この人この世界 悲劇のロシア・ドストエフスキーからショスタコーヴィチまで 亀山郁夫 (2008年2-3月) (NHK知るを楽しむ)

  • 日本放送出版協会 (2008年1月25日発売)
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Amazon.co.jp ・雑誌 / ISBN・EAN: 9784141891871

感想・レビュー・書評

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  • (2008.04.05読了)
    「悲劇のロシア」亀山郁夫著、NHK知るを楽しむ、

    NHK教育テレビの講座のためのテキストです。8回の放送のうち、前半4回は、ドストエフスキーの長編小説「罪と罰」、「白痴」、「悪霊」、「カラマーゾフの兄弟」が取り上げられています。後半4回は、詩人マヤコフスキー、作家ブルガーコフ、映画監督エイゼンシテイン、作曲家ショスタコーヴィチの4人とスターリンの闘いが描かれています。
    「罪と罰」は、高校生のころ読んだのですが残念ながら面白さが分かりませんでした。2000年にもう一度読みました。このときは面白くて、夢中になりました。ミステリー小説を読むような感覚でした。「白痴」は、1997年に、「悪霊」は、2004年に読みましたが、「罪と罰」ほどの面白さはありませんでした。「カラマーゾフの兄弟」は、積読中です。

    「罪と罰」の項で、興味深いのは、16世紀ドイツの画家ハンス・ホルバインの「死せるキリスト」と「罪と罰」の関係です。ドストエフスキーは、ホルバインの絵を知っており、「罪と罰」を書くときに「死せるキリスト」をイメージしていたのではないかというのです。「死せるキリスト」は、完全な遺体であり、復活などありえないといっているかのようなのです。

    「白痴」は、「最高の恋愛小説」という説もあるが、実に謎の多い作品ということです。

    「悪霊」は、日本で1972年に起きた連合赤軍事件を先取りした作品といわれました。「この小説は、1869年にモスクワの大学内で起きた、ある革命結社の内ゲバ殺人事件をモデルにしている。」(55頁)
    「ドストエフスキーが「悪霊」の中で最もこだわったのは、他者の痛みに対して無関心になることを通じてあらわとなる人間の堕落だった。彼はそれを、優れた知性、美貌、腕力を持つ神にも似た存在、スタヴローギンという一人の人間の悲劇として語りつくそうとしていた。」(68頁)

    詩人マヤコフスキー、作家ブルガーコフ、については、何も知らないし、亀山さんの紹介を読んでもさほど興味はわかない。

    映画監督エイゼンシテインの作品、「戦艦ポチョムキン」「メキシコ万歳」は、見たような気がするのですが、定かではありません。

    ショスタコーヴィチの曲は、2003年11月に演奏会で交響曲第5番を聞いたあと、CDを数枚買って聞いています。ベートーヴェン、チャイコフスキー、マーラー、等だけでなく、聴き応えのある作曲は結構いるということです。

    スターリン政権下の表現者たちは、独裁者の思惑に振り回されて、大変だったようです。独裁者がいなくても、表現の自由のないところは、いやです。

    著者 亀山郁夫(かめやまいくお)
    1949年 栃木県生まれ
    東京外国語大学卒業
    2002年 『磔のロシア』で、第29回大佛次郎賞を受賞
    (2008年4月26日・記)

  • 亀山郁夫著『悲劇のロシア』。結構、長期間にわたり通勤のバッグの中で移動したことになるが、全八話を読み上げた。副題に「ドストエフスキーからショスタコービッチへ」とある。文豪から詩人、作曲家までロシアの表現芸術家の作品と数奇な運命が解析される。

     ロシアの文学や芸術。なんとなく、重苦しく暗い。雄大で、「それが良い」という人もおるが、一概に大陸の所産とだけは言えないようである。社会主義の政治権力と、多数の民衆のなかにあって、民衆を背景にもつ知の集団。芸術家たちはその表現を通じて、民衆の叡智を体現しつつも、政治権力との競合を無視しては成り立たない。

     ドストエフスキーに「不意の死」、ショスタコービッチに「不意の暴力」。ドストエフスキーの文学作品に「父との葛藤」。
     寒冷な風土の厳しい自然と広大な大陸に象徴されるおおらかさ。権力と民衆。いくつかの対立軸は、家族の絆のなかにも影をおとしている、か。
     
     NHK教育テレビの講座テキスト。本書はロシアの芸術と表現。その重苦しい扉を理解し押し開いてくれる、手がかりとはなる、が。

  • 今年(2008年)2/3月の、NHK教育「知るを楽しむ この人この世界」のテキストです。「カラマーゾフの兄弟」を読み通す根性が自分にはなさそうなことはうすうす感づいているので(笑)、「ドストエフスキーからショスターコヴィチへ」の副題にひかれて購入。テレビ放映は見たのですが、テキストを机の上に放っておいて数か月経ってしまったので、やっと読みました。ロマノフ朝からソ連、今のロシアの政治をみるに、なんだか「ロシアの人はああいうのがいいのかなぁ?」と思っていました。そういう疑問が解けることはあまり期待せずに開いたところ…前書きが秀逸!ロシアの歴史観、国家観をこんなにコンパクトに言い尽くせることに深く感じ入りました。前半はドストエフスキーの著作4本のガイド(もちろん「カラキョー」もあります)、後半はマヤコフスキー他の芸術家4人を紹介しています。大学の講義調ですが、脚注もうるさすぎず読みやすいボリュームです。コストパフォーマンス抜群!欲をいえば、テレビ放映ではドストエフスキーの著作はアニメでダイジェスト放映されていたので、そちらのカットも使ってほしかったと思います。レトロなモノクロの切り絵調で、これがまたいいんです!それがないから☆ひとつマイナス(笑)です。ごめんなさい。

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