天外消失 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1819)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (321ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150018191

作品紹介・あらすじ

伝説の名アンソロジーが、ここに復活!そんなはずはない。汚職判事を尾行中の刑事たちは、片時も目を離さなかったのだ。だが、何の変哲もない電話ボックスに入った判事は、そこから煙のように消え失せてしまった!駆けつけた刑事たちの前には、ぶら下がったままの受話器だけが…世界ミステリ全集の最終巻として刊行された『37の短篇』は、古典風のパズラー作品から、ハードボイルド、クライムストーリーにいたるまで、傑作中の傑作を結集した画期的アンソロジーだった。三十五年の時を経て、その精髄がここに復活。密室不可能犯罪の極致ともいわれる、上記クレイトン・ロースンの「天外消失」をはじめ、ブレット・ハリデイの名作「死刑前夜」、メグレ警部登場のジョルジュ・シムノン「殺し屋」、スパイ小説の巨匠アンブラーの本格ミステリ「エメラルド色の空」など多士済々の十四篇を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 1950年代のミステリ作品を収録した短編集。驚いたのは、今読んでも古くささを感じさせないところ。翻訳が素晴らしいのだと思うが、変に引っ掛かるところもなく、純粋にミステリを楽しめた。すべての作品が面白いと言えるわけではないが、3分の一くらいは、自分の好みだった。他で読めない作品も多く、ミステリマニアを自称するなら必読なのかもしれない。

  • 短編ミステリの満漢全席や~!
    いやぁ、満腹満腹。
    「女か虎か」はやはり素晴らしい。
    表題作もさることながら「死刑前夜」にはやられたよ。
    ミステリの華やかなりし頃。
    ため息が出るわ。

  • 質の高い娯楽作品(←ホメ言葉)が並ぶ。手に入りにくい短編を集めた、というわりに既読作品が多かったのが残念ではあるが、ヴァラエティ豊かで楽しいアンソロジーである。数少ない未読作品のひとつが、巻頭の「ジャングル探偵ターザン」。ターザンの名前くらいは当然聞いたことがあるが、読むのは初めてだ。というか、小説だったんだ、ターザン。よくこれをミステリに認定したと思う。何と言ったらいいのか…「異色作」か?

  • 『書きたい人のためのミステリ入門』推薦小説。
    だが全体に微妙だった。おもしろくなかった。オチが無かったり、オチが読めたり、語り口も、元の文の古さのためか、翻訳の古さのためか、すごく短絡的でダサい感じ。あんまり参考になった感じはしない。


    ■ジャングル探偵ターザン(エドガー・ライス・バロウズ)
    ターザンが群れの雌を襲った別の群れに復讐する話。

    すごく微妙だった。


    ■死刑前夜(ブレッド・ハリデイ)
    死刑囚の独白の形で物語は進む。メキシコの鉄道敷設現場で、臨時現場監督(主人公)と、アメリカから来た男とが会う。殺人事件があったことを共有しつつ、二人は半年間の鉄道敷設にまい進する。鉄道敷設官僚のあと、殺人犯であるという事実は消えず、犯人は自首することを選ぶ。アメリカから来た男が殺人犯である、と思わせながら、実は彼は追手で、主人公が犯人だったことが最後に分かる。

    叙述トリックとして面白かった。何より、一時休戦して労働にまい進する、という構成は清々しくてよかった。


    ■殺し屋(ジョルジュ・シムノン)
    メグレ警部。パリで強盗団の住処を張るが、彼らが強盗団であることの証拠が得られない。そこに協力を希望する男が現れ、メグレは男を利用して強盗団に突入させると、強盗団の女が殺され、男は自殺する。強盗団のボスは実は女であり、男はその前夫だったことがわかる。

    ボスが実は女性、というのは当時はものすごい意外性だったのかもだけど、現代に読んでも別に何とも思わない。メグレの癇癪というか自分勝手な感じがすごく微妙で感情移入はできなかった。つまらなかった。


    ■エメラルド色の空(エリック・アンブラ―)
    ある男を殺した犯人の推理。画家である妻が絵の具にあるヒ素をほうれん草に混入させて殺した、というトリック。

    見どころがわからなかった。


    ■後ろを見るな(フレドリック・ブラウン)
    偽札作りに共謀した印刷師の話。主犯は殺され、本人も拷問を受け殺された描写があるが、その後も物語が続く。主人公はすでに死にながら活動していることを示唆する描写。

    雰囲気はおもしろかったが、明確なオチがあるわけでもなく、わかりにくかった。


    ■天外消失(クレイトン・ロースン)
    主人公の探偵は奇術師でもある。電話ボックスに入った容疑者が、捜査員が電話ボックスを開けたときには消失しており、ぶら下がった受話器の向こうから声がする、という謎。並んだ電話ボックスの順番を錯覚させ、別のボックスを開けさせた、というトリック。錯覚のための標識位置変更は容疑者の仲間(捜査員の1人)が行った。

    順番を錯覚させる、というのは手品らしいトリックで、謎への解答として合理的でもあるが、本当にそんなうまく錯覚させられるかな、という疑問も残る。


    ■この手で人を殺してから(アーサー・ウィリアムズ)
    殺人を犯した主人公の独白。養鶏場を営む主人公は、別れた女がやってきたがあまりに身勝手なので殺してしまう。その後養鶏場が捜査され、主人公はしばらく(女を探すふりをして)身を隠し、警察に養鶏場の隅々までを捜査する機会を与えるが、何も証拠は出てこない。女を破砕し肉骨粉化して全て鶏たちに与えていた、というトリック。

    この作品は描写も読みやすくおもしろかった。トリックも納得。


    ■壊血病のビュイック(ジョン・D・マクドナルド)
    ある街で銀行強盗が起きるが、犯人に特徴はなく、捜査が難航する。あるオタクの少年が、乗り捨てられた車のラジオのボタン(6つある)の割り当て周波数から、それら6つの局の交点に犯人の所在地がある、と推理する


    ■ラヴディ氏の短い休暇(イーヴリン・ウォー)
    精神病院に入れられた父親の見舞いの際に、その秘書役を務める患者に同情した娘は、手続きを行い出所させてやる。患者は模範的で、院内でも信頼が厚かった。しかし患者は出所して2時間で戻って来て、殺人を犯していたのだった。

    患者が「どうしてもやりたいこと」が殺人、というのは予想できたので意外性なかった。

    ■探偵作家は天国へ行ける(C・B・ギルフォード)
    夜12時に殺害されたらしい作家の男が、天使長に掛け合い、殺されたその1日を再現される。動機のある者は5人おり(浮気している妻、妻の恋人、遺産を狙う甥、作家の地位を狙う秘書、作家に秘密を知られている庭師)、作家は夜5人を一堂に集めてしまう。普通に妻とその恋人に殺されて終わり。天国に戻り天使長がその推理を行い、偉大な推理作家も天国に来ていると言うオチ。

    全員共謀かと思いきや普通に妻とその恋人が犯人だった。天国や殺害日の再現、というアイディアは世にも奇妙な物語っぽいが、当時は新しかったのかも。


    ■女か虎か(フランク・R・ストックトン)
    某未開国で王は罪人に、虎のいる部屋と女のいる部屋とを選ばせる。男は王女に恋をした罪で選択を迫られ、王女は密かに男に部屋を伝えるが、どちらの部屋を伝えただろか。

    この命題が書きたかったんだろうけど、迂遠な印象。
    ただ、ある命題を物語化する、という意味ではなるほどだが、そう考えた場合には説明的。


    ■白いカーペットの上のご褒美(アル・ジェイムズ)
    バーで魅惑的な女性に惹かれ彼女の部屋まで行くと死体があり、死体を捨てればなんでもくれると言われる。死体を捨てて戻ると女は掌を返して不審者扱いし、主人公は死体を基の場所に戻す。

    誘惑の描写はとても魅力的でよかった。


    ■火星のダイヤモンド(ポール・アンダースン)
    人間とか成人が共存する世界。フォボスの宇宙港で重要なダイヤモンドが失われ、一種の密室事件であるとして、火星人探偵が推理する。ダイヤは地球での積載時に作業員(犯人)に船外に置かれ、フォボス到着時に港の近くに落ち、犯人(別の軌道で先回りしてフォボスに来ていた)が回収した、というトリック。

    無重力に対する理解が実際とは違うためこのトリックは使うことができない。ただ、1958年という時代にここまでの宇宙SFが描かれていたことには驚かされる。宇宙船や無重力、宇宙服、軌道などの描写は正確。


    ■最後で最高の密室(スティーヴン・バー)
    第一次大戦後の時代、息子を厳格に育てていた父親が、密室の邸宅で他殺体として見つかる。殺したのは息子で、父を殺したあと最新式(当時)の暖炉で身を焼いて消滅した、というトリック。

    骨は残るだろ。

  • 『9マイルは遠すぎる』と同じアンソロジーに入ってた短編集、というだけあって秀作揃いで面白かった。

  • 有名どころから、そうでない何者?と思える人まで。
    まず最初にターザンが出てくるのが興味深いです。
    残念ながらターザンシリーズは未読ですが
    あ、著者らしいな、とは思いましたね。
    (ヒーローは勝つのだよ!!)

    いわゆる完全犯罪ものが輝いているでしょうか。
    むかつく女をとんでもない手段で殺す作品があります。
    よくよく考えたら大変エグイし、その後の展開も
    いい展開だけれども、その背景を考えたらエグイ。
    でも考えた犯人はすごいよなぁ。

    あとは結末が本中でつかない作品があります。
    いわゆる読者裁量の作品ですね。
    私は最悪のほうを想像しました。
    物語からしても善意はあり得ない可能性のほうが大。

    わかりづらい作品もあったけど嫌いでないね。

  • 山本弘さんのビブリオバトル部シリーズで紹介されて、面白そうだったので読んでみました。
    14編の短編が収録されたアンソロジーです。この中では、「後ろを見るな」「探偵作家は天国に行ける」「女か虎か」が面白かったです。

  •  天外消失を読む。
     お、おお……確かにびっくりなんだが、なんというか、これ映像化しにくいネタだよね。いやでも映像化して欲しいというか、コントにして欲しいって言うか。なんだろうトリックより登場人物が濃い。

  • フレドリック・ブラウン「後ろを見るな」曽我四朗訳
    アーサー・ウイリアムズ「この手で人を殺してから」都筑道夫訳 落ちはすぐわかるけど、雰囲気がとても好き
    イーヴリン・ウォー「ラヴディ氏の短い休暇」これも落ちがすぐわかる。でも好き。
    C.R.ギルフォード「探偵作家は天国へ行ける」宇野利康訳 最後のこれがダントツに良い。

  • 叙述トリックあり、SFあり、死体処理ものあり。イーヴリン・ウォーのはすぐに落ちがわかったけどね。

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