ミヒャエル・エンデ『モモ』 2020年8月 (NHK100分de名著)

著者 :
  • NHK出版
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感想 : 39
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  • Amazon.co.jp ・本 (97ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784142231164

作品紹介・あらすじ

ひとりの少女があなたに教えてくれること

ある日、街はずれの円形劇場跡に住み着いた少女モモ。彼女には、人びとの話に耳を傾けるだけで、彼らに自信を取り戻させる不思議な力があった。そこに現れたのが「灰色の男たち」。彼らは街のみなに時間の節約をもちかけ、浮いた時間を奪いとる「時間どろぼう」だった!
1973年の出版以来、世界中で翻訳された『モモ』は児童文学の傑作と名高い。しかしこの作品がもつ真価は、せわしない日常を生きる大人にこそ向けられている。時間の価値とは? 豊かな生とは? そして死とは? さまざまなメッセージに満ちた物語の神髄を、臨床心理学の立場から鮮やかに読みとく。

感想・レビュー・書評

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  • 「モモ」の大切なエキスがぎゅっとつめ込まれた贅沢な一冊でした…買っててよかった(喜涙)

    臨床心理学者 河合俊雄さんの解説で、より深く物語を味わうことが出来、再読したかのような感動もあります。

    モモを一読されてからをオススメします◎

  • 臨床心理学者による『Momo』の解説書。
    児童書だけれども、大人になって読み直すと非常に奥が深い。

    モモが何故、人の話を聞くことができるのか、筆者の解説に納得。
    「自分の中に星々や音楽が満ちている」とのこと。
    我々はついつい相手の話を遮って、反論したり、ツッコミを入れたり、自分の話をしてしまう。もちろん、相手の話を最後まで聞いて受け入れることが大事なのだが、解決策は「黙って我慢すること」ではないのだ。例えば職場で苦手な同僚がいたとして、業務上嫌でも相手に寄り添い、うまくやっていくためには、まずは「自分自身が豊かな時間を過ごせていること」が大事なのだろう。

    そして「豊かな時間」とは、人が誰かと何かを「共有する」こと。
    言葉で表すことで、出来事が「真実」となり、初めて共有される。
    自分の言葉で「言語化」するために、そしてそれを聞いて理解するために、ある程度の時間が必要なのだろう。読書をしたり、思索にふけったり、雑談をする行為というのは、加速化した現代社会の「タイパ」という概念とは真逆であるが、豊かな人生と過ごすためには欠かせない行為だと思う。

    何時までに○○と△△をやらないといけない!とか、◇◇が話しかけてきたせいで手が止まり残業が増えた!とか、毎日せわしなく働き、分単位で動いていて、心の余裕が無く疲れている人におススメの解説書である。

  • 手元にあるのは少年文庫のみ。愛蔵版が気になっている。
    〈特集〉ミヒャエル・エンデ『モモ』 - 岩波書店
    https://www.iwanami.co.jp/news/n35725.html

    100分de名著 ミヒャエル・エンデ『モモ』 2020年8月 | NHK出版
    https://www.nhk-book.co.jp/detail/000062231162020.html

    • 虎目 梨那さん
      いつも「いいね」ありがとうございます。
      著者の河合俊雄氏には隼雄という弟さん(ユング心理学者)がいて、その方の著書もなかなかですよ。よかっ...
      いつも「いいね」ありがとうございます。
      著者の河合俊雄氏には隼雄という弟さん(ユング心理学者)がいて、その方の著書もなかなかですよ。よかったら是非。
      2020/08/02
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      虎目 梨那さん
      ありがとうございます、お亡くなりになった時、色々再読したいと思ったのですが、、、読めてません。
      虎目 梨那さん
      ありがとうございます、お亡くなりになった時、色々再読したいと思ったのですが、、、読めてません。
      2020/08/02
  • NHKを見て。 

    2020.8.25書店で購入しました。これから読みます

  • 3.4回目を録りっぱなしで忘れていたのをようやく視聴。『モモ』は以前から読みたかったけど、この番組で取り上げられたので1.2回目だけ見て後半は録画、読んだあとに見ようと思い、昨年読みました。

    感想としては、『モモ』の小説本編よりも『100分de名著』の方が面白かったです!読んだあと、なんか微妙だったな……とウィキペディアを見たら、松岡正剛さんや上橋菜穂子先生やら、そう考えてる方がいて納得。
    伊集院が「見事に色んな比喩を絡めてて、しかも普通に子どもが聞いてもワクワクするようなシーンを絡めながら、すごい物語を書く才能」とテレビ的に褒めちぎっていたら、解説者の河合俊雄さんがブレーキをかけて「若干作りすぎてるところがあって……微妙なライン。好みが若干分かれるところ」「最初斜に構えててもだんだんとね、入れ込んでいくというか好きになっていくっていうところは若干ある」と仰っていたのが良かった。
    私の場合、『モモ』の前半はすごく面白くて、後半がダメでした。あと私は、『モモ』が好きな菊池亜希子よりも、エンデが苦手な上橋菜穂子先生の方が好きですしね。

    今回の河合俊雄さんの喋りがあまり上手くなく(心理学者だからしょうがない)、しかし伊集院の「視聴者にわかりやすく噛み砕いて説明する例え話」が、いつもどおり面白かった。この番組見てたら毎回「伊集院スゲー!!」と感心します。だいたいドロップアウトした頃のこと、ラジオや芸人としての話、落語や師匠の円楽(楽太郎)の話をすることが多い。

    話はちょっとそれて、昔から、「きくこと」がとても大事だなと思っている。「きく」は漢字で書くと「聞く・聴く・訊く」となって、コミュニケーションを取る上で「訊く=相手に興味を持って質問する」ことがすごく大事。しかしこれをテクニック的にやる人がいて、それはほんとダメですね。バカ。NG。ムカつく。そんなの一瞬でウソくさいってバレるよ。「聴く」の「傾聴する」ことができてないとダメで。

    モモはカウンセラーだ、というのはこの番組の前半でもあって、この「きくこと」ができない人がものすごく多い。だからわざわざお金を払ってカウンセリングとか受けたりするんだけど、プロを名乗っててもできてない人も多いと思う。ただ適当に聞くのではなくて、「ちゃんと聴く」。これはやってみると意外と難しい。

    モモは人の話をよく聴く、しかしそれは受動で、ラストの方で能動に変化する。

    マイスターホラの話を他の人に言いたいモモ。でもすぐに言っちゃダメ……のところ。私らなんか、すぐに「聞いて聞いて!この間ね、…」となっちゃうもんね。
    表現する前に寝かせる。熟成させる。これって、エンデの創作に対する姿勢についてのことなんじゃないかな。エンデに限らず、すぐれた表現者はみんなこういうやり方をしていると思う。

    ジジは物語を吐き出しすぎて、空虚になった。(伊集院の例え。忙しくなると面白い話を経験する時間がなくなり、かなりきわどい話や親友のプライバシーに触れるような話をしてしまう←これは芸人として、人としてどんどんダメになっていくよね)
    ベッポは灰色の男たちのことを警察に話すが、うまく話せず精神病院に送られる。「うまく話せず」は、やっぱり表現についてのことなのかな。


    灰色の男たちは、見た目は『未来世紀ブラジル』で、『ハリーポッター』のディメンターに通じる。虚無的、鬱病的存在。灰色の男たちの最期が不思議だったけど、「死にたがっている」と解釈すれば、ものすごく腑に落ちる。

    番組の途中で、「スッキリするタイプの話だったら嫌だな」と思っていた。いわゆる、「敵を倒してスッキリ、めでたしめでたし」だとダメ。ファンタジーという虚構の世界が、本を閉じて終わり、我々の現実世界と繋がっていないタイプだとつまらない。
    そう思ってたら、ちゃんとあとがきにて虚構と現実をつなげる内容を入れている。ウルトラシリーズの初期の方に多いけど、ラストの兵ちゃんや浦野光のナレーションで、虚構が現実に起こるかもしれない……というのと全く同じ。『狙われた街』はさらにそれをもうひとひねりして皮肉っぽく終わる。『モモ』よりウルトラシリーズの方が、この手法は上手いと思う笑。

    「物語としてはあまり面白くない」と思いつつ、『モモ』を読むこと、読んで考えることはとても大事だと思う。『100分de名著』を見て読んだ気になっちゃダメだよねと思ってたら、これもラストで伊集院が言ってて面白かった笑。

    なんで読むことが大事なのか。読書の本質は「内容をただ知ること」に非ず。「行間を読め」というのは、何も書いてない行間で想像すること、考えること、読んでいる最中の豊かな時間を味わい楽しむこと……で、これはまさに『モモ』の作品のテーマと合致する。

    ずっと『ヒューマニエンス』を見ていて、週に一度の楽しみになっている。最新の脳科学で、「人間は想像する動物」という話が頻出する。装飾品を作ったり、壁画や音楽など生命維持からみれば「まるっきり無駄」な行為なのに、人間は太古からそれをしている。それが人類をここまで発展させてきたと。「想像する、空想する」ことは『モモ』前半部にも出てくるので、そんなことも連想した。

    ラスト。
    伊集院「モモの役割をしてくれるのは何なんだろう。本当は、買いかぶりかもしれないけど、芸能とかは多少そういう役目を…。」
    河合先生「豊かな時間を思い起こさせるものって、昔は儀式とかね、宗教だったんだけど、そういうのが無くなって弱まっていった中では、芸能とかいうものはすごく大事なんじゃないかなと思います」

    ↑富野総監督が年取ってから、芸能や祭祀をテーマにしていることを連想した。

    伊集院「『モモ』を家で音読してるけどのんちゃんには全然かなわない笑。音読してると入ってくる感じとかあるの。」

    ↑ほんとそうだよね!
    黙読してるよりも、番組の朗読を聴いた方が頭にスッと入ってくることがあります。

    『100分de名著』は本当に良い番組!!

  • 名作の読み方を教えてもらえる、名作。
    過去に読んだはずの「モモ」にこれだけのことが書いてあったのかと、恥ずかしくなる。
    1973年に発表されたこの作品は、どうしてこれだけ現代の病理を正確に描き出せたんだろう。
    「灰色の男たち」は真実を告げず、時間を盗み、人々を孤立させる。子供たちは保護者からの愛情を失って、「社会の役に立つ」ことを目指し教育される。
    日本はまさにモモに描かれた世界に見える。それを打ち破るには、モモと同じく「自然(じねん)」の時に「受動」で世界と繋がるのを辞め、「能動」へスイッチする必要がある。

  • 「星の時間」は、原作を読んでいてピンとこなかったところなので、解説してもらえてすっきりしました。逃してはならない時間。
    「みずから」と「おのずから」もなるほど納得です。全てのタイミングがカチリと合ったときに動くことが肝要です。

  • 河合先生の優しい語り口が好きだ。

  • 「大人がファンタジーを読むことの意味」を再確認するにはエンデが最適だなと思う


    「人と何かを共有することが、豊かな時間をつくりだす」
    SNSやブログで一方的に自らをさらけ出すのではなく、閉じられた一対一の対話が人をかたちづくる。

  • 大人だからこそファンタジーを読む必要があり、学ぶこともある。

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著者プロフィール

1957年生まれ。臨床心理学者、ユング派分析家。京都大学大学院教育学研究科博士課程中退。Ph.D.(チューリッヒ大学、1987年)、ユング派分析家資格取得(1990年)。甲南大学助教授、京都大学大学院教育学研究科臨床教育学専攻助教授(心理臨床学講座)、京都大学こころの未来研究センター教授・センター長を経て、現在、京都大学人と社会の未来研究院教授。IAAP(国際分析心理学会)会長、京都大学人と社会の未来研究院副院長などを歴任。著書に『概念の心理療法』(日本評論社)、『ユング派心理療法』『心理療法家がみた日本のこころ』(ミネルヴァ書房)、『村上春樹の「物語」』(新潮社)、『心理臨床の理論』(岩波書店)、『発達障害への心理療法的アプローチ』『ジオサイコロジー』(いずれも共著、創元社)などがある。

「2023年 『夢とこころの古層』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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