『野生の思考』 2016年12月 (100分 de 名著)

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  • Amazon.co.jp ・本 (116ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784142230693

感想・レビュー・書評

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  • 映画「シン・ウルトラマン」でウルトラマンが「野生の思考」という書籍を読んでいるシーンがあります。
    全く人類と接点のなかったウルトラマンがどうして人類を守ることになったのか、その理由を知るために「野生の思考」を読もう、と思ったのですが、いきなり読むのはハードル高いので入門書としてこの100分de名著シリーズを読みました。
    100分deとのことでしたが500分くらいかかった気がします。難しい。

    「シン・ウルトラマン」についてのネタバレがちょっとあるかもしれないので注意してください。

    誤読かもしれないですが自分なりに解釈すると、
    ・結論
    未開人は決して思考停止した習俗文化の中で生きているわけではなく、生きるために思考したことによって文化を作ってきた。

    →どうしてそう結論づけたのか
    レヴィ=ストロースは多くの部族の文化を構造化すること(共通点や差異を表すこと)で「未開人の思考」を知る。
    未開人は自然の中に現れる構造を、自分たち人間の中にも現れる構造として捉えること(例えば、鳥の世界と人間の世界には親子関係や音声でのコミュニケーションなど対応している部分がある)によって、婚姻様式や儀式や狩猟方法として応用してきた。
    そういう論理に裏付けされて、未開人の文化が出来上がった。

    ・ウルトラマンは何でこの本を読んでいたのか?
    「高度な文明を持つウルトラマンの属する光の国=近現代人」「地球人類=未開人」として見立てることで人類を理解するために、この本を読んでいたのかもしれないと思った。

    ・この本を読んでウルトラマンはどう思ったのか?
    映画の中でザラブやメフィラスは地球人類を自然の生き物(牛やアリ)と同じもののように見ているのとは対照的に、ウルトラマンは地球人類をどちらかというと自分と同じもののように見ているように感じた。
    最終的にウルトラマンは地球人類と同じような行動をとっていくが、それは地球人類の行動に論理があると思ったからじゃないかとこの本を読んで思った。
    また、レヴィ=ストロースが未開人を理解しようとする姿勢と、ウルトラマン自身が地球人類を理解しようとする姿勢が重なったのではないかと思った。

    ・まとめ
    「野生の思考」とは、他者を理解しようとする心なのかなと思いました。

  • 野生の思考で主張している主な内容は、現代の科学的思考方法からみれば、未開社会では、まるで不完全で、野蛮で、非合理的なことを考えているような印象を持っているが、実はそうではなく、未開社会では、自然界に満ちている具体的な事物を素材にして、世界の本質を考えるということが行われている、ということを主張している。

    解説者によると、弥生時代以後の古代に日本人の思考(=縄文人の思考)と考えてとらえると理解が進みやすいという。

    縄文人=前期新石器時代人は自分の周りの自然を徹底的に観察し、食物や経済的に利用できる動植物ばかりでなく、利用しない動植物についても、また風や水なのどの自然界の出来事すべてに対して「野生の思考」を適用し考え抜いていたはず。分類と変換にによって、つまりは「構造」の思考によって知識の体系を作り上げていた。

    レヴィストロースの考え方は構造主義と呼ばれている。

    ***
    茂木健一郎のvoicyでレヴィストロースのブリコラージュという言葉を初めて知り、手に取ったもの。抽象的な概念が語られるこの手の本はとても苦手。自分自身の力のなさを痛感。せめてブリコラージュという概念だけは忘れないようにしよう。

    voicy
    https://voicy.jp/channel/1136/258828

    理想はいくらでもあるだろうが、手元にある情報、環境、材料を使って最善を尽くすというのがブリコラージュ。日曜大工に例えられる。

    野生の思考の原題は「ラ・パンセ・ソバージュ(野生の思考)」というらしいが、「野生のパンジー(三色スミレ)」という意味もかけられているという。表紙にはきれいなスミレの絵が描かれている。

    思考:pensee
    パンジー:pensee
    野生種:sauvage

    最も印象に残っているのは、「ブリコラージュとは何か」の章で出てきた「ブリコラージュする人=日曜芸術家」の説明としてでてきたシュヴァル(1838-1924)というフランス人。なんとこの人、南フランスの小村で郵便配達の傍ら拾い集めた石を庭に積み上げ、33年をかけて不思議な宮殿「理想宮」を完成させてしまったという。掲載されている写真をみると、とてもじゃないが趣味程度にやったなんてレベルではない。まるでアンコールワットのような古代遺跡を彷彿とさせる。本職の芸術家ではない郵便局員という立場ながら、石を積み上げることに没頭し、これだけのものを完成させたという点で、「日曜『芸術』=ブリコラージュ」であり、(周囲からはおそらく変な目で見られていたかもしれないが)この人の人生はさぞ幸福感に満ちていたのではないかと、感じた。

    シュヴァルの理想宮
    https://cheval-movie.com/info/cheval

  • 野生の思考というより、レヴィ・ストロース概論という内容だと思う。
    構造の何たるかも判ったつもりになっているけれど、チョッと怪しいなと思い到る。

    トーテミズムに対する批判。構造を作り出すメカニズムの一例がトーテミズムとのこと。

    肝心のブリコラージュについては、偶に目にする。藤森照信「茶室学」にも言及があったな。

    自然の人間化として鳥獣戯画やポケモン、ゆるキャラが取り上げられている。納得するけれど、自然が遠くなり、こういう形になっているとも思う。

    レヴィ・ストロースについては「悲しき熱帯」の訳文の酷さにウンザリしたっきりになっている。そろそろ、ちゃんと手に取ろうか。

  • 哲学から民族学へ思考の対象を移して行ったレヴィ=ストロースの55年前の著作'野生の思考'を人類学者中沢新一が解説。歴史主義的な進歩の発想に基づく考え方で、政治も経済も行き詰まり感がある現代で、改めて'野生の思考'に立ち返ることが、人類の未来を予見する上で重要になると示唆。抽象的な概念化で理解するのでなく、自然界の具体的実在で構造を把握する未開人の'野生の思考'方法に光を当てている。ポスト資本主義とは何かを考察する上で面白い考え方である。

  • ■評価
    ★★★☆☆


    ■感想
    ◯構造主義の象徴的な名著、「野生の思考」の解説本。

    ◯コテンラジオやアバタローさん動画など、事前知識があったので、すんなり読むことができた。

    ◯「構造思考は近代西洋哲学の腹を食い破ってでてきたエイリアンのようだ」というのは、非常に的を得ている表現だと思った。

    ◯ブリコラージュ的なものが見直されて、もてはさやされる時代になっているのかなと思った。特に都会など、ブリコラージュ要素が少ないところにいる人こそ、そんな要素に憧れる揺り戻しの時代なのかなと思った。

  • まったくわからなかった!!
    飲茶さんの最強の哲学の本を読んでから臨んだけれども、全然わからなかった。
    もっと知識を蓄えたら、いつかわかるようになるだろうか。

    P75 火あぶりにされたサンタクロース
    サンタクロースの文化の成り立ちが手短に語られており、面白い

  • 野生の思考の民俗学的なアプローチはよく理解できた。ただ、そこから構造主義に至る過程が説明はされているものの、腹落ちしなかった。別の本を読んでみたい。

  •      -2023.05.05読了

    本書「野生の思考」は、刊行の一年前に夭逝したメルロ=ポンティに捧げられた、という。
    「歴史」に対して「構造」という原理――

    「ポイエーシス」と日本の「民藝」

  • これだけで全貌を理解したとはいえないが、少なくともとっかかりにはなれた。いつかは本物を読んでみたい。

  • 確かに日本人の文化には、西洋にない野生の思考が残っている、事に気付きました。

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著者プロフィール

1950年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。京都大学特任教授、秋田公立美術大学客員教授。人類学者。著書に『増補改訂 アースダイバー』(桑原武夫賞)、『カイエ・ソバージュ』(小林秀雄賞)、『チベットのモーツァルト』(サントリー学芸賞)、『森のバロック』(読売文学賞)、『哲学の東北』(斎藤緑雨賞)など多数。

「2023年 『岡潔の教育論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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