卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)

制作 : 田口俊樹 
  • 早川書房
4.16
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本棚登録 : 673
レビュー : 115
  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150018382

作品紹介・あらすじ

「ナイフの使い手だった私の祖父は十八歳になるまえにドイツ人をふたり殺している」作家のデイヴィッドは、祖父のレフが戦時下に体験した冒険を取材していた。ときは一九四二年、十七歳の祖父はドイツ包囲下のレニングラードに暮らしていた。軍の大佐の娘の結婚式のために卵の調達を命令された彼は、饒舌な青年兵コーリャを相棒に探索に従事することに。だが、この飢餓の最中、一体どこに卵なんて?-戦争の愚かさと、逆境に抗ってたくましく生きる若者たちの友情と冒険を描く、歴史エンタテインメントの傑作。

感想・レビュー・書評

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  • いつまでも余韻に浸っていたいと思わせる物語だ。

    ナチスに包囲されたレニングラードを舞台に、主人公ベニオフと親友コーリャ、そしてパルチザンの少女ヴィカのすさまじい一週間を追った物語だ。

    手に汗を握りながら貪るように読んだ。掛け値なしに面白かった。
    そして親友というものについて考えた。
    長く付き合っているから親友になるわけではないだろう。ともに過ごした時間によってではなく、ともに味わった経験や共感の深さによって結びつきを強くした友人こそ親友だ。
    かく言う私にも、名前も覚えていないが、私にもそんな親友がいた。
    大学3年の夏、初めての海外。初めての一人旅の途中で彼と出会った。テキサスからマイアミまでをグレイハウンドという低所得者しか乗らない長距離バスを乗り継いで、10日ほど一緒に過ごしただろうか。
    怖い目にもあったし、楽しい目にもあった。
    今でも時々、彼のことを思い出す。
    そして、あの夏のことを。

    何かを誰かと深く経験した人なら、この小説を熱い思いで読めるだろう。久々に得られた素晴らしい読書体験だった。

  • 舞台はナチス・ドイツに包囲されたレニングラード。900日にわたって人はもちろんあらゆる物資の出入りが禁止。厳しい寒さの中、電気なし。燃料なし。食料なし。ハンニバルも横行するこの世の地獄。
    そんな状況なのに、ちょwww
    そこの若者二人、下ネタ多すぎ!

    戦争が主題だけど青春小説って言ったほうがいいかも。いつの間にか二人と一緒に卵を探してました。物語に入り込みすぎて、登場人物が心の中に住みつくような体験がたまにあるけど、この本がまさにそれ。読み終わった後も、コーリャとレフの旅を思い出すと胸がきゅんとします。表紙もかわいいね。

    このミス2011年海外編3位。
    著者はニューヨーク出身のユダヤ系というのも特筆。
    原題はCity of Thievesだけど、邦題も素晴らしいと思う。

  • 第二次世界大戦の時の話を読むと、下層階級であえぐ民衆が豊かになるために、裕福で優れた民族(ユダヤ人)を抹殺しよう、という考えの恐ろしさに愕然となる。それを、実行する人を支持した民衆の恐ろしさに。

    『卵をめぐる祖父の戦争』は、著者が祖父に、第二次世界大戦時のある印象的な一週間の回想を聞く、という導入である。
    アメリカ人の著者の祖父・レフはロシア出身で、回想の始まる最初は、レニングラードに住んでいた。巡り会わせで一緒に行動することになった金髪碧眼の脱走兵・コーリャと共に、卵を探す道中が始まる。

    旗色の悪い戦争の真っ只中、庶民は一食でさえ満腹な思いを味わえません。飢え凌ぎには図書の綴じに使われている糊を噛み、市場には水分に砂糖の混じる泥を詰めた瓶が売られています。
    そんな中、結婚式にケーキを作るから卵を一ダース用意しろ、とは、なんと難易度が高く、なんと莫迦げているんでしょう。
    ケーキを焼くために卵を探すなんて、命をかけてまでやることではありません。また他人の命を奪ってまで開催する結婚式も。
    ただでさえ寒さ厳しいロシアの、戦争中の民衆の状況は、なかなか辛いものがあります。それでも多分、17歳の少年が過ごした一週間の描写では、凄惨さはごく一部なのでしょう。
    そんな中、誰にでも姦しく話し掛け、男子高生のようなノリでレフに絡むコーリャの存在が、なんとなく場を救ってくれる気がします。まぁ、終盤にかけるにつれシモの話が加速していくんですけど。笑。女とやることばかり考えていてほんとなごむ。

    先日、元特攻隊の日本人の、シベリア抑留の体験手記を読みました。
    去年、アインザッツグルッペンのドイツ人を主人公にした小説を読みました。
    戦争は憎いです。

    ラストの理不尽さが、戦争の愚かさの集約かもしれません。
    命をかけて卵を得て、ばかみたいな任務があと少しで終わるというところで、愛しき故郷で同志に警戒され友達が撃たれる。しかも大佐は卵を既に手に入れていた。

    それでも、レフとヴィカの顛末に、すこしだけ救われました。

  • 数年前に職場の後輩くんから、私の好きなメグレシリーズの数冊と共に贈られたポケミス。
    そう、ミステリーはポケミス版で読みたい、所有したい。
    ナチスドイツ占領下に、卵がテーマときたら、
    それだけで「買い」だと思う。

  • 戦争時代のロシア。
    ドイツとの長い戦いが続いて食べ物もろくにない中
    卵を探すために旅に出る男の子の物語。

    戦争の凄惨な場面は時々出てくるけど
    全体的に清々しい雰囲気があって。
    コーリャの饒舌なトークがあるからだけど
    とても読みやすくて、面白いお話。

    主人公のレフの普通っぽさがいいです。
    登場する女性ほとんどにドキドキしちゃうのは
    10代の男の子ならではの楽しさ。

    卵をゲットしてからの、悲しいラストには
    けっこウルッとしてしまいますけど、
    最後の最後、ヴィカのセリフにニヤリ。
    こういうのがいいのよねぇ。

  •  ナチスドイツに包囲されたレニングラード。主人公の少年は,ひょんなことから命懸けで卵を1ダース探す羽目に。しかし飢餓の中,鶏はことごとく潰されて食糧になっている。期限は一週間。絶体絶命!?
     奇妙な設定だけれども,戦時下のロシアの様子が伝わってくる。戦争の悲惨さ。爆撃,空腹,食人,性,包囲網,パルチザン,拷問,処刑,戦闘,淡い恋…。さまざまなことが現出する。戦争が終わったときとの落差に,反戦のメッセージを強く感じた。良い作品。

  • タイトルと装丁に惹かれて読んだ。

    戦争というものの無益さ、傍若無人さ、ばかばかしさ。
    そして無力さ。
    それらが時に淡々と、時に残酷に、そして時にユーモラスに語られる本書では、その軽妙さがかえって不思議な無力感を響かせる。
    自分は腹を空かせて毎日食べるものに飢えているのに、1ダースの卵を探して駆け回っているという状況が、現実と現状の「ズレ」をそのまま体現している。

    そこでは「何のために」という言葉に意味がない。
    「何かのため」という言葉は、戦争では何の意味も持たない。
    ただ生きる。食べる。セックスする。排泄する。
    主人公の相棒となる饒舌な青年・コーリャが、それら(日常では当たり前の)「生きる」エネルギーに溢れていることが、なぜか場違いで滑稽で、そして不謹慎に感じられるのが面白く、また皮肉だなぁと思った。

  • ロシア系アメリカ人の脚本家は、戦争のことを知りたいと、テープレコーダーを片手に祖父母の家を訪ね、祖父レフに頼んでレニングラード時代の話をしてもらう。祖父は17歳のときに祖母に出会い、ドイツ兵2人をナイフで殺したという、誰に教えられたわけでもないけれど親戚中が知っているそんなエピソードが実際はどんなことだったのか、、、。
    レフは、外出禁止令をやぶって外に居たところを連行され、死を覚悟したのですが翌朝、大佐から、娘の結婚式に卵が必要だから一週間で1ダース持ってこい、そうしたら釈放してやる、という指令を受けて年上の脱走兵コーリャと2人で卵を探します。卵を求めてあちこちする横軸のストーリーが展開する間に、戦時中の街や人々の様子、ドイツ軍将校のふるまい、パルチザンの活動などが描かれていて、とても読みごたえがありました。書かれているのは過酷でしんどいことですが「卵探し」のテーマが通っているので暗い雰囲気になりすぎず、読みやすかったです。他の作品も読んでみたくなりました。面白かったです。

  • 大佐の娘は、自分の結婚式のために何人犠牲になったのか、とかを考えつくことすらないのかもしれない。訳者あとがきの戦争の愚かさのところは同感。下ネタ満載でもコーリャが好きです。

  • 訳者あとがきには、反戦メッセージが云々って描いてあるけど、僕には、長生きしたければ長いものには巻かれろ、世の中の不正には目をつむれ、国家権力には個人の抵抗なんて屁みたいなもの、としか読めなかったけど。
    ジュブナイルじゃないからこれで良いんだろうけどね。

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