ブルーフィルムの哲学 「見てはいけない映画」を見る (NHKブックス 1282)
- NHK出版 (2023年11月25日発売)


- 本 ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140912829
作品紹介・あらすじ
それは「現れるに値するもの」だ
「ブルーフィルム」と言われてピンとくる人はどれだけいるだろうか? 本書は気鋭の現象学者がまさに今失われつつある「違法のポルノ映画」の世界を読者の前に甦らせ、この社会で疑われることのないビジョンを動揺させる。過去のブルーフィルム研究も総括した、瞠目の哲学書!
(仮)
はじめに 禁じられた映画を見る山田五十鈴
序章 経験を通じて思考すること ――「土佐のクロサワ」と現象学
第1章 ブルーフィルムとは何かと問いながら
第2章 ブルーフィルムを見るとはどのようなことか
第3章 ブルーフィルムは何ゆえに美しいのか
第4章 ブルーフィルムを前にして何をすべきか
第5章 ブルーフィルムはどのような(不)自由をもたらすのか
第6章 ブルーフィルムとともに生きるとはどのようなことか
終章 現れるに値するもの ――ヴィジョンの哲学へ
感想・レビュー・書評
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現在ではほとんど忘れ去られた存在となった「ブルーフィルム」と呼ばれた16mmないし8mmフィルムで撮影された無修正のポルノ映画について、当時斯界ではもっとも知られた存在であった制作販売グループ「土佐のクロサワ」とその作品を中心に哲学の手法を用いて読み解いていく本。
高知の大学に勤務することになり移住することになった著者がその地で入手した「土佐のクロサワ」の代表作の一つである「柚子っ子」を出発点に、今ではほとんど失われてしまった「ブルーフィルム」を膨大な周辺テキストを元に様々な角度から浮かび上がらせていく過程は文句なく面白い。個人的には「(ブルーフィルムには)多様な欲望が可視化されているのであるが、それはあくまでも一つのパースペクティブ、女性を求める男性の欲望を介したものである。こうした状況を(中略)『欲望の横領』と特徴づけてみたい」云々のくだりが興味深かった。
また、「ブルーフィルム」というモノに対して哲学的に読み解いていくその過程、方法とその意図や目的を平易で判りやすい文章で一つ一つ丁寧に説明していくスタイルは、現代哲学の方法論、手法の解説でもあり「現代哲学の入門書」のようでもある。何事も雑にしか考えられない身からすると、その緻密さには脱帽するしかない。
読んでいて目に付くのはことある毎に出てくるフェミニズムやポリティカル・コレクトネスに対する配慮や予防線で、「ブルーフィルム」のような性的なコンテンツを扱う場合、今じゃここまでせねばあかんのかと昭和の人間としては「面倒クサっ」と思ってしまうが、ちゃんとするということはキチンと手間暇かけて手順を踏み他の意見も尊重することなのだなぁという当たり前を再認識した。 -
【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/569747 -
これはとてもおもしろいポルノ哲学というかブルーフィルム美学。当の作品見ることができないのがあれなのだが、みんな読んでみるといいと思う。
著者プロフィール
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