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Amazon.co.jp ・本 (384ページ) / ISBN・EAN: 9784150018832
作品紹介・あらすじ
アジェンデ社会主義政権下のチリにやってきたキューバ人のカジェタノ。彼は国民的詩人ネルーダから依頼され、ある医師の行方を追うが、やがて意外な事実が。チリでベストセラーを記録した話題作
みんなの感想まとめ
探偵としてのキャリアを始めたカジェタノが、国民的詩人ネルーダの依頼で医師の行方を追う物語は、ミステリーの枠を超えた文芸作品としての魅力を放っています。チリのアジェンデ政権下という歴史的背景と、ネルーダ...
感想・レビュー・書評
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ネルーダの本を読もうと思って探していたら(本人の詩集はなかなか手軽に本屋で買えない)この本をみつけました。南米文学は大好きだけれど、日本で翻訳されているのは主にいわゆる純文学系で、こういった娯楽探偵小説は珍しい。しかし読後感はミステリというよりも重厚なラテンアメリカ文学のそれでした。面白かった!
主人公はチリ、バルパライソで長年探偵家業を営むベテラン探偵カジェタノ。彼のシリーズは本国チリではもう7冊くらい出ているらしいのだけれど、本書はカジェタノが探偵になるきっかけとなった35年前の事件についての回想になっている。
1973年、アジェンテ政権末期の政情不安定なチリに、妻アンヘラと共にやってきたキューバ人のカジェタノは、左翼活動家の妻アンヘラに振り回される日々。しかしあるパーティで詩人パブロ・ネルーダと知り合い、なせかネルーダはカジェタノに人探しを依頼する。当時のネルーダはすでにノーベル賞を受賞した国民的詩人であり、革命の指導者として崇められていたが、すでに老齢で癌に冒されていた。
実質ニートのカジェタノは依頼を断れず、探偵の真似事を始めるはめに。探す相手はネルーダがかつてメキシコで知り合ったという医師アンヘル。ネルーダとは同年代、何十年も会っておらず、生死もわからない。彼を探す理由すらネルーダは教えてくれない。
僅かな手がかりだけをたよりに、メキシコ、キューバ、東ドイツ・・・と、調査を続けるカジェタノ。その過程で同時に、詩人ネルーダの嘘と半生があぶりだされていく。数々の女性遍歴、詩人にとってはそれはイマジネーションの源流だったのかもしれなけれど、次々と使い捨てられていく女性側からみたら、ネルーダはとんだクズ野郎だ。
目次にはジョシー/マリア・アントニエタ/デリア/マティルデ/トリニダードと5人の女性の名前が並んでいるけれど、すべてネルーダが(いろんな意味で)愛した女性の名前で、カジェタノの調査とは別にネルーダ自身のその女性についての回想が挿入されている。もちろん小説としてのフィクションも交えられているけれど、ベースになる部分は史実通り。探偵カジェタノは詩人への敬愛と軽蔑の狭間で揺れることに。
紆余曲折を経て、ついにカジェタノはチェ・ゲバラ終焉の地ボリビアで、ネルーダが本当に探し求めていた人物に辿り着き帰国するが、折しもチリでは後の独裁者ピノチェトによるクーデターが起こり・・・。
チリ近代史とネルーダについてはいくつかのチリ映画や小説の知識の寄せ集めでなんとなく把握している程度ながら、ネルーダの没年が物語の渦中である1973年であり、どのような最期を遂げるかも知っているので、探偵の報告が間に合うようにと祈るような気持ちで見守った。結局、探偵カジェタノ同様、ネルーダに振り回されながらも、いつのまにか自分もこのろくでもない詩人に愛着を覚えていたのだろう。実はちょっと泣いてしまった。
ネルーダに薦められるままシムノンのメグレ警視シリーズを教科書に探偵業に精出すカジェタノが、ちょいちょい現実は小説(メグレ警視)のように上手くいかない、生身の人間(自分)は傷つく等の発言をするのはいかにも南米文学ぽくて面白かった。読者にとってはカジェタノもまた虚構の中の人物なのだけれど、彼は彼の現実を生きていて、小説みたいにはいかないとボヤいてみせる。
読者を登場人物に同化させる手法なのかもしれないけれど、そういわれるとそんな気がしてくるから不思議。今年見た映画『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』でも、ネルーダの妻デリアが彼を追う主人公に「あなたは夫の物語の登場人物にすぎない」と言うシーンがあってハッとさせられたけど、この小説の中でも主人公は自分もベアトリスもネルーダの創作したフィクションではないかと思うくだりがあり、やはりハッとさせられた。
カジェタノが暮らし、今もネルーダの邸宅が観光地になっているバルパライソは現在は世界遺産に登録されている海港都市。アセンソールというケーブルカーのようなもので斜面を移動する場面が序盤で出てくるけれど、観光ガイドとしても役立ちそうな描写がたくさんあり、さらに調査で赴いたどこの国でもカジェタノはその国の名物の美味しいものを食べ、美味しいお酒を飲んでいるので、なんだか旅行に行きたくなる1冊でもありました。
著者あとがきによると、ロベルト・アンプエロはバルパライソのネルーダ邸の近所で育って、詩人本人も何度かみかけたことがあるらしい。探偵小説というよりは、ネルーダの伝記(フィクション多め)、ネルーダ入門書として読むのもありかも。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ラテンアメリカ的混沌か…知識無さすぎて難しいな。
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”詩”について、よくわからないのに加え、読んだ本に出てくる”詩人”にも、あんまり良い印象を持った記憶がないし、本作の”詩人”ネルーダも、モラル崩壊というか、そもそもモラルを持ち合わせていないかのごとき、やりたい放題の欲ボケ爺で感情移入できなかったんだけど。。。 解き明かされていく謎と、チリの情勢の変化が、クライマックスに向け盛り上がる!また、チリはもとより調査に赴いた地の、酒と食い物の記述も多く、やたら旨そうなんだな、これが! ラストも良い感じで、読んで良かった。面白かったです。
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一年の半分でしかないのに、今年のベストにであってしまった気分。
アジェンデ政権末期のチリ、パブロ・ネルーダ、これだけでも十二分だが、ミステリの範疇を超えて、ネルーダの人間性をも深く追求した作品だった。 -
ハヤカワミステリって初めて読んだけど、パッと取った割にはアタリで良かったです。というのも作者はチリでは絶大な人気のある人だそうで。恋愛のシーンで、この縦長のデザインだと、ええ歳してハーレクイン読んでるとと思われたらどうしましょ症候群でビビりつつ装丁に助けられつつ。南米への憧れ、さらに東ドイツやら、そして革命のくだり・・・少し隔たりありながらも楽しく読みました。ッス。
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ソマリランド→ネルーダ事件の順番で読むと、いま「あたりまえ」と思う日常が、西欧化された……ある意味特殊なものなのかも知れないな、と思う。
面白かった。 -
南米チリについて、正直な話、ぼくは何一つ知らない。
ぼくの勤めていた医療機器メーカーが、チリで大地震が起こるたびに医療物資の援助を行う日本赤十字社から特別オーダーを受けた特需景
気にボーナスが加算された。太平洋の向う岸で惨事が起こると喜ぶこの会社なんてまるで死の商人だね、と同僚と皮肉を交わした覚えがある
くらいだ。
そのチリに、1973年には、軍事クーデターの嵐が吹き抜けたのだそうだ。ニクソンの支援を受けたピノチェト将軍による軍事独裁政権は
17年の長きに渡って続くことになる。そんなことすら知らない日本人のぼくは平均的なのか? それともぼくだけが無知であるのか?
主人公のカジェタノ・ブルレは、現在7作まで出版されているシリーズ探偵であるそうだが、本作はその6作目であり、カジェタノが探偵
という職業になったきっかけを回想する内容のものである。彼は、病床にあるネルーダの玄関の扉を叩くことで、私立探偵の道に進んで行っ
たのである。この小説で登場する実在のノーベル賞受賞詩人ドン・パブロ・ネルーダは、この頃には前立腺癌を患っており、軍事クーデター
後12日目でその人生を閉じる。
ネルーダと関わることになった若きカジェタノ・ブルレは、ハバナ生まれの亡命キューバ人である。彼はアメリカで出逢ったチリ人の妻ア
ンヘラとともにチリに移り、パルパライソに住んでいたが、アンヘラは祖国に迫ろうとしている右派と闘うため、軍事訓練を受けにチェ・ゲ
バラの国メキシコに旅立つ。個人の幸福よりも思想的闘士の義務を優先する考えで、夫の元を去ったのだ。祖国を持たないカジェタノは妻の
信条をついぞ理解することができず、自らの将来を憂えるどん底の状況に陥った頃に、あまりにも有名すぎる隣人ドン・パブロ・ネルーダに
出逢ったのだ。
ネルーダの血を分けた子供かもしれない娘、また彼女を生んだ元愛人で医師の妻ベアトリスを探すよう依頼を受けたカジェタノは、捜索の
旅に出る。探偵心得を学ぶためにネルーダから渡された何冊ものジョルジュ・シムノン作、メグレ警視の小説シリーズを鞄に詰めて。ベアト
リス母娘を追う旅は、メキシコ、キューバ、東ドイツ、ボリビア、そしてチリはサンティアゴへと続く。そのたびに、ベアトリスという女性
が、その時代その国々で様々な顔を使い分け、全く違う女に移り変わってゆく踪跡に出会うのだが、どの国のどの地も複雑かつ危険極まりな
い政情を抱えており、カジェタノは、平和で安定した場所を舞台に落ち着いた捜査ができるメグレ警視を羨ましく思う一方、自らが立つ危険
に満ちた世界で成し遂げつつある追跡行の成果を、これは小説などとは違うが達成感は格段のもの、と誇り高く思う。
そうして徐々に探偵としての素質を見せ始めるカジェタノと、何人もの妻と結婚しては捨ててきたノーベル賞詩人の罪悪感に苦しむ私生活
の意味深げな対比が、長いお互いの電話連絡やネルーダの独白の章を通して描かれてゆくところに、世界と個人の、それぞれの罪や贖いが呼
応し、比較され、この小説世界に、かつて見たこともないような奥行やスケールが生まれるのだ。実に優れた力作であると思う。
ラストシーンは、チリの軍事クーデター、ネルーダの死、カジェタノの捜査の完了などが、すべてほぼ同時点・同地点に集約されてゆく見
事さなのだが、この作家のエネルギッシュな描写力は並大抵のものではない。クーデターが行われているとはとても思えない美しいチリの港
の朝を見つめるカジェタノの耳に、迫ってくるどこか遠い空爆や発砲の音、雑音で消えてゆくラジオのニュースなど、当の作家本人が長いあ
いだ亡命を強いられることになった1973年当時の一日の体験の重さを響かせて、大変重厚に仕上がったアンサンブルとなっている。
どこを通しても一級の娯楽作品であり、一級の品格である。史実に存在した人物や出来事と、作者がイマジネーションさせたベアトリス母
娘の仮想の旅を通して、読者はカジェタノとともに世界の動乱の日々を目にしてゆく。チェ・ゲバラ亡き後の砂塵。カストロのもたらしたハ
バナの張りつめた静寂。未だ崩壊には遠かったベルリンの冷たい壁。籠城するアジェンダ左派政権のラジオから流れる決意の叫び。ネルーダ
の棺桶(イコール希望)にすがる市民たちの姿。時代のうねりと人間たちの悲しい愛情とが徹底して心を打つ、危険でリリカルな一大行脚の
旅をどうぞご賞味あれ! -
南米を舞台に、新米探偵がノーベル賞詩人ネルーダの依頼で人探しに挑む。彼はフランスの作家シムノンの探偵小説を手本にしようとするが、合理的に秩序だった西欧と混沌の極みにある南米との違いに戸惑う。女性への不誠実さ身勝手さに唖然とさせられるネルーダも、西欧の価値観では判断できないし、理解できないのだろう。探偵は周りがどうあれ、自分の意志を貫こうともがく。他人のせいにも社会のせいにもしない潔さが、清々しく思える。
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非英語圏のミステリは北欧を中心に邦訳が出ているが、その中でも珍しい、南米はチリのミステリ。南米で邦訳というと矢張り純文学に分類されるものが多く、エンタテイメント畑の邦訳はなかなか見られない。
主人公が『自分が探偵となるきっかけとなった事件を回想する』という体裁で、実在の人物も数多く登場する。
ネルーダの依頼で主人公はキューバ、東ドイツなど、様々な国を転々とするが、同時に、当時のチリの社会情勢が描かれており、クーデター前夜の緊迫した情勢と、悪化するネルーダの体調がタイムリミットの役目を果たし、物語を盛り上げている。
訳者あとがき冒頭にある『ラテンアメリカ的混沌』というと、南米文学の書評ではよく見られる表現で、今作にもそれは感じられる。 -
チリのノーベル賞詩人パブロ・ネルーダに人探しを依頼されたカジェタノ。失業中だったが、メグレ刑事シリーズを数冊渡され、「これで探偵業を勉強してくれ」と言われ、メキシコ、キューバ、東ドイツ、ボリビアと飛び回り、チリに戻ってきたが...と。時はアジェンデ政権下チリ、政治の季節、1973年。そして、手の届かない尊敬するノーベル賞詩人が、赤裸々にカジェタノに語る、愛と裏切り。改めて、ネルーダの詩や評伝に触れてみたいと思った。以下備忘録的に。/パナマ運河開通によるバルパライソの壊滅的な打撃。/「キューバに世間知らずはいない。まぬけや恥知らずや日和見主義者はごまんといても、世間知らずはひとりも。」/タンゴの名曲ボルベール/私が気に入らないのは(略)「黙っていれば愛しい。いないも同然だから」、そう言われている感じ。/「キーをたたいていい詩が書ける人間などこの世にいるものか。詩はペンで手書きにするものだ。詩は、チロエ島の海岸に打ち寄せる潮のように脳みそから降りてきて、体から手へと流れ、紙の上にあふれだす」/「くだらんことを!人生は仮装パレードだぞ、カジェタノ」/「人を不死にしてくれるのは、本ではなく子供であり、インクではなく血であり、本のページではなく肌なんだ」/
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