この人この世界 2007年4-5月 (NHK知るを楽しむ/月)

著者 :
制作 : 日本放送協会  日本放送出版協会 
  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784141891673

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  • (2007.06.16読了)(2007.04.07購入)
    「ほとけさまが教えてくれた」籔内佐斗司著、NHK知るを楽しむ、
    NHK教育テレビ「この人この世界」のテキストです。
    籔内さんが修復した仏像、好きな仏像、好きな彫刻についての話です。
    最初の話は、「おたま地蔵」です。修復を頼まれた地蔵菩薩像をX線撮影してみたら、なかにも像が入っている感じでした。
    解体してみると、中から裸形像が出てきたということです。
    最初、裸形像として作られ、その上に実物の衣を着せていた。その後、着衣像に改変したということです。実に珍しい仏像です。
    第3話は、興福寺の阿修羅像についてです。
    「日本で最も好きな仏像は何ですか」と尋ねると必ず上位にランク・インされる仏像です。
    人気を集める理由は、二点。
    その1、細くしなやかに伸びた六本の腕。その2、像の表情。
    大きな石を移動する際に用いる橇のような道具を「修羅」と呼ぶのは、阿修羅が、善なる神である帝釈天と絶えず戦闘を繰り返したということから、大石(たいしゃく)と帝釈天をかけて、帝釈天を動かすものということからといわれています。(49頁)
    阿修羅像には、モデルがいたのではないかと藪内さんは言います。シルクロードを通ってきた異国の少年が当時の奈良には住んでいて、その少年の一人がモデルではないかというのです。仏像に残る色を基に復元した阿修羅像の髪は、輝くばかりの金髪だったのです。
    第4話は、奈良東大寺の大仏です。
    奈良の大仏は、何度かの戦乱で焼かれていますので、時代の違う部品の継ぎ合わせになっているのだそうです。
    台座にあたる蓮弁部と膝の一部は、天平時代の創建当時のもの。頭部は、17世紀後半のもの。
    あんな大きな銅像をどうやって作ったかの説明もあります。
    第5話は、定朝です。
    我々が日本の仏像としてイメージするものは、定朝によって編み出された比率と技法に基づいて作られたということです。
    第6話は、運慶・快慶です。
    水晶を目の形に削って彩色してはめ込む「玉眼」の技法を取り入れています。
    第7話には、ブルーノ・タウトが出てきます。
    ブルーノ・タウトが日光東照宮をいかものと評価したために、東照宮の評価が不当に低く知識人にも無視されているということです。
    (仏像について興味の方にお勧めです。)

    彫刻家 籔内 佐斗司
    1953年 大阪市生まれ
    東京芸術大学美術学部彫刻科卒業
    1982年〜1987年 奈良の新薬師寺などの文化財修復作業に従事
    第二十一回平櫛田中賞受賞
    (2007年6月27日・記)

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著者プロフィール

1953年、大阪に生まれ。東京藝術大学・大学院で彫刻を学び同大学院保存修復研究室で、仏像の古典技法と保存修復の研究に従事し、経験をもとに彫刻表現を展開。
ブロンズを用いた屋外彫刻やマルチプルアートなども手がける。
「ART FOR THE PUBLIC」と呼ぶ公共空間に設置した作品は、全国に約100箇所を数える。
2004年からは、東京藝術大学大学院文化財保存学の教授として、文化財保護の人材育成と仏像修復にも従事。
2010年には「平城遷都1300年祭」の公式キャラクター・せんとくんのデザインを担当し、仮面舞踏集団「平成伎楽団」を結成、ますます活動の領域を広げている。

「2013年 『籔内佐斗司 やまとぢから』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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