岡倉天心『茶の本』 2015年1月 (100分 de 名著)

制作 : 大久保 喬樹 
  • NHK出版
4.31
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (116ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784142230464

感想・レビュー・書評

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  • 茶の本の要点、美味しいところをピックアップして解説した本。
    こちらをご一読されてから「茶の本」を読まれた方がよりグッと天心が言わんとしていたことが腹落ちしやすいのではないかと思います。岡倉天心の紡いだ言葉も然ることながら、大久保 喬樹氏の解説の文章も日本語の美しさを感じました。
    あと、読者からすれば高尚な思想哲学理念を持っていた岡倉天心が晩年に海外の未亡人へ書いていた詩兼ラブレターを見ると、天心もやはり一人の人間だったのだなと思いました。
    しかしながら、同時にこれらを書いた天心の気持ちになってみたら、手紙は伏せていてほしかったのではないかと勝手に同情してしまいました。

    以下は「茶の本」の内容について。
    日常の取るに足りないような細々としたものの中に真の美がある
    余白、考える余地を残す必要性
    自然との共生
    以上のことを茶という文化を通して世界に発信した岡倉天心。
    世界を渡り歩いたからこそ、外から見た日本という国を主体的であると同時に客体的に捉えられたのだなあと思いました。
    花については天心は本当に花を愛していたんだなと思いました。この部分は天心の美しく繊細な心の持ち方に涙しながら読みました。勝手な想像ですが、天心はとても心優しい人だったのではないかなと思いました。現在に生きていらしたら、惚れていたかもしれません…。

    あと翻訳されたものを呼んだあとに、原文も読んでみたくなりました。

  • 余白、未完成、非対称、不完全、相対性→可能性、想像する余地、完成に向かう過程を楽しむ、

    日常を楽しむ、日常の瑣末なことに美が宿る
    「それまでの間、一服して、お茶でも啜ろうではないか。(中略)しばらくの間、儚いものを夢み、美しくも愚かしいことに思いをめぐらせよう。」

    うーん、いいね。

  • このシリーズで取り上げられるものは中身は知らなくてもたいていは聞いたことがあるんだけど,この本は初めて(タイトルが普通過ぎて印象に残っていないだけかも)。時代的にも武士道と双璧をなす本だったとは知らなかった。
    不完全だから完成に向かえるといった発想は面白いものの,それ以上の収穫だったのが「自分と相手の共同参画でものごとを成し遂げるという精神は、東洋の文化全般に見られることだ」という考え方。二人称のゲーム(いわゆるストーリー系のPRGとか)が日本で受け入れられていて海外ではイマイチなのもこういう要素があるのかも。

  • 岡倉の思想がよくわかる。

  • 『茶の本』を読む前にこの解説本を一読しました。非常に分かりやすい解説で、この後英語の原文で「茶の本」を読む助けになりました。ブログに感想書きました。https://mietan.wordpress.com/2015/07/16/%E5%B2%A1%E5%80%89%E5%A4%A9%E5%BF%83%E3%80%8E%E8%8C%B6%E3%81%AE%E6%9C%AC%E3%80%8F%E3%82%92%E8%AA%AD%E3%82%93%E3%81%A7/

  • ■書名

    書名:岡倉天心『茶の本』 2015年1月 (100分 de 名著)
    著者:大久保 喬樹

    ■概要

    茶――美しくも愚かしいもの

    岡倉天心が英語で書き、アメリカで1906年に出版した日本文化論の
    古典『茶の本』。本書で天心は茶を日本文化の中心に据え、美術や
    建築・宗教、そして日常生活の隅々にまで茶の思想が浸透している
    と説いた。波乱に満ちた天心の生涯も概観しつつ、『茶の本』を現
    代的に読み解く。
    (From amazon)

    ■感想

    「茶」というか一つの宗教の本ですね。これは。
    「茶」というものを通して、この人が思う考え方、あり方を説いた
    本となります。
    「茶」の入れ方、選び方とかではなく、もっと広い思想、行動を
    中心に生き方を説いた本です。

    ということで、宗教に抵抗が無い人であれば、ある程度すんなり
    読めるかもしれませんが、既に自分の宗教にこだわりがある人に
    とっては、合わない本だと思います。

    考え方自体は面白いですし、あの時代にこの考え方というのは、
    そりゃ当時は評価されないだろうな~と思います。

    この本を読むと今の茶道って、この人が思い描いていたものと、
    かけ離れた形式ばった名誉が無駄にはびこり、お世辞が飛び交う
    見るも無残なものに成り下がっているな~と思わずにはいられま
    せん。
    先生、先生もてはやされている老害がはびこっている時点で、
    それはもはや「茶」の「道」ではないです。
    (勿論、全員が全員というわけではないです。)

    なんでもそうですが、「道」を進むというのは、歳を取ればとるほ
    ど難しい事です。

    ■自分がこの作品のPOPを作るとしたら?(最大5行)

    「お茶の道」が教える生き方とは?

    ■気になった点

    ・「道」とは移り変わることである。

    ・対照のものは心の動きを停止してしまう。

  •  100分de 名著1月は岡倉天心著『茶の本』である。解説者は東京女子大学の大久保喬樹(たかき)教授だ。岡倉天心といえば明治時代に活躍した日本美術の保護者であり指導者という認識だ。それがアメリカに渡って、英語で「茶の本」は著し日本文化を世界に伝えようとしていたことは知らなかった。時はちょうど明治政府が富国強兵を唱え、西欧に追いつけ追い越すという風潮がもてはやされ、新渡戸稲蔵が「武士道」をこれも英語で発表し、強い日本を強調するという時代であった。

     天心は茶を通して日本文化や伝統的な東洋文明の根底にある世界観がどういうものかを説いているという。天心が最も先見性が感じられるものの一つが「自然との共生」というテーマで、このエコロジー思想は現代にも通じるものがあるという。

     放送は1月だったがテキストを読むのが遅くなった。それでも熟読することができたので、岡倉天心の人となりをある程度理解できたのではないかと思う。今度は「茶の本」の本体の方を読まなければと思うが、どうなることか。できれば邦訳前の英文原書で読むことができたらと思う。既にKindle版を入手しているのだが。少しだけでも手をつけてみたい。

  • ・東洋の芸術は自分を空っぽにして、相手を引き込み、自由な発想を引き出すことにより、自他一体の境地に達すること。
    ・美しくも愚かしいこと。愚かしいからこそ、全ての智を含んでいる。
    ・存在の相対性 可変性 多義性
    ・完全固定された秩序でなく、未完、流動的なダイナミズムが息づく場。

  • (2015.02.07読了)(2014.12.26購入)
    「茶の本」を読んだのは1968年です。47年前。ということで、内容を覚えていません。
    この解説書を読んで、結構興味深い本だなと思います。
    「天心は、茶には日本文化および伝統的な東洋文明の精神が凝縮されていると考え、茶の歴史や、その背景にある哲学、茶が生み出した芸術や美意識などさまざまなテーマを通して、日本文化および伝統的東洋文明の根底に流れる世界観がどのようなものであるかを説いています。」(4頁)
    「『茶の本』は、近代欧米の物質主義的文化に対して、東洋の伝統的な精神文化の奥義を説きつくす、天心の文明思想のエッセンスを示す一冊です。」(5頁)
    ◆本の内容(8頁~11頁)
    第一章 茶碗に満ちる人の心
    (茶という文化がもつ全体的な意義)
    第二章 茶の流派
    (茶の発展の歴史)
    第三章 道教と禅
    (茶道の背景にある哲学、老荘思想、道教、禅、不完全性の美学)
    第四章 茶室
    (茶道の哲学を具現化した空間、すきや)
    第五章 芸術鑑賞
    (芸術作品と鑑賞者の関係)
    第六章 花
    (茶道から派生した生け花、自然との共生)
    第七章 茶人たち
    (茶人の死生観)

    【目次】
    【はじめに】百年前に自然との共生を説いた先見の書
    第1回 茶碗に満ちる人の心
    第2回 源泉としての老荘と禅
    第3回 琴には琴の歌を歌わせよ
    第4回 花、そして茶人の死

    ☆関連図書(既読)
    「茶の本」岡倉覚三著・村岡博訳、岩波文庫、1929.03.10
    「宝石の声なる人に」岡倉覚三・プリヤンバダ・デーヴィー著、平凡社、1982.10.15
    「日本美術史」岡倉天心著、平凡社ライブラリー、2001.01.10
    「岡倉天心」大岡信著、朝日新聞社、1975.10.15
    「千利休 新版」桑田忠親著、角川文庫、1955.08.20
    「千利休 無言の前衛」赤瀬川原平著、岩波新書、1990.01.22
    「利休にたずねよ」山本兼一著、PHP文芸文庫、2010.10.29
    (2015年2月8日・記)
    内容紹介(amazon)
    茶――美しくも愚かしいもの
    岡倉天心が英語で書き、アメリカで1906年に出版した日本文化論の古典『茶の本』。本書で天心は茶を日本文化の中心に据え、美術や建築・宗教、そして日常生活の隅々にまで茶の思想が浸透していると説いた。波乱に満ちた天心の生涯も概観しつつ、『茶の本』を現代的に読み解く。

  • 美しくも愚かしいもの
    不完全(虚)の美学、相対性の認識
    小さいものの偉大さ
    老荘思想からの、自分を空っぽにすることで得られる自他一体の境地

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