の一般市民は、戦闘になるような「本当の独立運動」を支持しない。ゆえにスコットランドの独立はありえない。日本でいえば、大阪は東京に強いライヴァル心を抱き、対抗的なアイデンティティをもっているが、独立を唱える人間はいないだろう
・1480年モスクワ大公イヴァン三世がキプチャク・ハン国はの忠誠を拒絶。それまで(1240年〜1480年)をロシア史では「タタール(モンゴル)のくびき」と呼ぶ
・クリミア戦争(1853年〜56年)はロシアが黒海方面への進出をもとめてオスマン帝国を攻めたものであったが、この地域の権益を狙うイギリス・フランスに徹底的に敗北
・工業化とは、工場・機械などをもつ自国の資本家が、原則自国在住の賃金労働者を使って工業製品を大量生産させ、自国の国民(労働者も含めて)に利益・儲けを還元させるシステムづくりに成功すること。原料調達地や販売市場は自国以外でも構わない。特に販売市場は自国以外の方が良い(収奪する)
・「資本主義」「サイエンス」「能動的棲み分け」は適合的で相性が良いが、この三者は合体して意味もなく勝手に自己増殖して制御不能になりつつある -
権力・富・都市の分散、場と時間の分割によって資本主義が発展したと論じる。これらをまとめて「棲み分け」と表現していることを含めて議論の余地があるように思うが、歴史の流れを考察する議論としてはおもしろい。
中国やイスラム圏では、権力・都市・富が集中した。技術の発展は権力にとって脅威となるため止められたり、市場が限定されているため職人が儲ける機会がなかった。ヨーロッパでは、権力が棲み分け(分散)していたため、敵対する権力との争いの中で技術が発展し、職人は富を獲得する機会が得られた。
著者は、ギリシア・ローマ、キリスト教、ゲルマン人の合体をもってヨーロッパの成立とする。11〜12世紀頃、ゲルマン人がキリスト教を受け入れ、ギリシア・ローマの学芸がビザンツ帝国やイスラム圏を経由して輸入された。
8世紀のカール大帝の王国は、臣下の土地(恩貸地)から税を徴収することができず、恩貸地は実質的な私有地だった。恩貸地制度は西フランク王国や東フランク王国にも受け継がれ、11世紀には封建制の確立に至った。この頃、農村では三圃制が広まり、中国からイスラム経由で伝わった鉄製農具が普及した。馬と有輪犂は高価だったため、複数の農民で共有され、農作業は共同で行われるようになった。北フランスに発祥した農村共同体は、1300年頃までにはドイツやイングランドにも広がり、生産力が向上して、領主から独立した農民も増えていった。余剰生産物は市場で売却され、都市の成立を促した。
封建制の成立・浸透する11〜13世紀は、キリスト教がヨーロッパにくまなく浸透する時期に重なる。教会法の編纂、各修道会の設立、教皇権の強化など、ローマカトリック教会の発展がこの時期に起こり、教会は農村にもつくられた。ユダヤ教はユダヤ人の生活規範を厳守する信仰だが、イエス・キリストの時代に、死後の世界を想定するパリサイ派が現れてキリスト教につながっていった。キリスト教の最終目的は天国に入ることなので、権力者は教会や修道院に土地を寄進した。これが封建制という権力の棲み分けを促進した可能性がある。
14世紀後半から、農村部に各種日用品を扱う手工業者や商人が現れて職の棲み分けが展開し、15〜18世紀に西欧一般に拡大した。取引は物々交換から貨幣に代わり、お金を多く所有したい欲望が生まれて資本主義の精神が浸透した。日本でも、江戸時代後期の18世紀後半に、日用品を扱う商売(手工業者)が数多く登場し、貨幣経済と資本主義の精神が社会に浸透した。同時に、農民層が富農と貧農に二極化し、資本家予備軍と労働者予備軍が生まれ、明治維新によって工業化につながった。ヨーロッパと日本だけが封建制を発達させ、初期段階の資本主義を生んだが、著者はその理由はわからないという。
協会では聖も俗も混在していた。16世紀の宗教改革によって礼拝や説教だけの空間する試みが進行し、19世紀に完成した。著者は、聖と俗の棲み分けが、特定の空間と時間にはひとつのことしかできないという発想となり、資本主義に適合的だったと考える。
また、機械時計の普及も資本主義の精神が浸透する時期と重なる。14世紀初頭に大型の機械時計が発明され、16世紀に公共用機械時計が各都市に普及し、17世紀までに農村の教会に設置された。日本でも、1551年にザビエルが大内義隆に献上してことで機械時計がもたらされ、城下町のみならず、17世紀中頃から18世紀にかけて、農村の寺院の梵鐘用としても利用されるようになった。
資本主義は勝者と敗者を生むシステムであり、19世紀以降、欧米は植民地をもって富を収奪してきた。植民地が政治的に独立しても、収奪の構造は変わらなかった。アメリカが「自由と民主主義」という旗印の下で、中東や北アフリカ諸国の民主化運動を支援したのは、独裁制の下で欧米資本の進出に対抗してきた関税や経済規制などの「障害」を除去するためだった。
<考察>
現在も経済は競争によって発展していることを考えても、権力や都市の分散が技術の発展と資本主義を生んだという説明は理解しやすい。ただ、権力の分散は封建制に由来するとしているが、封建制の成立については「自生的」としている部分は歯がゆい。日本では、土地の開発と私有が進む中で、農民集団が外敵を退けるために武士は発展した。ヨーロッパでも農村共同体が発達したことと関連がありそうに思える。武士の特徴をよく表している中根千枝の「タテ社会」も、場の共有によって生まれる(「タテ社会の人間関係</a>」)。封建制の成立の芽は、農民の共同組織にあったのではないだろうか。
教会の聖と俗の分離や機械時計の普及が資本主義に寄与したとするのは、一因となった可能性はあるかもしれないが、十分な要因とは思えない。むしろ、農民の間で貨幣経済が発展したことの方が、日本が明治維新後にスムーズに工業化した理由としても、資本主義を促進した要因として腑に落ちる。川勝平太が、江戸時代までに木綿や生糸などの産業化が進んでいたことを指摘していることを連想する(「日本文明と近代西洋</a>」)。 -
「棲み分け」って言葉に??ちょっと違和感を感じながらも面白く読めました。
欧米が何故派遣を握ったのか?
ヨーロッパで生まれた資本主義とサイエンスが要だと、自主的・生態学的棲み分けと能動的棲み分け(空間・時間)により説明されている。
資本主義は封建制が亡くなることを前提として発展。
戸籍は教会が管理していて、教区教会ごとにまとまり社団を作り、王権と対面。社団から議会が始まっていく。やはり宗教の影響は大である。
欧州よりも、中国は15Cに造船技術は世界一である・
イスラムのオスマン帝国も印刷技術は高かった。
しかし、皇帝に権力が一極集中している場合、性能の良さが権力の脅威となるため管理下におさめようと力が働き、技術・サイエンスの発展は見込めない。
欧州では、権力の棲み分けより資本主義が始まり、サイエンス敵思考(数値化する考え方)が始まる。
時計は8Cに中国で発明されているのに12Cに欧州で発達し、労働のタイムスケジュール管理を極め、富の棲み分けがますます進む。
人間の棲み分け…人種差別・ナショナリズムの話となると・・・まあ、そんなもんかな??と軽く読み流してしまいました。 -
古代文明からは辺境の地だった欧米。
なぜあの地が世界の中心となったのか。飛躍の元となったサイエンスと資本主義を生み出すことができたからだ。
では、サイエンスと資本主義はどのように生まれたか。
その誕生の過程を「棲み分け」をキーワードに欧米史を辿りつつ、解き明かした内容。
欧米には封建制という権力の散らばりと人口・都市(市場)の分布、そして富の分散があった。
権力と人口の棲み分けにより職人同士で都市間競争が働き、サイエンスが生まれた。農村内分業(棲み分け)が貨幣関係のネットワークを作り出し資本主義の精神が浸透していった。彼らが工業化において大量の賃金労働者予備軍となり資本主義の機動力となる。
権力・人口・都市(市場)・富が棲み分けられていたから欧米はサイエンスと資本主義を生み出すことができ、工業化を経て近代では世界の覇権を握ることができた。っていうお話。
棲み分けという視点で欧米史を辿るのはおもしろいが、全体の記述や論証が雑で、特に後半は首を傾げたくなることばかりだった。
ナショナリズムは能動的棲み分け。って、権力や都市が棲み分けされていたんでしょ。それが統一されるわけだから、ナショナリズムを棲み分けというキーワードだけでは説明できないのではないか。人種差別は「人の棲み分け」というのもよく分からない。差別ってイデオロギーだろうか。
サイエンスと資本主義の連動による自己増殖を止めないといけないというが、どうすればいいのかは記述なし。そもそもサイエンスと資本主義を全ての諸悪の根源と思っているのがどうも共感できない。
固い専門書ではないから仕方ないかもしれないが、全体的に出来のいい本ではないのでお薦めしない。 -
4〜5
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なるほど!と思う部分とちょっと極端かなと感じる部分とあったけど、面白かったです。資本主義の説明がわかりやすくその怖さも考えさせられました。人を棲み分けするって恐ろしい。
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ヨーロッパ文明を「棲み分け」で読み解く試みで、切り口がとてもおもしろかったです。聖と俗の問題の棲み分けの問題は、かなり説得力があります。ただ日本も近世以前は、聖と俗は棲み分けられていました。これは、著者の主張する視点とはずれないと思います。中国に対しては、明代以降が主軸となっている気がします。というより、中国も視点が違うけど、「棲み分け」されている国と思うのですが。
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著者の本は偶然二冊目であるが、着目点が他と異なる事が多く、細かい事を考えなければ面白く読める。
強引な解釈も、根拠が不明確な断定も、「なぜなのかは不明である」と感性的な自説を展開するところもニヤニヤしながら読み進もう。
著者の概念、ヨーロッパ史の下部構造である棲み分けによって語られる異説は、既存の歴史概念では不明確であったヨーロッパが先進国となる過程を解き明かして行く。
逆説の日本史の様だとは言わないが、著者の視点で眺めると、「そうかもしれないな」と思わせてくれる面がある。
ある程度西洋史に詳しくなければ鵜呑みにするため危険である。しかし、著者の新しい視点は大いに面白く検証されてしかるべき深みを持っている。もっと評価されてしかるべきと思われる。
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