村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』4月 (100分 de 名著)
- NHK出版 (2025年3月24日発売)
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Amazon.co.jp ・雑誌 (116ページ) / ISBN・EAN: 9784142231744
作品紹介・あらすじ
ムラカミはなぜ世界を魅了するのか?
飼い猫の失踪をきっかけに、どこにでもある日常を生きる「僕」の毎日が一変する。「壁抜け」による時空の超越、凄惨な歴史の記憶、日常に潜む闇、解かれることのない謎――。作者自身が「意欲的な小説」と振り返る本作は、村上春樹を「世界文学」のステージへと押し上げた傑作と名高い。特異かつ難解なことで知られる物語世界に分け入り、卓抜な文学表現を味わいながら、「閉じない小説」の深層へと迫る。
感想・レビュー・書評
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とても面白い解説だった。
善と悪、現在と過去、表層と深層。これらは全て表裏一体。
この長い話は勧善懲悪の英雄の旅路の物語のような体裁をなしていて読者にとっては痛快かもしれない。
だが悪を倒すための暴力が振るわれるときに等しくバットが用いられる、悪の暴力に対して善の言葉による説得はなされず同じ悪を持って悪を倒すという形になっている。
これで良いのか?これでは悪と戦うものが同じ悪に染まってしまっているではないか?
歴史的な悪を追求するときにその悪を他者として非難すればいいというものではない。自分には関係のないものだと他人事に思ってはいけない。
その悪は自分の中にもあるかもしれない。悪を引き受ける姿勢が、自分の中にある悪を見据えないとこの問題は語れない。
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31 線の顔を持つ英雄:英雄の旅路とは
冒険へのいざない→賢者との出会い→戸口の通過→仲間や敵との出会い→最も危険な場所への接近→最大の試練→勝利→宝を持っての帰還→英雄の復活
村上にとって物語を作る事とは井戸の中にもぐり表層的な現実だけを見ていては決して見えない本質をつかむこと。
良いニュースは小さい言葉で語られる。誰かとの語らいではなく自分の頭の中でふとひらめいた事とか。
謎とは解かれるためにあるのではない、むしろ謎とは積み重なっていくものであり、その世界を生きるのが人間なのだ。
「やれやれ」とは何か大変なことが起きた時、それに対して自分が責任を持って正面から向き合う姿勢を取らずに「困ったものだな」と少し突き放す態度、つまりデタッチメント
君は僕にすべてを忘れてほしいという。自分のことはもうほっておいてという。でもそれと同時に君はこの世界のどこかで僕に向かって助けを求めているそれはとても小さな遠い声だけど静かな夜には僕はその声をはっきりと聞き取ることができる。それは間違いなく君の声だ。
歴史の奥にあるいちばん深い暗闇にまでまっすぐ結びついている。過去にあんな悪が行われたからこんな現代があるといった単純な因果関係による繋がりではなくまさに井戸を掘るように人間の心の闇を掘り進めると現在と過去が不思議につながりあっていて遠く離れた場所同士のものが呼応しあっている。場所も時代も違う話が全て歴史の闇の中でつながりあっている。
悪を倒すために暴力が振るわれるときに等しくバットが用いられる、悪の暴力に対して善の言葉による説得はなされず同じ悪を持って悪を倒すという形になっている。果たして岡田徹はこのような暴力行為に走るべきだったのか、そこまでしなくてはいけなかったのかが問われるべきでしょう。これでは悪と戦うものが同じ悪に染まってしまうからです。
村上は河合隼雄との対談の中で「苦痛のない正しさは意味のない正しさ」として文学者の反核宣言は正しいが誰も痛みを追っていない点では正しくない、自分はそうゆう痛みを引き受ける道が今の所うまく見いだせそうにないためそうした行動にコミットできなかった。戦争は悪だからダメではなく、戦争に反対するならその戦争の悪を自分で引き受けるくらいでないとだめだ。
歴史的な悪を追求するときにその悪を他社として非難すればいいというものではない。その悪は自分の仲にもあるかもしれない。そうゆう意味で悪を引き受ける姿勢がないとこうゆう問題は語れない。
悪を倒そうとする全の仲にも実は悪がある。自分の中にある悪を見据えない限り悪を破る事は語れない。
ニーチェは善悪の彼岸で「怪物と戦うものは自分もそのために怪物にならないよう用心するがいい。君が深淵を覗き込むなら深淵もまた君を覗き込む」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
なかなか読むきっかけが掴めない村上春樹、先に軽めの解説書を読むのもありかな、と思い購入。サクサク読めてとても良かった。
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村上春樹は順番に読もうと、三部作まで読んで止まっているところ、このタイミングを逃さないようにと、図書館本を予約をしました!長編で傑作なんです...村上春樹は順番に読もうと、三部作まで読んで止まっているところ、このタイミングを逃さないようにと、図書館本を予約をしました!長編で傑作なんですよね。久しぶりの春樹、手元には中国行きのスロウ・ボートがあります 笑2025/11/22 -
中国行きのスロウボート、100分で名著の著者の先生が、おすすめ短編として紹介していましたよ!
村上春樹は短編もとても良いとか。中国行きのスロウボート、100分で名著の著者の先生が、おすすめ短編として紹介していましたよ!
村上春樹は短編もとても良いとか。2025/11/22 -
2025/11/22
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面白かった。岡田斗司夫がジブリとかガンダムを解説しているYouTubeを観るのと同じ楽しさがこの本の中にあります。
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昔、ノルウェーの森を読んだ記憶がある。意味がわからなかった。その時以来、二作品目となる村上作品。NHKの番組を通じてテキストも読んだが、やはりわからない。相性の問題なのか?私の至らぬ感性が問題なのか?テキスト巻末にあった著者の短編を読んでみたいと思います。
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ねじまき鳥クロニクルまた読みたくなった
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「ねじまき鳥クロニクル」は未読だったので、先にこちらから読んでみた。
今まで小説→100分de名著の順が多かったが、解説から先に読むと読んでみたい欲が高まるので、この順もいいなと思った。 -
約6年ぶりに「 ねじまき鳥… 」を再読。読み始めるに先立ち今回は“評論・解説の書”を読むことにした。
というのは初読のときは、内容主題を捉えきれなかったような不満足感があったからだ。
評論・解説本として2書を用意した。
本書「 100分de 名著『ねじまき鳥クロニクル』 」である。
「100分de 名著」シリーズを読んだのは今回が初めて。とても良く出来た本で感心した。『ねじまき鳥…』のあらすじや物語の基本構造をしっかりたどりつつ、一歩二歩踏み込んだ解釈や分析も過不足が無い。私は『ねじまき鳥クロニクル』は全体の流れや俯瞰図を振り返りにくい小説と感じているので、「 100 分de 名著 」があらすじを的確にサマリーしているのが実にありがたい。
評論者である沼野氏は以下のように読み解く。
綿谷ノボルに象徴される「悪」。一方で対照関係にある岡田トオルは「善」的な存在。だが岡田トオル自身も暴力性を秘めており、「善」なる存在とも言い切れない。そういう複雑さ、重層性のようなことを感じとり考えて欲しい…と。
因みに『ねじまき鳥クロニクル』再読に際し用意したもう一冊は「 同志社大学講義録『ねじまき鳥クロニクル』を読み解く」。佐藤優氏の書である。これは「ねじまき鳥…」を深く読み込むというより、同書を契機にキリスト教神学からマルクス主義、マイケル・サンデルにまで飛翔飛躍して、周辺関連のあれこれを論考したという内容であった。
『ねじまき鳥…』のあらすじや全体構造をおさらいするには「100分 de 名著」の方が有用だと思う。 -
「面白かったけれど、どう言語化していいかわからないなぁ」と悩んでいた村上の長編のガイドブックになると思い購入した。
内容の解説はもちろんのこと、コラムや関連人物が充実しており、手頃な値段と文量ながら読み応えがあった。 -
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私の本棚にある「100分de名著 ヘミングウェイスペシャル」巻末の次号予告にはこう書いてある-「2021年11月号予告 村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』 ムラカミはなぜ世界を魅了するのか?」
講師の沼野充義さんの健康上の都合により、2021年11月号は亀山郁夫講師の「ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』」アンコール放送のものに差し替わったが、もう「ねじまき鳥~」の回はお蔵入りだと勝手に思っていた。約3年半を経て、満を持して登場した形だ。
実は村上春樹はアメリカ文学の翻訳では読んだことがあるが、日本語のオリジナル作品は読んだことがない。そもそもこのテキストを私が読もうとしたのは、村上春樹のネームバリューよりも、講師が沼野充義さんだからだ。沼野さんのチェーホフの翻訳を読んで興味を持ったのだが、沼野さんの根っこに村上春樹の存在があったとは…翻訳への現代性の持ち込み方などにそれがうかがえると言われれば、そうかもしれない。
そしてテキストを読む。沼野さんは「ねじまき鳥クロニクル」を「世界文学」たりうる要素に満ちた作品として冒頭で紹介する。しかし世界文学という言葉はわかりやすいようでいて、その言葉に飲み込まれて何となくわかったように陥る危険性がある。つまり作品世界が広大だから世界文学という単純な話ではない。
沼野さんが解説するところの世界文学とは、「読みのモード」つまりその作品を読む世界中の人が自分の世界観や人生観をもとに自由な読み方ができる作品を指している。私も世界文学というとヘミングウェイとかドストエフスキーを想像するが、沼野さんの定義はその点で当たっている。私は釣りや闘牛に親しんだことはないし、父殺しをしたこともないが、先に挙げた作家の作品を自分の人生に照らして読むことができたからである。
沼野さんはさらに、村上春樹が世界文学たりうるとして、その独自性を個別に挙げて解説している。それが各回のタイトルとして付けられている(たとえば第1回は「日常のすぐ隣にある闇」)ので、興味ある人はそれを検索してほしい。
だが私は沼野さんの解説を通読しても、村上春樹の作品を読みたいという気は起らなかった。まずその暴力性がだめ。受け入れられない。もちろん世界文学を見渡せば、先に挙げた2人の作家やフォークナーを持ち出すまでもなく暴力描写を抜きに彼らの作品を読むことはできないのは承知している。では村上春樹の暴力性の何が個人的にだめかというと、何と言えばいいか、村上春樹の暴力は、無表情で無感情の暴力に思える。幽☆遊☆白書の仙水忍が野の花や小さい生き物に優しさを示す一方で、反対に人間に対しては当然であるかのように暴力を加えようとする、あの暴力だからだ。まるで免罪符が与えられたような暴力。そんなものはこの世に存在しない。それがわからない作家(またはわかっていて書く“確信犯”)を私は認めたくない。
あと村上春樹の性描写(性的描写)についても個人的にだめだ。たぶん暴力と同じ理由だからなのだが。以上の嫌悪は沼野さんの解説を読んでも解消されなかった。そもそも村上春樹なんか読まなくても、私にとって未読の世界文学はまだまだ数え切れないほどある。限られた自分の人生は、それらを読むことに使いたい。
(ここまで書いて、ちょっときつく書きすぎたかなと反省。村上春樹さんの作家性は認められるものだし、作品は苦手でも作家まで嫌いになるということはない。将来、受賞があるかどうか、私も注視しています。) -
沼野先生の手腕恐るべしです。4回で終わるというフォーマット、制限の中で、村上春樹の文学の性質、特徴を無駄なく論じる。
一読者としては、再読したくなるし、その可能性を考察したくなる。
ユングの説いた集合的無意識は、村上の場合、歴史になるのではないかとわたしは考えた。
村上春樹文学は世界文学であり、世界文学とは読みのモードだというのも納得がいった。
コラムも素晴らしい。 -
なんだかんだ初めての100分名著。村上春樹、かつ一番好きな作品ということで手に取った。
とは言えハルキ批評には難解そうなものが多く、ブックレットだったから読む気になれた。
さすがの100分シリーズだけあって、短いながらも村上春樹の特徴・見るべきポイントが分かりやすく炙り出されていて、ハルキ理解を深めることができた。
カジュアルな文体とファンタジックなストーリーから軽薄に見られがちなハルキだが、歴史を深くえぐり、普遍的なものに到達せしめんとする作家の強い決意があることが分かり、自分にとってのハルキの重みがより増した。
ちょうど石田衣良のハルキ評が目に止まり、文体でもストーリーでもなく、「声」を高く評価していたのも腑に落ちるものがあった。また心が洗われる様なハルキさんの声を聴きたい! -
人生のバイブル『ねじまき鳥クロニクル』解説書
ねじまき鳥の理解が進むとも言えるし、勝手に解釈されて想像の幅を制限されたとも言える。
でも、一旦本書で解釈のガイドを示すことでそこからさらに自身のオリジナルの解釈に発展させることもできるから、解釈の幅を狭めてるかもしれないが、解釈の余地は広げている。
私はねじまき鳥をマリオがピーチ姫を取り返す冒険のような、冒険譚として理解している。
その中で理不尽なことや、不可解なことが起こるしあまり解決もされない。そこが人生っぽさがあっていい。そんな感じ。
村上春樹に影響を受けまくった本を執筆してみたくなった。 -
20250525
ねじまき鳥クロニクルの解説。1人で読んでいては気付かなかったテーマ、また考察について多くの気付きを得られた。 -
執筆背景や、過去のインタビューを参照しつつ考察されていて助かる。
特に「苦痛のない正しさは意味のない正しさ」とかのテーマは、作品を理解しやすくしてくれた。
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また読んでみたいと思わせる評論。その前に騎士団長殺しを読んでないことに気がつく
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民話、神話といった物語構造への類似(すなわち、ねじまき鳥が普遍的な「物語」であるということ)。井戸を媒介にした、あちらとこちら。そして日本の暗部に横たわる歴史の闇。ねじまき鳥に関する目新しい指摘はないですが、この複雑でアンビバレントな作品を著者は巧みな手つきによって、すっきり整理されます。とりわけ『ねじまき鳥クロニクル』相関図がめちゃくちゃ分かりやすい(それがよいのかどうかは分からないけど)です。
「湾岸戦争に反対する文学者声明」に署名に加わらない、という態度がねじまき鳥という作品を通して自ら悪を引き受ける態度、すなわち身銭を切ること、という理路に膝を打ちました。村上春樹=ノンポリという評価は安易ですね、本当に。
村上作品のなかでも『ねじまき鳥クロニクル』は最も好きな作品。ねじまき鳥を読んだときも、そうであったように、ねじまき鳥の呼吸に合わせるようにして批評される本書。本当にリーダブルで一気読みでした。またねじまき鳥が読みたくなりました。 -
「村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』」沼野允義著、NHK出版、2025.04.01
123p ¥700 C9493 (2025.05.25読了)(2025.03.30購入)
【目次】
はじめに 世界文学のなかの村上春樹
第1回 日常のすぐ隣にある闇
第2回 大切な存在の喪失
第3回 根源的な「悪」と対峙する
第4回 「閉じない小説」の謎
もう一冊の名著 『象の消滅 短編選集1980-1991』
☆関連図書(既読)
「風の歌を聴け」村上春樹著、講談社文庫、1982.07.15
「中国行きのスロウ・ボート」村上春樹著、中公文庫、1986.01.10
「ノルウェイの森(上)」村上春樹著、講談社、1987.09.10
「ノルウェイの森(下)」村上春樹著、講談社、1987.09.10
「雨天炎天」村上春樹著、新潮文庫、1991.07.25
「沈黙」村上春樹著、全国学校図書館協議会、1993.03.01
「アンダーグラウンド」村上春樹著、講談社文庫、1999.02.15
「約束された場所で」村上春樹著、文春文庫、2001.07.10
「1Q84 BOOK1」村上春樹著、新潮社、2009.05.30
「1Q84 BOOK2」村上春樹著、新潮社、2009.05.30
「アルジャーノンに花束を」ダニエル・キイス著・小尾芙佐訳、早川書房、1999.10.15
「カラマーゾフの兄弟(上)」ドストエフスキー著・原卓也訳、新潮文庫、1978.07.20
「カラマーゾフの兄弟(中)」ドストエフスキー著・原卓也訳、新潮文庫、1978.07.20
「カラマーゾフの兄弟(下)」ドストエフスキー著・原卓也訳、新潮文庫、1978.07.20
「ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』」亀山郁夫著、NHK出版、2019.12.01
「キャンベル『千の顔もつ英雄』」佐宗邦威著、NHK出版、2024.07.01
(出版社より)
ムラカミはなぜ世界を魅了するのか?
飼い猫の失踪をきっかけに、どこにでもある日常を生きる「僕」の毎日が一変する。「壁抜け」による時空の超越、凄惨な歴史の記憶、日常に潜む闇、解かれることのない謎ーー。作者自身が「意欲的な小説」と振り返る本作は、村上春樹を「世界文学」のステージへと押し上げた傑作と名高い。特異かつ難解なことで知られる物語世界に分け入り、卓抜な文学表現を味わいながら、「閉じない小説」の深層へと迫る。
著者プロフィール
沼野充義の作品
