キャサリン・カーの終わりなき旅 (ハヤカワ・ミステリ)

  • 早川書房 (2013年2月8日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (328ページ) / ISBN・EAN: 9784150018689

作品紹介・あらすじ

"小さい息子を誘拐され殺された過去を持つ新聞記者ジョージは、あ
るきっかけから、二十年前に起きた詩人キャサリン・カーの失踪事
件に興味を持つが……。巨匠クックが繊細に紡ぎあげる贖罪の物語"

みんなの感想まとめ

複雑なストーリー構造が特徴的なこの作品は、失踪した詩人の謎を追う新聞記者ジョージの物語です。彼は、過去の悲劇を抱えながら、早老症の少女アリスと共にキャサリン・カーの行方を探ります。物語は、語り手が別の...

感想・レビュー・書評

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  • 子供を誘拐された作家は、川から遺体が発見され、一時は絶望した。
    痛みを引きずりながら今も暮らしている。
    新聞社から小さい記事を頼まれ書くことで細々と生活をしている。

    いつも行くバーで、退職警官から20年前から未解決になっている、キャサリン・カーという女性が失踪した事件の話を聞く。未だ犯人も明らかでなく、殆ど手がかりがない。
     失踪人に興味を覚えて聞いてみると、彼女の友人のところに彼女が書いて預けていた小説と詩が少し残っているという。
    友人は余り協力的ではなかったが、始めの部分から少しずつコピーして見せてくれることになった。

    彼の記事は、街の人物や出来事を取り上げ、楽天的な軽い表現で書くことだった。それは傷を抱えた彼への編集長の思いやりだった。

    次はバーで話に出た、早老症で入院している12歳の少女を書く予定だった。病院に取材かたがた見舞いに行くと、彼女は老人に見間違うような風貌ではあったが、パソコンを駆使してミステリ小説を解き明かすのが趣味だった。
    実に聡明で、キャサリン・カーに深い興味を持った。
    二人でコピーを読んで事件の顛末を考える。それは彼女に活力を与えた。

    小説は少しずつ渡されるので、考える時間は十分有った。だが読んでいくと、 小説は幻想的でどこまでが彼女の出来事なのか事実を探すのは難しかった。
    二人は、その中から見つけた現実的な出来事を探し、事件と照らし合わせて繋いでいく。

    徐々に小説が結末に近づいていく。
    早老症のアリスも日々衰えて、死期が迫ってくる。

    登場人物の不幸に加えて、事件の不透明感が読んでいても暗い。
    作家は、かつて殺人があった現場を訪ね、好奇心を満たすために、曰くがある土地なども歩いて様々な経験をした。その話がこれまた残虐で恐ろしい。

    話の中に小説が入る入れ子構造で、小説の中でキャサリンが主人公になってはいるが、幻想的な作風なのか事実に基づいたものなのか、遠い過去の出来事は雲を掴むようで、渡されたコピーを読んでも展開が分からない。
    過去に暴行され傷つけられたことで、大きな心境の変化が有ったらしいことが伺える。
    小説の中では、現実か架空のものか分からない登場人物が動いているが、何かを暗示しているのだろうか。彼女は今生きているのか、殺されたのか、手がかりになる記述が無い。

    読んでいて、これはなんなのだ、と思った。

    小説の中に具体的な記述がなければ、失踪か殺人か、二人がいくら考えても事件の上を滑っていくだけだ。
    作家も、息子を誘拐され殺されたときに自分がいなかったという後悔にさいなまれているのはよく分かる。少女に対する思いも。
    ついにホスピスに移された少女が残りのかすかな命をかけて、キャサリンを読み解くシーンは、未だ生きていけるものと、死を悟ったものの解釈の違いに胸が痛む。不幸な少女を道連れに選んだことが輪を掛けて救いようがない。最後の部分であるいはこうなって解決なのかという気を持たせたシーンはあるが。

    しかしどう繕っても、この作品は難解というより混沌で、残虐ではっきり言えば悪趣味で、解決の部分も、きっとどう終わらせるのか迷ったのではないか、スッペ「軽騎兵」序曲のちょっと長い終章部分を思い出してしまった。小説が結末に来ているのに、明らかになって落ち着く部分がない。なので、どうなりと後はお好きな形でお任せします。といわれているようだ。

    キャサリンの小説とはいい思い付きだが、それを読んでも何の手がかりも得られそうにない内容で、こういう思わせぶりなストーリーをなぜ作ったのだろう。

    クックの回想形式の秀作はほとんどが不幸な出来事に行き着いていく。
    今回は救いのある結末を用意したのだろうか。ここからの人名シリーズは新しいスタイルに向かうのだろうか。

    ミステリについての常套手段に依らないという文中にある言葉は、未だ解決しない迷いがあり、新しい分野への挑戦かもしれないが、この作品は常に負の心を表す比喩も含め、全く暗すぎる。
    少しずつ渡されるという小説のコピーにしても、世界の犯罪者の羅列にしても、奇病に苦しむ少女にしても、自然に読めるような流れにならず、ありありと作りものめいて、常に自分の読解力の不足ではないかと思うようだった。
    次の作品はどうなっているのだろう。

    現在も就筆中とかお元気で何より。2026年の寒い2月

  • トマス・H・クックの他著『ローラ・フェイとの最後の会話』を読み、その驚異的なストーリーテリング力に魅せられたので手に取った2冊目。

    実在している姿は登場しないローラ・フェイの書いた小説を読む語り手と相棒のストーリーを、語り手が更に別の聞き手に語る、という二重の入れ子構造、
    加えて題名となるローラ・フェイは自身の書いた小説に自分自身を登場させていてそれが実在した彼女とどこまで一致するかわからないために読者は語り手&相棒と共に二人の彼女を追わなければならないーー

    という超複雑なストーリー構造をどうやって練り上げたのか、著者の創作ノートを見てみたい、というのが一番の感想。

    そんな難解構造のために重要なポイントをいくつも見逃している状態でこのレビューを書くのはフェアじゃないと思うが、読み直したら書き直すとして、とりあえず一読後の感想としては、結局この小説が到達したのは読者を重複入れ子構造によって小気味よく惑わせただけなのでは、という気がする。
    というのも、(『ローラ・フェイ…』を読んだ後では予想していたことではあるが)結局語り手とその相棒が取り組んでいた謎は明らかにされないように見える。一番外側のストーリーによって明らかにされたとも解釈できなくはないが、それであれば、小説の中で語り手自身が嫌っているようなかなり都合のいい強引な結論だ。

    もちろん、ミステリー小説ではないので(本の中にも「これがミステリー小説だったら」という表現が出てくる)謎がすっきり解決されて大団円となることが美しいわけではないのだが、それにしても読後「なんのためにここまで来たのか」感に包まれる。


    しかし『ローラ・フェイ…』で舌を巻いた、読者の予想だにしないながらも真実味がありウィットに富んでいる登場人物の発言は健在(健在、といっても本作の方が前に書かれているが)で、脱帽の一言。
    一方で、これは著者の意図的な配慮と言えなくもないが、登場人物ひとりひとりの心的描写が物足りず、人物に肩入れできない点もまた然りではある。

    全体的に否定的なレビューとなってしまったものの他の著作も読みたい作家であることには変わらない。

  • この著者の作品は、昔、夢中になって読んだのだが。。。これは。
    最初から救いようのない暗い感じで始まり、失踪者の小説を中心に物語は進むのだが、謎解きなのか心霊なのか、ふわっとしてて、読むのが嫌になってしまった。
    一応最後まで読んだが、それだけだ。

  • 不思議系やけど、らしいっちゃあらしい。

  • 6月26日読了。図書館。原題「The Fate of Katherine Carr」2009 失踪したかもしれないキャサリンの小説を読む物語を、船の男に主人公が語る。

  • 単なるミステリーではない。謎は解かれず、事件は解決しない。キャサリン・カーの行方は分からない。しかし、希望は残る。著者ならではの、少しづつ少しづつ語り進める文体が、かすかな光の輪郭を描く。単なるミステリーではなく、もっと深い何かだ。

  • 相変わらず陰鬱な内容なのだけど、今回珍しくファンタジーが混じっている。少し拍子抜けしてしまった。語り口は饒舌で一気に読ませる手腕は健在。

  • ストーリーがマヤワティの世界とアリスの世界とキャサリンカーと死んだ息子テディの世界が交錯する。その展開に正直ついていけませんでしたが
    語り口には引き込まれました。

  • 相変わらず、登場人物たちの心の描写が真に迫っていて、読んでいると苦しくなる。今回は特に早老症の少女がいい。変にお涙頂戴にならず、過剰な装飾のない最期を遂げる。主人公と少女の会話も盛り上がりそうでそうはならず、そこにリアリティーを感じた。だからこそ結末が納得いかない。

  • クックは語り口がとてもうまいので、なんだかんだクサしつつ読んでしまう。ただ今回は、ミステリ的興味で引っ張られたあげく、そういうお話でしたか…、という結末なので、不満も五割増し。

    スピリチュアルとは言いきれない感じだし、ホラーでも幻想でもなし。「独特の世界」と言えばまあそうなんだけど、なーんかズルされたようで割り切れないなあ。よく「文学的」という評を見るけれど、それは違うと思う(キッパリ)。

  • マヤワティ氏必要? 必要なんです。ミステリファンからすると「これミステリ?」と思われ、純文好きからすると、読みを牽引するミステリ臭に違和感が持たれるかもしれない危うい境地に成立する小説。その感じは語り手が自嘲的につぶやく「これがミステリーかなにかなら」という文章にも現れているようにも思える。

  • クックの本はこれまでだいぶ読んできた。
    本書も、クックのいつもの小説らしく贖うことのできない過ちを犯して孤独な人生を送る男が主人公。
    ところが…今回はミステリというよりファンタジー?ホラー?途中で「まさかキングの小説みたいに…はならないよね?」と懸念した(ならなかった)。
    クックが著者だと知らなければ、楽しめたのかもしれない。
    …もしかしたら、知らなければ途中で読むのをやめたのかもしれない。
    いずれにせよ、深く静かな文章は変わらず堪能できる。
    …けれど、なぜ本書はいつもの村松氏が訳していないのか…ちょっと気になる点。

  • 第一部
    第二部

  • 老人症の少女アリスと、行方不明になった詩人キャサリンを追う。

    クックにしてはかなり幻想文学的。

    なんとなく釈然としない部分が多いのは、余韻とみなしていいのか。

  •  20年前に失踪した詩人、7年前に息子を殺された男、そして早老症で死に行こうとしている少女。3人の思いが交錯する先にあるものは…。

     詩人キャサリン・カーの残された原稿から失踪の謎を解こうとする男と少女。なので、物語は残された原稿と、現在という二重構造になっている。いや、冒頭で男は異国にいて、物語を語ろうとしているので、3重構造なのだろう。
     故に、結局のところ、何が真実なのかわからない。
     曖昧としていて、ただ、そこに悲しみがある。

     子供の死は無条件に悲しい。

     早老症の少女を謎の解き手にしたことで、それは深い。底が見えない。
     けれど、生きるということは、そういう深さに戸惑うことなのかもしれないと思った。

     「ローラフェイ」もそうだったけど、クックはもう<明確な答え>を必要としていないのかもしれない。
     <明確な答え>がないことこそが、<答え>であり<全て>なのかもしれない。

  • 続きが気になってしょうがなく、一日で読んでしまった。
    この方の小説を読むのは初めてで、文章や比喩の表現は読みやすかった。比喩に若干くどいところがないでもなかったけれど、すらすらと読めた。

    登場人物も主人公の境遇からして相当暗い部分があり(この話に一切明るいところはない)その表現も共感できるものだった。主人公のパートナーの少女が唯一この話に希望をもたらしてくれる・・・と思ったらそうでもなく、主人公と深く関わってきた割に少女の降板はあっけないし、肩透かしをくらってしまった。それとも、主人公にとって少女が居なくなることがそれほど大きな事象を占めないのかもしれないけれど。

    物語は二つの話から出来上がっていて、一つは主人公が、失踪した女性を探し、かつ自分の息子を殺した犯人を探し当てるもの、もう一つは、その失踪した女性が最後に書いた物語から、現実に起こったことを辿っていこうとする、という仕立てになっている。
    二つの関わり合いは絶妙で、「もしかしてこいつが犯人なんじゃ」というのを何回も思ったし、想像したが結末は(個人的にはあまりよくない意味で)違っていた。色々な意味で裏切られた気分。途中までの引っ張りは本当に面白かったのに……。

    てっきり、「よくあるミステリ」と本文でも語られているように「主人公」が犯人なのだと私は思っていた。けど実際は……。
    う――ん。結末にしっくりこない。消化不良。いっそ主人公が犯人な「ベタ」な終わり方でもよかったかもしれない……それらしい伏線はあったし(例えば、息子が死んだときを想像する様子が妙に生々しかったとか)

    けど文章の形や、ストーリーの展開はさすがというべき。ミステリ好きな人は読んでおいて損はないと思うけれど、結末に消化不良になるかもしれないことだけは覚悟しておいたほうがいいかも。

    結末は微妙だったけれど、この著者のほかの話も読んでみたいなと思った。

  •  『ローラ・フェイとの最後の会話』の前に書かれた作品にも関わらず、翻訳が四年も遅れたわけが何となくわかるような気がする。名クック訳者の村松潔さんが、これではなく『ローラ・フェイ……』の方を取り上げ、この作品を他の翻訳家に回した理由はなんだろうか? 訳しにくい? 作品に対して否定感がある? あるいは訳者としての作品評価が低い? 何であれ、あまり訳したいと思わなかった作品なのではないだろうか。この本を読んでぼくが最初に感じたのが(もしかしたら穿ち過ぎの見解なのかもしれないが)、そんな疑いだ。

     もしかしたらクック初訳で慣れていない点があるのかもしれない可能性を鑑みて、駒月雅子さんというこの本の訳者をネットで調べてみたのだが、ハーレクイン畑出身ではあるものの、ローリー・リンドラモンドの『あなたに不利な証拠として』の訳(もちろんぼくも読んでいる)など、凄い翻訳も経験していた。本書が少しばかりクックらしからぬ点多きものだとしても、それは翻訳者の不慣れによるものではないだろう。本書は元よりクックらしからぬ点に満ちた異色作、と言ってしまったほうが正解なんだろう。即ち……、

     クックらしからぬ点その一。やっぱり霊的(スーパーナチュラル)な要素が多々あるところだろうか。クックは余韻の残る語り口をやるけれども、霧の中に姿を消してゆくこの世のものともあの世のものともつかぬ存在のようなものを、奇をてらったように描くことはない作家だと思う。

     クックらしからぬ点その二。プロローグとエピローグで、ジャングルを遡行する川船に居合わせた主人公ジョージ・ゲイツと放浪のインド人マヤワティ氏の出会があるのだが、本編との関わりの匂わせ方については相当奇をてらったように見える。マヤワティ氏が、ゲイツの語りを中途半端だと評したのも、後に述べるけれどだいぶ意味深である。クックは読者に対し、こんな謎かけをする作家であったろうか。

     クックらしからぬ点その三。もちろん作中で展開するキャサリンの小説がクックの文体で書かれることはないとしても、ここまで奇妙な小説内文章、奇妙な小説内容を、クックの作品中で読むことになろうとは誰が想像したろうか。

     そんなわけでいろいろと戸惑いを感じつつページを繰らねばならない、ある種、異物感のある読書経験となるために、このこと自体がもはや、読書の醍醐味を与えてくれるシックで流麗なるあのクックとは、少し異質であるように感じるのだ。

     さて失踪事件のあった土地を調べて回る旅行作家(すごくニッチな職業とぼくは思う)だったが、息子テディを未解決殺人事件の犠牲にしてしまったことで罪悪感に悩み、今では地方紙記者をやっているジョージが、パートナーとして組む相手は、早老症という珍しい病気である12歳だが90歳に見える天才少女アリス。この風変わりなコンビが、元失踪人捜査課の刑事アーロウから持ち込まれた、20年前に失踪したキャサリン・カー事件に挑んでゆく物語である。

     キャサリン・カーは詩人として知られていたが、実は未発表の小説原稿を残していて、自然を描いた美しい詩とは真反対の不気味なその原稿こそが、彼女の失踪事件の鍵を握るものではないかと、二人は注目する。早老症のアリスは十二歳であるにも関わらず肉体が老いてしまい、疲れやすいため、一面会時間が長くは持たない。ゲイツはだから、病室を訪ねる時だけキャサリンの小説原稿を切れ切れに読んで聴かせることになる。読者の気を持たせる語り口、だ。

     その、作中作とも言える原稿の解釈が変遷するとともに、犯人像が変わってしまい、真相を追う視点が変わり、真相を追う人たちの話を追う川船の二人の視点が変わり、川船の二人を含めて真相を追う読者の視点が変わり、と……。三重の入れ子構造の作品というのは、ただでさえ、かくも揺らぎが大きいのである。

     そんな中でクライマックスと思われたものが擬似クライマックスであったり、真相と思われるものが新たな謎の影に変わったり、ゲイツの幻覚めいた表現も交えられ、とにかくラストは予想もつかない。

     マヤワティ氏がゲイツの話を中途半端だと評したように、ゲイツとアリスは、キャサリンの小説を中途半端な終わり方として失望する。では読者はこの小説をどう収めてゆくことができるのだろうか?

     多重構造の小説は、そもそも難解の渕に陥りやすいが、最終的にはどこかに集約される。ネタバレは約束違反なので、こんな暗示に興味を覚えた方は、ジョージ・ゲイツの追跡と復讐の旅に是非ともご同行あれ。

  • いつもとは少し違ったクックでした。
    過去の作品は真っ暗な中を手探りで歩くカンジだったけど、今回はキャサリンというかすかな光を求めていくカンジ… でした。 
    しかし、ただの話の聞き手だと思っていたマヤワティ氏が、あんな形で最後をしめてくれるとは… さすがクック巧いねぇ

  • 不思議な話。謎の焦点を過去に設定し、記憶を辿っていくという作者独特のスタイルではあるが、異質な感覚は拭えない。

    入れ子構造のストーリーは、話が進むにつれてますます奇怪めいてくる。作中作も風変わりだが、それに挑戦する主人公と少女のコンビも癖がある。キャサリンの失踪事件をとっかかりにして、自分自身の苦悩に別の意味を持たせようとしている心理が感じ取れた。

    多くの有名な事件が登場し、陰惨なシーンや表現もスパイスのように効かせてあるが、本作品は事件そのものではなく、被害者と加害者のシチュエーションがテーマになっているのだと思う。感情の根底にある怒りに対してどういう決着をつけるかという部分は、作中から読み取るしかないが、読み手それぞれが感じ取る“結末”に間違いはないような気もする。

    複雑だけど柔軟。どの角度から見ても正解になるように、深読みの余白はやや広め。なんだかんだ言っても、読後に余韻を持たせる手腕はクックがずば抜けて巧いよね。同じ腕の振りで変化球を投げられたら、読者は簡単には打ち返せないわ。それはずるいよー、と文句を言いつつも、クック節は健在だからしょうがないのだ。そして、地味にいいタイトル。

  • トマス・H・クックの作品の中では、それほどいいほうに位置していない、と言わざるを得ない。

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著者プロフィール

東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒。翻訳家。訳書にドイル『シャーロック・ホームズの回想』『緋色の研究』、ホロヴィッツ『シャーロック・ホームズ 絹の家』(全て角川文庫)の他、ミッチ・カリン『ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件』、ホロヴィッツ『モリアーティ』(共にKADOKAWA)など多数。

「2023年 『新シャーロック・ホームズの冒険 顔のない男たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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