卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)

  • 早川書房
4.16
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感想 : 130
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150018382

作品紹介・あらすじ

「ナイフの使い手だった私の祖父は十八歳になるまえにドイツ人をふたり殺している」作家のデイヴィッドは、祖父のレフが戦時下に体験した冒険を取材していた。ときは一九四二年、十七歳の祖父はドイツ包囲下のレニングラードに暮らしていた。軍の大佐の娘の結婚式のために卵の調達を命令された彼は、饒舌な青年兵コーリャを相棒に探索に従事することに。だが、この飢餓の最中、一体どこに卵なんて?-戦争の愚かさと、逆境に抗ってたくましく生きる若者たちの友情と冒険を描く、歴史エンタテインメントの傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 第二次大戦下のレニングラード包囲戦の最中の作者の祖父(という設定)の冒険の物語

    もちろん反戦
    もちろん反戦の物語なんです
    包囲戦の中で飢餓にくるしむレニングラードの住民たち
    主人公の少年レフは父を秘密警察に殺されてるし
    ナチは残虐にロシア人を殺しまくるしで
    陰鬱な物語のはずなのに
    カラッと明るい場面がたくさんあって
    戦争の最中にあっても人はけっこうユーモラスに生きてたりもするんだよねって

    それにしてもプロローグが秀逸でした
    最初に物語は「祖父が祖母に出会い、親友ができ、ドイツ人をふたり殺した週」であることが明かされちゃいます
    物語の結末が最初から分かってる状態でスタートするんです
    そんで本編が始まるとその3つからめちゃめちゃ遠いところにおるやんレフ、どうなるの?と

    親友候補のコーリャはふざけてばっかりで全然馬が合わないし、そもそもなんか信用できない
    完全童貞で女の子の扱いなんか全くわからず、ははんこの子やなって娘が登場しても最初全く相手にされてない
    そして臆病者でガリガリで武器なんか使ったこともい
    えー!何がどうなると「祖母に出会い、親友ができ、ドイツ人をふたり殺す」のよ?

    その過程が面白かった

    そしてラストのセリフがすごい良かった

    そしてプロローグに戻る

    • 1Q84O1さん
      ホントですか〜
      張り切っていると、猛暑、水不足で枯れてしまいますよ〜w
      ホントですか〜
      張り切っていると、猛暑、水不足で枯れてしまいますよ〜w
      2023/06/23
    • 茉央さん
      うわ〜〜〜読み終えたんですね!!!
      私も『チャイルド44』図書館で借りてきたのでこれから読みます^ ^
      うわ〜〜〜読み終えたんですね!!!
      私も『チャイルド44』図書館で借りてきたのでこれから読みます^ ^
      2023/06/26
    • ひまわりめろんさん
      読み終わりました!
      面白かったです

      『チャイルド44』気に入ってくれると嬉しいですが、今考えるとあまり女性向きじゃなかったかもw
      読み終わりました!
      面白かったです

      『チャイルド44』気に入ってくれると嬉しいですが、今考えるとあまり女性向きじゃなかったかもw
      2023/06/26
  • 明るさに救われた一冊。

    ときはナチスドイツ包囲下、軍の大佐の命令で卵を調達することになった、祖父レフ。

    彼の命がけの冒険が始まった。

    一気読みの面白さだった。

    戦争の影、残虐さが至る所に漂う。が、それらを忘れるぐらいに青年兵コーリャとの出会い、冒険劇の明るさと笑いに何度も救われた。
    そしてその明るさの分、戦争の愚かさがより際立っていた気がした。

    二人の青年の、戦争がもたらす抑圧に負けじとする青春がたまらない。

    日本の特攻隊の資料館での記録、インタビューを思い出した。
    「青春?戦争が青春だったんですよ。」

    このひとことが強烈に心に残り、涙が止まらなかった。

    だからか、この物語の二人の青年の青春をひたすら
    謳歌して欲しい、その気持ちでいっぱいになりながらの読書だった。

    ラストも秀逸。思わず人物を確認。

    安心した。
    そして笑みがこぼれた。

  • 面白かった〜〜〜〜!!!
    ページを捲る手が止まらない一冊。
    作者が人気映像作品のの脚本家なだけあって、最後まで映画を見ているような感覚。
    ラストはちょっと出来すぎかな?と思ったけど、そこまでに至る過程はフィクション要素強めながらすごく生々しく感じた。
    何よりもストーリーが予想もしなかった方に転がっていくから本当に飽きないし楽しめる!
    +私は「舞台がロシア」というだけでワクワク止まらなくなっちゃう人なので(『罪と罰』を読んで以来患っている後遺症)、もう本当に楽しかったあ。適度に重すぎないけど、しっかり考えさせられる小説読みたい時におすすめ。

    • 茉央さん
      『チャイルド44』試しに検索してみたら内容やばそうでした…笑笑
      グロ耐性あんまりないので読み切れるか不安ですが、近々読んでみたいと思います!...
      『チャイルド44』試しに検索してみたら内容やばそうでした…笑笑
      グロ耐性あんまりないので読み切れるか不安ですが、近々読んでみたいと思います!!(๑˃̵ᴗ˂̵)
      2023/06/09
    • ひまわりめろんさん
      茉央さん
      こんにちは!

      『卵をめぐる祖父の戦争』借りてきましたよ!

      そんで気がついたんですがワタクシがお勧めした『チャイルド44』もどち...
      茉央さん
      こんにちは!

      『卵をめぐる祖父の戦争』借りてきましたよ!

      そんで気がついたんですがワタクシがお勧めした『チャイルド44』もどちらも訳者、田口俊樹さんでした
      けっこう有名な訳者さんで、ハードボイルド系が主戦場なんですが、東欧を舞台にした小説も得意みたいです
      田口俊樹さんでチェックしてみるのも面白いかもしれませんよ!
      2023/06/20
    • 茉央さん
      ひまわりめろんさん
      こんばんは!

      わ〜〜わざわざ借りてくださったんですか!
      嬉しいです^ ^
      私も地元の図書館で『チャイルド44』予約して...
      ひまわりめろんさん
      こんばんは!

      わ〜〜わざわざ借りてくださったんですか!
      嬉しいです^ ^
      私も地元の図書館で『チャイルド44』予約してきたので、近々読めると思います♩
      まさかの、どちらも訳者さんが一緒だったんですね…!全く気づいてませんでした。
      『卵をめぐる戦争』の訳、すごく読みやすくて自分の好みだったのでそこも楽しみにして読もうと思います!!
      2023/06/21
  • いつまでも余韻に浸っていたいと思わせる物語だ。

    ナチスに包囲されたレニングラードを舞台に、主人公ベニオフと親友コーリャ、そしてパルチザンの少女ヴィカのすさまじい一週間を追った物語だ。

    手に汗を握りながら貪るように読んだ。掛け値なしに面白かった。
    そして親友というものについて考えた。
    長く付き合っているから親友になるわけではないだろう。ともに過ごした時間によってではなく、ともに味わった経験や共感の深さによって結びつきを強くした友人こそ親友だ。
    かく言う私にも、名前も覚えていないが、私にもそんな親友がいた。
    大学3年の夏、初めての海外。初めての一人旅の途中で彼と出会った。テキサスからマイアミまでをグレイハウンドという低所得者しか乗らない長距離バスを乗り継いで、10日ほど一緒に過ごしただろうか。
    怖い目にもあったし、楽しい目にもあった。
    今でも時々、彼のことを思い出す。
    そして、あの夏のことを。

    何かを誰かと深く経験した人なら、この小説を熱い思いで読めるだろう。久々に得られた素晴らしい読書体験だった。

  • 舞台はナチス・ドイツに包囲されたレニングラード。900日にわたって人はもちろんあらゆる物資の出入りが禁止。厳しい寒さの中、電気なし。燃料なし。食料なし。ハンニバルも横行するこの世の地獄。
    そんな状況なのに、ちょwww
    そこの若者二人、下ネタ多すぎ!

    戦争が主題だけど青春小説って言ったほうがいいかも。いつの間にか二人と一緒に卵を探してました。物語に入り込みすぎて、登場人物が心の中に住みつくような体験がたまにあるけど、この本がまさにそれ。読み終わった後も、コーリャとレフの旅を思い出すと胸がきゅんとします。表紙もかわいいね。

    このミス2011年海外編3位。
    著者はニューヨーク出身のユダヤ系というのも特筆。
    原題はCity of Thievesだけど、邦題も素晴らしいと思う。

  • 第二次世界大戦の時の話を読むと、下層階級であえぐ民衆が豊かになるために、裕福で優れた民族(ユダヤ人)を抹殺しよう、という考えの恐ろしさに愕然となる。それを、実行する人を支持した民衆の恐ろしさに。

    『卵をめぐる祖父の戦争』は、著者が祖父に、第二次世界大戦時のある印象的な一週間の回想を聞く、という導入である。
    アメリカ人の著者の祖父・レフはロシア出身で、回想の始まる最初は、レニングラードに住んでいた。巡り会わせで一緒に行動することになった金髪碧眼の脱走兵・コーリャと共に、卵を探す道中が始まる。

    旗色の悪い戦争の真っ只中、庶民は一食でさえ満腹な思いを味わえません。飢え凌ぎには図書の綴じに使われている糊を噛み、市場には水分に砂糖の混じる泥を詰めた瓶が売られています。
    そんな中、結婚式にケーキを作るから卵を一ダース用意しろ、とは、なんと難易度が高く、なんと莫迦げているんでしょう。
    ケーキを焼くために卵を探すなんて、命をかけてまでやることではありません。また他人の命を奪ってまで開催する結婚式も。
    ただでさえ寒さ厳しいロシアの、戦争中の民衆の状況は、なかなか辛いものがあります。それでも多分、17歳の少年が過ごした一週間の描写では、凄惨さはごく一部なのでしょう。
    そんな中、誰にでも姦しく話し掛け、男子高生のようなノリでレフに絡むコーリャの存在が、なんとなく場を救ってくれる気がします。まぁ、終盤にかけるにつれシモの話が加速していくんですけど。笑。女とやることばかり考えていてほんとなごむ。

    先日、元特攻隊の日本人の、シベリア抑留の体験手記を読みました。
    去年、アインザッツグルッペンのドイツ人を主人公にした小説を読みました。
    戦争は憎いです。

    ラストの理不尽さが、戦争の愚かさの集約かもしれません。
    命をかけて卵を得て、ばかみたいな任務があと少しで終わるというところで、愛しき故郷で同志に警戒され友達が撃たれる。しかも大佐は卵を既に手に入れていた。

    それでも、レフとヴィカの顛末に、すこしだけ救われました。

  • 包囲戦下にあるレニングラードで
    消防団長を務めていたレフ。
    ある夜、敵国の落下傘隊員の死体から持ち物を
    盗み、本来なら略奪罪でその夜死ぬはずだった
    運命が、なぜか牢獄の中で居合わせた
    脱走兵コーリャと共に、その命と引き換えに
    秘密警察大佐から卵1ダースを探す使命を
    受けることとなる。

    結婚式にはウェディングケーキが
    欠かせないからといって、よく知りもしない
    大佐の娘のために、外部からの供給を一切
    遮断され、人肉さえ食べずには
    生き延びられないようなこの大飢饉の中を
    いったいどこから卵1ダースも
    探し出すのだ?!(卵を産むための鶏なんか
    食われてどこにもいやしないのに…)
    という馬鹿げた話だが、
    常に悲観的なレフと、口を閉じずにいられない
    恐れを知らないコーリャとのやり取りに、
    戦時中という緊迫した状況にも関わらず、
    思わず笑ってしまう……

    コーリャがとにかく端正な顔立ちで自由気まぐれ。
    自作の小説をさも、世界的文学だと言わんばかりに
    誉めそやしてレフに繰り返し語り続け、
    大胆というより向こう水な性格で、
    そのせいで危うく人喰い夫婦に殺されかけたりも
    するのだが、戦闘においてはかなり俊敏な動きで
    相方レフの命を救ったり、レフが絶望に瀕する傍ら
    鼓舞しつつけたりと、とにかく愛らしすぎる……
    どんな危機的状況に恐ることなく、常にそこが
    最上の場所であるかのように、飢えにも寒さにも
    滅することなく、自分の死の間際でさえ、
    レフの恐怖を拭おうと微笑みかけたりなんかして…
    十数日も便秘記録を更新し続け、晴れて脱糞できた
    暁にはレフに見てもらいたくて、必死になって
    結局見てもらえなくて憤慨してたことさえも愛おしい…

    戦争のお話は敬遠されがちなところも
    あるかもしれないが、この作品はあまり
    人を選ばない、手に取ってもらいやすさがある。

    戦争の愚かさの中に生まれた友情と恋心が、
    レフというひとりの人間に宿ったものの
    大きさにとても感動した。

  • 戦争の愚かさを表現する小説は数多あれど、この作品がとったアプローチのシチュエーションとキャラクター設定がすばらしく、テーマに反して軽快に楽しく読み進められる。

    舞台は第二次世界大戦中のロシア、レニングラード包囲戦の最中にふとしたことから逮捕されて獄中で知り合った主人公のユダヤ人少年のレフと陽気なロシア人脱走兵コーリャが大佐からの奇妙な命令である卵1ダースを揃えるための1週間の冒険の物語。常に悲観的なレフと軽口ばかりのコーリャの掛け合いが絶妙で、度重なる深刻な状況もなんだか奇妙に可笑しい。

    一方でシリアスな描写も多い。兵糧攻めにあうレニングラードの悲惨な状況やドイツ人将校に囲われて暮らす少女たちの脱走劇など、随所にこれは平時の話ではないと痛感させられる。このような状況で生きるのが戦争なのであると改めて考えさせられる。

    やがて物語が進むにつれてレフは少女狙撃兵のヴィカに恋をし、これが絶妙に物語にスパイスを加える。最後の一文を読んだ人はほぼ全員プロローグを読み返すことになるだろう。すばらしいラストである。

    まるで映画のような話だなあ、と思いながら読んでいたがそれもそのはずで、作者のデイビッド・ベニオフは有名な脚本家でもあるのだ。できれば時空を超えてレフ役に若きウディ・アレンとヴィカ役は短髪のウィノナ・ライダーで映画化してほしい(笑)。

  • 戦争による悲惨で不条理な状況が描かれているにも関わらず、コーリャとの会話のお陰かそこまで暗い気持ちにならずに読める。
    そしてラストが良かった。読後は爽やかな気持ちになれる。

  • 「ナイフの使い手だった私の祖父は18歳になるまえにドイツ人をふたり殺している」という冒頭から始まるこの作品。舞台は第二次世界大戦下、ナチスドイツに包囲され、食糧供給がままならない極貧下のソ連・レニングラード(現・サンクトペテルブルク)で、「私」の祖父は軍の大佐から「卵を1ダース手に入れるように」という命を受けます。
    一見解決不可能なこの任務を祖父はどのように達成し、生き延びたのか?それを祖父が「私」に語る、という形式になっています。

    コーリャとの友情、ヴィカへの恋心、レフ自身の勇気ある行動が見どころ満載の後半は読みごたえがあります。一読後、冒頭の「私」と祖父母とのやり取りが違った印象を与える、読後感がとても心地よい作品です。


    ――――――以下、ネタバレ含む感想――――――
    前半はレニングラード包囲戦の凄惨さが目を引きますが、少し単調気味に感じました。コーリャも登場直後は身勝手でかなりうっとうしい印象が笑
    見どころはやはり後半、アーベントロートとのチェス対戦シーンでしょう。チェスでアーベントロートと対戦しながら、元来、繊細な性格のレフが「いつチャンスが巡ってくるのか。本当にアーベントロートを殺害できるのか」と葛藤する心理描写は手に汗握ります。
    敵軍の基地の中、何かを間違えたらイコール「死」が迫っている中、レフの「二人に死んでほしくない」という気持ちが起こさせた作戦成功。ただ、このシーンはレフだけでなく、その状況までこぎつけたコーリャの行動にも注目です。彼の勇気と行動力、これは無鉄砲さと言い換えることもできますが、ナチスドイツに捕虜として紛れ込んだ中迎えた膠着状態の現状を打破するのは、彼の行動力が結実したとも言えます。

    また、冒頭、祖父とのやり取りの最後の方に、この物語に「祖母に出会い」という要素があることが触れられていますが、私自身そのフレーズは読み進めている中全く覚えていなかったので、ヴィカが出てきてもまったくそのことに気づきませんでした。レフのヴィカへの執着でなんとなく「そうなのかな?」と思って読み進めていましたが、最後のシーンが再会で終わったのがよかったですね。
    冒頭、主人公が祖母に対して「フロリダにいるありとあらゆるおばあちゃんのようなことを言うんだね」と言って傷ついた様子を見せていましたが、これはのちにヴィカが「普通じゃない」狙撃能力でパルチザンの一員として活躍するシーンが登場することへの布石だったのでしょうか。
    冒頭で祖父が祖母のことを「ハニー」と呼び掛けており、二人が再会してからずっと愛し合ってきたことが垣間見えるのも、最後まで読んでから改めて読み返してみると素敵なシーンだと思います。
    読み終えてから再度冒頭を読み返してみると、祖母の印象が大きく変わるのでおすすめです。

    翻訳者のあとがきを読んで、そもそもこの祖父母(レフ、ヴィカ)自体、やりとりそのものが創作であることが初めてわかりましたが、そのことで浮かんだ疑問があります。著者はなぜこういう書き方としたのでしょうか。そこにトリックが潜んでいるわけではなく、話の展開としては、どうしても必要な要素とは言えないと思いますし、一人称が戦争当時のレフの視点でも物語は成立するように感じます。
    思うに、「レフとヴィカはその後末永く幸せに暮らしましたとさ」ということを表現したかったのではないでしょうか。今では「フロリダにいるありとあらゆるおばあちゃん」になってしまったヴィカを最初に出しておくことによって、より出会いがドラマチックなものであったことが強調できるような印象を与えることができているな、という印象を受けました。

    このような、特徴的な書き方、後半の盛り上がり、読後感の心地よさがこの本の特徴だと思います。いい作品でした。

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