「憲政常道」の近代日本 戦前の民主化を問う (NHKブックス No.1292 1292)
- NHK出版 (2025年1月27日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (432ページ) / ISBN・EAN: 9784140912928
作品紹介・あらすじ
現代の出発点は1920年代にあった
東京都知事選や米大統領選など、政党の存在意義がわからなくなるようなケースが増えてきた。一方、政党支持率が落ちても政党の存在を前提とした政治システム自体はびくともしない。なぜか? その理由を、ちょうど100年前のデモクラシー成立の経緯に焦点を当てて説くのが本書である。1924年の加藤高明内閣に「政党政治の確立」を見て、そこに至る過程で「民主政=政党政治」が渇望されていたこと、1932年の5・15事件以後も「政党政治への復帰」が目指されたこと、戦後の「民主化」が言わばその復活強化であったことを明らかにし、「戦前日本=軍国主義」というイメージを吹き飛ばす。「目から鱗」の日本近代史!
(仮)
序 政党政治のアーキテクチャ:第一次世界大戦後の政治改革
一章 立憲政治の中に育まれる民主政治:日本の民主化と第一次憲政擁護運動
二章 原内閣と憲政会の苦節十年:政党内閣制の準備 1918-24年
三章 護憲三派内閣の矜恃と男子普通選挙制の実現:政党内閣制の成立 1924-27年
四章 大政党内閣とマルチ制度ミックスの変容:政党内閣制の展開 1927-32年
五章 危機の時代の非常時暫定内閣:政党内閣制の崩壊 1932-36年
六章 政党政治家の苦節十年と占領下の再建
結 自由と多様性の基盤を育む:近代日本の民主政治と現在
感想・レビュー・書評
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WWI後から二・二六事件までの実証的な政党政治史。細部は自分には消化不良だが、本書のメッセージは明確で、戦後日本の民主主義は全てが占領改革由来ではなく、この時期の政党政治にも起源があった点。政党間での政権交代という「憲政の常道」は西園寺含む当時の政治家や国民に広く理解されてきた点。そして、政党内閣の崩壊は腐敗などそれ自体の劣化が理由ではなく、五・一五事件から緩慢に政治が傷つき続け二・二六事件で決定的となった結果だとする。翻って、腐敗やポピュリズム等、政党政治の負の面は本書ではほとんど言及されない。
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【本学OPACへのリンク☟】
https://opac123.tsuda.ac.jp/opac/volume/729220 -
現在の日本の民主政治は1945年の敗戦・占領によって米国から与えられたものという通俗的理解に対し、日本において第一次世界大戦後に確立した政党政治は立憲政治の中に育まれた民主政治であり、現在の日本の民主政治にもつながっているという理解の下、史料を重視する実証研究の成果を基に、主に1918年の原敬内閣から1936年の2.26事件までの政党内閣制の成立・展開・崩壊の過程の総合的な全体像を明らかにしている。
重厚な記述で、なかなか読み進めるのがたいへんだったが、戦前の政党政治の来歴、その意義について理解が深まった。前から関心を持っていた最後の元老・西園寺公望や昭和天皇の人物像についても、本書により、解像度が高まったように思う。
ただ、1920年代以降の日本では政党政治が確立・定着しており、戦後の民主政治にもつながったということはよく理解できたのだが、「日本の軍部が台頭したのは政党が腐敗していたから」という従来の言説に対する批判としては十分に応えられていない部分もあるように思った。形としての政党政治は確立していたとしても、戦前の政党政治が民意を糾合し、社会を統合するという機能をちゃんと果たしていたのかという実質面の分析がやや薄いようには感じた。 -
東2法経図・6F開架:312.1A/Mu41k//K
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序章
- 第一次世界大戦後の世界と日本: 政治の変化や国際的な影響についての考察。
- 政党の重要性: 日本の民主主義の形成における政党の役割。
第一章: 日本の民主主義の出自と発展
明治維新と憲法制定
- 明治維新の影響: 日本における近代国家形成の基礎。
- 憲法の成立: 日本の立憲政治の始まりとその影響。
政党政治の成長
- 政党内閣制の成立: 1918年から1936年にかけての政党内閣の成立過程。
- 国際協調外交: 大戦後の日本の外交政策の変化。
政党の変遷
- 政友会と憲政会: 日本の主要政党の歴史的変遷。
- 民主政治の成立: 政党間の権力移譲のプロセス。
第二章: 政党内閣制の成立とその影響
首相選定制度の変化
- 首相選定の重要性: 政党内閣制の成立における首相選定の役割。
- 政治改革の影響: 政党内閣制の成功とその後の政治的混乱。
政治的安定と混乱
- 政党内閣の成立と崩壊: 政党政治の安定性とその脆弱性についての考察。
- 第一次世界大戦の影響: 戦争の影響が日本の政治に与えた影響。
第三章: 昭和天皇と「憲政常道」
二大政党制の確立
- 政友会と民政党の関係: 各政党の強さと脆さ。
- 政党内閣制の進展: 政党間の協力と対立のダイナミクス。
政治的期待と評価
- 政党への期待: 社会からの政党に対する期待の高まり。
- 評価の厳しさ: 政党が持つ権力に対する社会の評価が厳しくなる過程。
第四章: 軍部と政府の緊張
国際軍縮と国内の緊張
- 軍縮の影響: 国際的な軍縮が日本の軍部と政府に与えた影響。
- 経済状況の悪化: 世界大恐慌が日本の政治と経済に与えた影響。
政治的対立の深化
- 軍部の発言力: 政府との関係における軍部の影響力の増大。
- 政党政治の困難さ: 政治的安定が脅かされる要因。
第五章: 五・一五事件と政党内閣制の中断
政党内閣制の崩壊
- 事件の影響: 五・一五事件が政党内閣制に与えた影響。
- 政党政治の終焉: 政党の排除がもたらす政治的変化。
結論
- 日本の政治の未来: 本書が示す日本の政党政治の歴史と今後の展望。
- 民主主義の再考: 政党政治の重要性とその未来への影響。
著者プロフィール
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