- Amazon.co.jp ・本 (462ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150018566
作品紹介・あらすじ
エーランド島に移住し、双子の灯台を望む屋敷に住みはじめたヨアキムとその家族。しかし間もなく、一家に不幸が訪れる。悲嘆に沈む彼に、屋敷に起きる異変が追い打ちをかける。無人の部屋で聞こえるささやき。子供が呼びかける影。何者かの気配がする納屋…そして死者が現世に戻ってくると言われるクリスマス、猛吹雪で孤立した屋敷を歓迎されざる客たちが訪れる-。スウェーデン推理作家アカデミー賞最優秀長篇賞、英国推理作家協会賞インターナショナル・ダガー賞、「ガラスの鍵」賞の三冠に輝く傑作ミステリ。
感想・レビュー・書評
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ヨハン・テリオン四季シリーズ第2弾、冬。今回はエーランド島東部のウナギ岬が舞台。地図が載っていたので今までよくわからなかった位置関係がわかってよかった。現実の地名と架空の地名が混ざっているとはいえ、やはり位置関係は分かっていたい。
ウナギ岬の家に越してきた幼い子供のいるヨアキム夫婦、島で押し込み強盗をする若者3人、そして島に赴任した若い女性警官ティルダ。この三者の物語が絡み合う。
そして今回大きく存在感を放つのがヨアキム夫婦の越してきた家。その家は1846年にウナギ岬沖で遭難した船の木材で建てられたのだった。それだけで何か因縁が生まれるかも、と思うが、案の定、納屋には家に住んで死んだ者たちの名前と年月が刻み込まれた隠し部屋があった・・ ヨアキムの妻カトリン、そしてティルダの祖父もこの家に関係があった・・ そしてこの家の話が、カトリンの母の書いた手記によって語られる、という構造になっている。このカトリンの母も強烈な存在感。
事件は早々に、ヨアキムの妻がウナギ岬の灯台の麓で死ぬ。足をすべらせての事故死と思われたが、ここでイェロフ爺さん登場! なんといっても新任警官ティルダの大叔父なのだ。イェロフの船乗りとしての経験と、死んだ妻の気配に囚われるヨアキムの思いが事件解決につながる。わかってしまえばちょっとあっけない感じだが、そこに至る、家が生きているかのような描写、家に生きてきた昔の人たちの息遣いが、読んでる身体を覆う。
クライマックスは、強盗を追ってウナギ岬の家に収束する場面。その時は何十年に一度かのブリザードでその描写がすごい。雪嵐というと単に雪が舞っているだけかと思ったら、エーランド島のブリザードは地面の砂をも含む雪風となり目をやられてしまうという描写。
ブリザードが止んだ翌朝、晴れ渡った空。ヨアキムも子供たちも新しい生活が始まるだろう、と感じる。
2008発表
2012.2.15発行 図書館詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
スウェーデンのエーランド島を舞台にした4部作の2冊目。
前作に出ていたイェルロフ老人はまた登場して、いい味を出しています。
事件は繋がっていないので、前作を読んでいなくても、差し支えはありません。
エーランド島の北端ウナギ岬の家に越してきたヨアキム一家。
人里離れた一軒家だが、自分達でリフォームする能力がある夫婦で、子育てにはいいと思っていた。
ところが妻カトリンが突然海で亡くなり、自殺か事故か?わからない。
途方にくれる夫は家で何者かの気配を感じ、幼い子供たちは母の帰りを待ちわびる‥
古い灯台のそばにある屋敷はさまざまな歴史を秘めていて、ややホラーがかったそういうエピソードが章ごとに語られ、一つ一つに掌編小説の趣があります。
いぜんヨアキムの妻の家族がここに住んでいたこともあり、妻の母ミルヤも強烈な個性のある芸術家。
島には警察組織もなく、久々に女性警官ティルダが赴任するが、一人でてんてこ舞いすることになる。
このティルダが実はイェルロフの兄の孫で、父親や祖父のことを知りたいとイェルロフを訪ねてくる。
元船長のイェルロフは彼なりの視点と人脈で捜査に一役買うことに。
一方、人のいない別荘を荒らして回る強盗も計画を練っていて‥?
さまざまな人間の思惑が、この土地特有の激しいブリザードの夜に集約する‥!
荒涼とした風景と、そこで限りある命を思い思いに燃やす人間達。
哀切という言葉がこれほど似合う作家も少ないでしょう。
きらっと光るものも点在し、独特な読み応えでした。
スウェーデン推理作家アカデミー賞最優秀長編賞、ガラスの鍵賞、英国推理作家協会(CWA)賞インターナショナル・ダガー賞と3冠に輝いた受賞作品。 -
これはミステリなのか?と思うほど、推理は遅々として進まない。主人公の心の不安定さがオカルト的なものにつながって、不思議な雰囲気を出している。屋敷にまつわる歴史も加わって、全体として暗いトーン。終盤、一気に事が進むので、その緊張感で読むのが止まらなかった。
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スウェーデン エーランド島ミステリー四部作、昨年10月「秋」に続き第二弾「冬」を読みました。
「冬」は「彷徨う死者の気配」
舞台は「泥炭湿地」「凍る海」を背景に「うなぎ岬の二つの灯台と屋敷」で、今回も独特の情景を描いて、読み手を夢中にしてしまいます。
風と波と、海が凍る音、岩間を抜ける風の音、建物の軋み、足音、壁の中の物音、誰かの囁き、読んでいて心がザワザワ……と、なんだかホラー映画のようですが、そこはあくまでミステリー。
心に抱える「冬の闇」
後ろめたさ、後悔、疑念、思い込み
それは愛情とは裏腹に心に粘り着く。
様々な思惑が、やがて冬のブリザードの夜に向かって押し寄せていく。
読後に冷静になって考えるといくつもツッコミどころがあるものの、不思議な役割を持つイェルロフと凄まじいスウェーデンの冬が、そんなことを吹っ飛ばしてくれます。
終盤に灯台から出てきた○○○の油絵が見たい……。
次は「春」に「春」を読みます。
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前作「黄昏に眠る秋」の続編。
気分を一新するために転居した古い屋敷で、家族に不幸が訪れる。事故か事件か、悲嘆にくれる主人公。
日光の恵みの少ないスウェーデンならではの、陰鬱とした雰囲気が生きている。登場人物は皆、どこか後ろ暗いものを抱え悩んでいる。閉鎖的な古い屋敷に死者の気配が漂うあたりは、どこかスティーブン・キングの「シャイニング」が思い起こされた。
次作、春も読んでみたい。 -
『黄昏に眠る秋』につづく、エーランド島シリーズ第2弾。
実は先に第3弾である『赤く微笑む春』を読んでしまったのだが、ストーリーは本当に緩く繋がっているだけなので、問題なし。
ヨハン・テリオンの作品は、作品の底に諦観や哀愁が流れているが、本作は衝撃的な序盤のストーリー展開もあって、特にその感が強い。
幽霊譚でありながら、きちんとミステリとして成立していて、さすがのデキ。 -
エーランド島に移住してきた一家に訪れる不幸。
妻は死に、子供たちは夜な夜な幽霊の声を聞く。やがて死者が現世に戻るといわれるクリスマスが訪れる。
実に丹念に人間と自然の地味なドラマを描いている。
オカルトチックでもあり、それがブリザードの世界と相俟って、なんとも味のある物語を作っている。
本筋を牽引していく事件がまったくの脇役になってしまっているところもまた面白い。 -
これはいいです!
前作「黄昏に眠る秋」もよかったけれど、さらにしみじみとした味わいがある。ややホラー的なところもまたよし。じっくりした大人の読み物だと思う。