アリストテレス『ニコマコス倫理学』 2022年5月 (100分 de 名著)
- NHK出版 (2022年4月25日発売)
本棚登録 : 408人
感想 : 27件
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
Amazon.co.jp ・雑誌 (116ページ) / ISBN・EAN: 9784142231393
作品紹介・あらすじ
「究極の幸福」はどこにある?
「人はいかに生きるべきか」を徹底的に考え抜き、2000年以上も生き残った古典中の古典。人生の目的はなんだろうか? 幸福はいかに獲得しうるのか? 正義とは、勇気とは、友愛とは? 古代ギリシア最高の知性による思索を、平明かつ本格的に、丹念かつ大胆に解きほぐす。
感想・レビュー・書評
-
私は今まで知らなかったが、このテキストによると、中世のある時期まで西ヨーロッパでは、アリストテレスはほとんど知られていなかったらしい。
「西洋では中世のある時期に至るまで、アリストテレスのテクストはほとんど読まれていませんでした。その理由は単純で、テクスト自体が存在しなかったのです。5世紀後半に西ローマ帝国が滅亡したこともあり、古代の多くの文献が失われ、古代ギリシア語のテクストも(現在の西ヨーロッパ)にはほとんど伝わっていませんでした。」(P10)
私は浅学ゆえに、ヨーロッパ文化にはずっとギリシア哲学が受け継がれてきたと思っていたのだが、何百年も断絶があったということだ。だがアリストテレスの思想は意外なところから西欧に届く。
「ところが12世紀になると、イスラーム世界を経由するかたちで、アリストテレスのテクスト群が続々と西ヨーロッパに入ってきました。」(P11)
そして著者の研究分野でもある13世紀の哲学者トマス・アクィナスらによって、アリストテレスの哲学とキリスト教の神学体系の統合が試みられ、西欧哲学体系にアリストテレスが組み込まれて今に至っている。
つまり、中世西欧の哲学者は自分たちの思想を、既存の硬直化した体系からブレイクスルーさせるため、あえて一千年以上前の過去の哲学を「新しい」思想として取り入れたということだ。
このアリストテレス哲学がたどった“再生物語”に私は引き付けられた。なぜなら情報にあふれ、自分の生き方が他人の動静に一々左右されて不安にあふれる現在において、その足元を改めて見すえ、自分の精神的なよりどころを得たいと考えるとき、21世紀を生きる私たちも、トマス・アクィナスと同じようにすべきなのでは?と考えるからだ。
つまり、現代社会の雑多なノイズを絶ち、アリストテレスが考えた「いかによく生きるか」を静かに見つめることで、何か目新しい思想を躍起になって探そうとして徒労になるよりも、今に合う形での何かを冷静に見つけ出せるのかもしれない。
“温故知新”という言葉があるように、新しきを見つけるのに古きにあたるのは何も突飛なことではない。私はここで、ロングセラー「日本の名著」(中公新書)の桑原武夫氏の巻頭言を引用したい。
「人間は虚無から創造することはできない。いま現にあるものをふまえて未来をつくるほかはない…したがって、未来への情熱がいかにはげしくても、過去を完全に無視してしまうなら、現在の確保がよわくなるという意味において、未来への躍進はあぶなっかしいものとなる。このようにいうことは、過去主義あるいは回顧趣味の奨励では、もとよりない。…わたしたちのいいたいのは、過去のうちで現在に生きている、あるいは生かしうるものをつかんで、未来への出発を確実なものとすべきだということである。」
アリストテレスを、古い外国の書物だからと尻込みしていた私だったが、桑原氏の意を汲んで(と言っても本体はまだ読む自信がないので)このテキストを読み通してみた。
すると、山本芳久先生の解説は終始、平易な言葉が使われていて、まるでどこかの文庫本のキャッチフレーズのように「いま、息をしている言葉で」書かれているのに気づいた。
野球で例えれば、名球会入りした元野球選手が、リトルリーグで小学生相手にやさしく、なおかつ野球センスにあふれた指導をしているようなものではないか。
だから表題だけで身近じゃないと避けられているのなら、もったいない。それくらいこの本は、手を変え品を変え幸せを探し続けているものの、端緒すら見いだせずにもがく現代人への示唆的な内容で満ちている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
指南役 東大大学院教授 山本氏
倫理学の原点がニコマコス
○倫理学とは何か
・義務的倫理学 ドイツのカント
何々すべきだという義務や何々してはならないという禁止に基づいた倫理学
・幸福論的倫理学 アリストテレス
どうすれば人間は幸福になることができるのかという観点から、人間のことを体系的に考えていく
目的の連鎖があって、最終的に究極目的は幸福になるということ、最高善である
○幸福とは何か
生きるだけでは動物と同じ
ただ生きるだけではなく、理性的の生の活動「善く生きる」ことで幸福になる
アリストテレス が言う3つの幸福な生活とは
・快楽的生活
快楽の生活をおくることで幸福と考える
人間を安定に導くものでないと考える
・社会的生活 ←重視
ポリスの中でしかるべき役割を果たすことで自己実現していく、これが幸福
・観想的生活←重視
この世界の有様をありのまま見て取る
すなわち 真理を認識することが人間を幸福にするものだと考える
美術鑑賞、旅行とか、知る喜び
○徳と悪徳
徳を身に付けようと思っても、物心ついた時には、しつけや環境で性格は決まってしまっている
それを引き受けた上で、少しでも良い選択をしていこう
最適は中庸という
○友愛
人と人を結びつける
友愛の関係は、良いもの 快いもの 有用なもの間で成り立つ -
アリストテレスの時代から、人間の悩み、営みは変わっていないのか!
-
昔の哲学書で現代にも通底する価値観が描かれていると素直に感動してしまう(異なることが書かれててもその時代の価値観を覗けて面白いけど) 特に理論的学は厳密性を求めるが実践的学に揺らぎを許容するものだとわけてるの、物事を理解するのに大事だなと思う 最初に反論の余地を潰しておくの討論強い人の書き方だ
-
アリストテレスに興味を持った読者は「人は知ることを欲する」という言葉で始まる『形而上学』を手に取ろうとするかもしれないが、本書に記されているように最初に読んだ方が良いのはむしろ『ニコマコス倫理学』であろう。というのも『ニコマコス倫理学』においてアリストテレスの議論の進め方が典型的な仕方で提示されているからである。
『ニコマコス倫理学』には複数の邦訳がある。本書において言及されている京都大学西洋古典叢書の朴一功訳をはじめ、岩波文庫の高田三郎訳、アリストテレス全集の旧版の加藤信朗訳、新版の神崎繁訳、光文社古典新訳の渡辺邦夫・立花幸司訳がある。
それぞれに特色はあるものの、他のアマゾンレビュワーのコメントにもあるように高校生くらいの読解力があれば読めるとされている朴一功訳は手に入れやすさも含めて通読に適している。
高田三郎訳は原文の簡潔さを再現するような美しい日本語ではあるものの、すでにアリストテレスの議論に慣れた人でないと通読は難しいかもしれない。むしろ読み返す時に原文を彷彿とさせる議論を追っていく中でアリストテレスの肉声を響かせてくれる訳文。
光文社古典新訳は充実した解説とともに今のアリストテレス研究の標準を提示してくれる翻訳。訳文はよくかみ砕かれており、見開きに掲載されている訳注を頼りに読み進めて行くことで議論を見失うことなくアリストテレスの思考の核に触れることができる。
全集の新版の翻訳は学問的にも日本語としても現時点で望みうる最高の邦訳であると思うが、しばらくすると手に入りにくくなるのではないかと懼れる。
『ニコマコス倫理学』ひとつをとっても、多数の邦訳があり、その訳語には揺曳(ようえい)がある。それこそそれぞれの訳者の力点や日本語で伝える際のニュアンスの違いをどう伝えようかという工夫の表われなのだと思う。実際に手に取って見て読んでみたいと思う翻訳を選ぶのもまたひとつの出会いであると思うので、邦訳選びにはぜひ書店に足をお運びください。(宣伝?)
本書の特徴は『ニコマコス倫理学』の具体的な本文へ分け入ることを通して読者を議論の中心へと導くことにある。幸福とは何か、徳とは何か、友愛とは何かという大きな三つの問いを通して『ニコマコス倫理学』の本文から私たちの具体的な経験に新たな光を与えてくれるような観点を提示してくれる。中でも特徴的なのは無抑制の問題を掘り下げて論じていることである。アリストテレスの行為論の中で行為が意識的である(意識されている)のか意図的であるのかといった区分を始め、深入りすればするほど訳語の上で読者が迷ってしまうことが予想されるのだが、本書はその心配をよそにアリストテレス行為論の核とも言うべき問題を簡潔に提示してくれている。そのうえで私たちにとって古典を読むという経験がどのような営みであるかを提示し、読者をアリストテレスとの対話へと導くのである。 -
ニコマコス倫理学を読む前のウォームアップとして。
丁寧かつわかりやすい解説であり、さすがNHKのクオリティコントロールだった。 -
ニコマコス倫理学の補足として
-
今、高校には倫理の授業はあるのだろうか。倫理という何か道徳的な言葉から連想するものと授業でやる倫理は、違っていてひたすら哲学者といわれるような人の代表的な著作物や考え方のエッセンスを先生が板書するのをノートにとった。それは、それなりに何か別のところでたとえば、小説とか、エッセイで、でてきたりすれば、なんとなくこんなかんじ?ぐらいのイメージは描けたし、歴史などでこのくらいの考え方をする時代というような感覚的に思うところまで、ひきよせるのに役立った。しかし、少しこの本に描かれているものとは違っている。アリストテレスといえば、中庸という考え方が代表的なもののようにおもわれるが、中庸ひとつとっても極端なもののまんなからへん、ではなくてきっちりと適合するものを射抜くような考え方でなくてはならない、という。アリストテレスを基本にして、トマス・アクィナスなどは、思考を構築したわけで、その後の聖書の解釈の何かきついような感じというのは、こんなところからも影響しているのかもしれない。ただ、ヨーロッパが中世にむかう暗さを考えると、実直さのようなものが目立っていて、聖書の解釈から生まれた対立から起こった事件や、他宗教との対立は結びつかない。アリストテレスはひたすらアリストテレスなのだ。もう少し読んでみたくなった。
-
十分現代人にも通じる
-
よりよく生きる
人生とは、幸せとは、友愛とは
古代ギリシアから現代における永遠のテーマ
自分勝手ではなく、周囲の人とも寄り添い、徳を高めること、仲間をもつことが大事だとアリストテレスは述べている -
-
ニコマコス倫理学を読む準備はできた。
あとは、通読できるかどうか。
100分で名著のテキストは、とてもわかりやすく丁寧に
道案内してくれる。
テキストや番組をみると読めそうな気がするんだけど、いざ読むと挫折しちゃうんだよな。 -
「アリストテレス『二コマコス倫理学』」山本芳久著、NHK出版、2022.05.01
111p ¥600 C9412 (2022.06.21読了)(2022.04.26購入)
【目次】
【はじめに】「いかによく生きるか」を考える学問
第1回 倫理学とは何か
第2回 幸福とは何か
第3回 「徳」と「悪徳」
第4回 友愛とは何か
☆関連図書(既読)
「ソクラテスの弁明・クリトン」プラトン著・久保勉訳、岩波文庫、1927.07.03
「プラトン『饗宴』」納富信留著、NHK出版、2013.07.01
「饗宴」プラトン著・久保勉訳、岩波文庫、1952.10.05
「ソクラテス」田中美知太郎著、岩波新書、1957.01.17
「プラトンの哲学」藤沢令夫著、岩波新書、1998.01.20
「ラッセル『幸福論』」小川仁志著、NHK出版、2017.11.01
「幸福論」B.ラッセル著・堀秀彦訳、角川文庫、1952.07.30
「幸福論」ラッセル著・日高一輝訳、講談社文庫、1972.09.15
「アラン『幸福論』」合田正人著、NHK出版、2011.11.01
「幸福論」アラン著・神谷幹夫訳、岩波文庫、1998.01.16
「幸福論」寺山修司著、角川文庫、1973.01.30
「不幸論」中島義道著、PHP新書、2002.10.29
(アマゾンより)
「究極の幸福」はどこにある?
「人はいかに生きるべきか」を徹底的に考え抜き、2000年以上も生き残った古典中の古典。人生の目的はなんだろうか? 幸福はいかに獲得しうるのか? 正義とは、勇気とは、友愛とは? 古代ギリシア最高の知性による思索を、平明かつ本格的に、丹念かつ大胆に解きほぐす。 -
印象に残ったフレーズ
出会い続けることのできるものと出会う
一冊の哲学書に出会うということは、一生をかけて出会い続けていくことのできる書物と出会うということなのです。
有用性に基づいた友愛
快楽に基づいた友愛
人柄の良さに基づいた友愛 -
紀要資料
-
哲学にはまっている今日この頃。アリストテレスはあまり賛同できない部分があるなと以前から思ってはいたものの、深掘りせずにかじった程度だった。毎週見ているこの番組をきっかけに、この際だから少しアリストテレスの世界観に浸ってみようと思い、テキストも読んでみた。
結果、やっぱりアリストテレスの考え方はあまり好きじゃなかった…笑
でも学んだことは決して無駄ではなかったので、よかったと思う。 -
万学の祖と言われ、論理学でも有名なアリストテレス。どう考えてもその書は難解だろうということで手に取れませんでした。ところがこの100分で名著シリーズでの本書はどうでしょう。ポイントが絞られていて、文章もとてもわかりやすく、学者先生の書とは思えない(ごめんなさい)くらいの好著でした。
人間の究極の目的は幸福にある。「二コマコス倫理学」は、どのような人柄を形成すれば幸福な人生を送れるかについて考察した本であると。
まさに人生論じゃないですか。後世のテーマすら難解な哲学にくらべると、すごく身近な印象です。これをきっかけにぜひ「二コマコス倫理学」も読んでみたいです。 -
全ての行為や決断は、善を目的とし、最高の善とは「幸福」であることを説く。さらにそれは、「徳」すなわち、本来的にあり得た可能性を体現し、顕現する「力」であり「機能」だとされていると読んだ。最終章で、名著とは、常に「出会い直し」を求め続けるものであるとしているのは、感動的であった。
-
トマス・アクィナスが専門の山本さんによるアリストテレスのニコマコス倫理学の解説。
トマス・アクィナスがアリストテレス主義者でアリストテレスとキリスト教の思想を統合したこともあり、アリストテレスとの付き合いがあるとのこと。そしてニコマコス倫理学のニコマコスはアリストテレスの息子の名前という。
本書の良さはなんと言っても山本さんが読者が原著に直接当たれるようになることを目指していること。そのため、原著(日本語訳だけど)からの引用が多く長めになっている。その上で解説されていて原著の雰囲気を理解することができる。そして哲学の古典と付き合うことでなんらかの気づきを得ること、それを人生に活かすことが必要ということが語られる。このように、著者が読者に原著にあたって欲しいと願っていることがよくわかる著作になっているし、その試みは成功していると思う。
アリストテレスの思想自体は極めてシンプルでわかりやすい(ように解説されている)。徳のある人物になるには都度都度の判断の積み重ね、繰り返しによるという話とか直接的に有意義だし、カントの義務的倫理学と違って厳格さもなくてとっつきやすいのではないかと思う。 -
以前に岩波文庫版のニコマコス倫理学を手にとって途中で挫折したことを思い出して、もう一度チャレンジしたいと思い、本書を読み始めました。
善や徳といった掴みづらいワードの定義が丁寧に解説されており、ニコマコス倫理学の全体像がようやくわかったような気がします。
改めて岩波文庫版のニコマコス倫理学を読んでみようという気持ちになりました。
著者プロフィール
山本芳久の作品
