別冊NHK100分de名著 菜根譚×呻吟語―成功から学ぶのか、失敗から学ぶのか (教養・文化シリーズ)

著者 :
  • NHK出版
3.70
  • (5)
  • (6)
  • (7)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 76
感想 : 10
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784144072246

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 『感想』
    〇両作品とも儒教を基本としつつ、仏教など他の思想も柔軟に取り入れていることを知った。

    〇自分の信じる思想以外は間違いであると言わないところがすごい。

    〇読めば当たり前のことが書いてあるわけだが、それができないのが人間。わかっているつもりでわかっていないことなので、時にはこういう本を読んで考え直すことが大切。

    〇東洋の思想は神が決めたことを正しいとするわけではなく、自然を大切にし、人としてのわがままなところや自分本位なところも認めながら、よい人間になる努力もしていこうというところではないか。

    〇正しいことをすれば正しい評価がされるというのではなく、時に不幸な道に進むこともあるが、それでも正しい道を行こうという、高望みしない生活を標榜している。

    〇残念なのは、漢文を読んでも意味が理解できず、これでは真の理解に結びつかない。
    『フレーズ』
    ・「私」と「公」の漢字としての成り立ちを知ると、「公」を意識することが、いかに人間にとって大切なのかがわかってきます。どちらの漢字にも「ム」という字が使われていますが、「ム」には小さく取り囲むという意味があります。「私」の「禾」の部分は稲という意味なので、「私」とは、個人で稲を独り占めする状態を示しています。一方の「公」という漢字の「八」の部分は、入口をあけて開放するという意味なので、「公」は、富を独り占めするのはやめて、皆で分かち合っている状態を示していることになります。(p.89)

  • 『菜根譚』と『呻吟語』は著者それぞれの視点の違いはあるけれど、いかに生きるか、より良く生きるかを儒教の考え方に即しながら説くところは共通点があるとします。
    視点の違いは、一方は生没年不詳の"謎の人物"、かたや官僚としてトップに登り詰めたエリート。また、箴言の集まりのような、どこから読んでも読者の好きなように読める構成か、さまざまな文体が並ぶ構成か。これがほぼ同時代に世に出たことは興味深いです(案外、著者たちの「架空対談」が違いが分かって面白いかも)。
    湯浅さんはこれらの名著が書かれた明代末と、現代は似かよっているとします。なので得るところが多いという。
    「架空対談」で語られていたけど、晩年に己の人生を振り返えるように、『菜根譚』と『呻吟語』を編むことができた。その時間があった事自体が幸福だ、は大いに頷きました。

  • どちらも、バランスの取れた考え方。
    明とかの時代に作られた書物が今まで残っており、しかも内容に古さがないのは本当にすごい。
    歳とってから再読したい

  • たまたまつけたテレビでやってて、なんかすごいいいこと言ってる!好きー!ってなってテキストまで買っていつか読むんだと目の前の本棚に収納し続けること、なんと六年。
    発行年に我が目を疑った。
    おいおい、これでたの、ここに引っ越してきたばかりのときのことじゃないか。しかも、前の前の職場にいたときに買ったものじゃないか。
    時が流れるの早い。
    いつか読みたい、ちゃんと読みたいと思いつつ、原作も二冊も保有しているが、ようやくこの薄い本に手をつけられた。
    内容は、うんうんともう頷くしかない。そうだよね、と。
    こちらは初心者向けの導入部入門教科書であるが、その役割は十分果たしているだろう。
    恐らく行きなり学術文庫や岩波文庫の本編に挑んだら、まあ浅い理解で終わったかもしれない。
    この書が書かれた背景や、著者の人となり、書物全体の傾向などを適切に簡明に解説してあり、概略を把握した上で、さらに自分がほしい言葉がないかと本編を開いてみたくなった。
    著名な書物のガイドというものに若い頃は意味を見いだしていなかったが、今は読んで感じたことだけでなくその背景というものも知ることでさらに美味しく深く味わうことができると知った。
    高校の時の自分がその境地に至っていないことを残念に思いもするが、今ようやくこの年齢で己の考え方を開くことができたのは幸いだと思う。

    人間関係には悩まされ続け、己の気性を疎ましく思うこと多々だが、引きこもってはいけないとかいていたし、SNSには気を付けろとか、三分は義侠心とか、足るを知れとか、清濁併せ呑めとか、友人と家族でつきあい方の注意事項がちょっと違ったり、部下とのつきあい方とか、名誉を賜ったときの心のあり方とか、あとは一歩譲れとか、雌伏の時が長い方が高く飛び立てるとか、うん、読んだ甲斐があって心に刻まれているものも多い。
    これを糧に本編を紐解いてみたいと思う。
    本編は魔法の杖のように毎日偶然開いたところを読む形式でいってみようかな。

    そして著者の先生、テレビ見てたときも思ったけど、結構風刺がきいたことをおっしゃってて、本書でも大学の研究が短時間で成果を求められることを危惧していた。
    時間をかけろとあるとおり、なるほど、ノーベル賞の受賞者の研究事跡等を鑑みても、確かに危惧すべき状況と感じた。
    6年経って、その辺はよりシビアになっていそうだ。

    ※講談社版の本編開いてみたら、いきなり本書に載ってた家族が幸福の場所とか、溌剌とした鯉の話とかが出てきた。p50、目次?的には20,21,22。
    p86、51。
    結構前半にあるのから選んで解説していたのかな。
    パラッと見たら、同じようなことを例えをかえながらかいている感じ。
    本編が把握しやすくなったかも。
    竹林の七賢人の話は最後から二番目に見つけた。

    この講座がテレビでやっていたとき、本編が軒並み在庫切れになってなかなか買えなかったのを思い出した。
    また再放送してくれないかな。

    講談社版メモ
    p85の50「多少は禍のもと、小事は幸福のもと」事件が多い人ほど無事平穏なことが幸福であると知り、気持ちを平静にするよう心がける人は気持ちの多いことが災難であると知る。
    p89の54「人間に順・不順はつきもの」だよね。耳が痛い。どうしても自分ばかりが大変で他の人は乱れないとか思っていたけど、他の人だって乱れるんだ。

  • 読んだ本は、
    洪自誠『菜根譚』 2014年11月(100分de名著)
    たが、検索しても出てこないので代わりにこれとする。

    ・自分の人生が思うようにならないとき、そこで体験することはすべて自分を磨く薬になる。

    ・あれこれと苦心している中に、とにかく心を喜ばせるような面白さがあり、逆に、自分の思い通りになっているときに、すでに失意の悲しみが生じている。

  • 非常にわかりやすく、二書を比較しながら解説している。

  • 菜根譚と呻吟語という明代末期の処世訓についてわかりやすくまとまっている。逆境とリーダー論、人付き合い、自分磨き、幸福についてと4章から成る。架空対談も面白い。
    明代末期は印刷技術が進歩し、書物が広く庶民にも浸透していき、さんごくしえんぎや水滸伝などもこの時代のもの。
    逆境においては自分を鍛えるチャンスと捉え耐えること。人付き合いにおいて譲ることと自分を鍛えることの大切さ。器を磨くに中庸と沈静の大切さ。幸福について知足と不幸がないことが何よりの幸せであるという考え方の大切さ。

  • 「菜根譚×呻吟語」湯浅邦弘著、NHK出版、2017.06.30
    183p ¥972 C9498 (2020.06.02読了)(2017.06.14購入)
    副題「成功から学ぶのか、失敗から学ぶのか」

    【目次】
    はじめに
    序 章 乱世が生んだ二つの処世訓
    第1章 道徳家と硬骨漢
    【菜根譚】逆境を乗り切る知恵
    【呻吟語】リーダーの条件
    第2章 人づきあいの極意
    【菜根譚】譲ることの大切さ
    【呻吟語】まずは自分を鍛えよ
    第3章 人間の器の磨き方
    【菜根譚】中庸のすすめ
    【呻吟語】沈静のすすめ
    第4章 真の幸福とは
    【菜根譚】足ることを知る
    【呻吟語】不幸がないことが何よりの幸せ

    ☆関連図書(既読)
    「洪自誠『菜根譚』」湯浅邦弘著、NHK出版、2014.11.01
    「菜根譚」洪自誠著・今井宇三郎訳、ワイド版岩波文庫、1991.01.24
    (アマゾンより)
    中国二大処世訓はこれだ!
    官職を追われ不遇な生涯を送った洪自誠の『菜根譚』と、官僚のトップにまでのぼりつめた呂新吾による知られざる名著『呻吟語』。中国を代表する処世訓である二書のエッセンスをこの一冊に集約する。混迷の時代に生まれ、現在まで読み継がれる言葉は、私たちに何を教えてくれるのか?

  • 「100分de名著」の「菜根譚」の回が面白かったので読んだ本。「呻吟語」のことをこの本を読んで初めて知った。P」76の後ろL3の言葉が1番印象に残った。この本を読んで「菜根譚」が読みたくなった。

  • 中国の二大処世訓。ベースに儒教の考え方があるから、仁・義・礼・智・信の五常を基本に「道徳的に生きる」というところが基本。ただ、ベースがそこにあっても仏教やその他の考え方も織り込まれている。そして聖人君子を目指しているというものでもない。そういうところが少し現実的で受け入れやすい感じもしました。特に気になったのは、

    ・名誉や評価は独り占めしてはならない

    ・人を叱ったり注意する際は、逃げ道を一本用意してあげること

    ・何事においてもほどほど、「中庸」であることが大事

    ・欲張りすぎるな、頑張りすぎるな

    ・「足るを知る」ことこそが幸せに近づくための秘訣

    という点。欲望を追いかけ続けるときりがない。そういう気持ちを客観的に見つめ、今に集中し今に満足するという考え方は、どこか仏教に通じるようなところを感じました。もう少し突っ込んだ専門書に進みたいと思います。

全10件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

大阪大学大学院文学研究科教授

「2016年 『増補改訂版 懐徳堂事典』 で使われていた紹介文から引用しています。」

湯浅邦弘の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×